日本映画
もしも徳川家康が総理大臣になったら
※本稿はネタバレを含みます。ご注意下さい。
『翔んで埼玉』制作陣が再結集したならコメディ路線になるのかと思いきや意外に骨太な歴史作品だった
日本映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』とは
こんな内閣、待っていた ――
歴史上の偉人オールスターズが現代に大復活!
究極の「もしも」に日本中がお祭り騒ぎ!!
ビジネス小説としては異例の大ヒットとなった『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(著:眞邊明人・発行:サンマーク出版)がまさかの映画化!
物語の舞台は2020年、コロナ禍真っ只中の日本。
未曾有の危機に直面する政府が実行した最後の手段、それは「歴史上の偉人たちをAIで復活させ、最強内閣を作る」ことだった。
現代の日本×歴史上の偉人=壮大なジェネレーションギャップが生み出した奇跡、そして、最強ヒーロー内閣に隠された謎とは、いったい?
監督は『翔んで埼玉』で日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞、『テルマエ・ロマエ』『のだめカンタービレ』などを手がけた日本映画界のホームランバッター、武内英樹氏。
その "偉人級" の演出力と独特のリズムから生み出されるエンタメは空前絶後。
脚本を手掛けるのは『翔んで埼玉』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した徳永友一氏。
そして、音楽は『翔んで埼玉』で日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞したFace 2 fAKEが担当。
武内監督と再び手を取り合い、「天下一」のお祭りムービーを生み出す!
出演者も超超超豪華!!
最強内閣の動向を記者として見守る主人公・西村理沙を演じるのは、NHK朝ドラから『ゴジラ-1.0』ほか数々の映画のビッグタイトルに出演し、今や国民的人気俳優となった浜辺美波さん。
現代人との架け橋となる内閣官房長官を任された幕末の風雲児・坂本龍馬役には実力派としてその芝居が高く評価される赤楚衛二氏。
そして、注目の内閣総理大臣・徳川家康を、狂言界の至宝にして、唯一無二の存在感を放つ俳優、野村萬斎氏が務める。
さらに、織田信長をGACKT氏、豊臣秀吉を竹中直人氏ほか、髙嶋政宏氏、江口のりこさん、池田鉄洋氏、小手伸也氏、長井短さん、観月ありささんなどウルトラ実力派俳優が "あの" 人気偉人を演じきる……期待して待つのじゃ!
お子さんからおじいちゃん&おばあちゃんまで、まさに今の時代に生きる全ての日本人へおくるアルティメットヒーローエンターテインメント。
"お祭り(政)ムービー" の金メダルは、『もし徳』で決定!!
「もしも徳川家康が総理大臣になったら」豪華版 [Blu-ray]
原作:『もしも徳川家康が総理大臣になったら』
(著:眞邊明人・発行:サンマーク出版)
『もしも徳川家康が総理大臣になったら』は、眞邊明人先生によるSF小説、ビジネス小説。
2021年にサンマーク出版より刊行された。
内閣総理大臣が新型コロナウイルス感染症に感染して死亡したため、政府がAIとホログラムを使って歴史上の偉人たちを復活させ、徳川家康を内閣総理大臣とした最強内閣を組閣するという奇想天外な物語を描く。
あらすじ
ピンチだよ、偉人集合!
最強ヒーロー内閣、ここに爆誕!!
時は2020年、コロナウィルスが猛威を振るい日常を奪われた日本。
国内どころか世界中が大混乱に陥る中、首相官邸でクラスターが発生、あろうことか総理大臣が急死。
そこで政府が実行した最終手段、それは「AI・ホログラムにより歴史上の偉人たちを復活させ、最強内閣をつくる」という前代未聞の計画だった。
総理大臣を託されたのは "江戸幕府を作り上げた伝説の男" 徳川家康(野村萬斎)。
そして、日本史に燦然と輝く大スターたちが議員バッジをつけて入閣。
官房長官を "幕末の風雲児" 坂本龍馬(赤楚衛二)、経済産業大臣を "最強にして最恐の革命家" 織田信長(GACKT)、財務大臣を "空前の成り上がり者" 豊臣秀吉(竹中直人)、ほかにも紫式部(観月ありさ)、聖徳太子(長井短)、北条政子(江口のりこ)、徳川吉宗(髙嶋政宏)、徳川綱吉(池田鉄洋)、足利義満(小手伸也)など通称 ≪偉人ジャーズ≫ によるドリームチーム内閣が誕生する。
圧倒的なカリスマに加え、政策を推し進める "えげつない" 実行力に人々は驚愕し、日本中が熱狂していく。
そんな中、テレビ局の新人記者・西村理沙(浜辺美波)はスクープを取ろうと政府のスポークスマンである坂本龍馬に近づくのだが、ひょんなことから偉人ジャーズの活躍の裏に渦巻く黒い思惑に気付いてしまう――。
果たして、陰謀の正体とは?
そして、日本史に新たに刻まれる
"事件” " の真相とは?!
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とは、ドイツの宰相であったビスマルクの言葉で、自分で失敗を経験しなければ学べないのが「愚者」であるのに対し、賢者は他者(先人)の経験の集積である「歴史」から学ぶことができる、という意味である。
では、経験からも歴史からも学べない現代人はいったい何者なのだろうか?
そんな痛烈な社会風刺を、偉人AIというSFフィルターを通すことで痛快エンターテインメントに昇華させた本作。
コロナ禍、読みたい読みたいと思いながらもネットで前半部のみ読んだだけで、遂には読了まで至らなかったあの大ヒット小説が映画化されたとあれば、観ないわけにはいかない。
読めた範囲の原作で特に印象的だったのは、秀吉の「国民への50万円給付」政策だった。
日本初のロックダウンに伴い、日本に住むすべての人に50万円を配る。
それもたった10日間で。
現実政府ではまず考えられないとんでも政策。
まず行動を旨とする秀吉の抜群の実行力は、動きの鈍すぎる現実政府を実に秀逸に皮肉っていた。
一代で位人臣を極めた豊臣秀吉らしいこのエピソードを、しっかり実写で再現してくれていたことは嬉しかった。
それも演じたのがNHK大河ドラマ『秀吉』(1996年)『軍師官兵衛』(2014年)などで豊臣秀吉役を5回も演じている竹中直人氏。
あまりにベタすぎるとも思うが、歴ヲタ納得のキャスティングである。
豊臣秀吉役以外にも目を見張る本作のキャスティング。
"古典芸能を極めた人が演じる時代劇にハズレなし" の自論を裏付けるように徳川家康役にキャスティングされたのは、ご存知狂言師の野村萬斎氏。
さらには、NHK大河ドラマ『新選組!』(2004年)、連続テレビ小説『あさが来た』(2015年)などで土方歳三役を演じた山本耕史氏を三度同役にキャスティングしたりと、かなり大河ドラマを意識しているようだ。
そういえば劇中セリフに「どうする家康」という問いかけがあったが、これもまた大河ドラマを意識した表れだったのか。
しかしこれほど大河ドラマを意識した本作も、そこは『翔んで埼玉』制作陣作品。
当然のように序盤はコメディ路線へ舵を切っていた。
しかし中盤あたり、本能寺の変の真相に迫るような展開から、一気に歴史ファンも唸る骨太な物語へと変貌を遂げる。
そもそも、徳川家康を内閣総理大臣に据えたこと自体が歴史好きの発想だ。
織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の三英傑の中でも、家康の人気はすこぶる低い。
なぜなら家康はしわい、つまりケチで有名な人物だったらしい。
信長・秀吉のような華もなければ、(一般的に知られている)戦の華々しい武勇伝もない。
だが徳川300年の世の礎を築いた人物だけあって、実業家や経営者にはすこぶる人気がある。
明治維新でダメダメなイメージに塗り替えられた江戸幕府の評価も、今では見直されている。
信長・秀吉を差し置いて家康を総理に据えたことは、歴史好きにとって納得の人選なのである。
大臣の人選も実に面白い。
- 徳川家康(首相)
- 坂本龍馬(内閣官房長官)
- 織田信長(経産相)
- 豊臣秀吉(財相)・石田三成(財副相)・大久保利通(財副相)
- 徳川吉宗(農水相)
- 徳川綱吉(厚労相)・緒方洪庵(厚労副相)
- 足利義満(外相)
- 北条政子(総相)
- 藤原頼長(法相)・江藤新平(法副相)
- 北条時宗
- 菅原道真(文科相)・福沢諭吉(文科副相)
- 楠木正成
- 平賀源内(IT担当大臣)
- 荻原重秀(経済再生担当相)
- 大岡忠相・近藤勇(治安部隊)・土方歳三(治安部隊)・沖田総司(治安部隊)
- 本多正信(国家公安委員長)
秀吉の下に大久保利通を据えたり、藤原頼長の下に江藤新平を据えたり、菅原道真の下に福沢諭吉を据える人選。
まさにドリームチーム、≪偉人ジャーズ≫ である。
ただ惜しむらくは、登場した偉人の数が原作よりも少なかったことが残念でならない。
先のリストの黒字で表示された偉人は本作には登場しない。
娯楽映画としての都合上、カットされただけなのか、はたまた最初からキャスティングされていなかったのかはわからない。
しかしこれは、きっと正しい選択なのだろう。
だが、この作品なら3時間超えでも観ていられる歴史好きが少なくともひとりいる。
それほどよく出来ていて、実に面白い作品だった。
現代人が得るべき "気づき" も、ふんだんに盛り込まれている。
さすが偉人の言うことは違って、名言、苦言のてんこ盛りだ。
おまけに、意外にも最後はちょっと泣けてしまう感動作でもあったりする。
本来なら痛烈な社会風刺が主になりそうなこういう作品を、見事な娯楽映画に仕立てた『翔んで埼玉』制作陣はやはりさすがと言わざるを得ないだろう。
歴史好きとしては、上映時間の都合でカットされた偉人がもしいるのならば、願わくばディレクターズカット版か何かで是非とも観せてほしいものである。
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