思考の一元化をイッパツ解消
どうしたら思考の一元化を防げるのだろう。
答えは簡単だ。
ひとつの事象を、相反する両極から眺めてみればいい。
だが現実では、なかなかそう事態に出くわす機会に恵まれない。
では、どうすれば良いのか考えてみたら、単純明快な答えが導き出された。
ひとつの事象を、相反する両極から眺められるドラマを観ればいい。
我ながら名案だ。
これならたとえリアルな体験がなくても、最低でも二元化した思考が持てる。
では題材は何にしようか考えてみると、これが意外と難しい。
条件があるからだ。
- 主観が及ばない事象であること。
- 誰が見ても共通認識の見解が持てること。
- 主義主張に左右されないこと。
- 公明正大であること。
これが必須条件。
これ等すべてをクリアする題材を考えた時、法廷という舞台が思いついた。
他にも戦争モノ等いろいろ考えてはみたものの、どれも主義主張に左右され、客観性が先立ち、人によって認識が変わる。
何度熟慮してみても、やはり法廷という舞台のチョイスは、ベストだと思われる。
だが選んだ作品に関しては、特に意味はない。
敷いていうなら好きだから。
だがこの二作品を見比べていると、いろいろな発見があって実に面白いのだ。
ただしひとつだけ注意が必要だ。
それは初見で判断してはいけないということ。
人間は初めて見たものに感情移入しやすい。
感情移入してしまえば、客観性が失われる。
それでは一元化した思考に逆戻りになってしまう。
必ず内容をひと通り把握した上で、さらに注意深く見比べてほしい。
人気ドラマで見比べる
『HERO』と『99.9 -刑事専門弁護士-』
『HERO』とは
『HERO』は、フジテレビ系で放送されたテレビドラマシリーズ。
主演は木村拓哉氏。
第1期は、2001年1月8日から3月19日にかけて「月9」枠で放送された。
その後、2006年に特別編が。
翌2007年には劇場版がそれぞれ制作され、2014年7月14日から9月22日にかけて続編が連続ドラマとして第1期と同じく「月9」枠にて放送された。
翌2015年には劇場版第2作が制作されている。
あらすじ
自身の正義と価値観で捜査を行う、型破りな検事・久利生公平と彼を支える検察事務官、同僚検事たちの活躍を描く。
『HERO』で描かれた型破りな検事像
法による検事の捜査権限は警察(刑事など)よりも遥かに大きく、刑事訴追(公判請求)する権限は検察官の専権事項(起訴独占主義)であり、国家権力の執行者といえば警察よりむしろ検察である。
また、検事は単独でその権限を行使でき、強大な権力を与えられている。
しかし、現実の検事が事件ひとつひとつを警察のようには捜査しない。
検事は捜査権を持ってはいるが義務付けられてはいない。
検事が捜査する場合は極めて例外的な刑事事件や、政界での汚職、テレビ等で有名な企業、その他の重大事件に限定されており、現実には痴漢や泥棒などでは実地捜査まではせず警察に任せている。
『HERO』で描かれている検事像は、現実には存在しないのである。
『99.9 -刑事専門弁護士-』とは
『99.9-刑事専門弁護士-』は、TBS系列「日曜劇場」枠で放送されたテレビドラマシリーズ。
主演は松本潤氏。
本作は連続ドラマとしては初めての「刑事専門弁護士」をメイン題材にした「リーガル・エンターテインメント」作品である。
1話完結形式であり、連続ドラマとしては初めて「刑事専門弁護士」に特化したドラマとして制作されたという。
タイトルの「99.9」は、日本の刑事事件における裁判有罪率99.9%を意味しており、残された0.1%の無罪を解き明かす弁護士が本作の主人公である。
『SEASON I』では、主に「検事対弁護士」の図式でストーリーが進められている。
さらに続く『SEASON II』では、裁判官を加えたトライアングルの関係からドラマを構成していくこととなった。
『SEASON I』は2016年放送。
『SEASON II』は「東芝日曜劇場」時代の1993年に単発作品から連続作品へ移行して100作目として、2018年に放送された。
あらすじ
深山大翔は、お金にならない刑事事件ばかりを引き受ける貧乏弁護士。
ある日、何度も無罪を勝ち取っている実績を買われ、日本4大法律事務所のひとつである、斑目法律事務所の所長・斑目春彦からヘッドハンティングされたことで、深山たちは隠された0.1%の事実を追い求めていくことになる。
『99.9-刑事専門弁護士-』で描かれた型破りな弁護士像
TBSテレビで数々のテレビドラマを制作してきたプロデューサー・瀬戸口克陽氏による、自身4年ぶりの連続ドラマである。
瀬戸口氏は、近年の同局では弁護士を題材としたテレビドラマが作られていないことに気付き、裁判について調べていく中で、日本で逮捕・起訴された被疑者は99.9%有罪になっていることを知ったという。
そこでこの「99.9」という数字を仮タイトルとし、瀬戸口氏は取材を進めてドラマの構想を練り、隠された0.1%の事実を追い求める型破りな弁護士像が出来上がった。
99.9-刑事専門弁護士- THE MOVIE 日曜劇場99.9刑事専門弁護士 (扶桑社BOOKS文庫)
多角的にみる楽しみ
そのためにみるべきは主人公以外の人物
立場の違う二作品の共通項が見方を変える
『HERO』と『99.9-刑事専門弁護士-』。
ひとつは犯罪を立証する検事の目線。
ひとつは無実を立証する弁護士の目線。
相反する両極の立場だが、実はどちらも共通の目的のために奮闘する作品なのだ。
その目的とは、犯罪者を正しく裁くということ。
冤罪《罪がないのに疑われたり罰を受けたりすること。濡れ衣。》を防ぐこと。
検事と弁護士は、演出上の理由もあるが、なんとなく敵対しているように思われがちだ。
だが実は目的は一致している。
そしてこの共通の目的こそ、相反する二作品の共通の本質なのである。
検事と裁判官は、それぞれが相反する主張をしているようにみえるが、実は同じ目的に向かって議論していたのだ。
だからたとえ立場が入れ替わったとしても、議論が成立してしまうから、世の中というのは実に面白い。
立場を入れ替えても議論できるということは、裏も表もなく表裏一体だということだ。
一方からみれば裏でも、もう一方からみれば表にもなる。
だが本質だけはどちらからみてもひとつだ。
ドラマを観ているだけでも、多角的な見方を鍛えることができる。
余談
これが理解できると、あとのことはすべてドラマを盛り上げるための演出なのだと気づく。
こうなると制作者側の意図までみえてくるから面白い。
悪そうな検事や弁護士が登場したり、検事と裁判官が裏で手を結んだりと、それがどんな立場であろうとドラマでは敵役を作り出す。
それが物語を盛り上げる演出だから。
だが、さらに物語を盛り上げる効果的な方法がある。
より一層スリリングでドラマチックな展開にしたいのなら、登場人物の中でも一番意外性のある人物を敵役に仕立てやればいい。
誰もが予想しなかった人物を敵役にすれば、驚きの展開の出来上がりだ。
だが困ったことに、こんな見方ばかりしているとサプライズが先に読めてしまう。
先日『ミステリと言う勿れ』を観ていた時のこと。
ミステリー会とやらが催され、主人公が招待された。
そこではひとりだけ嘘をついている人間がいて、その嘘を見破ってほしいということだった。
現行の話題ドラマなので観た人も多いかと思うが、これね、キャスティングでわかっちゃうんだよなぁ…
もちろんあまりに無名俳優が起用されていたわけではない。
だがたったひとりだけ、ずば抜けて格上の俳優がいた。
その俳優こそ佐々木蔵之介氏だったのだが、制作陣はキャスティングにまで細心の注意を払うべきだと、心底思った。
特にミステリーというカテゴリーにおいて、良くも悪くも、浮いた存在には違和感が生じる。
事が起こる前に、この人には「何か起きる」と察してしまうのだ。
残念なのが、それが当たったことに歓びを感じないことだ。
予想通りなことに歓ぶよりも、むしろガッカリしてしまう。
頭でっかちになるのも、あまり良いことではないようだ。
おまけのあとがき
大変余談ではあるが、『HERO』で特捜検事を演じていた香川照之氏は、『99.9-刑事専門弁護士-』で敏腕弁護士を演じている。
また、『99.9-刑事専門弁護士-』では弁護士事務所の所長を演じていた岸部一徳氏だが、『HERO』では裁判官を演じている。
いろいろ気づけると、いろいろ面白い。
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