アニメ
クジラの子らは砂上に歌う
『クジラの子らは砂上に歌う』とは
『クジラの子らは砂上に歌う』は梅田阿比先生による漫画作品。
「ミステリーボニータ」(秋田書店)にて、2013年7月号(2013年6月6日発売)から連載中。
略称は「クジ砂」。
「週刊少年チャンピオン」(同社刊)で活躍していた梅田阿比先生による砂漠戦記。
砂の海に浮かぶ巨船 “泥クジラ” の民の運命を描き、超能力 “情念動(サイミア)” を操る短命の “印” とそうではない “無印” の存在、住民は外の世界を全く知らないこと、また砂の海に浮かぶ前史文明の遺物など、多くの秘密を孕んだ世界を舞台に、記録係の少年チャクロの物語が展開していく。
本作は作者の梅田阿比先生が、古い路地にある見るからに怪しいお店で見つけた外国人(?)チャクロ氏(仮名)の日記(を日本語訳したもの)を編纂、漫画化したという設定で綴られている。
「このマンガがすごい!2015」オンナ編において10位にランクイン。
「次にくるマンガ大賞」にノミネートされている。
2016年に舞台化され4月に初演。
2018年1月-2月に再演。
ライブビューイングも行った。
2017年にアニメ化。
なお「ミステリーボニータ」連載の作品がアニメ化されるのは、2007年に放映された『ミヨリの森』以来であり10年振りとなる。
アニメ『クジラの子らは砂上に歌う』とは
梅田阿比先生による同名タイトルの漫画作品をアニメ化。
2017年10月から12月までTOKYO MXほかにて放送された。
あらすじ
砂がすべてを覆い尽くす世界。
砂の海に浮かぶ巨大な漂泊船 “泥クジラ” では、感情を発動源とする超能力 “情念動(サイミア)” を持つ「印(シルシ)」と呼ばれる人々と、能力を持たない「無印(むいん)」と呼ばれる人々が共に暮らしていた。
泥クジラの住人は九割が印であり、彼らは皆一様に30歳前後で寿命を迎える短命であった。(自警団団長のシュアンは24歳。印の中では高年齢だが、サイミアの力はオウニと肩を並べて強い。)
「外界から閉ざされた “泥クジラ” で短い一生を終える」
その運命を受け入れる印の少年・チャクロは、ある日突然砂の海に漂着した廃墟船の中で1人の少女・リコスと出会う。
チャクロはリコスを泥クジラに迎え入れ、泥クジラで共に暮らさないかと持ちかけるが、直後に「外の世界」から一方的な襲撃を受けた。
辛くもこれを退けた後、リコスから襲撃者は彼女の故国「帝国」の軍隊であることが知らされる。
一方泥クジラの新首長となった無印の青年・スオウは、指導者組織である「長老会」から、帝国は泥クジラの住人の祖の故郷であり、泥クジラの人々が流刑囚の末裔であることを聞かされる。
長老会は泥クジラを砂の海に沈めて罪を清算しようとするが、スオウはこれに異を唱え、チャクロ達泥クジラの若い民や帝国を離脱したリコスの協力を得て抗戦の道を選ぶ。
帝国との再戦の末、泥クジラは帝国の手がおよばない新天地を目指し砂の海の果てへと舵を切った。
第3勢力「スィデラシア連合王国」に属するアモンロギア公領の青年貴族・ロハリト一党を仲間として迎え入れた矢先、チャクロらは印の短命の原因が泥クジラが擁する魂形(ヌース)・ファレナにあり、ファレナが命を吸うために印は短命になるという真実を知る。
スオウを始めとする無印の人々はあまりにも残酷なこの事実を秘すると共に、自らをかけて印を守ってゆく「無印の誓い」を立てる。
劇中で使われる用語
情念動(サイミア)
泥クジラの住民の9割を占める “印(シルシ)” が操る念能力。
念じることで身体に “念紋(アウラ)” と呼ばれる痣が浮かび、手で触れずに器物などを動かせる。
狩りや戦闘を行う際は弓もしくはチャクラムに似た投擲武器に情念動(サイミア)を用いることで命中精度を上げられるほか、剣や槍を宙に浮かせて任意の方向に飛ばすことも可能。
砂刑暦
泥クジラで用いられている暦法。
泥クジラ
砂の海を漂流する漂泊船。
船上には中央塔から第5塔までの5つの塔や居住区、工房・医務室などを含めた専門塔、農園、貯水池、竹林などがあり、建造物はすべて泥でできている。
執政は長老会が行い、物語開始時点での人口は513人。
元は帝国の流刑囚を祖としており、流された当初は襲来した帝国の兵士らと同じ外見で褐色の肌だったが、世代を重ねるにつれミルク色に近い白い肌の色になった(「ヌース・ファレナ」の影響か砂上生活のせいかは不明)。
なお、竹林は流刑囚が辿り着いたころ茂り始め、ここで収穫できる竹の子が住人の生活を支えている。
魂形(ヌース)
“泥クジラ” を始めとする、砂の海を航海する船の心臓部となる特殊な生き物。
帝国はヌースの母体「ヌース・アンスロポス」「ヌース・スキロス」等8体のヌースを保有している。
通常は人間の「感情」を喰らう生き物だが、“泥クジラ(ファレナ)” は乗船した者の「命」を喰らう特殊な存在。
“泥クジラ” の「ヌース・ファレナ」を除く「ヌース」の保持者は感情を喰われた人間を支配することが可能で、記憶の改竄すら出来る。
ファレナは「鯨」、ヌース・リコスは「狼」など、登場したヌースの大半が動物の名前を与えられている。
長老会
泥クジラの執政を司る集団。
年齢が61歳に達した民は長老会の一員となる決まりがあり、このことから構成員は全員が無印である。
普段は泥クジラの指導者兼最高責任者としての役割を担うが、印が短命であることに関する秘密を守る組織も兼ねていた。
体内エリア
"泥クジラ" の深部。
ここでは “情念動(サイミア)” が発動しないため、主に監獄として使用されている。
だが牢獄として使用しているのは区画のごく一部であり、ほかの空間は誰も入ることのできない秘密の場所とされている。
実際はヌース・ファレナがこの最深部に格納されていた。
"泥クジラ" 以外のヌースを持つ船(帝国が保有する戦艦など)にも同様の空間があり、内部でサイミアが使用できない点も同じ。
印(シルシ)
チャクロ、リコス、サミ、オウニ、マソオ、キクジンなど、サイミアを使える者のこと。
サイミアを用いる際身体に浮かぶ "念紋(アウラ)" の範囲が広ければ広いほど強い力を持つとされている。
彼らは一様に泥クジラに命を吸われるため短命であり、30歳前後で大半が世を去ってしまう。
無印(むいん)
スオウ、ネリ、タイシャ、クチバ、長老会メンバーなど、サイミアを使えない者のこと。
泥クジラで1割前後の少数派だが、印と異なり長命のため長老会や首長、首長候補など執政を担う立場になる者が多い。
“印” とは共にいられる時間が短く、彼らを犠牲にして生きているという罪の意識があるため、親兄弟であっても一緒にいることが少ない。
帝国
「魂形(ヌース)」による感情統制を敷く巨大国家。
リコス、オルカ、リョダリらが所属し、住民は全員が褐色の肌である。
ヌースを発展の原動力および象徴としてきたため、帝国の最大の敵国が砂の海をヌース無しで航行できる技術を開発したことに危機感を募らせている。
帝国の中では「 “泥クジラ” は住民が感情のままに憎しみと疑心暗鬼で殺し合いを行う、砂の海に閉じ込められた牢獄のような生き地獄の島」とされていたが、同時に敵国に発見されることを恐れており、住民共々泥クジラを沈めるため襲撃をかけた。
「偉大なる魂形(ヌース)・魂人(アンスロポス)」を含む8体のヌースを保有している。
皇帝と最高議会「魂召会(エクレシア)」の執政より、世が乱れ災厄を招くと “情砂(ササ)” を嫌悪している。
また詳細は不明だが、名前を名乗ることが禁じられている。
主題歌
- 「その未来へ」
RIRIKOによるオープニングテーマ。
作詞・作曲はRIRIKO、編曲は原田アツシ。
- 「ハシタイロ」
rionos作詞・作曲・編曲・歌によるエンディングテーマ。
文学的なタイトルに独創的な世界観…
謎ばかりの展開がやがてクセになる名作アニメ
文学的なタイトル
本作に興味を持つキッカケとなったのがタイトルに惹かれてのことだった。
『クジラの子らは砂上に歌う』。
なんて知的好奇心をそそられる文学的なタイトルだろう。
いったいどんなアニメなのか?
そんな好奇心に負けて観始めることになるのだった。
独創的な世界観
砂がすべてを覆い尽くす世界。
砂の海に浮かぶ巨大な漂泊船 “泥クジラ” 。
感情を発動源とする超能力 “情念動(サイミア)” を持つ「印(シルシ)」と呼ばれる人々と、能力を持たない「無印(むいん)」と呼ばれる人々。
あまりに独創的な世界観が故に、何から何まで謎ばかりである。
最近では本作のような作風のアニメと出会う機会が少なかっただけに、かなり新鮮な気持ちで観ることができた。
可愛げな画風に反してなかなか暴力的な描写の連続
相当綺麗な作画に、イラストタッチで温かい画風。
このことから絵本のような子供っぽい作品を想像していた。
しかし蓋を開けてみたらとんでもない。
初回と終盤を除いて、毎回のように呆気なく人が死んでいく。
またご覧のようなキャラクターからは想像もつかない、狂ったキャラが登場するなど本作の内容はなかなかヘビーだ。
だが温かい画風は "泥クジラ" の住人の優しさを見事に表現している。
どんなに暴力的なシーンが続いていても、"泥クジラ" の住人は皆純粋で温かい。
そしてこのギャップも本作の不思議な世界観を構成する、ひとつの要因となっているから面白い。
何とも不思議な雰囲気を漂わせているアニメである。
世界は美しく残酷だ
某人気マンガ及びアニメの有名なセリフだが、本作にこそ相応しいセリフのように感じた。
砂がすべてを覆い尽くす世界が舞台だが、作画の雰囲気と相まって非常に美しい情景描写となっている。
また色彩感覚も絶妙で、ただでさえ美しい作画にさらに輪をかけている。
そんな美しい世界観とは裏腹に、主人公たちには残酷な運命が待ち受けている。
まさに、本作の世界は美しく残酷なのである。
数多の謎を残しSeason.1が終了
本作は現在Season.1が終わった状態だ。
Season.2の情報はまだない。
数多の謎を残したままだが、Season.1ではなかなか上手な終わらせ方をしているのが気になるところ。
たとえSeason.2がなくても、このままで十分成立してしまうからだ。
ほんのプロローグが終わっただけで、このまま終わらせてしまうには非常に惜しい作品だ。
願わくばSeason.2へと繋がってくれることを切に願う。
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