日本映画
身代わり忠臣蔵
※本稿はネタバレを含みます。ご注意下さい。
300年間擦り倒されてきた「忠臣蔵」の新発見
日本映画『身代わり忠臣蔵』とは
江戸中を巻き込んだ絶対にバレてはならない
"世紀の身代わりミッション" START!!
映画『超高速!参勤交代』や『引っ越し大名!』といった 大ヒットコメディ時代劇を生み出した脚本・土橋章宏氏による同名小説が満を持して映画化!
主演・ムロツヨシ氏を筆頭に永山瑛太氏や川口春奈さんら豪華キャスト陣で贈る、痛快時代劇エンターテイメントが誕生!
嫌われ者の殿・吉良上野介(ムロツヨシ)が江戸城内で斬られ、あの世行き!
だが、殿を失った吉良家も幕府の謀略によって、お家存亡の危機に!!
そんな一族の大ピンチを切り抜けるべく、上野介にそっくりな弟の坊主・孝証(ムロツヨシ)が身代わりとなって幕府をダマす、前代未聞の【身代わりミッション】に挑む!
さらに、敵だったはずの赤穂藩家老・大石内蔵助(永山瑛太)と共謀して討ち入りを阻止するというまさかの事態に発展!?
幕府に吉良家に赤穂藩も入り乱れ、バレてはならない正体が…遂に!?
果たして孝証は、江戸を舞台に巻き起こる一世一代の大芝居【身代わりミッション】をコンプリートできるのか!
原作:「身代わり忠臣蔵」
『身代わり忠臣蔵』は、土橋章宏先生が2018年に発表した日本の小説である。
幻冬舎より出版。
時代劇「忠臣蔵」をモチーフに、吉良上野介が松之大廊下での刃傷沙汰で死亡し、彼にそっくりな弟が替え玉に仕立て上げられたことで起こる騒動を描く。
あらすじ
浅野内匠頭が積年の恨みから吉良上野介を襲い、切腹を命じられる。
赤穂浪士は主君のために復讐に向かう――。
これが、史実に残る忠臣蔵。
ところが、討ち入り前に吉良が急死してしまった!
逃げ傷で死んだとなれば、お家取り潰しは避けられない。家臣は、たまたま金の無心に来ていた主君の弟・考証を替え玉にするが……。一方、大石も本音では、勝手に死んだ主君の復讐なんてしたくない。だが、世間の空気はそれを許さない。考証と大石は世を欺くため、世紀の大芝居を決行する! 偽者の吉良と不忠の大石が繰り広げる、新解釈・忠臣蔵。
登場人物
- 吉良孝証 / 吉良上野介:演 - ムロツヨシ
- 大石内蔵助:演 - 永山瑛太
- 桔梗:演 - 川口春奈
- 清水一学:演 - 寛一郎
- 堀部安兵衛:演 - 森崎ウィン
- 堀江半右衛門:演 - 本多力
- 原惣右衛門:演 - 星田英利
- 加藤太右衛門:演 - 板垣瑞生
- 片岡源五右衛門:演 - 廣瀬智紀
- 奥田孫太夫:演 - 濱津隆之
- 春凪:演 - 加藤小夏
- 岡野金右衛門:演 - 野村康太
- 間十次郎:演 - 入江甚儀
- 大石りく:演 - 野波麻帆
- 浅野内匠頭:演 - 尾上右近
- 高尾太夫:演 - 橋本マナミ
- 斎藤宮内:演 - 林遣都
- 徳川綱吉:演 - 北村一輝
- 柳沢吉保:演 - 柄本明
- ナレーション:森七菜
300年擦り倒されてきた「忠臣蔵」にもまだあった新しい気づき
若い世代の半数が「忠臣蔵」を知らないという衝撃
いわゆる「赤穂(浪士)事件」は、江戸幕府の成立(1603年)からおよそ1世紀が経ち、戦国が遺風となった時代。
人々が平和に慣れ出した頃、リアルな "命のやりとり" が披露されたことで世の中の注目を一斉に浴びることになる。
赤穂浪士が刑死を覚悟して主君への忠義を尽くし、自刃して果てるという劇的な結末から、事件の翌年から様々な形で上演されるようになった。
いわゆる「忠臣蔵」の作品群である。
それからおよそ300年。
「忠臣蔵」に、かつての勢いはない。
それでも邦画では、1910(明治43)年に始まり、たびたび「忠臣蔵」を映像化されてきた。
最近では海外作品にも、忠臣蔵を原型とする作品が作られている。
だが、若い世代の半数が「忠臣蔵」を知らないという衝撃の事実は、現代での「忠臣蔵」の知名度が激落ちていることを殊更実感させる。
だからなのだろう。
近年では王道「忠臣蔵」ではなく、『最後の忠臣蔵』(2010年)や『決算!忠臣蔵』(2019年)など、我々がよく知るものとは違ったアプローチで「忠臣蔵」は描かれている作品が目立つようになった。
『最後の忠臣蔵』では、討ち入りに参加しなかった浪士のその後をみせ、『決算!忠臣蔵』では、記録に残る資料から財政的な側面を物語の中心に据えて、"カネ次第"という実情を活写していた。
本作もまた、王道「忠臣蔵」とは趣が異なる。
多くの作品で "逃げのびた悪役" とされる吉良上野介本人が、「実は松の廊下刃傷事件で死んでいた」という新設定。
史実と照らし合わせてしまうならば、ツッコミどころは満載だ。
従来の重厚な「忠臣蔵」のイメージをひっくり返してしまうほど濃いコメディ色は、史家や歴史ヲタに歴史への冒涜と受け止められかねない。
事実、やり過ぎた感は否めない。
しかし、だからこそ、娯楽映画として成立したのではないだろうかと思うのも、また事実。
300年もの長い歳月で擦り倒されてきた「忠臣蔵」に、最早新しい発見など期待できない。
新しい気づきのない擦り倒された作品を、誰が楽しんで観るというのか。
それは復習ではなく、もはや苦行だ。
その既視感を、歴史のifで、面白おかしく脚色するのは、けっして悪いことではない。
ただし、その歴史のifがデタラメではいけない。
わずかでも、その可能性が無くては歴史作品として破綻しているからだ。
だからこそ、史実に基づく本作のような作品をさらに深く楽しむために、正しい歴史認識が必要だ。
どこまでが史実で、どこからが歴史のifなのかを正しく認識することで、本作は格段に面白くなる。
かつての「忠臣蔵映画」は、時代のうねりのなか、「忠義のため」命をかけた人々の壮大で重厚なものが中心とされ、“討ち入り”が最大のクライマックスとなっていた。
しかし『最後の忠臣蔵』も『決算!忠臣蔵』も、それとは他の部分にフォーカスしている。
本作もそれに連なる作品であり、ひとりが犠牲になることですべてが丸く収まるという、まったく新しいアプローチで「忠臣蔵」が描かれている。
コメディとして観れば、王道を知る人はもちろん、もしかしたら本作で初めて「忠臣蔵」を知った人でも楽しませてくれる歴史作品だろうと思う。
古来より日本人に広く愛されてきた「忠臣蔵」。
本作を機に、歴史好きが増えてくれたら嬉しい。
それにしても、安定すぎる吉良上野介の稀代の悪役ぶりはどうだろう。
日本人のDNAにまた、吉良上野介=悪玉のイメージが深く刻まれてしまうことは、歴史ヲタとしては少し複雑な気分である。
「忠臣蔵」にもまだあった新しい気づき
本作の主人公は、有力な旗本の実子(吉良上野介の弟)でありながら、末弟ということで家を出された吉良考証。
吉良上野介に弟がいたことは、もちろん知っている。
正確に言えば、「知っている」というより「当然いるだろうね」という認識である。
この時代の、特に有力な旗本ともなれば、家名を存続させるために多くの子を作らなければならなかった。
吉良上野介も例外であるわけがなく、弟の一人や二人いて当たり前である。
だが、吉良上野介に興味はあっても、その弟に興味があるわけではない。
歴史の表舞台に登場しない弟のことを、詳しく知っているわけもない。
というわけで、まったく知らなかった吉良考証という人物について、とりあえず調べてみる。
吉良考証。
一応「寛政重修諸家譜」にも記載のある、実在の人物。
らしいのだが、詳しい史料はほぼない。
出家して僧になったのは事実であるようだ。
が、本作で描かれたように、別に落ちぶれたという記述はない。
没年も記載がないので、この時点で生きていたかどうかも定かでない。
もう少し深く調べてみると、どうやら豊蔵坊(信海)※の弟子とある。
豊蔵坊(信海)は、どうやら大石内蔵助ゆかりの太西坊と同じく男山(石清水八幡)にいたらしく、本作のように彼らに何らかの接触があってもたしかに不自然ではない。
ただし、実際の信海は元禄元年に亡くなっているので、赤穂事件の頃にはすでに亡い。
では、「忠臣蔵」の舞台となる元禄15年頃の豊蔵坊主は誰だったのか。
そう考えていくと、あるひとつの歴史のロマンに辿り着く。
もしかしたら孝証がその人かもしれない。
豊蔵坊は徳川家の祈願所ということだから、出家とはいいながらも、それなりの家柄の人でなければならない可能性が高い。
ならば、高家筆頭である吉良家出身というのは相当有利なはずである。
しかも「孝」の字を継承している。
実際、元禄15年頃の豊蔵坊主が誰だったのかは定かではない。
だがこのような新しい可能性、新しい気づきがあるから歴史は面白い。
誰も知らないような人物にフィーチャーしたことで、300年擦り倒されてきた「忠臣蔵」にまた新しい気づきが生まれたことは、本作の隠れた功績である。
吉良孝証が豊蔵坊主であった可能性は大いに残っているが、孝証は既に(延宝5年)亡くなっていたらしい(『参河志』より)。
延宝5年というと大石が家督を継いだ年であり、孝証と内蔵助二人が出会った可能性は、残念ながらまあ無さそうではある。
しかし一般的にはほぼ無名の吉良孝証に着目した土橋章宏氏、さすがと言わざるを得ない。
※.豊蔵坊は徳川家康の祈願所であったという。
信海は、山城男山八幡宮の社寺豊蔵坊の社僧。
名は孝雄,字は子寛,別号は玉雲翁,覚華堂など。
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