其の六十一
美しき日本語の世界。
耳を澄ませば聴こえてくる、無音の先に見えてくる饒舌な「静寂」
高度1万メートルの「しじま」
現代において、この「しじま」という言葉を、多くの日本人の心に刻み込んだ伝説的なナレーションがある。
ラジオ番組『JET STREAM』のオープニングナレーションである。
遠い地平線が消えて、
深々とした夜の闇に心を休める時、
遥か雲海の上を、音もなく流れ去る気流は、
たゆみない宇宙の営みを告げています。
満点の星をいただく果てしない光の海を、
豊かに流れゆく風に心を開けば、
煌く星座の物語も聞こえてくる、
夜の静寂(しじま)の、
なんと饒舌なことでしょうか。光と影の境に消えていったはるかな地平線も
瞼に浮かんでまいります。
機内の柔らかな光の中で、雲海を滑るように進む飛行機。
眼下に広がる夜の底。
『JET STREAM』歴代パーソナリティの中でも、とりわけ城達也氏の低く落ち着いた声は、騒がしい日常を切り離し、私たちを「深い夜のしじま」へと誘ってくれた。
あのナレーションが教えてくれたのは、静けさとは「虚無」ではなく、心を整えるための「贅沢な空間」であるということだ。
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"静寂を聴く" という美意識
日本には「しじま」という、音が消えることで初めて見えてくる「世界の広がり」を慈しむ美意識がある。
雪が降る夜、世界が急に静まり返るのを感じたことはないだろうか。
雪には音を吸収する性質があるが、日本人はその物理現象を単なる数値としてではなく、「しんしんと降る」という言葉で、静寂の重みや深さとして表現してきた。
「しじま(静寂)」とは、物音が絶え、ひっそりと静まり返った状態を指すのであって、「音が無い」ことを指すのではない。
そこには、静寂が深まることでかえって際立つ微かな気配や、自分自身の心の声と向き合う「濃密な時間」が含まれている。
【しんとした、澄み渡った状態】を指す「静寂(せいじゃく)」ではなく、【深い静けさの底に、何かが潜んでいるような、あるいは何かが聞こえてきそうな余韻】を感じさせる「静寂(しじま)」とあえて読む。
漢字の持つ意味を超えて、あえてその響きに宿る余韻を選び取る美意識こそ、日本語の真髄なのかもしれない。
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