劇場版アニメーション
呪術廻戦0
『呪術廻戦』とは
『呪術廻戦』は、芥見下々先生による漫画作品。
「週刊少年ジャンプ」(集英社)にて2018年14号から連載中。
人間の負の感情から生まれる化け物・呪霊を呪術を使って祓う呪術師の闘いを描いた、ダークファンタジー・バトル漫画。
略称は「呪術」。
本作は、「ジャンプGIGA」2017 vol.1から2017 vol.4まで連載されていた『東京都立呪術高等専門学校』をプロトタイプ兼正式な前日譚としている。
後に同作は2018年12月4日に『呪術廻戦0巻 東京都立呪術高等専門学校』として発売された。
アニメ『呪術廻戦』
アニメ『呪術廻戦』は、芥見下々先生による同名の漫画を原作とするテレビアニメ作品。
第1期「呪胎戴天編」「幼魚と逆罰編」「京都姉妹校交流会編」「起首雷同編」は2020年10月3日から2021年3月27日まで毎日放送・TBS系列「スーパーアニメイズム」枠ほかにて放送された。
第2期「懐玉・玉折編」「渋谷事変編」は2023年7月より同系列にて放送予定。
劇場版アニメーション『呪術廻戦0』
劇場版アニメーション『呪術廻戦0』が東宝の配給により、IMAX版とともに2021年12月24日に公開された。
テレビアニメ『呪術廻戦』の前日譚を描く『呪術廻戦0 東京都立呪術高等専門学校』を原作としている。
あらすじ
2016年11月、高校生の乙骨憂太には、婚約者の少女である特級過呪怨霊・祈本里香が取り憑いていた。
同級生から執拗な嫌がらせを受けていた乙骨は、里香が彼らに重症を負わせたことで呪術師に拘束され、死刑を宣告される。
しかし強大すぎた里香の力に術師側は尻込み、かつ呪術高専の教師・五条悟の勧めもあったことから、乙骨は2017年に東京都立呪術高等専門学校に転校する。
他者との関わりを恐れ、呪術師になることにも生きることにも消極的だった乙骨だが、個性豊かな同級生と関わる内に生きるための自信を持ち、里香を自分から解呪するために呪術師を目指すようになる。
乙骨の入学から約1年後、かつて一般人を大量虐殺して呪術界を追放された特級呪詛師・夏油傑が突如現れる。
非術師を殲滅し、呪術師だけの世界を目指す夏油は、乙骨達の前で2017年12月24日に、新宿・京都で、大勢の呪霊たちによる虐殺「百鬼夜行」を実行すると宣言する。
そして百鬼夜行当日、夏油は里香を手に入れるため、高専を襲撃する。
安全のため高専に残っていた乙骨は激戦の末に夏油を倒し、同時に里香の解呪に成功し、物語は幕を閉じる。
尻上がりに面白さが増す展開はさすが人気作
本題に入る前に本作の感想を記しておく。
結論から言ってしまえばさすがは人気作、評判通り面白い。
アニメ『呪術廻戦』では序盤から展開が早かったが、劇場版の序盤は鬱屈した展開が続く。
そのせいで、期待感は薄かった。
面白くなる要素を感じなかった。
アニメ版を観ていたせいで、期待しすぎていたのかもしれない。
そんな風に感じだした中盤入り口あたりから、面白さが格段に増してくる。
気がつけば夢中。
アニメ版もそうだったが、それより格段に美しい作画。
物語が動き出してからの展開の速さ、スピード感は秀逸。
テレビ版で高評価だった戦闘シーンも、パワーアップしている。
作画の躍動感・スピード感・滑らかさは必見である。
アニメ版で登場するキャラも総出演。
やっぱり五条悟は最強にして最高。
東堂葵の出番が少ないのは哀しいが、まぁ仕方ない。
これで面白くないわけがない。
さすが人気作は伊達じゃない。
ちなみにアニメ版未視聴でも大丈夫。
時系列は劇場版→アニメ版の方が正しいから、むしろ整合性が取れるはずだ。
劇場版からアニメ版へ入るのもアリかも?
人気作の名に恥じない劇場版アニメーション『呪術廻戦0』。
乙骨憂太vs夏油傑、感動の決着を見逃すな。
主人公・乙骨憂太役に緒方恵美
さて、ここからが本題。
劇場版の主人公・乙骨憂太役には、原作者・芥見下々の意向、並びにテレビシリーズのスタッフからの推薦で、少年の役を多く演じてきた緒方恵美さんが起用された。
乙骨は劇場版から登場するキャラクターであるがゆえに一から役作りを必要があり、緒方さん自身もebookJapanとのインタビューの中で、他者を傷つけぬことを主軸としてきた乙骨が、夏油から「女誑し」呼ばわりされるまでの変化を自然な形で一本化するのに苦労したと振り返っている。
また、通常は本編の流れに沿って収録が行われるが、本作はCOVID-19の流行下だったこともあり、本編とは異なる順序でのアフレコとなった。
このことも役作りの障壁になったと緒方さんは述べており、途中で自分の中の感覚とのずれに気づき、スタッフと相談のうえで冒頭から緒方さんのみ個別に収録したと振り返っている。
碇シンジという強大な呪い
主人公・乙骨憂太役を演じた緒方恵美さんといえば、『エヴァンゲリオン』で演じた碇シンジ役のイメージで広く定着している。
「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ!」。
このあまりに有名なセリフは、エヴァを観ていない人でもご存知の方は多いだろう。
だが逆に言えばこのセリフに囚われていたようでもある。
碇シンジのイメージがあまりに強すぎるせいで、観る側はその像を払拭しきれないでいたのではないだろうか。
緒方恵美さんが少年役を演じれば、必ずどこかで碇シンジと重ねてしまう。
本作もまさにそれで、乙骨憂太のキャラクターは碇シンジにそっくりだ。
自己肯定感が低く酷く内向的で、常に誰かの目を気にしている。
序盤の乙骨憂太のイメージは碇シンジのそれと同じだった。
これではイメージを重ねるなという方が無理である。
決定的だったのが終盤(回想シーン)にある乙骨憂太のセリフ。
「死んじゃダメだ、死んじゃダメだ、死んじゃダメだ!」。
これでは碇シンジそのままである。
最初こそ「やっちまったなー」と思いもしたが、さすがにここまであからさまに被せてくるとなると、ある種の疑問が生まれる。
碇シンジの名セリフを、制作陣は緒方恵美さんにあえて言わせた?
緒方恵美さんのキャスティングがセリフありきのものなのか、緒方恵美さんキャスティングありきのこのセリフだったのかは、原作未読の著者にはわからない。
だが、もし緒方恵美さんをキャスティングした後でこのセリフが追加されたのであれば、それはエヴァへのオマージュなどではない。
何故なら件のセリフは、本作物語上で非常に重要かつめちゃくちゃシリアスなシーンでのものだからだ。
そんな大事なシーンで、他作品の有名セリフをオマージュのためだけに使用するだろうか?
わざわざ茶化したりするだろうか?
いや、絶対にしない。
そこで考える。
声優があまりに大きなアタリ役を得るというのは実は諸刃の剣で、イメージの固着で他の役に馴染めないというデメリットも生まれてしまう。
何を演じても、そのキャラにしか見えなくなってしまうのだ。
緒方恵美さんにとっての碇シンジがまさにそれで、それはある種の呪いのようなものだったのではないのか。
だから制作陣は、あえてイメージを重ねた。
碇シンジという強大な呪いを解くために、視聴者には強制的に碇シンジをあえて連想させる。
見て見ぬふりをしていた碇シンジのイメージを、視聴者の中で確実なものにさせる。
その上で、乙骨憂太という新しいキャラの上書きを企んだのではないだろうか。
まさにこれは碇シンジという呪いのを解くための解呪の儀である。
そしてこれは本作のストーリーと完全に重なるのだ。
乙骨憂太役の緒方恵美さんではなく、乙骨憂太=緒方恵美だったのである。
祈本里香は、もちろん碇シンジだ。
完全に碇シンジと重ねて観ていた序盤が嘘のように、ラストシーンの乙骨憂太からは碇シンジの影が感じられなかった。
なんとも清々しい気分だ。
これはあくまで個人的な仮説にすぎない。
おそらく真相にはたどり着けないだろう。
しかし少なくとも、著者のなかにあった緒方恵美=碇シンジという呪いは完全に解けたように思う。
考えすぎのような気もするが、考えれば考えるほどそうであるような気がしてならない。
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