落語『三枚起請』は、コンプラ重視の嘘を乱発して演者を泥試合に巻き込んだ身勝手なテレビ局の卑劣な二枚舌
落語『三枚起請』
棟梁が猪之さんに夜遊びしすぎると意見しているが、猪之さんは遊びじゃなく本当に惚れあった遊女がいる、証拠があると言いだした。
証拠は一枚の起請文。
起請とは遊女が、
「年季が明けたら夫婦になる」
などと書く誓いの文で、その起請文を喜瀬川という女郎からもらったと猪之さんは自慢げだ。
「見せてみろ」
と言われて、大事そうに猪之さんが出した起請文には、
「喜瀬川こと、みつ」
と女郎の名前が書いてある。
名前を見た棟梁、思いあたる節がある様子で女郎の歳や顔の特徴などを次々と問いただした。
棟梁が女のホクロの位置までピタリと当てるので猪之さんは、またびっくり。
呆れ顔でその起請文を放り投げた棟梁。
実は俺も同じものを持っていると懐から喜瀬川の起請文を取り出した。
棟梁も起請を信じて今まで独身でいたのだ。
騙されたと知った二人が悔しがっているところへ、清公が入ってきた。
おしゃべりだけに耳も早い。
隠す間もなく猪之さんの手から起請を取りあげ、ニヤニヤしながら読みはじめた。
が、そのうち真剣な目になってきた。
棟梁と同じように女の特徴を聞く。
またピタリと一致。
清公も同じ起請文を持っていることがわかり、血相が変わった。
台所へ飛びこんでワサビおろしを持ちだし、女の顔をこれでおろしてやると息まいている。
事情を聞くと、喜瀬川に金を無心されたので、奉公に出ている妹に無理強いして作った金の礼が起請文だったという。
三人は棟梁の馴染みの茶屋へ喜瀬川を呼んで油をしぼって恥をかかせようと相談し、家を出た。
茶屋に着いた三人、猪之さんは戸棚の中、清公は屏風の裏に隠れて女を待つ。
やがて喜瀬川が部屋へ。
あれこれと甘えようとするが、棟梁が相手にせず、持ってきた起請文を破くと、泣くふりをする。
棟梁が猪之という男にも起請文をやっただろうと問いつめると、まさか本人がいるとは思わない喜瀬川は、猪之さんのことをボロクソにこきおろす。
そこへ猪之さん登場。
「職人の清さんにも書いたろ」
「あんなヒョロヒョロしたやつに」
清公登場。
三人で詰め寄ると、今度は喜瀬川が開き直った。
「嘘の起請を書いたら熊野で烏が三羽死ぬ※というぜ」
「おやそうかい。あたしゃ、起請をどっさり書いて世界中の鳥を殺すんだ」
「殺してどうする」
「たっぷり朝寝がしてみたい」
志ん朝復活-色は匂へと散りぬるを い「三枚起請」「お若伊之助」
※.嘘の起請を書いたら熊野で烏が三羽死ぬ
この言葉は、神仏の怒りを恐れさせるための誓約のルールである。
起請文とは、昔の人が「嘘をつきません」と神様に誓う約束手形のことで、特に強力なものとして、熊野三山の「熊野牛王符」というお札が使われた。
熊野の神社では、カラス(八咫烏)は神様の使いと信じられており、そのため神聖な生き物として大切にされてきた。
「神仏に誓った約束(起請)を破れば、熊野にいる神の使いのカラスが三羽死んでしまう」
つまり、「嘘をついたら、神様に大変な迷惑(罰)をかけることになるよ」という最も恐ろしい脅し文句なのである。
遊女に騙される男というのは落語ではお馴染みの設定。
男も騙されっぱなしじゃ恰好がつかないので、反撃に転じるわけだが…。
騙した男が隠れているのも知らず、悪口を言う女。
当の男が登場すると、コロッと変わってお愛想を言う女の変わり身の早さが聞きどころ。
それにしても主導権は女性にあるようで、サゲ部分の居直り方には凄みさえある。
今なら当たり前かもしれないですが……。
『三枚起請』といえば、某超有名アイドルが女性アナウンサーに対して行った性暴力を巡る対応が大変問題となったフジテレビさん。
この問題、なんでもフジテレビさん側が問題を把握しながらコンプライアンス部門に共有せず、件のアイドルをずっと出演させ続けていたとのことが原因でして、これが第三者委員会により認定されたんですね。
これでずいぶんと痛い目にあったはずなんですがね、フジテレビさん、どうやら全然懲りていないご様子で…。
最近、ネットニュースを賑わせているあるドラマのコンプライアンス問題をご存知でしょうか?
なんでもドラマ撮影時、演者のひとりが提示したという身体接触の制限を巡って、もうひとりの演者が「制限があるんだったら夫婦役は受けるべきじゃない」「役者をやるべきではない」と発言したことが問題となっているようでございます。
それをブン屋が面白おかしく書くもんだから、さあ大変。
各方面を巻き込んで、ずいぶんな騒ぎになっております。
しかしね、どうもこの一連。
フジテレビさんの立ち回りが、『三枚起請』の二枚舌、三枚舌を使い分ける花魁の姿と重なって見えて仕方がない。
そもそもこの問題。
コンプラ重視なんてえ綺麗な看板をこれみよがしに掲げておきながら、裏では俳優二人と、そしてブン屋という三つの全く違う相手に、それぞれ都合のいい大嘘を誓って貢がせていた、あのフジテレビさんの管理責任不足なんじゃあないんですかね。
まず、主演俳優には、
「あんたのキャリアを一番に考えて、最高のドラマの座を用意するから。誓ってコンプラは完璧に守るわ」
なんて甘い言葉を囁いてささやいて、事前に聞いていた問題をまた有耶無耶にしちまった。
そしてもうひとりの俳優には、
「あんたの事務所との絆が一番大切。スキャンダルなんて絶対起こさせないから、私を信じて出演してね」
なんていう綺麗な誓約書を差し出して、いい顔をする。
これを聞いて、
「なんて誠実で、コンプラ意識の高い素晴らしいテレビ局様だ」
「フジテレビさんは変わった」
ってえ、みんな大真面目に付き合っていたわけでございます。
ところがだ、結構大事な問題を先送りにされたものだから、そうとは知らない当の本人たちで揉め出した。
そこで現れたのが三枚目の起請の持ち主、ブン屋さん。
「おいおい、『うちはコンプラ違反を徹底調査します』なんてえ起請文が俺のところにも届いてるぜ? 聞けばフジテレビさんは被害者で、あんたらに責任があるっていうじゃあないか」
と、決定的な証拠を持って踏み込んできたから、さあ大変。
三枚の起請文(証拠)が一堂に会した途端、フジテレビさんの口から飛び出したのは、花魁も真っ青な、それはそれは見事な苦しい責任のなすりつけでございました。
とはいえ、実際の詳しい状況はわかっておりません。
じゃあなぜ、責任になすりつけだなんてわかるんだって?
そもそもこの問題は、フジテレビさんのドラマ制作という現場が、旧来型の仕事の進め方を改めず、俳優同士の直接交渉を招く状況になってしまったために起こったことだと感じられて仕方がありません。
誰しも、自分の意に沿わない身体接触を望んでいないのは当然のことでございます。
今までの撮影現場でこのような問題が表面化しなかったのは、単に誰かが耐えて沈黙していたからというだけだと思うんです。
じゃあ誰が耐えてきたんだっていうと、そりゃ出演者しかいないじゃないですか。
そんなことが起こらないように、局側は常に気を配っていないといけないわけです。
フジテレビさんは痛いほど、それを学んだはずですよね。
しかし経験は活かされることなく、フジテレビさん、またまた怠っちゃった。
インティマシーコーディネーターなんていう仕事が近年知られるようになってきましたが、特別に性的な表現がある作品でなくても、監督やスタッフ、俳優同士が直接交渉するのは難しいことですし、そういうことの調整役としてプロデューサーって人がいるわけです。
このドラマのプロデューサーさんは寝ぼけていたんでしょうか。
昔からテレビマンは優秀だって聞きますけど、いったい何をやってるんでしょうね。
この問題、今や炎上する一方でございます。
実際の状況がわからないにも関わらず、すでに両者へのバッシングをする人が大勢出て、事務所もまた、擁護のために相手の公開していない情報を暴露してしまう、泥試合の様相を呈しております。
先の問題で首の皮一枚、かろうじて生き残ったフジテレビさんですが、またまた存続の危機。
この炎上、いったいどう火消しするつもりなんでしょうね。
「嘘の起請を乱発すると、スポンサーが三社消えるってえいうぜ」
「おや、そうかい。それじゃあたしゃ起請をどっさり書いて、世界中のスポンサーを消すんだ」
「消してどうする」
「たっぷりと、思う存分コンプライアンス違反がしてみたい」
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