ホルムズ海峡冬景色 / 清水ミチコ(2026年)
世界を「イランこと」で凍らせるなーー名曲演歌の調べにのせた、一触即発の海
「ホルムズ海峡冬景色 / 清水ミチコ(2026年)」とは
1977年に発表された、石川さゆりさんの「津軽海峡・冬景色」。
作詞を阿久悠氏、作曲を三木たかし氏が担当したこの名曲を、モノマネ芸には定評がある清水ミチコさんが完全パロディ化。
清水ミチコさんの元ネタを最大限にリスペクトを払いながら、極端なまでにデフォルメを効かせたモノマネ芸はモノマネされた本人たちからも評価・信頼が高く、矢野顕子さんや森山良子さんは自身のライブにゲストとして呼び寄せるほど。
その天才・清水ミチコさんが描いた、「津軽海峡・冬景色」ならぬ「ホルムズ海峡冬景色」。
夢と恋に破れた主人公が、故郷に帰る途中の船上で津軽海峡の景色を眺めながら傷心に浸る光景を謳った「津軽海峡・冬景色」を、ひと握りの独裁者の暴挙によって封鎖され緊迫したホルムズ海峡の景色に、辛辣に準えている。
世界を凍らせる「イランこと」――清水ミチコが暴いたホルムズ海峡の真実
UAE発の運搬船
浮遊したまま
アラブの海域
荒れ模様
石油運ぶ船の群れは
誰も無口で
トランプだけに
キレている
おまえが一人
連絡船に乗れ
舵を取って
責任とって
イランことするな
ああ
ホルムズ海峡
浮遊景色
「ホルムズ海峡冬景色」清⽔ミチコのHAPPY PARADISE 千秋楽 沖縄公演より
「上野発の夜行列車 おりた時から……」と歌い出される、石川さゆりさんの「津軽海峡・冬景色」。
煌びやかな都会を離れ、遠く北の故郷へ帰る人の悲哀を、静かに降り積もる雪のようにしんしんと歌い上げる名曲中の名曲である。
この名曲がこれほどまでに政治的、かつ切実な響きを持って聞こえる日が来るとは、いったい誰が想像しただろう。
天才・清水ミチコさんが放った替え歌「ホルムズ海峡冬景色」。
発表されたその瞬間からこの曲がSNSやネット掲示板で爆発的に拡散されているのは、単なるパロディだからではない。
そこには、トランプ大統領とネタニヤフ首相という二人の独裁者によって引き起こされた、現代の悲劇が残酷なまでに凝縮されているからである。
その歌詞は2026年現在の世界中の本音を代弁している。
「イスラエルの敵を叩く好機だ」とネタニヤフ氏に耳打ちされ、まるで自らの人気取りの道具のようにイランへ喧嘩をふっかけたトランプ氏。
その結果、中東の熱い海は凍りつき、日本のエネルギーの命綱であるホルムズ海峡は、誰も通れぬ浮遊景色へと変貌してしまった。
各国の指導者たちが米国の顔色を伺って口を閉ざす中、清水ミチコさんは軽快に、そして辛辣に言い放つ。
――「キレているのは、私たちの方だ」と。
圧巻なのはサビの一節。
「おまえが一人、連絡船に乗れ」
これは、ホワイトハウスやエルサレムの安全な執務室で、ゴルフやチェスを楽しむように開戦の駒を進める指導者たちへの、最大級の皮肉。
暗にーーそんなに戦いたいなら、他人の兵士や経済を犠牲にするのではなく、あんたが一人で海峡のど真ん中へ行って舵を取ってこい――と言っているようなものだ。
どんな外交官も、どんな新聞の社説も書けないこのストレートな一喝こそが、今、世界が最も必要としている言葉ではないだろうか。
曲の締めくくりに遣われるフレーズはさらに痛快。
「イランことするな」
これを単なる国名のダジャレと笑うなかれ。
これは、個人の野心のために世界経済を人質に取り、罪のない人々の生活を「冬」に追いやる権力者たちへの、最もシンプルで最も重い警告だ。
トランプとネタニヤフが演出する正義の喧嘩の裏で、ガソリン代の高騰に震え、物流の停止に怯える民衆。
その叫びが、この短くも鋭い歌詞にすべて詰まっている。
「ホルムズ海峡冬景色」は、単なる芸人のネタの枠を超え、2026年の世界に誇るべき日本の反戦歌なのである。
この歌を口ずさむとき、我々は思い出すべきだ。
立ち往生しているのは、海の向こうのタンカーだけではない。
ひと握りの独裁者の身勝手によって行き場を失ったのは、世界中の人が願ってやまない平和そのものであることを。
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