はじめに
最近はもっぱら邦画ばかり観ているが、だからといって洋画をまったく観ないというわけではない。
だが、洋画然とした派手な作品はあまり得意ではない。
だからアクション映画はあまり観ない。
では、いったいどんな洋画なら観るのか?
本稿では好んで洋画を観ようとしない人間でも、何度でも観たいと思った洋画をご紹介したいと思う。
アメリカ映画(2001年)
オーシャンズ11
『オーシャンズ11』とは
『オーシャンズ11』(原題: Ocean's Eleven)は、2001年のアメリカ映画。
主人公ダニー・オーシャン率いる11人の犯罪スペシャリスト集団が、ラスベガス三大カジノの金庫室にある1億6000万ドル以上の現金を狙うケイパー映画。
フランク・シナトラが主人公を務めた1960年の映画『オーシャンと十一人の仲間』のリメイク作品。
監督はスティーヴン・ソダーバーグ。
主演はジョージ・クルーニー、ブラッド・ピットほかハリウッドを代表する豪華俳優が多数出演した。
本作のヒットを受けて続編『オーシャンズ12』(2005年)、『オーシャンズ13』(2007年)が製作され、2018年にはスピンオフ作品『オーシャンズ8』が製作されている。
あらすじ
凄腕の泥棒で詐欺師でもあるダニー・オーシャンは、4年の服役を終えてニュージャージーの刑務所から仮出所した。
服役中に練っていた犯罪計画を温めていたオーシャンは、すぐさま仮釈放の規則(州間移動の禁止)を破ってロサンゼルスにいる相棒のラスティ・ライアンと再会し、服役中に企てていた新しい盗みの計画を打ち明ける。
それはラスベガスの3大カジノ「ベラージオ」「ミラージュ」「MGMグランド」の金が集まる地下巨大金庫からの現金強奪計画だった。
ラスベガスに向かった2人は旧友で裕福なカジノホテル経営者であるルーベン・ティシュコフに計画を打ち明け、カジノの高度なセキュリティを熟知する彼は渋るものの、三大カジノの運営者でライバルであるテリー・ベネディクトに一泡吹かせることができるとして計画に出資することに賛同する。
ネバダ州賭博委員会の規制により、カジノには客の掛け金を賄う現金を必ず保持しなければならない義務があり、ボクシングの世界タイトル・マッチ当日には少なくとも1億6000万ドル以上の巨額の現金が集まることが予想され、かくして3人はこの日を決行日と定める。
難題な案件のためにダニーとラスティは昔のツテを頼るなどして、全米中から8人の犯罪スペシャリストが集結する。
イカサマ・ディーラーのフランク・キャットン、爆発物の専門家であるバシャー・ター、機械制御に長けるモロイ兄弟、電気通信の優秀なエンジニアであるリヴィングストン・デル、凄腕の曲芸師イエン、往年の名詐欺師ソール・ブルーム、そして伝説的な泥棒「ボビー・コールドウェル」の息子で、まだ駆け出しでチンケな犯罪しかしたことはないが「黄金の指を持つスリ」の異名を取る青年ライナス・コールドウェル。
チームはベラージオの偵察を行い、建物の構造やセキュリティ、スタッフの状況などを把握していく一方で、必要な道具を揃えたり、身分を偽ったフランクやブルームをホテルに潜入させるなど準備を進めていく。
その中で、ラスティは、ダニーの元妻であるテスが、現在はベネディクトの彼女であることを知る。
今回の計画がダニーの個人的な復讐によること、そもそもテスを失ったショックで仕事をミスして刑務所に収監されたことから、ラスティら仲間たちはダニーの判断能力を疑って非難し、計画の遂行を危ぶむ。
しかし、ダニーは私情によって計画に支障が出ることはないと周りを説得する。
計画当日。
ベネディクトはホテル内にダニーがいることを知り、彼が良からぬことを企んでいると察して部下のブルーザーに命じてストレージルームに監禁させる。
また、武器商人の裕福な客としてホテルを訪れ、警備室に入り込んでいたブルームは見るからに体調不良で、そのまま倒れて昏倒してしまう。
しかし、実はこれはすべて計画通りであり、ダニーとブルーザーは旧知の仲で、ダニーは換気ダクトからホテルの内部へと入り込んでいた。
ブルームの役割は、警備室の警備員たちの目を一時的にカメラから逸らし、リヴィングストンが密かにシステムを乗っ取るためのものであった。
荷物に紛れて金庫室に入ったイエンは内部からセキュリティを破壊して、ダニーと合流する。
バシャーがベガス一帯に大規模な停電を引き起こしてカジノやボクシング会場を混乱させた中で、ラスティはベネディクトに電話をかけ、金庫室を乗っ取ったことを伝える。
警備室の監視カメラから状況を確認したベネディクトに対し、ラスティは半分の約1億ドルをホテル前に停めたバンに積み込み、これを見逃すことと、金庫室に潜入した仲間の安全を要求し、約束を守らない場合は金庫室に仕掛けた爆弾によって残る半分の金も失うことになると脅迫する。
状況が掴めないベネディクトは要求を飲むフリをして、現金の入ったカバンを積み込んでホテルを後にするバンを部下たちに追跡させ、また、金庫室には密かに連絡したSWATチームに制圧させようとする。
しかし、SWATの制圧作戦は激しい銃撃戦になり、そのために犯人たちは残った現金ごと金庫室を爆破して結局、多額の現金は失われることとなってしまった。
唯一の手がかりとなったバンの方は倉庫街で急停止し、部下たちが確認すると運転席には誰もおらず、遠隔操作されていた。
さらに荷台が爆発し、積んであるはずの現金の代わりに何故かピンクチラシが舞い散る。
SWATが撤退した後、金庫室に入って状況を確認するベネディクトは、確かに多額の現金が失われたことを確認しつつ、数日前に部屋の床に施したはずのベラージオのロゴが、監視カメラからの映像には無かったことに気づく。
実は、監視カメラから見れた金庫室の映像はすべて前もって収録された映像であり、SWATの銃撃戦も爆発もすべて偽りであった。
SWATの正体こそラスティら、ダニーの仲間たちの変装であり、そのまま撤退に見せかけて金庫内の現金をすべて持ち出していた。
ベネディクトは急いでダニーを監禁しているはずの部屋へ急行するが、そこにはそのままダニーがいた。
ダニーの仕業だと確信するベネディクトは、金を返すよう要求するが、ダニーは何も知らないと白々しくとぼける。
しかし、テスを諦めるなら自分のツテで金を取り返してやっても良いと提案し、ベネディクトはその要求を飲む。
ところが、このやり取りは監視カメラを通して、テスが観るように仕組まれており、信じていたベネディクトの裏切りを彼女は知る。
ダニーが、金の行方を追う方法として明らかな嘘を付いたためベネディクトは、仮釈放規則に違反しているダニーをそのまま警察に引き渡す。
そこにテスが現れ、彼女はベネディクトを見捨て、ダニーに元に戻ることを誓う。
ダニーの仲間たちはベラージオの噴水の前で勝利を喜びあった後、1人ずつその場を後にする。
後日、ダニーが改めて刑務所から出所したところ、駐車場にはラスティとテスが待っていた。
再会を喜び合うダニーとテスは、ラスティの運転でその場を去る。
その車の後を、ベネディクトの部下が尾行していくシーンで物語は終わる。
オーシャンとその仲間
ダニエル(ダニー)・オーシャン(ジョージ・クルーニー)
主人公。
作戦のリーダー兼立案者。
その腕前から裏世界では有名な泥棒、詐欺師として名を馳せており、さまざまな人脈を持つ。
「インカの婚礼用仮面」の強奪計画に失敗してニュージャージーの刑務所に入っていた。
その間に妻テスに見切りをつけられ、離婚させられたが、かなり未練がある様子。
ラスティ・ライアン(ブラッド・ピット)
オーシャンの右腕で、チームのNO.2。
オーシャン同様に交友関係が広く、経験豊富。
仲間のスカウトをしていく。
オーシャンが刑務所に入ってからはハリウッドの若手俳優にイカサマポーカーを教えていた。
食事時間を省くために移動や仕事中に何かを食べている。
愛車は1963年型フォード・ファルコン・フューチュラコンバーチブル。
終盤にはオーシャンに「大金を儲けてもこんなオンボロに乗ってるのか」とからかわれる。
フランク・キャットン(バーニー・マック)
前科持ちのカジノのディーラー。
賭博委員会から身を隠すため、ラモーン・エスカランテという偽名でアトランティックシティーのトランプ・プラザ・ホテル・アンド・カジノで働いており、ベネディクトのカジノに潜入する。
頭の回転が速くライナスの仕事に一役買う。
ルーベン・ティシュコフ(エリオット・グールド)
ベガスのカジノホテル経営者で資産家。
ラスベガスの裏に顔が利く一人で、オーシャンの駆け出しの頃の恩師でもある。
同業者のベネディクトに自分のカジノホテルの一つを潰されてしまったため、ベネディクトを快く思っていない。
作戦のスポンサーとして資金面をサポートする。
ちなみにエリオット・グールドの出演は監督のソダーバークが『ロング・グッドバイ』等のグールドの70年代の出演作品のファンであり、ソダーバーグたっての希望でグールドにルーベン役をオファーした。
バシャー・ター(ドン・チードル)
イギリス人の爆発物専門家。
通称「人間火薬庫」。
爆破で金庫を狙う強盗団を率いていたが、部下に恵まれず、捕まりかけた所をラスティに助けられる。
当初の計画では停電を起こす予定が事故により停電させられなくなったことから、過去の仕事で知った電磁波発生器「ピンチ」を使って停電を起こすことを提案する。
日本語版では表現されていないが、イギリス出身者としてコックニー訛りが酷い。
バージル・モロイ(ケイシー・アフレック)
双子のモロイ兄弟の兄。
弟との仲は悪いが何故かいつも一緒にいて、仕事は基本的に弟と一緒。
ラジコンなどの操作に長ける。
弟と共に潜入や変装も行う。
ターク・モロイ(スコット・カーン)
双子のモロイ兄弟の弟。
兄との仲は悪いが何故かいつも一緒にいて、仕事は基本的に兄と一緒。
主にドライバーを務めるが、兄と共に潜入や変装も行う。
イエン(シャオボー・チン)
バーナム・サーカスの中国雑技団曲芸師で非常に小柄な中国人だが、俊敏な運動神経と柔軟な体を持つ。
英語は理解できるものの、基本的に中国語しか話さない。
サーカス公演時のパフォーマンスを見たオーシャンから "あいつで決まりだ" と高い評価を受けている。
リヴィングストン・デル(エディ・ジェイミソン)
電気・通信・メカニック専門家。
作戦に参加する前はFBI組織犯罪対策部の嘱託として電子技師をしていた。
いつもどことなく挙動不審でオドオドしており、焦ると大量に汗をかく癖がある。
ソール・ブルーム(カール・ライナー)
往年の天才詐欺師。
現在は高齢のためフロリダのセントピーターズバーグで隠居生活を送る。
のんきでおっとりとした性格だが、作戦で東欧系の武器商人ライマン・ゼルガに化ける際は相手を恐縮させる男へとがらりと豹変する。
当初は乗り気ではなかったが、計画のスケールの大きさに昔の血が騒ぎ、参加を決意した。
ライナス・コールドウェル(マット・デイモン)
シカゴで「黄金の指を持つスリ」と呼ばれている青年。
伝説的な泥棒「ボビー・コールドウェル」の息子。
電車でサラリーマンの財布を狙うというつまらない生活を送っていたが、この仕事で父を超えられるというオーシャンの言葉で参加を決める。
メンバーの中では若く経験が少ないことから計画では地味な役回りばかり任せられることに苛立ち、独断で行動して計画を何度か危機に陥れる。
アクションで魅せない傑作娯楽映画
ジョージ・クルーニー主演。
後にシリーズ化された大人気クライムサスペンスの映画『オーシャンズ11』。
脇を固める俳優はブラッド・ピットやマット・デイモン等、あまりに豪華な人気俳優たち。
本作の素晴らしいところは、2000年代前半のアクション中心であった映画の中で、アクションではなく演出やストーリーで魅せる映画であることだ(ジュリア・ロバーツ演じるテスのストーリーだけ、もう少し何とかならなかったのかという気持ちはあるが…)。
ハリウッド映画はアクションに傾倒しすぎてどうしても飽きがきてしまうが、本作に限ってはアクションらしいアクションを一切排除し、人間力のみで描き切っている点で非常に魅力的だ。
人間力で描いているから、一人ひとりのキャラ立ちがハッキリしている。
なかでもブラッド・ピットとアンディ・ガルシアの魅せ方は最高だ。
色気ムンムンのブラッド・ピットが最高
まずブラッド・ピットについてだが、彼のかもし出す色気を十二分に引き出してくれている作品は、実は意外と数少ない。
本作で演じるラスティは、その観点で彼一番のハマり役だ。
まるでジゴロのような軽薄さとワイルドさ。
そこに端正な顔立ちからにじみ出るインテリジェンスが見事に融合している。
ある意味、ラスティを観たいがために本作を観ているところが無いとは言い切れないくらい魅力的。
ラスティはなんやかやで常に何か食べているイメージだが、マックのキムタク持ちが話題になる遥か以前に、メチャクチャ格好良い食べ方を実践していることを忘れてはならない。
もしかしたらキムタク持ちも、ルーツはブラピかも?
安定の貫禄を魅せるアンディ・ガルシア
見所のもうひとりは安定の貫禄を魅せてくれるアンディ・ガルシア。
往年の名作『アンタッチャブル』ではクールな正義漢を演じていたが、いつの間にやら悪役の定番キャラに落ち着いてしまった。
だが彼の演じる悪役には不思議な魅力がある。
本作のテリー・ベネディクトは、アンディ・ガルシアが演じる悪役の中でも人間的な魅力に溢れている。
普段はハイパーリッチの超紳士。
だがその表情からは、何を考えているのか伝わらない。
腹の底が全然みえない。
さらに時折みせる冷徹な一面や裏の顔が悪役たる所以だが、万全を期したつもりがダニーたちにしてやられる、少し抜けたところもみせてくれている。
あの顔での乾いた表情は本気で怖いが、どこか「可愛げがある」のだ。
おまけによくよく考えてみると、ベネディクト自身は表立った悪いことを何ひとつしていない。
もちろん裏では悪どいこともしているだろうが、少なくとも劇中で「こいつ悪いなぁ」と感じる悪事には手を染めていない。
つまりアンディ・ガルシアの演技だけで「ベネディクトは悪いやつ」と印象付いてしまったわけだ。
これ、実はとっても凄いこと。
さらにさらに、アンディ・ガルシアも色気が半端ない役者さん。
大好きだ。
ちなみに余談だが、人気映画『コンフィデンスマンJP』で江口洋介氏が演じるマフィアのボス・赤星栄介が、本作のテリー・ベネディクトと重なる。
赤星栄介も「可愛げがある」悪役だが、ベネディクトがモデルなのだろうか。
超豪華キャスティングの裏にあった粋なエピソード
本作にはハリウッドを代表する多くの俳優たちが出演しているが、スタッフや主演のジョージ・クルーニーの説得などで出演料はその人物の一般的な額の半額などでOKしたため、出演料の総額が低く抑えられている。
特に有名なエピソードとして当時アカデミー賞受賞直後で人気絶頂のジュリア・ロバーツに対し、「君が1本につき20(millionドル=2000万ドル)取るって聞いてね」とのメモが同封された脚本を送った。
脚本には20ドル札が挟まれていたという。
なんとも粋なブラックジョークではないか。
実際、ジュリア・ロバーツは本作に出演している。
だからといってジュリア・ロバーツのギャラが本当に20ドルだったとは思わないが、こういうシャレが通じるハリウッドという世界にはやはり夢がある。
裏にどんな事情があろうとも、やはり『ウィ・アー・ザ・ワールド』的な作品はワクワクする。
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