日本映画
任俠学園
※本稿はネタバレを含みます。ご注意下さい。
ステゴロの迫力に、往年の名セリフ… 本物の重鎮が支える、最高に安心な義理と人情の学園コメディ
日本映画『任俠学園』とは
世間のルールは絶対守る!
"全員善人"
社会貢献好きヤクザ!?
これが噂の "世直しエンターテイメント" !
西島秀俊氏と西田敏行氏がダブル主演。
社会奉仕がモットーの弱小ヤクザ "阿岐本組" が義理と人情を武器に、倒産寸前の私立高校や出版社、病院、映画館など、困っているひとたちをボランティア精神で助ける今野敏先生の人気小説「任侠」シリーズが遂に映画化!
監督に『TRICK』シリーズ、『99.9-刑事専門弁護士』シリーズを手掛けた木村ひさし氏。
共演に『フィッシュストーリー』の伊藤淳史氏、『サバイバルファミリー』の葵わかなさん、『きょうのキラ君』の葉山奨之氏。
真面目過ぎるが故、空回りしながらも世のため、人のために走り回る不器用な彼らが、日本列島を笑顔でいっぱいにする人情コメディが幕を開ける!
原作:『任俠学園』/ 今野敏
『任俠学園』は、作家・今野敏先生の小説。
「任俠シリーズ」第2弾作品。
2007年9月19日に実業之日本社から単行本、2010年1月20日に新書が刊行。
さらに2012年1月25日に中央公論新社から文庫本が刊行された。
あらすじ
義理・人情で学校が救えるのか?
困っている人は見過ごせない、義理と人情に厚すぎるヤクザ "阿岐本組"。
組長(西田敏行)は社会貢献に目がなく、次から次へと厄介な案件を引き受けてしまう。今度はなんと、経営不振の高校の建て直し。
いつも親分に振り回されてばかりの阿岐本組NO.2の日村(西島秀俊)は、学校には嫌な思い出しかなく気が進まなかったが、"親分の言うことは絶対"!
子分たちを連れて、仕方なく学園へ。
待ち受けていたのは、無気力・無関心のイマドキ高校生と、事なかれ主義の先生たちだったー。
登場人物
日村誠司
演 - 西島秀俊
阿岐本組No.2。
組長であるおやっさんの気まぐれで、自分は中卒で学校が大嫌いなのに高校の理事をやるハメに。
カタブツすぎて若干空回りしつつも情に厚く頼れる兄貴分。
ビビると顔が怖くなってしまうのが玉にキズ。
かつてパンチパーマにした黒歴史あり。
阿岐本雄蔵
演 - 西田敏行
阿岐本組組長にして、仁徳京和学園高等学校理事長。
通称おやっさん。
文化事業に目がなく厄介事を引き受けがちだが日村にとっては若かりし頃の自分を救ってくれた恩人。
口を開けば、ありがたいお言葉が飛び出してしまう名言製造機。
二之宮稔
演 - 伊藤淳史
阿岐本組組員。
日村の片腕で、不器用な日村をからかいつつも尊敬している。
派手な柄シャツがトレードマーク。
沢田ちひろ
演 - 葵わかな
仁徳京和学園高校の学生。
親の愛情に飢えて育ち、少々血の気が多くひねくれているが、根は真っ直ぐで正義感が強い。
中身はおっさん。
黒谷祐樹
演 - 葉山奨之
仁徳京和学園高校の学生。
ちひろの "大ファン" を名乗る。
ストーカー並みに彼女を追っかけ、写真を日々撮りためている。
小日向美咲
演 - 桜井日奈子
仁徳京和学園高校の学生。
成績優秀、生徒会委員もつとめる一見優等生だが、裏では怪しい動きをしている謎を秘めた人物。
三橋健一
演 - 池田鉄洋
阿岐本組組員。
大卒で教員免許を取りながら任俠の世界に入った異色の経歴を持つ。
日村に絶対的信頼を置く。
志村真吉
演 - 佐野和真
一見チャラ男風の阿岐本組組員。
市村徹
演 - 前田航基
IT系頭脳派の阿岐本組組員。
高木のオジキ(遺影)
演 - 高木ブー
今は亡き高木組組長。
西潟源太
演 - 佐藤蛾次郎
街のガラス屋西潟工務店の親方。
唐沢隼人
演 - 白竜
巨大組織のドン隼勇会組長。
小日向泰造
演 - 光石研
隼勇会をバックに持つフロント企業の経営者。
美咲の父であり、学園の父母会代表。
何らかの目的で学園の経営権を狙っている。
永神健太郎
演 - 中尾彬(特別出演)
インチキ感満載の永神組組長。
綾小路重里
演 - 生瀬勝久
仁徳京和学園高校校長。
問題だらけの学校を抱えこれ以上トラブルが起きないよう "最低限の仕事" を行なっている。
音楽
主題歌
- 東京スカパラダイスオーケストラ「ツギハギカラフル」
挿入歌
- 西田敏行「また逢う日まで」
往年の名曲のカバーで、東京スカパラダイスオーケストラと西田敏行氏のコラボレーションが実現。
コメディ8:リアル2、その2割の本物が支える極上のギャップ
極道とヤクザは、実質的に同じ「暴力団」を指す言葉であるが、ニュアンスに大きな違いがある。
ヤクザは「役立たず」※1に由来する蔑称・通称で、社会から見て「社会の役に立たない者」「反社会的な存在」を指す。
対して極道は、「任俠の道を極める」という意味を込め誇り高いニュアンスを持つ自称や婉曲表現(言い換え)。
つまりは、「外から見たらヤクザ、内(本人たち)から見たら極道」ということである。
どちらも法的には「暴力団」に該当し、親分・子分の擬制的な血縁関係を持つ組織である。
一般社会では、両方とも反社会的な組織のメンバーとして同義に扱われる。
多くの人が「ヤクザ=悪」のイメージを強く持つなか、善人(寄り)のイメージを確立した、皆がよく知るヤクザもいる。
江戸時代末期に実在した二大侠客、国定忠治と清水次郎長である。
逃亡の旅立ちシーン、「赤城の山も今宵限り…」のセリフで名高い国定忠治。
天保の大飢饉で農民を救済した侠客で「義賊」として伝説化し、講談・浪曲や映画、新国劇、大衆演劇など多くの演劇の題材となった。
また、浪曲師・二代目広沢虎造の『清水次郎長伝』で、「寿司を食いねえ」などのフレーズとともに国民的英雄となった清水次郎長。
次郎長は戊辰戦争の際に修理で立ち寄った清水港(静岡)に逆賊船としてそのまま放置されていた咸臨丸(旧幕府艦隊の旗艦)の中から、戦死した乗組員の遺体を小舟を出して収容し丁重に葬ったことから、その義侠心に深く感動した幕臣・山岡鉄舟の知己を得て、その後旧幕臣救済のため、維新後は富士の裾野の開墾に乗り出し、社会事業家としても活躍した。
どちらもヤクザ者(博徒・侠客)であるが、どちらも英雄扱いされている実在の人物である。
そのせいだろうか。
ヤクザか侠客、どちらに舵を切るかでヤクザ者を題材とする作品は二極化する。
リアル志向とコメディ路線である。
リアル志向の代表格といえば、やはり『仁義なき戦い』になるだろうか。
近年のヒット作には『 アウトレイジ』があり、『極道の妻たち』や『日本統一』などが有名である。
だがアウトローの世界をリアルに描くことは、怖いもの見たさの反面で、そのバイオレンス色の強さにアレルギーを抱く人も少なくない。
だから、リアル志向作品は観る人は観るが、観ない人はまったく観ない。
対して、同じヤクザが題材でも、コメディ路線は門戸が広い。
怖いもの見たさのスリルを満たしつつも、クスッと笑える安心感。
これがコメディ路線のヤクザ作品の魅力であり、そっくりそのまま本作の魅力となる。
"親分の言うことは絶対"!
まるで王様ゲームのようなこのギャグ設定に、誰もが本作をコメディ全振り作品だと思うだろう。
だが細部をみれば、ヤクザのリアルが巧妙に描かれている。
「ドス」※2という、このあまりに有名なヤクザ用語をあえて遣わずわざわざ「匕首(あいくち)」と呼んでいるし、素手の喧嘩を「ステゴロ」とちゃんと言っている。
おまけに唯一のバイオレンスシーンとなるガチ「ステゴロ」シーンの迫力と臨場感は、コメディ作品といえども馬鹿にはできない。
西田敏行氏、白竜氏、中尾彬氏という圧倒的な本物の説得力も相まって、本作が描くアウトローの世界観はなかなかどうしてリアル志向だ。
そしてヤクザ映画の重鎮、往年の名優のしっかりとした下支えがあるからこそ、西島秀俊氏ら阿岐本組構成員の滑稽さが一層際立っている。
特に劇中で日村が刺された際に、舎弟・二之宮が放ったセリフ。
「な……何じゃそりゃ!」
この、わかる人にはわかる名セリフのパロディには、さすがに笑いを堪え切れなかった。
血生臭い描写がほとんどないリアル志向のヤクザ作品。
コメディ作品としても優秀。
怖いもの見たさのスリルを満たしつつ、これほど心穏やかに観ていられるヤクザ作品は数少ない。
ただひたすらアウトローのリアルを追求する近年の風潮に、真っ向から立ち向かう稀有な存在。
知名度こそ微妙であるが、娯楽映画として、非常に貴重な作品である。
気になった人はぜひ。
※1.ヤクザは「役立たず」
ヤクザ(蔑称・通称)語源は、いくつかある。
有力なのは、花札博打の一種である「三枚(おいちょかぶ)」において、引いた3枚の札の合計が20になる組み合わせ「八(や)九(く)三(ざ)=20」で、花札の合計が19となる「役に立たない手」からきているという説。
このゲームは合計の下一桁が「9」に近いほど勝ちとなる。
合計が「20」だと下一桁が「0」になり、全く点数がつかない最弱の「ブタ(無価値な手)」「何の役にも立たない手(八・九・三)」が転じて、社会の役に立たない者、あるいは自嘲的に「自分たちは無価値な者だ」と称した博徒たちを指す言葉になったといわれている。
他、仕事をせずに遊び呆けている、またはふざけていることを意味する「役戯れ(やくざれ)」が変化したという説。
江戸時代の無法者が、歌舞伎役者のような派手な格好を好んだことから、「役者のような(ヤクシャ)」が訛って「ヤクザ」になったという説。
喧嘩の仲裁などを行う役割(役座)を担っていた者が、いつしか暴力的な組織を形成するようになったという説などがある。
※2.「ドス」
短刀や懐に隠せる刃物。
語源に明確な辞書的出典は少ないが、相手を恐れさせる「脅す(おどす)」の音が変化したという説や、どす黒い黒ずんだ刃物という描写からきている説がある。
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