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完全趣味の世界

ioritorei’s blog

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【日本映画『碁盤斬り』】優等生な時代劇をピリッと引き締める、斎藤工の「悪」とキョンキョンの「裏」。

 

日本映画

碁盤斬り

※本稿はネタバレを含みます。ご注意下さい。

 

 

優等生な時代劇をピリッと引き締める、斎藤工の「悪」とキョンキョンの「裏」

 

 

 

 

 

 

 

日本映画『碁盤斬り』とは

 

 

『ミッドナイトスワン』草彅剛 ×『孤狼の血』白石和彌×豪華キャスト。

武士の誇りを賭けた《復讐》を描く、感動のリベンジ・エンタテイメント!!

 

第44回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した『ミッドナイトスワン』の草彅剛氏が、今度は、冤罪をかけられ復讐に燃える武士に挑み、時代劇を初めて手掛ける『孤狼の血』の白石和彌監督と強力なタッグを実現、新境地を切り開く!

共演は、清原果耶さん、中川大志氏、奥野瑛太氏、音尾琢真氏、市村正親氏、斎藤工氏、小泉今日子さん、國村隼氏と錚々たる豪華絢爛な顔ぶれが集結。

堅物なヒーローが囲碁を武器に死闘を繰り広げる、疑心と陰謀渦巻く愛と感動のリベンジ・エンタテイメントが誕生した。

 

 

碁盤斬り

碁盤斬り

 

 

碁盤斬り Blu-ray豪華版 [Blu-ray]

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原作:加藤正人『碁盤斬り 柳田格之進異聞』 (文春文庫刊)

 

脚本を手掛けた加藤正人先生による書き下ろし小説『碁盤斬り 柳田格之進異聞』

2024年3月に文春文庫より発売。

 

 

碁盤斬り 柳田格之進異聞 (文春文庫 か 85-1)

碁盤斬り 柳田格之進異聞 (文春文庫 か 85-1)

 

 

 

あらすじ

 

 

ある《冤罪事件》に巻き込まれた男の怒りを目撃せよ!

父娘の絆を斬ってもなお、武士には守らねばならない誇りがあった。

 

浪人・柳田格之進は身に覚えのない罪をきせられた上に妻も喪い、故郷の彦根藩を追われ、娘のお絹とふたり、江戸の貧乏長屋で暮らしている。

しかし、かねてから嗜む囲碁にもその実直な人柄が表れ、嘘偽りない勝負を心掛けている。

ある日、旧知の藩士により、悲劇の冤罪事件の真相を知らされた格之進とお絹は、復讐を決意する。

お絹は仇討ち決行のために、自らが犠牲になる道を選び……。

父と娘の、誇りをかけた闘いが始まる!

 

 


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登場人物

 

 

  • 柳田格之進:演 - 草彅剛
  • お絹:演 - 清原果耶
  • 弥吉:演 - 中川大志
  • 梶木左門:演 - 奥野瑛太
  • 徳次郎:演 - 音尾琢真
  • さだ:演 - 飯島順子
  • 長兵衛:演 - 市村正親
  • 八兵衛:演 - 立川談慶
  • 志乃:演 - 中村優子
  • 柴田兵庫:演 - 斎藤工
  • お庚:演 - 小泉今日子
  • 萬屋源兵衛:演 - 國村隼
  • ※.エキストラとして、棋士の井山裕太氏、藤沢里菜さんらが出演している。

 

 

 

手堅い王道時代劇の満足度を支えた異色キャストの存在感

 


白石和彌監督と草彅剛氏のタッグ、そして近年『雪の花』『黒牢城』など本格時代劇にかなり力を入れている印象の木下グループ(キノフィルムズ)制作作品。

時代劇、歴史好きとしては否が応でも期待は高まる。

結論から言うと、全体として「面白かった」といえる仕上がりではあった。

映像の重厚感や古典落語ベースの物語の軸もしっかりしており、最後まで飽きずに観ることができた。

ただ、全体を通して「ここが特別に面白かった!」と言えるような、突出した爆発力や新鮮味には欠ける印象も否めない。

手堅くまとまっている反面、最終的には大団円となるあたり、どこか想定の範囲内を出ない優等生な展開が続く点は少し物足りなさが残る。

そんな中で、個人的に一番の収穫だったのは斎藤工氏の存在である。

斎藤工氏が演じる悪役はかなり珍しいと思われるが、これが意外なほどハマっている。

内に秘めた冷徹さや嫌らしさが上手く表現されており、それでいて言っていることは一本筋が通っている。

また、裏の顔という意味では小泉今日子さんの存在も見逃せない。

良きおっかさんの顔の裏に潜む、遊郭の女将としての冷酷な顔。

基本に忠実な演者の中で、斎藤工氏と小泉今日子さんの存在は、劇中の良いアクセントになっている。

また、囲碁が物語の核になっているのも悪くない。

思い出すのは、かつて夢中になった『ヒカルの碁』。

しばらく観ていないが、久々に碁への興味が湧いてきたのも思わぬ嬉しいポイントだった。

主演の草彅剛氏の演技については、定評がある。

まあ、さすがの演技力というべきだろう。

実直な武士としての苦悩や佇まい、鬼気迫る表情の作り方はたしかに素晴らしかったと思う。

また、傷を負った人間の泥臭さを描くのが上手い白石監督との相性も抜群だった。

これはこれで、完成されていたとは思う。

ただ、個人的には相変わらずの滑舌の悪さが気になり、時代劇の重要なセリフ回しにおいて、時折聞き取りにくく感じてしまったのは残念なところ。

それも想定内といえば、想定内であるわけだけど。

良くも悪くも、手堅く作られた王道の時代劇エンタテイメント。

とはいえ、1本の映画としての満足度は十分に味わえる作品ではないだろうか。

興味がある人は是非。

 

 


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【歴史の闇に葬られた真実】一族を見捨てて逃げた卑怯者か、芸に生きた天才か?織田信長を裏切った「荒木村重」。

 

歴史の闇に葬られた真実

 

 

荒木村重

 

 

 

 

 

 

 

歴史は勝者によってつくられる

 

 

我々がよく知る歴史の記述は、必ずしも客観的な事実の記録ではなく、勝者の視点や都合の良いように解釈・再構成されることが多い。

歴史は、過去の出来事を単に記録するだけでなく、その出来事をどのように解釈し、どのように伝えるかによって、人々の認識や価値観を形成する力を持つ。

そのため、勝者が自らの正当性や優位性を強調するために、歴史を都合よく書き換えることがあるのだ。

たとえば戦争や革命などの歴史的な出来事では、勝者が自らの行為を正当化し、敗者を悪として描くことで、自らの立場を強化しようとすることがある。

また、国家の成立や発展の過程でも、建国の英雄や偉人たちの物語を美化し、都合の悪い事実を隠蔽することがある。

このことから歴史の解釈や記述において、権力や支配者の影響がいかに大きいかがよくわかる。

だが歴史の解釈はひとつではない。

歴史を鵜呑みにしていいのか?

勝者の言い分は、本当に正しいのか?

教科書に書かれたことを疑うことで、初めてみえてくるものがある。

そのためには、敗者や弱者の視点から歴史を再考することが肝要だ。

歴史を多角的に捉え、様々な視点から検証することで、より客観的な歴史認識に近づくことができる。

 

 

 

勝者=善と単純に結びつけてしまう思考の危険性

 

 

特に中学・高校の日本史の教科書は政治史が中心で、必然的に勝者の歴史が描かれ、それが日本史の流れとして理解される。

勝った側が善とされ、敗者は悪とされることで、結果的に「正義は勝つ」と教え込まれる。

勝者が善で、敗者が悪という歴史観の極致が「征伐」という言葉である。

たとえば豊臣秀吉の天下一統の流れを追う時、無意識のうちに四国征伐、九州征伐、小田原征伐、さらに朝鮮征伐という言い方がされてきた。

これは敗者は悪とされ、悪人だったために、正義、すなわち勝者によって滅ぼされたという論理の組み立てで、勧善懲悪という考え方を深くすり込まれてきた。

そのせいで、現代日本人は多角的な考え方が苦手になってしまったように思えてならない。

勝者=善という決めつけは、思考の柔軟性を奪ってしまう。

敗者=悪という決めつけが、同調圧力を生み出す。

敗者にも成したことがあり、言い分だってあるのだ。

固定観念ほど怖いものはない。

歴史の闇に葬られた真実に目を向けることで、固定観念にとらわれない、柔軟な思考を手に入れる。

本稿がその一助になれば幸いだ。

 

 

 

死を拒み、芸術に執着した異端の戦国武将

 

 

いざとなれば自ら死を選ぶ気概を持つのが戦国武将。

そんな印象を覆すのが荒木村重である。

村重は摂津に生まれ、池田城主・池田勝正の家臣となる。

やがて織田信長の家臣となり、摂津一国の支配を任されて活躍した。

村重は、第一級の文化人でもあった。

特に茶の湯については、後に千利休の高弟の一人にあげられるほどで、能でも観世宗拶の弟子として活躍するなど、その教養の高さは人々から一目置かれる存在だった。

そんな村重が思いもよらない行動に出る。

1578(天正6)年10月、主君である織田信長に反旗を翻し、敵対する毛利家と同盟を結んだのだ。

理由については諸説あるが、大坂攻めの司令官の役割を佐久間信盛に取られるなど、信長の家臣としての将来を悲観したのが原因ではないかともいわれる。

また、当時播磨では織田・毛利両家が激しく争い、織田から離れていく領主も多かった。

その動きが摂津にまで及び、村重の謀反を促したとする説もある。

謀反を企てた村重は、信長に派遣された佐久間信盛、明智光秀、羽柴秀吉らに反乱をやめるよう説得されたが、首を縦にふらなかった。

そうこうしているうちに、信長が自ら大軍を率いて摂津に向かってきてしまった。

信長は村重に加担した勢力を次々に撃破すると、村重の居城である有岡城を包囲する。

だが、難攻不落の有岡城はなかなか落城せず、いたずらに月日が流れていった。

それでも、孤立無援となり、兵糧攻めにあった有岡城は、徐々に追い詰められていく。

すると、驚くべきことに、村重は数人のお供と共に城を抜け出し、嫡男のいる尼崎城に逃げ込んでしまった。

主を失った有岡城は、遂に抵抗むなしく落城する。

重臣たちは、村重の降伏と尼崎城などの開城を条件に、村重の妻子や家臣の命を助ける約束を信長と結んだ。

しかし、なんと村重は重臣の説得を拒否して、またも逃亡してしまう。

これによって、村重の妻子をはじめ一族郎党は京都や摂津で磔にされたり、焼き殺されたりして、皆殺しにあったのである。

一方、一人逃げ延びた村重は、毛利家のもとへ身を寄せる。

村重が妻子を犠牲にしてまで生き残ることにこだわった理由はなんだったのか。

諸説あるが、「武に滅んでも文に生きる」という強い信念を持ち、芸術の追求に執着したためだともいわれる。

第一級の文化人であったことが、村重に、武士としては屈辱の選択をさせたのかもしれない。

しかし、村重の行ないは当時の人々の不評を買ったようだ。

これに反省したのだろうか、その後、自ら「道糞」、つまり道端の糞と名乗るようになったと伝えられている。

 

 

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茶の湯

 

落語『茶の湯』はわからないことをわからないと言わないプライドで周囲に胃薬を飲ませ続ける四十も過ぎた単なるガキ

 

 

 

 

 

 

 

落語『茶の湯』

 

 

さる大店の主人が息子に暖簾を譲って隠居する。

そこで根岸に隠居用の屋敷を建て、身の回りの世話にと定吉という小僧を伴って移り住んだ。

さて、これから余生を楽しもうと思ってはみたものも、なにせ若い頃から金を貯めること意外やったことがない。

いくらのどかで過ごしやすくても、隠居生活が退屈で仕方がない。

退屈しのぎに何かやってみるかということで、見よう見まねで茶の湯でもやってみようということに。

定吉は茶菓子が食べられると喜んだが、二人とも茶道には暗く、何をしていいかわからない。

「若旦那が茶会に出入りしていると聞きます。聞いてみたらどうでしょう?」

「いや、息子に聞くなんて沽券にかかわる。とにかく町で必要なものを揃えてきなさい。たしか一番初めに青い粉を入れたな」

と、頼まれた定吉。

茶の湯に使う青い粉ということで青黄粉(あおきなこ)※1を買ってきた。

「そうだこれだ。これを耳かきで茶碗に入れて湯で溶いてかき回す」

だが、いくらかき回してもちっとも泡立たない。

泡立てるならと今度は定吉、乾物屋で椋の皮(むくのかわ)※2を買ってきた。

おかげでちゃんとブクブク泡が立って、見た目だけはそれらしきものができた。

「定吉、おまえが客なんだからおまえから飲みなさい」

「あたしには作法がわかりませんので、ご主人様がお手本を見せてください」

「では、同時に飲むか」

とグイっとやるが、口の中がしびれて仕方がない。

口がしびれたところに羊羹を放り込んで口直し。

「これは風流」

と無理に納得するご隠居。

こうして風流三昧の毎日だったが、定吉はたまったもんじゃない。

自分だけ腹を壊してるのも癪だから、ご隠居の持つ長屋連中を呼んで茶会を開こうと提案する。

流儀が違うとご隠居は渋っていたが結局、大工の棟梁、豆腐屋、手習いの先生を呼ぶ事にした。

驚いたのは長屋の店子たち。

家主から手紙が来たので見てみると、茶の湯への招待。

恥をかくくらいなら転居しちまおうか、などど考える店子たちだったが、何かあってからでも遅くはないからとりあえず行ってみるか、ということで話はまとまった。

もちろん店子たちだって茶の湯などやったことはない。

作法がわからなくて不安そうにしていると、

「細かい作法なんて気にしなくていいからグイっと飲みなさい」

と、ご隠居さん。

前の人の真似をしながらなんとか飲み終えた。

三人はお茶のあまりの不味さにびっくりしたが、口直しに羊羹をほおばると、何とかその場を切り抜けることができた。

これに味を占めたご隠居。

すっかり茶の湯にはまってしまい、毎日のように店子たちに招待状を出すようになる。

が、客はみんな羊羹目当てでやってくる。

すると今度は茶菓子の羊羹代が馬鹿にならなくなってきた。

羊羹の勘定書きを見て驚いたご隠居、とうとう菓子も自分で作るようになってしまう。

ところがこれが不味いこと不味いこと…。

客が不味いお茶を飲んで口直しに饅頭を放り込むと、こちらも酷い味。

ある男が、あまりの不味さに、食べた振りをして饅頭を袂に隠すと、厠へ行き、屋敷の向こうへ放り投げた。

すると投げた先の百姓の顔に饅頭がベチャ。

「ああ、またご隠居さんのところで茶の湯か…」

 

 


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※1.青黄粉(あおきなこ)

落語の中ではひどい扱いを受けているが、実際には和菓子(うぐいす餅やおはぎなど)によく使われる美味しい食材である。

一般的な黄粉(きなこ)が大豆を焙煎して作られるのに対し、青黄粉は青大豆(あおだいず)を原料としている。

特有の鮮やかな緑色と、大豆よりもあっさりとした上品な甘みが特徴。

 

※2.椋の皮(むくのかわ)

本来はムクロジ(無患子)という植物の果皮を指し、水に入れると天然の石鹸成分(サポニン)で泡立つ性質がある。

 

 

無駄なプライドが邪魔して、素直に知らないと言えないご隠居さん。

それでも落語の世界でなら、「風流だねえ」なんてカラリと笑ってやれます。

ですが、いざ現実にこのような人と出会しますとそれはそれは困ったものでして…。

最近、オフィスで見かける一部の人たちの仕事ぶりを眺めていますと、どうもこの『茶の湯』の「おままごと」が重なって見えて仕方がねえ。

段取りはいい加減。

責任を背負う覚悟はもちろんゼロ。

いざトラブルが起これば、すぐに誰かの背後に隠れてしまう。

いわゆるゆとり世代と呼ばれる人たちですな。

しかしご本人にはそういう自覚はまったくないようでして、むしろ上手く立ち回れていると思ってるってんだから始末が悪い。

もちろん、人をそんな名で一括りになんかしたくありません。

優秀な方もたくさんおります。

それでも、そう呼ばざるを得ない彼らの仕事のやり方を一言で表すなら、「マニュアル我流なぞり書き」。

『茶の湯』のご隠居然り、作法もろくに知らないくせに、一端の茶人を気取るようなものでございます。

仕事の本質や、なぜその作業が必要なのか、どうしてそうなったのかかっていう理由を、まあ自分の頭で考えようとはしません。

だから、マニュアルに書いてある表面の文字だけをなぞって、勝手な解釈で青黄粉の毒茶を作り出します。

誰だってそんなもん飲みたくはありませんよねえ。

だから「それは違う、お茶ってえのはそういうもんじゃない」と教えてはやるんですが、言うだけ無駄。

糠に釘、暖簾に腕押し、右から左で聞く耳なんて持ちゃしません。

言ってるこっちが馬鹿らしくなってくる。

おまけにプライドだけは一丁前ですから、もちろん「分かりません」と頭を下げることも「すみません」と謝ることもできやしない。

それどころか、せっかくいただいたありがたいアドバイスも、彼らには説教に聞こえているんでしょうねえ。

だから人の忠告も無視して、勝手に我流で進めていった仕事が結果大炎上。

揉めに揉めてる真っ最中だってぇのに、当の本人ときたら「私はマニュアル通りにやりました」「指示の出し方が悪いんです」と逆ギレして、ふてくされちまう。

その頑なさ、如何ともしがたい。

ご本人はわかっていないようですが、挨拶一つまともにできちゃいないくせに、自分の「繊細な心」だけは傷つけまいと必死な姿は、ご隠居の機嫌を損ねないよう、顔を歪めながら必死に茶をすする長屋の住人なんかより、よっぽど滑稽じゃあありませんか。

これがね、社会人になって間もない若手ってんなら可愛げもあります。

でもね、これが四十を超えたオジやオバだってんだから始末が悪いにも程がある。

少年の心を忘れないってんなら話もわかりますよ。

ですが、四十も超えて単なるガキってのは如何なもんなんでしょう。

まったく、ママがいないとなんにもできないんだから。

そんな調子ですから、いい加減こちらの胃薬も尽きてしまいます……。

これじゃあご隠居さんの不味いお茶を飲んでる方が、いくらかマシってもんです。

「どうも今日はそこら中に胃薬のゴミが落ちているようだが?」

「ああ、どうやらまたゆとり世代が何かやらかしたようですな…」

 

 

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今すぐ誰かに話したくなる知的雑学【知識の泉】「その嘘、もしかしたらバレているかも…なぜ人は騙すときに "3" と "8" を選ぶのか?」

 

知識の泉

今すぐ誰かに話したくなる知的雑学

 

 

その嘘、もしかしたらバレているかも…なぜ人は騙すときに「3」と「8」を選ぶのか?

 

 

 

 

 

 

 

知識は力なり

 

 

かの有名なイギリスの哲学者、フランシス・ベーコンは言った。

「知識は力なり」と。

この言葉には、読んで字の如く「知識は自身の力になる」という意味とは別に、「経験によって得た知識を、いかにして実践的に使用することができるのか」という意味も込められている。

雑学も同様だと思う。

実際には、生きていく上で何の役にも立たないと思われている、どうでもいい情報群。

それが雑学という分野といえるだろう。

しかし雑学で得た知識を、どのように使うのかは人それぞれ。

普段の話のネタに困っている人。

トーク力を上げたい人。

飲み会やデートなどで知識を披露したい人。

知識を吸収したいけどあれこれ調べるのが面倒な人。

そして、物事の本質や奥深さを知りたい人。

純粋に「なるほど!」と思いたい人まで。

当たり前に感じていたことも、角度を変えた視野からみることで、別の面があることに初めて気付かされる。

その知識を他人にひけらかすだけでなく、その知識をもとに、固定観念から解放され、世の中の見え方を変えようではないか。

さすれば、「知識は力なり」の言葉の意味を実感できるはずである。

 

 

 

消去法で選ばれる「一番バレにくそうな数字」の罠

 

 

「ちょっと3分だけ遅れる!」

「そこには8人くらいのグループがいてさ……」

日常生活の中で我々は、とっさに苦し紛れな言い訳をしたり、もっともらしい作り話をしたりするときがある。

それは人間関係を円滑にする上での、必要悪ではあると思う。

だが、その嘘。

もしかしたらバレているかもしれない。

なぜか。

実は人間は、無意識のうちに「3」と「8」という数字を、驚くほどの高確率で選んでいることをご存じだろうか。

この人間の不思議な心理的盲点を、昔の人は鋭く見抜いて「まったくのでたらめ」のことを「嘘の三八(うそのさんぱち)」と呼んだ。

なぜ人間は架空の数字をでっち上げる際、綺麗に揃った「10」や「5」ではなく、わざわざ「3」や「8」という中途半端な数字を引っ張り出してきてしまうのか?

そこには人間の脳が持つ「一番バレにくそうな数字」を自動計算する面白い罠が隠されている。

そもそも人間は嘘をつくとき、本能的に「それっぽく聞こえる具体的な数字」を探す習性がある。

このとき、脳内では一瞬にして消去法が行われ、こう考える。

 

「10日」や「5万円」といったキリの良い数字はあまりに綺麗すぎて、「適当に言っているのではないか」と相手に疑われるのではないか?

 

このようなリスクを脳が直感的に察知して避けるのである。

また、「1」や「2」といった少なすぎる数字は、あとから事実確認が簡単にできてしまうため、嘘が露見しやすい。

逆に「7」はラッキーセブンの印象が強すぎて作為的に見えてしまう。

その結果、脳が消去法で行き着くのが、地味でキリが悪く、それなりにボリューム感があって、かつそれなりの現実味を感じさせる「3」と「8」というわけだ。

実際に心理学の実験でも、人間に「1から10の中でランダムな数字を思い浮かべてください」と頼むと、多くの人が「3」や「7」、「8」を選ぶことが分かっている。

人間にとってこれらの数字は、不規則(ランダム)っぽく聞こえる最も都合の良い数字の代表格なのだ。

そのため、架空の数字をでっち上げる時に真っ先に脳の引き出しから飛び出してきてしまうのである。

ちなみに江戸時代の記録を紐解くと、嘘の数字には「5」も混ざりやすいことから「嘘の五三八(うすごさんぱち)」という言葉で遣われていた形跡もある。

いつの時代も人間の言い訳のパターンは変わっていないらしく、どこか愛らしくもある。

この話の最も面白い着地点は、我々が今でもよく遣う「嘘っぱち」という言葉が、この「嘘の三八」が長い年月をかけて、発音しやすい「っぱち」へと変化した日常の残骸だという説だ。

もし明日、あなたの目の前で誰かが怪しい言い訳を始めたら、その話の中に「3」や「8」が不自然に登場しないか注目してみてほしい。

それはきっと相手の脳が必死にひねり出した「三八」のサインかもしれない。

逆に、あなたがどうしてもバレたくない嘘(例えばサプライズの仕込みなど)をつくときは、「3」と「8」をあえて避けるのが、現代の心理戦における鉄則。

覚えておくといい。

 

 

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ワンピもハリポタも大河も同じ?結末から逆算した脚本家目線の楽しみ方

 

ワンピもハリポタも大河も同じ?結末から逆算した脚本家目線の楽しみ方

 

 

 

 

 

 

 

大河ドラマ。

NHKによる歴史ドラマシリーズで、基本的に1年一作を基準として、60年以上に渡って制作が続けられている。

基本的には、日本史上実在した人物の生涯を描いた作品や群像劇となる。

作品によっては歴史学上の定説と離れた演出が加えられることもあるが、歴史ヲタク(歴ヲタ)としては、最新の研究結果を知ることができる貴重な作品である。

しかし1年一作の大作が故に、2周目に入ることはほとんどない。

ただ1話1話を、その都度脳裏に焼き付けるだけである。

だがこれもサブスクリプション(サブスク)時代の恩恵なのだろう、最近は簡単に過去作に触れる機会を得ることができるようなった。

2016年の大河ドラマ『真田丸』

三谷幸喜脚本で、当時は社会現象にまでなった人気作品である。

この『真田丸』、第1・2話を実に10年ぶりに観直してみた。

するとどうだろう。

リアルタイムでは気づけなかった、あるいは気づいていても忘れてしまった秀逸な仕掛けがいくつも見つかるではないか。

改めて観てみると、本当によく出来た作品だ。

たった第1・2話だけではあるが、何せ伏線が絶妙である。

たとえば、北条氏政の紹介シーン。

大河ドラマという作品では、物語に今後絡むであろう重要人物が、その演者と共に事前に少しだけ紹介されることがある。

北条氏政もそうだった。

本格的な登場はまだ少し先のことになるのだが、主人公、つまり真田家の現状把握のためにその存在が紹介されている。

このほんの数秒のシーンで、北条氏政は何故か湯漬け(ご飯にお湯や味噌汁をかけたもの)を食べている。

歴史に興味がなければ、なんのこともないシーンに見えるだろう。

しかし歴史を知れば、北条氏政の人物像を端的に表現した、思わず膝を叩きたくなる名シーンなのだ。

北条氏政については、こんなエピソードが残されている。

ある日、北条氏嫡男である氏政が湯漬けを食べていた時のこと。

最初にかけた汁の量では足りず、もう一度(2度目)汁をかけて食べ始めた。

その様子を目の当たりにした父・氏康は、突然落涙してしまう。

理由を尋ねる家臣に対し、氏康は「毎日食事をしているのに、飯に掛ける汁の量すら一度で量れないとは。これでは国や領民の事情を推し量ることなどできるはずがなく、北条家もわしの代で終わりだ」と嘆いたとされる非常に有名な逸話である。

真偽のほどはわからない。

だが氏康の予言通り、氏政が時勢を読み切れなかったために、戦国大名としての北条氏は5代100年の歴史に幕を下ろすことになる。

この事実を鑑みて後世に創作された後付けのエピソードの可能性は否めないが、たったワンシーンで氏政の人物像を表現するのにうってつけだったことには違いない。

『真田丸』には、こうした「未来の結末」を内包した秀逸な仕掛けが、あちこちに仕込まれている。

たとえば、武田家を滅ぼした直後の徳川家康と石川数正とのやり取りも実に秀逸である。

教科書にも書いてある通り、武田家滅亡のきっかけは一門衆、つまり身内による裏切りだった。

いつの世も裏切り者は忌み嫌われる。

我が徳川家からはこのような家臣を出したくない、と裏切りを嫌悪する徳川家康。

それを沈痛な面持ちで見つめる石川数正。

が、この石川数正。

徳川家重臣の身でありながら、後にライバル・豊臣秀吉の元へ出奔してしまう人物。

数正の真意は今なお歴史の謎とされている。

謎が故に、フィクションの入り込む余地がある。

そのため美談として描かれている作品もなくはない。

しかし普通に考えれば裏切りでしかない。

歴史上、数正が出奔するのはずっと先の話。

この会話、この時点ではまだ何気ない一幕に過ぎない。

だが未来の裏切りという結論を知る者からしてみれば、これほど皮肉でスリリングな場面もないのである。

たった1話・2話の中に、北条の滅亡も、徳川の衝撃的な事件も、すべてが画面の端々に仕込まれている。

もしかしたら探せばもっと見つかるかもしれない。

 

 


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だが、それというのも、すべては歴史という結末を知っているからである。

かの世界的ベストセラー『ハリーポッター』シリーズ著者・J・K・ローリングは、結末をまず決めてから物語を考えたという。

『ONE PIECE』の著者・尾田栄一郎先生も、結末はすでに決めているという。

大河ドラマも同様ではないのか。

我々は歴史の大筋を知っている。

つまりは結末を知っている。

しかし詳しく細部を見てみればまだいくらか謎の部分が残っていて、その謎の膨らませ方こそ脚本家の腕の見せどころなのである。

豪華なキャスティングにばかり目を惹かれる大河ドラマ。

その時々で旬な俳優が名を連ね、時代を反映したような作品である。

しかし大河ドラマには、脚本家目線のこんな楽しみ方もある。

結末を知った上で、歴史認識を変えることなく、どう面白くしていくのかが脚本家の腕の見せどころなのである。

そういうところに注目してみると、大河ドラマのみならず、すべてのエンタメ作品が、今よりずっと面白くなる。

 

 

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今すぐ誰かに話したくなる知的雑学【知識の泉】「"カララン" と響く、あの夏の記憶…ラムネのガラス玉が紡ぐ、時を超えた遊び心」

 

知識の泉

今すぐ誰かに話したくなる知的雑学

 

 

「カララン」と響く、あの夏の記憶…ラムネのガラス玉が紡ぐ、時を超えた遊び心

 

 

 

 

 

 

 

知識は力なり

 

 

かの有名なイギリスの哲学者、フランシス・ベーコンは言った。

「知識は力なり」と。

この言葉には、読んで字の如く「知識は自身の力になる」という意味とは別に、「経験によって得た知識を、いかにして実践的に使用することができるのか」という意味も込められている。

雑学も同様だと思う。

実際には、生きていく上で何の役にも立たないと思われている、どうでもいい情報群。

それが雑学という分野といえるだろう。

しかし雑学で得た知識を、どのように使うのかは人それぞれ。

普段の話のネタに困っている人。

トーク力を上げたい人。

飲み会やデートなどで知識を披露したい人。

知識を吸収したいけどあれこれ調べるのが面倒な人。

そして、物事の本質や奥深さを知りたい人。

純粋に「なるほど!」と思いたい人まで。

当たり前に感じていたことも、角度を変えた視野からみることで、別の面があることに初めて気付かされる。

その知識を他人にひけらかすだけでなく、その知識をもとに、固定観念から解放され、世の中の見え方を変えようではないか。

さすれば、「知識は力なり」の言葉の意味を実感できるはずである。

 

 

 

瓶の中に閉じ込めた、涼を呼ぶハイテクな仕掛け

 

 

日本の夏に欠かせない、あの涼しげな音。

シュワっと弾ける炭酸の刺激とともに、カラランと瓶の中で響くガラス玉の音は、聞くだけで涼を運んできてくれる。

そう、夏の風物詩「ラムネ」である。

ところで、あの瓶の中に入っているガラス玉。

なぜ、わざわざあんな場所に閉じ込められているのか、その本当の理由をご存知だろうか。

「飲むときに邪魔なエンタメ要素」と思われがちなあのガラス玉だが、実はオモチャでも飾りでもない。

炭酸ガスが抜けないように内側から密閉する、当時の最先端技術が生んだハイテクな蓋(栓)なのである。

仕組みは驚くほどシンプル。

ジュースと炭酸ガスを瓶に詰め、瓶を逆さまにすると、炭酸ガスの圧力でガラス玉が口元へと押し上げられる。

そして、口部分にあるゴムのリングにピタッと密着。

内側からの強い圧力によって、自動的に栓がかかる構造になっている。

ペットボトル容器しか知らない若い世代にこの話をすると、「えっ、ただの飾りじゃなかったの!?」と目から鱗を落とす。

しかし、40代以上ともなれば「そんなの常識だよ」と鼻で笑う人もおそらくいるだろう。

ではそんな人に問題。

「なぜ、あのガラス玉をビー玉と呼ぶの?」

この問題にも、「そんなの常識だよ」と思ったそこのあなた。

もしかしたらそれはクイズ番組やネットの雑学記事で見た、こんな説ではないだろうか。

 

ラムネの栓にするガラス玉は、隙間なく密閉するために完璧な球体でなければならなかった。

検査に合格した一級品を「A玉」、歪みがあってラムネに使えない規格外品を、子供のおもちゃ用として「B玉(ビー玉)」と呼ぶようになった。

 

ストーリーとしてはあまりに完璧で、思わず誰かに話したくなるようなこの雑学。

信じて疑わない気持ちも、分からなくはない。

……だが実はこれ、後から作られた "もっともらしい物語(俗説)" のようなのだ。

日本で唯一ビー玉を製造しているメーカーの記録や、過去の文献をどれだけ漁っても、「ラムネ用にA玉・B玉とランク分けして出荷していた」という証拠は一切ない。

この説が世に出回ったのは1990年代以降のこと。

誰かが創作した都市伝説がテレビやネットで拡散され、いつの間にか常識にすり替わってしまったらしい。

では、ビー玉の語源とは?

本物の語源は、はるか江戸時代にまで遡る。

当時、ポルトガルから伝わったガラス製品を日本語で「ビードロ(vidro)」と呼んでいた。

そこから、ガラス製の球体のことを「ビードロ玉」と呼ぶようになり、それが縮まって「ビー玉」になったというのが、言語学的な正しい歴史のようである。

王冠やプラスチックキャップが普及した現代、利便性だけでいえば、ラムネのあの特殊な瓶はとっくに絶滅していてもおかしくない。

それでも今なお残り続けているのは、我々日本人が「あの音と風情」を愛しているから。

そして、もっともらしい物語(俗説)、つまりは偽物の説まで生み出されてしまうほど、あの小さなガラス玉には、大人も子供も惹きつけられてしまう不思議な魅力がある。

仮面ライダーやウルトラマンなどなど、古来より偽物の出現は人気者の証なのだから。

ラムネの栓を開ける時のあの音。

あの音を聞けば、心はたちまち少年時代へと立ち戻る。

今年の夏はそんなノスタルジックに包まれながら、冷たいラムネを一口すすってみてはいかがだろう。

 

 

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これ考えた人は天才かよ!?【日産リーフのラジオCM『のびると結構変わる』篇】「のびる」だけで世界が変わる "長音" の魔力。

 

これ考えた人は天才かよ!?

日産リーフのラジオCM『のびると結構変わる』篇

 

 

「のびる」だけで世界が変わる "長音" の魔力

 

 

 

 

 

 

 

はじめに

 

 

TVやラジオにおけるCMの存在は、視聴者・聴取者からしたら鬱陶しく感じるものなのかもしれない。

いいところでCMを入れてくる業界お約束の手法は、今も昔も変わらない。

何かと鬱陶しいCMを飛ばせる録画機能が現れた時は、なんて便利な機能なんだと多くのユーザーが喜んだものだ。

だが鬱陶しいと思われるCMの中には、そのセンス良さから思わず見入ってしまうものがある。

映像で魅せるものや、秀逸すぎるキャッチコピーで考えさせられるもの。

CMの、ただ品物を宣伝し売上げを上げる目的を超えた、アーティスティックなCMも数多く存在する。

たかだか30秒ほどのCMだが、ひとつのクリエイティブ作品に昇華させたものがあるのだ。

本稿では、独断と偏見ではあるが、あまりのセンスの良さに思わず唸ったCMをご紹介したいと思う。

 

 

 

日産リーフのラジオCM『のびると結構変わる』篇とは

 

 

日産リーフのラジオCM『のびると結構変わる』篇は、日本語の「長音(のばす音)」に着目した傑作広告。

音が伸びるだけで意味が180度反転するコミカルなエピソードを連発。

映像のないラジオの特性を活かしてリスナーの脳内映像を鮮やかに書き換えながら、最終的に新型リーフの進化という製品価値へ見事に着地させる、芸術的な構成が話題を呼んだ。

 

 

 

耳から始まる脳内ハッキング

 

 

思わず膝を打ったラジオCMがある。

日産リーフのCM『のびると結構変わる』篇だ。

流れてくるのは、一見すると何の変哲もない、けれどどこか違和感のあるエピソードたち。

そこで繰り広げられるのは、日本語の特性を突き詰めた、極めて精緻でいて、どこかシュールな言葉遊びの極致だった。

 

 


www.youtube.com

 

 

親友が私のカレをお持ち帰りした

親友が私のカレーをお持ち帰りした

 

先輩のカブは見事に落ちた

先輩のカーブは見事に落ちた

 

あそこのフロは熱すぎた

あそこのフローは熱すぎた

 

趣味を聞かれてスキだよ、と答えた

趣味を聞かれてスキーだよ、と答えた

 

その男は私のハトを奪った

その男は私のハートを奪った

 

結婚しようと言われた、バスで

結婚しようと言われた、バースデー

 

のびると結構変わる

航続距離がグーンとのびた新型日産リフ

 

失礼

新型日産リーフ

 

 

たとえば、

「親友が私のカレをお持ち帰りした」

「親友が私のカレーをお持ち帰りした」

修羅場かと思いきや、ただの微笑ましいお裾分け。

こんな調子で、小気味よく、音が伸びることで意味が変わる言葉を畳み掛ける。

「カブ(株・バイク)」「カーブ」

「ハト」「ハート」

「バス」と「バースデー」

聴いている側は、その音の伸び縮みがもたらすギャップに、いつの間にか脳を心地よく刺激される。

このCMの凄みは、単なる同音異義語(同じ発音で意味が異なる言葉)のダジャレで終わっていない点にある。

通常、同音異義語の面白さは「同じ音なのに違う意味になる」という意外性に宿る。

しかし、このCMが突いているのは長音(のばす音)の有無だけで物語を180度反転させることができてしまうという、日本語特有の構造だ。

「カレ」「カレー」になれば修羅場が夕食の風景に変わり、「ハト」「ハート」になれば手品が愛の告白へと昇華される。

わずか一音の「のび」が、絶望を喜劇に変え、日常をドラマに変えてしまう。

この一音の差が、決定的な価値の差を生むという構造こそが、このCMの心臓部だ。

そしてこの仕掛けは、聴覚のみに訴えかけるというラジオの特性があってこそ、初めてその魅力を100%爆発させることができる。

もしこれがテレビCMで、文字のテロップや絵が同時に見えてしまっていたら、これほどの驚きはなかっただろう。

「カレをお持ち帰り」と聴いた瞬間、我々の脳内には、自然とドロドロした人間関係の映像が浮かぶ。

しかし次の瞬間、「カレー」という音によって、その映像が一気に書き換えられる。

視覚情報がないからこそ、聴き手は耳から入る音だけを頼りに、頭の中で必死に情景を想像する。

このリスナーの想像力を強制駆動させるというラジオCMならではの魅力が、言葉遊びのギャップを何倍にも増幅させているのだ。

流れてくる小気味よいリズムで舞台は廻る。

そして、完璧なタイミングでこのフレーズが差し込まれる。

「のびると結構変わる」

この瞬間、それまでの言葉遊びはすべて、「航続距離がのびた」という、最大の売り文句を際立たせるための壮大な伏線へと変わる。

CMとして、これ以上の効果があるだろうか。

さらに、このCMが秀逸なのは、単なる駄洒落で終わっていない点だ。

航続距離が「のびる」。

それはEVにとって、単なる数字の更新ではない。

「ハト」「ハート」になるように、行けなかった場所へ行けるようになり、見えなかった景色が見えるようになる。

つまり、人生の解像度そのものが変わるということを、この鮮やかな言葉遊びが雄弁に物語っている。

CMのラスト、自虐的なダメ押しで、自社ブランド名すら「のびるか、のびないか」の実験台に供してみせる。

この潔いまでに徹底したプロフェッショナルの遊び心は、製品の進化に対する絶対的な自信の裏返しでもあるだろう。

音声のみで勝負するラジオという戦場で、言葉の音そのものに着目し、機能美へと着地させたこのCM。

まさに、日本語という楽器と、ラジオというメディアを完璧に使いこなした言葉の芸術と呼ぶに相応しい、まさに耳に残る名作といえるだろう。

「のびる」ということは、こんなにもワクワクすることなんだ。

その「のび」ている一音は、電気自動車(EV)のみならず、人の想像力にどれほどの可能性と進化が詰まっているのかを示している。

 

 

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