劇場アニメ
ひゃくえむ。
※本稿はネタバレを含みます。ご注意下さい。
「あなたは何に人生の10秒を懸けますか?」100m走を哲学する衝撃の異色スポーツアニメ
劇場アニメ『ひゃくえむ。』とは
作家・魚豊「チ。―地球の運動について―」の〈原点〉が劇場アニメ化
「チ。―地球の運動について―」で、手塚治虫文化賞マンガ大賞最年少受賞ほか、数々の賞を席巻する魚豊先生の連載デビュー作『ひゃくえむ。』(講談社刊)。
「心が熱くなる」「スポーツ漫画で感じたことない感覚」と多くの共感と驚きを呼び、完結後も熱狂的な人気を集める。
監督は長編1作目の『音楽』で「アニメ界のアカデミー賞」と名高い米アニー賞ノミネートをはじめ、国内外の多数の映画賞で高い評価を受ける気鋭のクリエーター・岩井澤健治氏。
主題歌を担当するOfficial髭男dismは、メンバーが原作に感銘を受けたことからコラボレーションが実現し、最大の熱量で作品を彩る。
声の出演には、生まれつき足の速い "才能型" のトガシを松坂桃李氏、トガシとの出会いから、100m走にのめり込んでいく "努力型" の小宮を染谷将太氏と実力派キャストがキャラクターに命を吹き込む。
豪華キャストとスタッフによる、今年一番の興奮がトップスピードでスクリーンを駆け抜ける!
陸上100m。
一瞬の煌めきにすべてを懸けた、情熱と狂気の物語。
監督:岩井澤健治
脚本:むとうやすゆき
キャラクターデザイン・総作画監督:小嶋慶祐
音楽:堤博明
アニメーション制作:ロックンロール・マウンテン
原作:『ひゃくえむ。』(講談社「マガジンポケット」所載)
陸上100メートル走を主題にしたスポーツ漫画であり、著者である魚豊のデビュー作である。
ウェブコミック配信サイト「マガジンポケット」(講談社)にて、2018年11月6日から2019年8月6日まで連載された。
100mという短い距離に、人生を込めて走る者たちの狂気にも等しい情熱を描いた作品であり「友情・努力・勝利」といった少年マンガのセオリーを超え、より哲学的な領域に踏み込んだ作風が特徴である。
連載当初はPV数が伸び悩み、単行本化も危ぶまれていたが、熱心なファンたちの応援によって徐々に人気を獲得し、無事物理書籍が刊行された。
あらすじ
生まれつき足が速く、「友達」も「居場所」も手に入れてきたトガシと、辛い現実を忘れるため、ただがむしゃらに走っていた転校生の小宮。
トガシは、そんな小宮に速く走る方法を教え、放課後2 人で練習を重ねる。
打ち込むものを見つけ、貪欲に記録を追うようになる小宮。
次第に2人は100m走を通して、ライバルとも親友ともいえる関係になっていった。
数年後、天才スプリンターとして名を馳せるも、勝ち続けなければいけない恐怖に怯えるトガシの前に トップスプリンターの一人となった小宮が現れる――。
登場人物
トガシ
CV:松坂桃李・種﨑敦美(幼少期)
小6当時100m走で全国1位の天才スプリンター。
早く走ること以外に取り柄を持たず、敗北も高揚も興奮も知らない少年。
沈着冷静で理性的な性格をしているが、心の奥底には理不尽に立ち向かう勇気と他者に手を差し伸べる優しさ、そして狂おしいほどの闘争心を秘めている。
小宮
転校生。
ネガティブないじめられっ子。
トガシと出会って100mの価値と権力を知る。
トガシの指導によってメキメキと成長するが、同時に100m走の世界に狂気じみた執着を抱くようになる。
仁神タケル
CV:笠間淳
元陸上日本代表の息子でトガシ達の二つ上の先輩。
14歳の時に最年少記録を更新した。
しかし、その後は伸び悩み、ある事件をきっかけに人生が一転してしまう。
財津
CV:内山昂輝
日本100m界の絶対王者。
非常にシンプルで割り切った思考回路の持ち主であり、どこか冷めた人物。
だが、内心では自分と並び走れる様な猛者を待ち望んでいる。
海棠
CV:津田健次郎
財津を追い続けるベテラン陸上選手。
財津の登場によって15年も万年二位の地位に甘んじているが、決して挫けず挑戦を諦めない不屈の闘志の持ち主。
主題歌
- らしさ / Official髭男dism
競争のなかでの葛藤やアイデンティティなど、胸に刺さる書き下ろしの歌詞が印象的な疾走感あふれるナンバー。
Official髭男dismは「世の中は、絶対に敵わない相手やら、絶対に邪魔して来る自分やら、強敵に満ち溢れています。でもそれらに納得せず、慣れもせず、「絶対」に抗い奮闘する全ての人への賛歌としても、この歌を作りました」と楽曲に込めた思いを明かしている。
「100m、約10秒」を哲学する異色のスポーツアニメ
主人公のトガシ(才能型)と小宮(努力型)という対照的な2人を通じ、「天才対秀才」という、比較的単純な構図で描かれる本作。
だが、内容はそれほど単純ではない。
100m走という、あまりにシンプルな競技イメージと反して、複雑で深い人生観が実に哲学的に描かれている。
それは物語冒頭で発せられる、トガシのこの言葉に集約されていたように思う。
100mだけ誰よりも速ければ
全部、解決する
要するに、結果至上主義である。
「100m世界一」という圧倒的な才能は、社会通念上の「凡人のルール」を一時的に無効化し、特別な待遇や寛容さを引き出す力を持っている。
何であれ、世界最高レベルの特出した才能や実績は、通常であれば許容されないような「凡ミス」や「人間的な欠点」を覆い隠し、周囲から大目に見られる材料になり得るのである。
たとえそれが学校やクラスといった極小さなコミュニティ内であったとしても、この理屈が変わることはない。
大抵のことは、100mだけ誰よりも速ければ全部、解決する。
この言葉を礎にして紡がれていく物語は、従来のスポーツものと明らかに異なっていた。
如何にして、誰よりも速く100mを走り切るか。
10秒に人生を懸けるアスリートの姿。
そこには我々がスポーツものでよくみる、努力や根性を超越したものがあった。
とはいえありがちな努力や根性も、もちろん描かれている。
だが、さほど掘り下げられてはいない。
まるで、第一線で戦うアスリートにとっては努力や根性など至極当たり前のことである、と本作はいっているようである。
それでも登場人物たちが才能の有無に苦悩する姿は、いくらか描かれている。
が、あくまでそれは身体的な才能の差であって、才能さえあれば勝てるというわけでもないらしい。
特に終盤の描写に才能の差などなかったように感じる。
常にトップレベルで走るアスリートたちには才能の差などさほどなく、最後に勝敗を分つ要因は他にある。
それは気持ち。
最後は、誰よりも強い気持ちを持ったアスリートが勝つ。
結局は努力や根性といった精神論のようであるが、まさしくその通りである。
ただし、その気持ちはスポ根アニメにありがちな努力や根性といった生半可なものではない。
「100m、約10秒」という極限の短時間に人生のすべてを凝縮させるほどの圧倒的な覚悟。
そのたった10秒に人生のすべてを懸けられるのか?
それは自分自身との極限の闘い。
すなわち、究極の内省である。
これが本作を、〈100m走を哲学で描く異色のスポーツアニメ〉と評する所以である。
いくら陸上の花形とはいえ、ただ走るだけの100m走をテーマにしたこと。
そしてそこに哲学を絡ませたことは、さすが「チ。―地球の運動について―」の魚豊先生と言わざるを得ない。
アニメ化にあたり、松坂桃李氏がトガシ、染谷将太氏が小宮の声をそれぞれ演じていることにも注目だ。
実力派俳優と評される二人だけあって、本職と比べても何ら遜色はない演技をみせている。
ただ内山昂輝氏、津田健次郎氏、高橋李依さん、種﨑敦美さん、悠木碧さんといった超一流どころとの共演となると、さすがの実力派俳優もいささか分が悪かった。
あまりに豪華な声優陣を共演に迎えてしまったことが、逆に二人のわずかな辿々しさを際立たせてしまったようにも感じた。
が、それでもよく渡り合っていたと思う。
少なくとも、実力派俳優としての面目躍如を果たしていたのはさすが。
いわゆるスポ根アニメとは一線を画す本作。
映像美もリアリティも、他作品とはひと味違う。
実写映像をトレースする「ロトスコープ」技法を採用した作画は、"動く身体" そのものを雄弁に物語っていたし、レースを盛り上げる演出にも目を見張るものがあった。
単なるスポーツアニメの枠を超えた劇場アニメ『ひゃくえむ。』。
気になる人は、是非。
【チラシつき 映画パンフレット】 劇場版 ひゃくえむ。 100M パンフ 劇場用パンフレット 公式パンフレット 監督 岩井澤健治 出演 声の出演:松坂桃李、染谷将太、笠間淳
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