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完全趣味の世界

ioritorei’s blog

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【日本映画『青天の霹靂』】名作と呼ぶにはおこがましいが、作り手と演者の真摯な熱量は名作級。

 

日本映画

青天の霹靂

※本稿はネタバレを含みます。ご注意下さい。

 

 

名作と呼ぶにはおこがましいが、作り手と演者の真摯な熱量は名作級

 

 

 

 

 

 

 

日本映画『青天の霹靂』とは

 

 

ミリオンセラーとなった『陰日向に咲く』に続く劇団ひとりの小説を、彼自身が脚本・監督・出演を兼ねて映画化。

お笑いだけでなく、俳優、作家としてマルチな活躍を見せる劇団ひとりが映画監督に初挑戦したヒューマンコメディ。

大泉洋氏演じる売れないマジシャンがひょんな事から40年前にタイムスリップし、若き日の両親と出会い、自らの出生の秘密を知る。

劇団ひとり本人も、主人公の父親の若き日を演じ、大泉氏とコミカルなやりとりを見せる。

主人公が雷に打たれて過去にタイムスリップし、若き日の両親に出会う物語は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『異人たちとの夏』といった名作を連想させ、さりげなくオマージュをささげているあたりに監督の映画愛を感じさせる。

マジシャン役の大泉氏が実際にマジックを披露するシーンを、カットを割らずに一気に見せるこだわりや、笑わせて泣かせる緩急付けなど、初監督とは思えないような手腕も見もの。

 

 

青天の霹靂 豪華版(Blu-ray2枚組)

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原作:劇団ひとり『青天の霹靂』(幻冬舎)

 

『青天の霹靂』は、劇団ひとりによる小説である。

2010年8月25日に幻冬舎から刊行された。

劇団ひとりが書き下ろした小説としては、デビュー作の『陰日向に咲く』に次いで本作が2作目。

劇団ひとりは荒木町にあるガラガラ状態のマジックバーで「ペーパーローズ」というマジックを見て感動した時にこの作品を思いつき、最初からいずれ映画にしたいという思いを持って小説を書き始めた。

約1年で書き上げて幻冬舎に持ち込み、書籍化が決定した。

 

 

青天の霹靂

青天の霹靂

 

 

 

あらすじ

 

 

39歳。

売れないマジシャン。

母には捨てられ、父とは絶縁状態。

そんな彼に、突然もたらされる父の死の一報。

なんで俺、生まれてきたんだろう。

絶望に暮れる彼に一閃――青天の霹靂。

そして気付けばタイムスリップ。

その先は40年前の浅草。

全ての娯楽が集まる街で出会ったのは、若き日の父と母。

スプーン曲げで人気マジシャンとなった彼は、ひょんなことから父とコンビを組むことに。

そして母の妊娠。

10ヶ月後、生まれてくるのは……俺だ。

次第に明らかになる自身の出生の秘密。

果たして彼を待ち受ける結末とは――。

笑いと、たぶん一粒の涙の物語。

 

 


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登場人物

 

 

  • 轟晴夫:演 - 大泉洋
  • 花村悦子:演 - 柴咲コウ
  • 轟正太郎:演 - 劇団ひとり
  • 信吉(幼少期):演 - 須田琉雅
  • 医師:演 - 笹野高史
  • 雷門ホール支配人:演 - 風間杜夫
  • プロデューサー斉藤:演 - 入江雅人
  • マジックバーのぶきち店長:演 - 小石至誠(ナポレオンズ)
  • 沢田:演 - 高橋周平
  • 他:柄本佑、岩井秀人、前野朋哉、黒田大輔、中村育二、今井隆文、小村裕次郎、ヤマザキモータース(くらげライダー)、稲川実代子、池谷のぶえ、猫田直、水森コウ太、クロヤギ

 

 

 

作り手と演者の真摯な熱量がかけたマジックが、種明かしを超える

 

 

どこかNetflix映画『浅草キッド』と同じ匂いのする本作。

「劇団ひとりってこういう世界観が好きだよな」

これが最初の印象。

そうとわかると、物語の展開もだいたいの予想がつく。

タイムスリップ、若かりし父親との再会、母親にまつわる父親の嘘、ベタ中のベタ展開がこの物語の核である。

冷静に展開予想してしまう本作のような作品は、経験上、没入感に乏しい。

だが、演者の熱演がそれを超えてくることもある。

本作が、まさにそれにあたる。

タイムスリップして真実を知った瞬間の晴夫(大泉洋)の感情の揺れは、ベタだと分かっていてもグッとくるものがあった。

それはとりもなおさず、大泉洋氏の熱演があったればこそ。

マジシャンという(おそらく過去一度も演じたことのない、ただしどこか『水曜どうでしょう』ぽくはある)設定にも、大泉洋氏はCGや吹き替えなしで挑んだという。

凄腕とまではいかないが、大泉洋氏のマジックシーンは、映像としての説得力が凄まじい。

わかりきった展開でもなんだかんだ言って惹き込まれていってしまうのは、大泉洋氏の演技が好きなのだろう。

そんなことを改めて思い知る。

なかでも大泉洋氏の熱演が際立った印象的だったシーンがある。

それは、"最後の病室" のシーン。

余命いくばくもない柴咲コウさん演じる悦子。

そんな悦子が、すべてを察しながらも取り乱さず、ただ穏やかに受け入れているあの表情……。

晴夫がタイムスリップして必死に抗おうとしている中で、悦子だけは「未来から来た息子」であることを本能的に悟っているような、超越した母性を感じさせる。

病室での彼女の演技は、悲劇というよりは納得や愛の完成に近い空気感があった。

だからといって、晴夫=未来の息子を確信させる悦子の特別なセリフはない。

あえてセリフで説明しすぎず、柴咲さんの目や微笑みにすべてを託した演出も光っていた。

感情を爆発させる大泉洋氏に対し、柴咲コウさんは徹底して引き算の演技に徹している。

わずかな口角の上がり方、潤んだ瞳の動きだけで、「生まれてきてくれてありがとう」という無言のメッセージが伝わってくる。

その静謐な佇まいこそが、ベタ展開のこの物語にリアリティという名のマジックをかけていた。

この "最後の病室" のシーンは、柴咲コウさんの静かな演技を受けた大泉洋氏の熱演があったればこそ成立した、本作屈指の泣きどころだろう。

父は嘘で息子を守ろうとしたが、母は真実を飲み込んで息子を未来へ送り出した。

こんなベタな美談なんかあるわけないとはわかっている。

わかってはいても惹き込まれていったのは、古き良き昭和の風に当てられたからか。

実に劇団ひとり監督らしい本作。

良くも悪くも、劇団ひとりワールド全開。

複雑化した最新映画に疲れた人にとっては、おすすめかも。

まるで『男はつらいよ』を観ているような懐かしい感覚に、もしかしたらなれるかもしれない。

ベタな物語を名作に変えるのは、作り手と演者の真摯な熱量である。

名作と呼ぶには少しおこがましいかもしれないが、作り手と演者の真摯な熱量だけは名作級であることだけは間違いない。

 

 


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