日曜劇場
グランメゾン東京
木村拓哉主演作品でとりあえずひと叩きされるもレストランドラマにやはりハズレなし
日曜劇場『グランメゾン東京』とは
日曜劇場『グランメゾン東京』は、 2019年10月20日にスタートしたドラマ。
木村拓哉氏が令和最初に挑むのは、型破りなフランス料理シェフ。
慢心からすべてを失ったカリスマシェフは世界最高の三つ星レストランを目指し、再び立ち上がる。
木村氏は2017年1月期の日曜劇場 『A LIFE〜愛しき人〜』 以来2年ぶりのTBSドラマ出演となる。
平成に放送された連続ドラマの全話世帯平均視聴率ベスト10では、上位5位までがすべて木村の主演ドラマ (時代劇を除くゴールデン・プライムタイムの連続ドラマ・関東地区・ビデオリサーチのデータを基に弊社で集計)。
これまで多くの職業の人物を演じ、社会現象を巻き起こしてきたことからも平成を代表する存在であるといっても過言ではない。
今回木村氏が演じるのは、フランス料理のシェフ。
料理に人生をかけ、その才能でパリに自分の店を持ち、二つ星を獲得する。
カリスマシェフともてはやされ自信が慢心に変わる一方で、どうしても三つ星に手が届かず、プレッシャーに苦しみ、壁にぶつかる。
そんな時、店である重大事件が起こり、店も仲間も全て失ってしまう…。
どん底まで落ちた彼だったが、ある女性シェフと出会い、もう一度シェフとして生き直そうと決意。
世界最高の三つ星レストランを作り上げることを目標とする。
そのために最高のスタッフを集めようとするが、かつての仲間に拒絶されたり、新しい才能の持ち主を見つけてもうまくいかなかったり…空回りし衝突しながらも、再起することを諦めない。
他人に無理難題を突きつけ振り回しつつ自分もそれ以上を目指す、そんな彼の姿を見て、周囲の人々の態度も少しずつ変わっていく。
果たして彼は三つ星レストランの称号を得ることが出来るのか?
木村氏はプロ級の料理の腕前を持つことでも知られる。
そのこだわりにも注目だ。
そして、木村氏が演じるシェフとともに三つ星を目指す女性シェフを演じるのは鈴木京香さん。
木村氏と鈴木さんは2007年放送の日曜劇場『華麗なる一族』以来12年ぶりのタッグとなる。
鈴木さんが演じるフランス料理のシェフは、何度も星に挑戦するも失敗。料理人としての限界を感じ失意の底にいたが、木村氏演じるシェフと出会い 「星を取らせてやる」 と言われ、一緒にレストランを立ち上げることに。
彼からの無理難題に振り回されながらも、料理人としての彼を尊敬し、また、料理人としての自分自身を見つめなおしていく。
人生につまずいた男がもう一度夢に向かう、"大人の青春" をかけたヒューマンストーリー。
なお、本作はフランス・パリの有名三つ星レストラン「ランブロワジー」でクランクインした。
三つ星を獲得しているのは、パリでは9店のみ。
その希少な店舗で日本のテレビドラマを撮影するのは前例がなく、ミシュランガイドの協力で実現したという。
あらすじ
舞台はパリ。
フランス一の三つ星レストラン「ランブロワジー」で面接を受けていた早見倫子(鈴木京香)。
彼女は、料理人としての人生をかけてフランスにきていた。
そんな中、ある一人の男と出会う。
その男は、倫子が "実技テスト" で前菜を作ろうとしているところに、突然駆け込んできて、一方的にメニューのアイディアを出して、代わりに作ろうとする。
聞けば、昔ランブロワジーで働いていたから好みが分かるというのだ。
その矢先に、男は、借金取りに追いかけられて、去っていく。
その男こそが、パリで二つ星を獲得し、三つ星に最も近いとされたフレンチ料理人。
しかし、3年前のある事件がきっかけで表舞台から消え去った日本人シェフ・尾花夏樹(木村拓哉)だった。
その後、面接に落ちた倫子は、落ち込んでいる中、再び尾花と出会う。
そこで、尾花が作った料理のあまりの美味しさと、自分の実力のなさに、倫子は思わず涙をこぼした。
その時、尾花は倫子に突然、一緒に店をつくらないかと提案する。
登場人物
- 尾花夏樹 ー 演:木村拓哉
- 早見倫子 ー 演:鈴木京香
- 平古祥平 ー 演:玉森裕太
- 芹田公一 ー 演:寛 一 郎
- 蛯名美優 ー 演:朝倉あき
- 松井萌絵 ー 演:吉谷彩子
- 峰岸剛志 ー 演:石丸幹二
- 柿谷 光 ー 演:大貫勇輔
- 丹後 学 ー 演:尾上菊之助
- リンダ・真知子・リシャール ー 演:冨永 愛
- 久住栞奈 ー 演:中村アン
- 江藤不三男 ー 演:手塚とおる
- 相沢瓶人 ー 演:及川光博
- 京野陸太郎 ー 演:沢村一樹
木村拓哉主演作品でとりあえずひと叩きされるもレストランドラマにやはりハズレなし
木村拓哉主演作品はとりあえずひと叩き
木村拓哉主演作品のとりあえずひと叩きは、もはや慣習といえるのかもしれない。
本作もやはり例外ではなかった。
何を演じてもキムタクはキムタク。
どんな作品のどんな役どころであろうと、木村拓哉氏の演技に目新しさはない。
木村拓哉主演作品には、そういう揶揄が常につきまとう。
やはり木村拓哉主演作品
木村拓哉氏の演技について、 本作に限ってはその評価が少し違っていた。
元一流シェフも今は落ちぶれた男の役。
二枚目ばかりを演じてきた木村拓哉氏には珍しく、情けない男役は目新しさを期待させるものであった。
しかしその評価も開始当初のみ。
回が進むごとに、キムタクはやはりキムタクだった。
セリフが淀むシーンが時折りみられるが、それがアドリブであろうことは明明白白。
それを、さも巧い演技のように魅せようとした演出家やスタッフの気遣いと気苦労が窺えて、むしろ痛々しささえ感じられる。
アドリブがアドリブにみえる時点で、当然興醒めもする。
仮にアドリブでないとしても、セリフに詰まる時点で如何なものか。
このように開始当初期待された木村拓哉主演作品の目新しさは、結局本作でも見つけることができなかった。
最終回の演技だけは素晴らしい
だが最終回の演技だけは素晴らしく、特筆に値する。
自尊心と自惚れが強い料理人が、他人の料理に(初めて?)衝撃を受けたシーンでのあの複雑な表情。
安易な歓びを爆発させなかった、悲願の三つ星に手が届いた歓喜の瞬間。
これまでの料理人生を振り返っていたかのようなあの演技。
これらは木村拓哉主演を掲げる本作の見所と断じても差し支えない。
なぜこれが終始できなかったのか…。
何を演じてもキムタクはキムタクという呪縛は、この演技をみればおそらく払拭されるだろう。
しかし残念ながら、本作を締めくくるラストシーンでは元のキムタク演技に戻ってしまっていた。
この辺りが、やはり本作がとりあえずひと叩きされる木村拓哉主演作品とひとくくりにされてしまう要因なのだろう。
持論
レストランドラマにやはりハズレなし
"レストランドラマにやはりハズレなし" というのが著者の持論である。
ちなみにレストランドラマ=グルメドラマではない。
レストランドラマとは、レストラや食堂が舞台になっている作品のことを指す。
その上でプラスαの要素にグルメがあるのが望ましい。
ではなぜレストランドラマにハズレがないかというと、観ていて嫌な思いをまずしないからである。
レストランや食堂が舞台の作品で、鬱展開や胸糞展開はほぼ間違いなくあり得ない。
たとえ人間模様の光と影はあったとしても、そこに人の醜さは伴わない。
レストランドラマには、どこかハートフルな作品が多いのである。
例えば往年の名作ドラマ『王様のレストラン』。
『王様のレストラン』は、傾きかけたフレンチレストランの再建のために呼ばれた伝説のギャルソンと、彼に触発された若者たちが、倒れかけたレストランの再建を目指すザ・レストランドラマで、シニカルで痛快な人情味いっぱいの人間ドラマが魅力だった。
人情味いっぱいの人間ドラマといえば『深夜食堂』は外すことができない傑作中の傑作だ。
『Chef〜三ツ星の給食〜』も『dinner』も『 問題のあるレストラン』も、皆すべからく面白かった。
レストランでなく舞台がペンションではあるものの、映画『しあわせパン』も広い意味ではレストラン+グルメに含めていいだろう。
ここで挙げたどの作品も心穏やかに観ることができ、且つそのすべてがそれなりに面白かった。
そして本作『グランメゾン東京』も、やはりレストランドラマなのである。
木村拓哉主演作品ということで何かと叩かれがちではあるが、本作を観るとレストランドラマにはやはりハズレなしと確信することができる。
レストランドラマはやはり面白い。
おまけ
吉谷彩子の好演
日曜劇場には多くの常連俳優がいて、そのひとりが吉谷彩子さんである。
名前を聞いてピンとこなくても、ビズリーチのCMの人といえばおわかりになる人も多いだろう。
吉谷彩子さんの存在を日曜劇場で初めて認識したのは『陸王』(2017年)だったと記憶していて、その時からもちろん【推し】のひとりである。
過去の作品では引っ込み思案でおとなしい役柄を演じることが多かった吉谷彩子さんだが、本作では別人のようにガラリ。
吉谷彩子さんのこれまでのキャリアとは真逆の、自信過剰で生意気な役柄を好演している。
その好演ぶりは、これまでの印象のせいか最初誰が演じているのかわからないほどだった。
誰が演じているのかわからないほど変われる脇役の存在が、本作の評価にどれほどの追い風となったことだろうか。
吉谷彩子さんの好演も、本作を語る上では忘れてはならない重要な要素である。
好演といえば、リンダ・真知子・リシャール役を演じた冨永愛さんのハマりっぷりも見所のひとつ。
そう考えると本作の本質は、木村拓哉主演作品と銘打つも脇役それぞれが主役だった作品なのかもしれない。
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