劇場版シリーズ第9作目
名探偵コナン 水平線上の陰謀
キャッチコピー
「忘れはしねぇよ、オマエのことだけは…」
「オマエを、絶対に守る」
『名探偵コナン』とは
『名探偵コナン』は、1994年刊行開始の青山剛昌先生原作による推理漫画作品であり、本作を原作とした一連のメディアミックス作品の総称。
黒の組織によって少年化させられた高校生探偵・工藤新一が江戸川コナンと名乗り、組織の行方を追いながら数々の事件を解決していく推理漫画。
「週刊少年サンデー」(以下、「サンデー」)にて1994年5号より『名探偵コナン』の連載が開始された。 2014年6号で連載20周年、2017年37-38合併号で1,000話目を迎え、「サンデー」史上最長の連載期間となっている。
1996年からテレビアニメが放送開始され、2016年には20周年を迎えた。
1997年から毎年4月に劇場版映画が公開されている。
2001年、第46回(平成12年度)小学館漫画賞少年部門受賞。
2015年7月時点で単行本の国内累計発行部数は1億4900万部を、2021年10月時点で単行本の全世界累計発行部数は2億5000万部をそれぞれ突破している。
なお、2018年6月の時点で漫画は25の国と地域で翻訳・販売され、アニメは40ヵ国で放送されている。
劇場版シリーズ伝統の実写エンディング
劇場版名探偵コナンといえば、鉄板のお約束がいくつかある。
その中のひとつがエンディング。
第1作からの伝統で、エンドロールで映画の舞台となったりモチーフとなった実際の風景(実際に無い場所でも有名なところをモデルにする)の映像が流れることが定番となっている。
他のアニメ作品ではあまり観ない演出なので、コナンのエンディングが印象に残っている人も多いかと思う。
本稿では、その実写エンディングだけにフィーチャーしてみよう。
劇場版
『名探偵コナン 水平線上の陰謀』とは
『名探偵コナン 水平線上の陰謀』は、2005年4月9日に公開された劇場版『名探偵コナン』シリーズの第9作目にあたる劇場版アニメである。
上映時間は107分。
興行収入は約21億5000万円。
タイトルの「ストラテジー(Strategy)」は、通常は「戦略」の意である。
海を舞台にした作品は第2作『14番目の標的』以来だが、本作では一部のシーンや回想を除き、終始、豪華客船の船上だけでストーリーが展開していく。
通常の劇場版では主人公・江戸川コナンの推理を中心に展開されコナンにより犯人を追い詰めていくのが基本だが、本作ではコナンがミスリードに引っかかり、普段は道化役で推理は的外れになることが多い毛利小五郎が、劇場版で初めてほぼ単独で犯人を追い詰める展開となっている。
これは小五郎の声を演じていた神谷明氏の長年の夢であったという。
監督の山本泰一郎氏は公式パンフレットのインタビューで、小五郎を活躍させるというのは原作者の青山剛昌先生が考えたアイデアによるものである、と語っている。
またアクションも取り入れられており、映画の後半は主に小五郎にフォーカスを当てた作品となっている。
本作ではコナンが推理する際、阿笠博士の口パクで披露しており、劇場版で阿笠博士の探偵役は現在まで本作のみである。
また、劇場版恒例である工藤新一と毛利蘭の過去のエピソードは、映画シリーズでは初となる小学生時代のエピソードが披露されている。
小学生時代の新一はコナン役の高山みなみさんが演じるため、山口勝平氏が演じる工藤新一の出番は極めて少なく、冒頭の解説を除けば台詞は一言だけであった。
貨物船が氷山と衝突するなど、タイタニック号と共通する場面が多く、意図的に挿入されているシーンも見受けられる(灰原哀が日下ひろなりの書くシナリオでタイタニックの名前を挙げている)。
エンディングの演出もジェームズ・キャメロン監督の映画『タイタニック』を元にしている。
また、本作は海上保安庁やクルーザー社の協力を得て制作された。
冒頭の解説では、コナンと関わりのある黒の組織のメンバーでは、ジンとウォッカ以外に初めてベルモットの姿が描かれている。
コナン以外では少年探偵団の説明が中心になっているため、コナンと共に少年探偵団(灰原除く)が説明役に加わっている。
また、「小さくなっても頭脳は同じ、迷宮なしの名探偵」の映像は第15作『沈黙の15分』と第17作『絶海の探偵』から第19作『業火の向日葵』 及びテレビスペシャル『江戸川コナン失踪事件 〜史上最悪の2日間〜』まで流用されることになる。
本作では蘭が空手の関東大会で優勝したことが園子の口から語られており、第14作『天空の難破船』での継承描写を経て、2011年に原作でも公式設定となったため、後に本作以降の作品は2012年2月18日放送の第646話『幽霊ホテルの推理対決(前編)』(原作73巻File.6「截拳道(ジークンドー)」)以後のエピソードとして位置づけられることとなった。
ただし、蘭から新一への優勝報告は本作では電話でだが、原作及びテレビアニメではメールでであり、それを園子が蘭へ問うのも、本作とテレビアニメで別個に描かれた形になっている。
今までの作品のエピローグはほのぼのとしたギャグシーンで終わっていたが、本作では穏やかな雰囲気を漂わせた温かなシーンで締められている。
本作は、パンフレットとは別にオフィシャルガイドブック(解説本)も同時に発売されている(単独での解説本は本作のみ)。
2005年4月2日からは、公開記念特番「水平線上のコナン小五郎」が各局で随時放送された。
近年のシリーズ同様、本作も小説版が小学館ジュニア文庫から2014年8月6日に発売されている。
本作では佐藤美和子、千葉刑事が第7作『迷宮の十字路』以来2年ぶりに登場している。
また、トメさんも第5作『天国へのカウントダウン』以来4年ぶりの登場となったが、担当声優の中嶋聡彦氏が2017年9月8日に死去したため、中嶋氏の演じるトメさんが劇場版に登場するのは本作が最後となった。
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あらすじ
15年前、北大西洋の海上で貨物船「第一八代丸」が氷山に激突して沈没する事故が発生し、沖田船長と三等航海士の2人が死亡した。
そして半月前、八代造船の船舶設計士・八代英人が別荘に通じる道を車で運転中心臓発作を起こし、車ごと崖下に転落して死亡した。
この時を越えた一見関係なさそうな2つの事件は、豪華客船の乗員乗客全てを巻き込む巨大な陰謀の序章に過ぎなかった。
園子の計らいで八代グループの豪華客船「アフロディーテ号」の処女航海に招待されたコナン達は、大いにクルーズを楽しんでいた。
ひょんなことから、船内でかくれんぼをすることになった一行だが、かくれんぼの最中に園子が何者かによって拉致・監禁されてしまう。
幸いにも園子はコナンの推理によって無事に助け出されたが、今度は八代商船の社長・八代貴江が何者かに刺殺され、八代グループ会長で貴江の父である八代延太郎も行方不明になってしまう。
目暮警部らが到着して捜査が始まるが、容疑者は乗員乗客を合わせて総勢600名に上り、捜査の難航は必至だった。
一方、佐藤刑事らは八代英人の事故死に不審を抱き、再捜査をしていた。彼女は運転席のシートベルトの金具に残っている不審な痕跡に注目する。
捜査を続けるコナンたちは、延太郎がマリーナのハッチから海に突き落とされた可能性が高いことを突き止める。
それからほどなくして、海上保安庁によって海に漂う延太郎の遺体が発見された。
一方で、小五郎はコナンとも警察とも別に独自の捜査を展開していた。
事件の真相をつかんだコナンは、ウェルカムパーティーの席で阿笠博士の声を借りて推理ショーを展開し、アリバイトリックを崩してシナリオライターの日下ひろなりが犯人である証拠を提示する。
日下は第一八代丸沈没事故で犠牲となった三等航海士の息子で、第一八代丸沈没事故が八代親子や八代英人、第一八代丸の副船長だったアフロディーテ号船長の海藤が保険金詐取と沖田の排斥を目的に仕組んだ事故であることを知り、復讐するべくアフロディーテ号に取材と称して乗り込んでいたのだった。
だが日下は、機関室に仕掛けておいた爆弾を爆発させ、その混乱に乗じて逃走を図る。
しかしコナンと少年探偵団の追跡により、無事に日下の逃亡は阻止された。
その後目暮達がやってきてコナン達を叱り、コナン達は謝ったが、彼らの目の前のアフロディーテ号では爆弾が次々と爆発し、船腹に穴が開いて浸水し始める。
アフロディーテ号の沈没は最早避けられないものとなり、乗員・乗客が避難していく中、忘れ物に気付いた蘭は取りに戻るが、忘れ物を見つけた場所に取り残されてしまった。
さらに、事件は解決しているかと思われたが、その裏には真犯人による更なる陰謀が隠されていた。
アフロディーテ号に残った小五郎は真犯人と対峙し、自ら暴いたアリバイトリックに納得がいかず、アフロディーテ号に仕掛けられた爆弾が多すぎることに疑問を抱いていたコナンも真犯人に気付き船に向かうことにする。
真犯人はアフロディーテ号設計グループ副リーダーで八代英人の部下であった秋吉美波子だった。美波子は実は沖田の娘であり、日下から取材を受けた際に執拗に八代親子のことを聞かれたことで疑問を抱き、日下が取材の途中で席を外した隙に彼のパソコンを覗いて真の目的を知り、後日酒に酔った英人から事件の真相を聞き出したことで、父親の復讐を決意。
杜撰だった日下の復讐計画を利用し、英人の車にスタングレネードを仕掛けて自動車事故を誘発させることで日下よりも先に英人を殺害し、日下が計画を修正するよう仕向けると、それを逆に利用することで日下を犯人に仕立て上げつつ自らの手で復讐を実行していった。
日下は事件において誰も殺害していなかったが、パソコンの中で沖田のことを「船と運命を共にした時代錯誤の男」と非難していたこともあって犯人に仕立て上げられたのである。
アフロディーテ号に追加で爆弾を仕掛けたのも美波子であり、最後に残った海藤を水中銃で殺害しようとするが、真相に辿り着いていた小五郎によって使えなくされていた。
小五郎は本性を現した美波子にボコボコにされながらも、コナンのアシストもあり、最後は一本背負い投げで美波子を制圧した。
美波子を救命ボートまで連れて行ったコナンと小五郎だが、そこで蘭の姿が見えないことを園子に聞き、蘭を見つけ出すべく再び船に戻る。
そして1人残されていた蘭を無事見つけ出したコナンと小五郎の元に、海上保安庁のヘリコプターがやってくる。
これにて一件落着かと思いきや、一同が引き上げられ始めた直後に突風でヘリコプターがあおられ、今度はコナンが船に取り残されてしまった。
しかし蘭と少年探偵団のおかげでコナンは脱出に成功する。
こうして乗客は全員無事に救出され、アフロディーテ号は渦に巻き込まれながら海に沈んでいった。
主題歌
- ZARD「夏を待つセイル(帆)のように」
作詞 - 坂井泉水 / 作曲 - 大野愛果 / 編曲 - 葉山たけし
曲の歌詞は監督の指示もあったため、映画に忠実になっている。
数曲の候補の中で「子供がノリやすい曲がいい」という、坂井泉さんの意見で本作が最終的に決定されたのだとか。
また、本作の公開に合わせて、「小五郎さんへのメッセージ」という名目でビデオによるテレビ出演を行った。
ZARDの楽曲としては、さほどメジャーではないだろう。
しかしとても優しい爽やかな本作は、坂井泉さんの歌声を最大限に引き出しているように思う。
実写エンディングロケ地
映画『タイタニック』に寄せた演出の作品。
劇中の豪華客船 "アフロディーテ号" は、クルーズ客船 "飛鳥" が元になっているのではないだろうか。
だがエンディングのロケは商船三井客船 "にっぽん丸" で撮影されている。
なお、エンディングではひとりの女の子が客船の内を回り宝物を探すというコンセプトになっており、最後に女の子は見つけた宝物を海に投げ入れる。
その行動は映画『タイタニック』で、101歳になったローズのそれとまったく同じである。
エピローグ
前述した通り、本作では穏やかな雰囲気を漂わせた温かなシーンで締められている。
本作のクライマックス。
蘭は救命ボートに乗った後で探偵団からもらった金のブレスレットを忘れてしまったことに気づき、船に戻ってしまう。
結果、事故により1人取り残され、助けにきたコナンや小五郎と共に上記の危機に晒される。
だが、エピローグにて金のブレスレットはその後探偵団によって修理され、今度はちゃんと首にかけられるように紐を長くして、改めてプレゼントされた。
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