其の五十七
美しき日本語の世界。
「うだつが上がらない」の「うだつ」って何?
「うだつ」って何?
「うだつ(卯建)」とは、日本の伝統的な民家で、屋根の両端に一段高く設置された防火用の土造りの仕切り壁のこと。
本来は火災の際、隣家からの延焼を防ぐための機能的なものだったが、江戸時代中期以降、裕福な商家がその富を誇示するために豪華な装飾を施すようになった。
「うだつが上がらない」の由来
「うだつが上がらない」とは、【地位や生活が向上せず、冴えない状態が続いている】ことを意味する慣用句である。
この言葉は、「うだつ」という建築用語が語源である。
「うだつ」を上げるには多額の費用がかかった。
裕福な家は立派な「うだつ」を設けることができたが、貧しい家はそれができなかった。
ここから、「経済的に成功して立派なうだつを上げる」ことができない状態を「うだつが上がらない」と表現するようになったという。
近年では見かける機会もめっきり減った「うだつ」だが、現在でも徳島県脇町や岐阜県美濃市などには、立派な「うだつ」のある町並みが保存されており、歴史的な観光資源となっている。
比喩表現の巧み
「うだつが上がらない」という言葉の美しい点は、人の「出世できない」「ぱっとしない」という抽象的な状況や感情を、「物理的に壁が上がっていない」という具体的な視覚イメージに置き換えている点にある。
そこには単なる「貧乏」や「不運」ではない本人の努力や環境によって、「上がっても良いはずのもの」が上がらない、というもどかしさや、世間体が悪いというニュアンスも含まれている。
現代ではあまり意識されないが、言葉の裏側にある「防火壁」という具体的なモノと、人間の「人生」という抽象的な概念を結びつけるセンスは、まさに日本語の持つ詩的で美しい表現技法のひとつといえる。
現代では、本来の意味を知らずに遣っている人も多いだろうが、その響きだけで何となく状況が伝わる「言葉の力」も魅力である。
こうした言葉の変遷自体も、日本語という言語の持つ奥深さや、生活に根ざした美しさといえるだろう。
「うだつが上がらない」のように、かつての暮らし(建築や道具)に根ざした言葉は、時代の変化とともに耳にする機会が減っている。
しかし、そうした言葉にこそ、当時の人々の「美意識」や「暮らしへの眼差し」がタイムカプセルのように閉じ込められていて、ふとした瞬間に触れるとハッとさせられる。
そういう浪漫も、日本語の魅力のひとつといえるのではないだろうか。
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