オリジナル長編アニメーション映画
ふれる。
※本稿はネタバレを含みます。ご注意下さい。
「わかっているはず」という呪縛からの脱却――『あの花』『ここさけ』『空青』という "心揺さぶる" 青春三部作を描いた超平和バスターズの成熟
オリジナル長編アニメーション映画『ふれる。』とは
"心揺さぶる" 青春三部作『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』『空の青さを知る人よ』で、200万人を感動の涙で包み込んだ長井龍雪氏(監督) × 岡田麿里さん(脚本) × 田中将賀氏(キャラクターデザイン・総作画監督)の三人が新たに挑むのは、不思議な生き物「ふれる」と暮らす青年三人の友情物語。
物語の主人公、幼馴染の20歳の青年三人を演じるのは、King & Princeの永瀬廉氏、若手実力派俳優の坂東龍汰氏と前田拳太郎氏。
それぞれのキャラクターをまるで小さい頃からの親友のように演じ切る。
本作の主題歌を担当するのは、YOASOBI。
「モノトーン」は、「ふれる」の力で互いの心の声が聴こえる青年三人の友情と痛みを優しく包み込む-。
新たな出会いが大きな感動を呼ぶオリジナル長編アニメーション映画、誕生。
あらすじ
同じ島で育った幼馴染、秋と諒と優太。
東京・高田馬場で共同生活を始めた三人は、20歳になった現在でも親友同士。
それは島から連れてきた不思議な生き物「ふれる」が持つテレパシーにも似た力で、趣味も性格も違う彼らを結び付けていたからだ。
お互いの身体に触れ合えば、心の声が聴こえてくる-それは誰にも知られていない三人だけの秘密。
しかし、ある事件がきっかけとなり、秋、諒、優太は、「ふれる」の力を通じて伝えたはずの
心の声が聴こえないことに気づく。
「ふれる」に隠されたもう一つの力が徐々に明らかになるにつれ、三人の友情は大きく揺れ動いていく-。
登場人物
小野田 秋
声 - 永瀬 廉
BARでアルバイトをしている。
身長が高く美形だが、口下手のため周りからとっつきにくいと思われがち。
ふれるがきっかけで仲良くなった幼馴染の諒と優太と上京し、共同生活を送っている。
祖父江 諒
声 - 坂東龍汰
不動産会社勤務。
学生時代から運動神経抜群で、社交性も高いため友人も多い。
秋と優太の兄貴分的存在。
井ノ原 優太
声 - 前田拳太郎
服飾専門学校の学生。
学生時代にファッションに興味を持ち、デザイナー志望。
人と比べてしまい、たまに卑屈気味なところも。
鴨沢 樹里
声 - 白石晴香
芯が強く、頼りがいのある姉御肌ではっきり物事を言うタイプ。
奈南とは学生時代からの友達で幼馴染。
優しい性格の奈南を守るボディーガード的な存在でもある。
浅川 奈南
声 - 石見舞菜香
優太と同じ服飾専門学校に通っていた。
人当たりが良く、見た目は幼い印象だが精神年齢は高め。
人を気遣いすぎて流されてしまい、トラブルに巻き込まれることも。
脇田
声 - 皆川猿時
秋・諒・優太の学生時代の学童の恩師。
おおらかな性格だが、児童のことをよく見ている。
お酒が好き。
大学時代の卒業論文で、"ふれる" の伝承について調べたことがあり詳しい。
島田 公平
声 - 津田健次郎
服飾専門学校の先生で、優太のクラスの副担任。
クラスの授業にはあまり関心がある様子ではなかったが、ある事をきっかけに優太を気にかけるようになる。
主題歌
- YOASOBI「モノトーン」
"人と人との関係性" と、自分自身が生きていく上で感じている孤独や誰かを想う気持ちと向き合いながら制作されたという 「モノトーン」。
世の中は日々発展していって、様々なツールでコミュニケーションが取りやすい環境だからこそ、それ故に感じる孤独と上手く向き合うことが大切と感じる想いが込められている。
「わかっているはず」という甘えを捨て、血の通った言葉をもう一度
「言わなくても、伝わっている」
それは人間関係における一つの理想の形に見える。
しかし本作は、その心地よい一体感の裏に潜む危うさを容赦なく暴き出す。
物語の軸となるのは、不思議な生き物「ふれる」を介して互いの心の声が流れ込んでくる青年たちの共同生活だ。
彼らは言葉を尽くさずとも、触れるだけで感情を共有できる。
しかし、それは裏を返せば「言葉で伝える努力」の放棄でもあった。
相手を傷つけるかもしれない言葉を飲み込み、都合のいい調和に依存する。
この「言葉のいらない関係」の功罪こそが、本作の最も鋭い切り口といえる。
振り返れば長井龍雪氏・岡田麿里さん・田中将賀氏の3人、通称「超平和バスターズ」が描いてきた物語は、どれも常にその心の内をどう叫ぶかというテーマと格闘してきた。
『あの花』では、止まっていた時間を動かすために隠していた本音を爆発させた。
『ここさけ』では、言葉を封じられた少女が歌によって感情を解き放った。
そして『空青』では、過去と向き合うことで未来への言葉を見出した。
これまでの秩父三部作が「言葉にできない想いをいかに届けるか」という、少年少女のひたむきな表出の物語だったのに対し、本作はその一歩先を行っている。
主人公たちが成人した20代であることも象徴的だ。
社会に出れば、本音を言うことだけが正解ではない。
しかし、大人としての折り合いを覚え、阿吽の呼吸で繋がっているつもりになっていた彼らは、実は「ふれる」という力に甘え、本当の意味で相手を見つめることを忘れていた。
本作が描いたのは、「わかってくれるはず」という甘えを捨て、傷つくことを覚悟で言葉をぶつけ合うという、泥臭くも真摯な対話への回帰だ。
奇跡のようなテレパシーを失って、初めて彼らは自分自身の声と言葉で話し始める。
それは、「叫びたい」と願っていたあの頃の純粋さから、他者と生きるために「伝え続けなければならない」という大人の責任への、クリエイター陣の視点の確かな進化を感じさせるものだった。
人は言葉を持つ。
だからこそ、人は他人の言葉に一喜一憂する。
「言わなくても、伝わっている」や「言わなくてもわかるだろう」はエゴであり、甘えでしかないのだーーー。
…というのが、本作のテーマなのだろう。
だが、過去の青春三部作『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』『空の青さを知る人よ』ほど、心が揺さぶられることはなかった。
物語のクライマックスで「ふれる」の涙をみるまでは…。
あの涙が意味したものはなんだったのだろう。
いつもさりげなく他人を支え、しかし誰にも気づかれないまま、いつしか誰からも忘れられていく。
そんなどうしようもない孤独感を、直感で感じたこのシーン。
ああ、そうか。
あれは世間体で取り繕われた形だけの言葉たちの涙だったのか。
心の通わない言葉は、吐き捨てられていく。
心の通わない言葉では、魂は揺さぶられない。
最近、そういう言葉ばかりをよく耳にする。
他人との関わりを、極力避けたような言葉を。
心を揺さぶるような熱い言葉は、「ふれる」のように、今に皆の心から忘れ去られてしまうのだろうか。
それでも信じたい。
世の中まだ捨てたものじゃない、と。
そう信じたい。
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