洋画の派手さこそないがどうしようもなく心にしみる…それこそ邦画の最大の魅力
洋画の派手さこそないがどうしようもなく心にしみる…
それが邦画の良さだと思う。
昔は当たり前のように洋画一択だったが、近年の邦画はなかなかバカにできない。
製作費でハリウッドに勝てないならシナリオと演出と演技で勝負といわんばかりに、邦画のクオリティーは年々高くなっている。
たしかにハリウッド映画は華やかで見栄えもするが、どうしても大味になってしまっているように感じる。
演出的にはどうしても地味な邦画ではあるが、シナリオ的に感性が合うのはやはり制作者が同じ日本人だからだろうか。
もちろん作品によるが、邦画には洋画のクライマックス的派手な見せ場がほとんどない。
ドッカンドッカン爆破しないし、ガガガガ派手な銃撃戦もない。
カッコいい戦闘機も、イカツイ戦車も邦画とは無縁に近い。
だが、最近そんな邦画が観ていてとても心地よい。
ガチャガチャとうるさいだけの映画は苦手だ。
時には深く考えさせられ、じわじわ心にしみてくる映画を好むようになってからというもの、邦画が面白くて仕方ない。
日本人ならではの感性で演出し魅せていくのが邦画だ。
ここではまったく派手ではないけれど、どうしようもなく心にしみて今なお強く記憶に残っている邦画をご紹介したいと思う。
菅田将暉主演映画
アルキメデスの大戦
『アルキメデスの大戦』とは
『アルキメデスの大戦』(英語: The Great War of Archimedes)は、三田紀房氏による漫画、およびそれを原作とした実写版映画である。
軍艦、戦闘機など旧日本海軍の兵器開発・製造について、当時の技術戦略と人間模様をテーマにしたフィクション作品となっている。
三田氏によれば『ドラゴン桜』執筆以前に本作の構想を練っていたが、諸事情でこれを断念し代案で提案したのが『ドラゴン桜』だったとのこと。
その後『砂の栄冠』終了後の次作の構想を練っている中で国立霞ヶ丘競技場陸上競技場改修関連のニュースを聞き、「(改修費用の話題が出た時に)戦艦大和の建造時もこんな風だったのだろう」という思いと共に本作の構想を思い出し、そこからゴーサインが出たという。
物語自体はフィクションであるが、作中に登場する軍隊用語や造船用語については監修者のチェックが入っている。
本作のネームはこの監修作業のため、2、3話先行して作成されており、内容もコマ割りとセリフのみならずキャラまでコピー用紙に描くようにしている。
これらの専門用語を作中に出す理由について三田氏は以下のように語っている。
専門用語って、わけがわからなくても入ってるといいモノ。
マンガの格が上がる。
読者もそれを逐一理解しようと思ってはいないが、むしろ専門的なことをわいわい言う雰囲気にテンションが上がる感じだと思う。
役に立たない情報をきちんと入れる手法は、マンガ業界におけるすごく大きなイノベーションだと思うんです。
また、この手法については野田サトル氏の『ゴールデンカムイ』(週刊ヤングジャンプ連載)から、大きく影響を受けたことを明かしている。
単行本3巻の帯には映画監督・アニメーターの庵野秀明氏が、6巻の帯には漫画家のかわぐちかいじ氏が、8巻の帯には漫画家の秋本治氏がそれぞれ推薦コメントを寄せている。
なお、実写版映画は2019年7月に公開された。
実写版映画『アルキメデスの大戦』
戦艦大和の建造をめぐるさまざまな謀略を描いた三田紀房氏による同名マンガを、菅田将暉主演、『ALWAYS 三丁目の夕日』『永遠の0』の山崎貴監督のメガホンで実写映画化。
2019年7月に公開。
圧巻のVFXで大和の雄姿をスクリーンに甦らせるのは、興行収入87.6億円を記録した『永遠の0』をはじめ『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズや『DESTINY 鎌倉ものがたり』など数々のヒット作を手掛けてきた映画監督・山崎貴氏。
主人公の天才数学者・櫂直を演じるのは、演技力が高く評価され、2017年度日本アカデミー賞・毎日映画コンクール・報知映画賞・日刊スポーツ映画大賞で最優秀主演男優賞四冠に輝いた、菅田将暉氏。
櫂を使って大和の建造を阻止しようとする海軍少将・山本五十六には、舘ひろし氏。
さらに、柄本佑、浜辺美波、笑福亭鶴瓶、小林克也、小日向文世、國村隼、橋爪功、田中泯(※敬称略)といった演技派が揃い踏みしている。
あらすじ
1945年(昭和20年)4月7日。
大日本帝国海軍の巨大戦艦大和は、アメリカ軍の魚雷と爆撃による猛攻を受け、沈没していった。
遡る1933年(昭和8年)。
海軍では新造艦をめぐる会議が行われており、永野修身中将と山本五十六少将は、来る航空戦に備え航空母艦の必要性を説く(航空主兵主義)。
しかし、平山忠道技術中将が持ちだした巨大戦艦の模型に、大艦巨砲主義派の嶋田繁太郎少将は感嘆し、大角岑生大臣も魅了される。
料亭で今後の方針を話し合う永野と山本は、平山案の建造予算が異様に低いことに着目し、それを証明しようとするが途方に暮れる。
料亭では、豪遊する学生服姿の若者がおり、山本は彼に芸者を融通するよう説得に行く。
その若者:櫂直の数学能力の高さに気付いた山本は、櫂に証明を行わせようとする。
櫂は造船業で栄える尾崎財閥家に仕える書生で、「西の湯川(湯川秀樹)、東の櫂」と天才の誉れ高い青年だった。
しかし、嶋田と尾崎留吉の眼前で大艦巨砲主義を批判したことに加え、令嬢の鏡子と親密になったことを姦通と曲解され、東京帝国大学理学部数学科を放校になっていた。
日本と海軍に幻滅する櫂は、頑なに断り、プリンストン大学へ留学しようとするが、出発の間際、日本が戦争で荒廃する様子を想像し、「国民に幻想を与える戦艦案を廃し、戦争を阻止する」という山本の説得に応じる。
正しい正義感が問われる深謀遠慮
いったい何が正しい正義なのか?
本作品を観た結果、戦争…特に太平洋戦争開戦に向けて、良識ある日本人の正義について深く考えさせられることになる。
これまでは、これから確実に起こりうる新たな戦争を、無謀でも無茶でも何とか阻止するよう行動することが正義だと思っていた。
事実、本作品の主人公も同様の行動にでている。
しなくていい戦争なら、しない方がいいに決まっている。
だが現実問題を考えた時、その行動は正しかったのだろうか。
日露戦争後の状況を考えた時、日本が次の新しい戦争を思い止まる可能性は限りなく低かっただろう。
ようやく日本は列強各国と肩を並べた。
そんな勘違いがまかり通るほどに、日本は増長していた。
だから大国アメリカとだって、戦えば日本は勝つと錯覚する。
そんな調子だから太平洋戦争は起こるべくして起こった戦争だといえる。
仮に、開戦を遅らせることはできたとしても、開戦自体を阻止することはできなかっただろう。
ならば、目先の決して止まらない戦争を阻止することは正義なのだろうか?
もっと先を見据えなくてはいけないのではないか?
アメリカとの戦争は不可避だ。
軍部も国民も勝利を疑っていない。
だがアメリカと戦っても、勝てるわけがない。
負けは必至だろう。
しかし困ったことに日本人は負け方を知らない。
勝利か全滅という究極の選択を平気で選んでしまう。
ならば日本が残された道は全滅。
このままでは、日本の未来はない。
日本と日本人は、この戦争には決して勝てないことを知るために、徹底的に挫折を味わう必要があった。
希望のカケラすらみせないほどの決定的な敗北を、すべての日本人に見せる必要があったのだ。
そのためには、誰もが日本の象徴だと認める戦艦・大和が、かくも華やかに、かつ惨めなほど呆気なく、見事沈んでみせる必要があったのだった。
どうやらそれほどの深謀遠慮なくして、国家百年の計は成らないらしい。
『アルキメデスの大戦』を観るまでは、考えたこともなかった戦争の終わらせ方。
たとえフィクションだとわかっていても、どうしてもリアリティを感じざるを得ない。
本作品は自分の中の、すべての戦争に対する見方すらも変えてしまったように思う。
興味がある方は是非観てほしい。
目から鱗の深謀遠慮に、思わず考え込んでしまうはずだ。
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