日本映画
ショウタイムセブン
※本稿にはネタバレを含みます。ご注意下さい。
サスペンスとしてのシナリオは凡庸…だが錦戸亮の怪演は一見の価値あり
日本映画『ショウタイムセブン』とは
逃れられない、命懸けの【生放送(ショウタイム)】
スタジオから出れば即爆破。
夜7時、1本の電話から始まる犯人との独占生中継!
主演には、数々の映画賞を受賞し日本を代表する俳優・阿部寛氏。
そして、竜星涼氏、生見愛瑠さん、井川遥さん、そして吉田鋼太郎氏と豪華実力派キャストが360度逃げ場なしの極限状態へ追い込まれる!
韓国で大ヒットしたソリッドスリラー『テロ, ライブ』を原作にオリジナル展開も盛り込まれた本作。
『岸辺露伴は動かない』シリーズをサスペンスフルで高クオリティに作り上げた渡辺一貴氏が監督・脚本を務める!
犯人の正体と本当の目的とは?
生放送と事件が同時進行する、リアルタイム型サスペンス・エンタテインメント!
あらすじ
午後7時。
ラジオ番組に1本の電話。
直後に発電所で爆破事件が起こる。
電話をかけてきた謎の男から交渉人として指名されたのは、ラジオ局に左遷された国民的ニュース番組「ショウタイム7」の元人気キャスター・折本眞之輔。
突如訪れた危機を番組への復帰チャンスと捉え、生放送中のスタジオに乗り込み、自らがキャスターとして犯人との生中継を強行する。
しかし、そのスタジオにも、既にどこかに爆弾がセットされていたのだった。
一歩でも出たら即爆破という中、二転三転しエスカレートする犯人の要求、そして周到に仕掛けられた思いもよらない「罠」の数々。
その極限状態がリアルタイムに全国民に拡散されていく––!
なぜ彼が指名されたのか?
犯人の正体と本当の目的とは?
すべてが明らかになるとき、折本が選ぶ予測不能の結末。
あなたは《ラスト6分》に驚愕する。
登場人物
折本眞之輔
演 - 阿部寛
交渉役に指名された元キャスター。
安積征哉
演 - 竜星涼
正義感あふれる若きキャスター。
結城千晴
演 - 生見愛瑠
巻き込まれる新人アナウンサー。
伊東さくら
演 - 井川遥
真相に迫る記者。
東海林剛史
演 - 吉田鋼太郎
視聴率が全てのプロデューサー。
繁藤寛二
演 - 錦戸亮
爆破テロ犯。
その《悪》を疑え。
サスペンスとしてのシナリオは凡庸
リアルタイム型サスペンスを謳う本作。
その割には緊迫感が足りない。
観ていてヒヤヒヤ、ドキドキしないのだ。
蓋を開けてみれば、なるほどその理由はこれだったのかと一応の納得はできる。
納得はできるが、裏を返せば直感的に結末が予想できていたことにもなる。
こういった作品は観ていて疲れないのがありがたい。
しかしハラハラしたくて観るサスペンスとしてはどうなのか。
せっかくのリアルタイム型なのだから、もっと大胆に、もっと緊迫感が欲しかったところ。
意外性のある結末ではあるので、シナリオ的には綺麗に上手くまとまっている。
だが作品としては小ぶりな印象。
キャスターを主人公に据えたのなら、視聴者が一番欲しいのはエグいくらいの問題提起。
だから政治の闇に切り込んでいくシーンは個人的には大歓迎。
しかし掘り下げもそこそこで、最終的に私怨の印象が強く残ってしまったのは残念なところ。
結果的に犯人の犯行動機が弱く感じて、サスペンスとして縮こまってしまった。
取り上げたテーマは良し。
構成も演出も良かっただけに、シナリオが凡庸だったことが口惜しく感じる作品である。
錦戸亮の怪演は見どころのひとつ
本作主演の阿部寛氏。
奇しくも日曜劇場『キャスター』でも、同じキャスター役を演じた。
両作品を観た人ならわかるだろうが、完全にキャラ被り。
正直、折本眞之輔と進藤壮一の違いがわからなかった。
それが演出のせいか演技のせいなのかはわからないが、どんな名作も既視感があれば、それだけで魅力は半減してしまう。
とはいえ、阿部寛氏が嫌いなわけではない。
むしろ大好きな俳優である。
しかしキャスター役としては、あまりに滑舌が悪すぎる気がしてならない。
タレントキャスターならいざ知らず、それが本格ジャーナリストのキャスター役であるなら、リアリティに欠けると言わざるを得ない。
それでも阿部寛氏が醸し出す雰囲気で、どうにかこうにか本格大物キャスターのようにみえるあたり、さすがというべきだろう。
しかしそれが既視感に繋がってしまうというのは、皮肉というもの。
それでも見るべきところはある。
なかでも個人的に目を引いたのは、錦戸亮氏の怪演だった。
錦戸亮氏演じる繁藤寛二は、ほとんどが声の出演の役どころである。
ようやく姿を表すのは、ラスト30分を切ったあたり。
おまけにあまり動きがない、静かな犯人役。
だが表情が非常に良かった。
一見理知的かつ冷静な人物を装っているが、時折表情から滲み出る狂気がたまらなく素晴らしい。
シナリオが弱かったせいか、阿部寛氏ばかりが目立ち犯人役の印象はどんどん薄れていく本作。
そんな中で錦戸亮氏の表情の演技だけは、強く印象に残った。
演技の善し悪しではなく、錦戸亮氏の出演時間が短かったことが良い方向へ作用した可能性もある。
だが、短い時間で存在感を示した錦戸亮氏の演技は一見の価値がある。
とにかく本作は主人公ばかりが目立ちまくる作品で、錦戸亮氏がどんなに良い演技をみせても、結果的に最後は全部阿部寛氏に持っていかれてしまう。
それでも錦戸亮氏の演技は、本作で唯一主人公を喰っていたと思う。
本作は99分と、比較的に手が出しやすい作品である。
綺麗にまとまってはいるので、興味がある人はぜひ。
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