日本映画
栄光のバックホーム
※本稿はネタバレを含みます。ご注意下さい。
豪華キャストというノイズ…名優たちが実話の重みを薄めていくなか唯一嘘がなかった本物の背中
日本映画『栄光のバックホーム』とは
野球に生き、
仲間に支えられ、
家族に愛された。
その全てが胸を打つ、
かけがえのない真実が
そこにあったー。
2023年、阪神タイガース
18年ぶりのリーグ優勝の年に28年の生涯を駆け抜けた選手と 支え続けた人たちの実話、感動の映画化
横田慎太郎※。
2013年のドラフト会議で阪神タイガースに 2位指名され、背番号24を背負う若きホープとして将来を期待されるも、21歳で脳腫瘍を発症。
引退を余儀なくされた彼が最後の試合で魅せた "ラストプレー" は、野球ファンのみならず、多くの人々の心に深く刻み込まれた。
その一球に込められたドラマを描いた横田選手の自著「奇跡のバックホーム」と、彼が 2023 年に 28歳でその生涯を閉じるまで、家族と共に闘い続けた人生の軌跡を描いたノンフィクション「栄光のバックホーム」が、製作総指揮を見城徹氏と依田巽氏、『20歳のソウル』の秋山純氏が企画・監督・プロデュース、中井由梨子さんが脚本を務め、[幻冬舎フィルム第一回作品]となる『栄光のバックホーム』として映画化。
本作では、慎太郎の野球選手としての雄姿と、引退後の家族や仲間、恋人との知られざる軌跡が描かれる。
主人公の慎太郎を演じるのは新人の松谷鷹也氏。
亡くなる直前の慎太郎の元へ毎日通い、本人から譲り受けたグラブで "奇跡のバックホーム" を完全再現。
W主演として母・まなみさんを演じるのは名優、鈴木京香さん。
揺らがない息子への愛を体現する。
そして、日本屈指の演技派俳優陣が物語を彩る。
主題歌は慎太郎の心の支えで現役時代の登場曲だった、ゆずの「栄光の架橋」。
阪神が 18年ぶりのリーグ優勝を決めた2023年 9月、甲子園球場で 4万人の観客が慎太郎に向けて大合唱した不朽の名曲だ。
野球と、家族と、人を愛し続けた彼の生き様は、きっと私たちに前へと進む勇気を与えてくれるだろう—。
原作:横田慎太郎『奇跡のバックホーム』(幻冬舎文庫)、中井由梨子『栄光のバックホーム 横田慎太郎、永遠の背番号24』(幻冬舎文庫)
「栄光のバックホーム」+「奇跡のバックホーム」 横田慎太郎選手 セット
あらすじ
彼の夢を支え、ともに歩んだ道のり。
それぞれのドラマ。
2013年のドラフト会議で阪神タイガースに2位指名された横田慎太郎、18歳。
甲子園出場を逃すもその野球センスがスカウトの目に留まり、大抜擢された期待の新人だ。
持ち前の負けん気と、誰からも愛される人間性で厳しいプロの世界でも立派に成長を遂げていく慎太郎。
2016年の開幕戦では一軍のスタメン選手に選ばれ、見事に初ヒット。
順風満帆な野球人生が待っていると思われたその矢先、慎太郎の体に異変が起こる。
ボールが二重に見えるのだ。
医師による診断結果は、21歳の若者には残酷すぎる結果だった。
脳腫瘍─。
その日から、慎太郎の過酷な病との闘いの日々が始まる。
ただ、孤独ではなかった。
母のまなみさんら家族、恩師やチームメイトら、慎太郎を愛してやまない人たちの懸命な支えが彼の心を奮い立たせるのだった。
そして、2019年9月26日、引退試合で慎太郎が魅せた "奇跡のバックホーム" は人々を驚かせ、感動を呼んだ。
だが、本当の奇跡のドラマは、その後にも続いていたのだった…。
登場人物
- 横田慎太郎:演 - 松谷鷹也
- 横田まなみ:演 - 鈴木京香
- 北條史也:演 - 前田拳太郎
- 小笠原千沙:演 - 伊原六花
- 横田真子:演 - 山崎紘菜
- 遠藤記者:演 - 草川拓弥
- 田中秀太:演 - 萩原聖人
- 土屋明洋:演 - 上地雄輔
- 掛布雅之:演 - 古田新太
- 金本知憲:演 - 加藤雅也
- 鍵山博久:演 - 小澤征悦
- 川原潔:演 - 嘉島陸
- 村上華:演 - 小貫莉奈
- 幸原美玖:演 - 長内映里香
- 安井直太:演 - 長江健次
- 虎風荘の寮長:演 - ふとがね金太
- 瀬川哲也:演 - 石川薫
- 間島恒:演 - 西本銀二郎
- 杉田漣:演 - 長野凌大
- 鳥谷敬:演 - 橋谷拓玖
- 梅野隆太郎:演 - 米加田樹
- 岩崎優:演 - 峯統哉
- 岩貞祐太:演 - 小林知史
- 中谷将大:演 - 坂井友秋
- 若林:演 - 森岡豊
- 荒木:演 - とこわか吾郎
- 澤居修:演 - 平泉成
- 沼田徹:演 - 田中健
- 門倉勉:演 - 佐藤浩市
- 平田勝男:演 - 大森南朋
- 川藤幸三:演 - 柄本明
- 横田真之:演 - 高橋克典
主題歌
- ゆず「栄光の架橋」
主題歌には、横田選手が現役時代の登場曲として使用し、闘病中の心の支えにもしていたゆずの「栄光の架橋」を起用。
阪神タイガースが18年ぶりのリーグ優勝を決めた2023年9月、甲子園球場で4万人の観客が大合唱したことでも知られる名曲が物語に華を添えている。
実話の重みを乖離させた無用な演出の中で際立つ二人の本物感
2023年7月、惜しまれつつこの世を去った横田慎太郎選手の闘病生活と、彼を献身的に支え続けた母・まなみさんとの絆、そして今も語り継がれる "奇跡のラストプレー" を描いたヒューマンドラマ。
本作は、つまり実話ベースの物語である。
どこまで実話なのかがわからない以上、シナリオ云々については論じない。
あくまでイチ映像作品としての感想のみを記す。
本作にかける制作陣の並々ならぬ意欲は、俳優陣をみればわかる。
古田新太氏、大森南朋氏、佐藤浩市氏、柄本明氏らベテラン俳優を贅沢にキャスティングしているあたり、よほど成功させたかった作品であることが窺える。
人気球団である阪神タイガースの、しかも未来のスター選手候補の物語であるなら、当然と言えば当然のことなのかもしれない。
大人の事情のような、そういうプレッシャーがなかったといえば嘘になるのだろう。
だが、それが完全に裏目に出てしまったようだ。
古田新太氏や大森南朋氏や柄本明氏は、たしかに素晴らしい名優だ。
これほどのベテランともなれば、演じれば何にでもなれると思っているのかもしれない。
だが彼ら名優の演技は、はっきり言ってプロスポーツ選手の実話を扱う作品に不向きと言わざるを得ない。
川藤や掛布※という、あまりにキャラの濃い実在のレジェンド。
彼らレジェンドを演じるために、名優たちは少しでも野球の練習をしたのだろうか?
この場合、野球の上手い下手は関係ない。
が、経験の有無はその佇まいに表れる。
バックボーンのない演技は透けて見え、ドラマではなく、配役の妙を楽しませようとする演出に見えてくる。
結果、リアリティは失われ実話の重みからも乖離して、感動の物語は薄められてしまった。
ただし上地雄輔氏のキャスティングにのみ、圧倒的なリアリティがあったことは特筆すべき点である。
ご存知の通り、上地雄輔氏は甲子園の常連である横浜高校野球部出身というガチの野球人。
それも、あの松坂大輔選手と最初にバッテリーを組んだという本物中の本物だ。
このバックボーンがあるからこそ、その佇まいには嘘がなかった。
スポーツ作品には、こういう本物感が重要だ。
しかしせっかくのその本物感も、名優という大看板に埋もれていく。
川藤や掛布という、あまりにキャラの濃い実在のレジェンドを演じる俳優に求められたのは、演技力以上に野球人としての匂いではなかったか。
どんなに素晴らしい名優たちであっても、グラウンドに立った瞬間の所作や背中の見せ方までは、一朝一夕の練習では誤魔化せない。
いや、下手すれば一朝一夕の練習すらしたのかどうか。
その結果、"感動の実話" が "配役の妙を楽しむお祭り" に変質してしまった。
実話ベースの作品に目がない著者には、それが心底残念でならない。
そうやって脇役が物語を薄めていく中、孤軍奮闘の輝きを放っていたのが主人公・慎太郎を演じた松谷鷹也氏。
元高校球児という経歴を持つ松谷氏もまた、劇中でひとつの奇跡を起こしている。
それは本編のクライマックスともいえる "奇跡のバックホーム" のシーンでのこと。
このシーンを松谷鷹也氏は、自らの手で完全再現したという。
この、魂を込めた熱演はエンドロールで奇跡に変わる。
エンドロールでは、おそらく実際の映像であろう "奇跡のバックホーム" が映し出される。
驚くべきは、それが松谷鷹也氏の再現と寸分違わぬ映像だったことである。
ボールの落ちた場所から返球までの所作、ボールのズレ方、ランナーのヘッドスライディングからキャッチャーのタッチまで、何から何までまったく同じ映像のよう。
先に「"おそらく" 実際の映像であろう」と記したのは、そのためだ。
少なくとも、一度観ただけでは著者に実際の映像と再現の違いはまったくわからなかった。
非常に地味だが、これはとても凄いことだ。
あの "奇跡のバックホーム" を完全再現するために、いったい何度撮り直したことだろう。
2軍の試合だったためか、実際の映像にはおそらく引きの映像しか残されていない。
しかし完全再現では、あらゆる角度の映像が追加されている。
松谷氏は、本作の企画立ち上げ当初から取材を通して横田選手と交流を深めていた。
そして "奇跡のバックホーム" の完全再現には、生前の横田選手から譲り受けたグラブを使用したという。
そういう想いは必ず伝わる。
必ず映像に表れる。
そしてそういう姿勢こそが、実話の重みを支える本物感なのである。
この魂を込めた熱演を奇跡と言わずして、何を奇跡と呼ぶのか。
演じれば何にでもなれると勘違いした大看板たちから、こういう熱い想いはもう失せてしまったのだろうか。
※.横田慎太郎
※.川藤や掛布
あえて敬称は略させていただきます。
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