はじめに
「日本の代表的なアニメといえば?」
こう聞かれたなら、あなたならどう答えるだろう。
全世界にコアなファンを抱える庵野秀明監督の『エヴァンゲリオン』?
富野由悠季監督の『ガンダム』も、未だ根強い人気を誇っている。
『サマーウォーズ』に代表される細田守監督作品だって人気がある。
世界的大ヒット映画『マトリックス』に影響を与えた押井守監督の『攻殻機動隊』…は、少しマニアックか。
大人向けアニメの先駆者とも呼べる、大友克洋監督の『アキラ』はその昔ハリウッドでも人気を博した。
興行収入だけでいえば『鬼滅の刃無限列車編』は、日本のみならず世界でも大ヒットしている。
原作の人気でいうなら、鳥山明先生の『ドラゴンボール』だって、井上雄彦先生の『スラムダンク』だって、尾田栄一郎先生の『ワンピース』だって、世界中で爆発的な人気だ。
これらの作品は、どれも日本を代表するアニメといっていいだろう。
しかし、日本のアニメの実力はまだまだこんなもんじゃない。
たとえ有名でなくたって名作は存在する。
あまり周知されていない作品の中にだって、名作は存在する。
そこで、知名度や興行収入はイマイチでも、絶対にハマるアニメをご紹介したいと思う。
アニメ
心が叫びたがってるんだ。
『心が叫びたがってるんだ。』とは
『心が叫びたがってるんだ。』は、A-1 Pictures制作のアニメーション映画。
2015年9月19日に公開された。
第19回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門・審査委員会推薦作品(2015年)。
2017年7月には、本作をベースとした実写版映画が公開されている。
フジテレビ系列『ノイタミナ』で放送された『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のメインスタッフ(超平和バスターズ)が再集結して制作された。
ということは、もちろん感動ファンタジーアニメ『さよならの朝に約束の花をかざろう』の監督を務めた岡田麿里さんも参加している。
"あの花"のスタッフが制作というだけでも期待大なのに、『さよならの朝に約束の花をかざろう』まで絡むとなると、その期待値は計り知れない。
映画『心が叫びたがってるんだ。』本予告
映画『心が叫びたがってるんだ。』TVCM
あらすじ
成瀬順は小学生の頃、憧れていた山の上のお城(ラブホテル)から、父親と見知らぬ女性(浮気相手)が車で出てくるところを目撃する。
順は二人が「お城から出てくる王子様とお姫様」だと思い込み、それを母親に話したことにより、母が事実を理解してしまったことから両親の離婚を招いてしまう。
家を去る父親から「全部お前のせいじゃないか」と言われ、ショックを受けた順は夕景の坂道(階段)でうずくまって泣く。
そこに玉子の妖精が現われ、「お喋りが招く苦難を避けるため」という理由で、順の「お喋り」を「封印」した。
時は流れ、高校2年生になった順は、「話すと腹痛が起きる」という理由で他者とはメモか携帯のメールでしか意思疎通ができない。
そのため、周囲の人々からは「ヘンな子」(そうなる小さくない事情があるのを認めながらも)という扱いを受けている。
そんな順は、担任教師の城嶋一基からクラスメイトの坂上拓実・仁藤菜月・田崎大樹とともに「地域ふれあい交流会」実行委員に指名されてしまう。
4人は普段から特に親しい間柄ではない上、指名されたこと自体に困惑・反発する。
城嶋は会合をボイコットした大樹を除く3人に対し、出し物として過去に例のないミュージカルを提案し、順の心は動くが拓実と菜月には良い反応はなかった。
その後、拓実からミュージカルをやりたいかと問われた順は、携帯で幼少の頃に起きた出来事を打ち明け、「玉子の妖精のかけた"呪い"のために話すと腹痛が起きる」と伝える。
拓実は「歌なら呪いも関係ないかもしれない」と話す。
帰宅した順は、歌うと腹痛が起きないことに気づくのだが…。
この作品を青春ドラマにする必要性を知る
大切なことには早く気づいて欲しい
あの名作アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のスタッフが再集結しているだけに、本作品も青春の多感な心情を描いている。
本作品のテーマは、おそらくだが「言葉は大切。だけど言葉は人を傷つける。」というようなテイストのものだと思う。
過去のトラウマで、言葉で人を傷つけてしまうことを恐れて喋れなくなった主人公。
そのことで自分を殻の中に閉じ込めてしまう。
こういったシチュエーションの作品は、なかなか多い。
だが物語の導入は、想像していたありがちな青春物語とはほど遠いものだった。
青臭い理想や青春時期特有の答えのない葛藤を想像していたが、そんな淡い期待を吹き飛ばすくらいなかなかエグい始まり方をする。
何故、わざわざこんな始まり方を選んだのだろう?
観終わった時、その理由に気づく。
気づくといっても想像の域を出ないのだが…
あくまでも想像だということをご理解の上で読み進めていただけるとありがたい。
前述した通り、本作品は「言葉は大切。だけど言葉は人を傷つける。」というテーマを基に創られている。
人間のコミュニケーションツールとして、言葉は最重要かつ必要不可欠のものだ。
言わなくても伝わるなんて詭弁にすぎない。
だが、時に言葉は人を傷つける。
言葉とは、扱い方が非常に難しい諸刃の剣なのだ。
それに気づかないで大人になってしまった人間が多い。
知らず知らずのうちに人を傷つける言葉を、平気で遣ってしまう大人のなんと多いことか。
それではいけないとわかってはいても、今さら矯正できない現実。
そもそも"気づき"とは非常に大切なことなのだが、何故か大人になると気づかないフリをするようになる。
若い時に、早くから気づくということは、とても大切なことなのだ。
この物語をわざわざエグい始まり方にしたのは、ありがちなただの青春ドラマにしたくなかったからではないだろうか。
実際、導入部のエグさが無ければ、この物語についてここまで深く考えることはなかっただろう。
言葉は刃物だ。
そのことを導入部で実に生々しく描かれているの『心が叫びたがってるんだ。』。
『あの花』のスタッフが再結集したとはいえど、『あの花』とはまったく違った青春の切り口だろう。
是非、多くの人に観て欲しい名作アニメ。
興味を持たれたのなら是非。
映画『心が叫びたがってるんだ。』公開記念特番
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