アニメーション映画
ONE PIECE FILM RED
『ONE PIECE FILM RED』とは
『ONE PIECE FILM RED』は、2022年8月6日から2023年1月29日まで公開されたアニメーション映画。
漫画『ONE PIECE』を原作としたテレビアニメの劇場版第15作。
FILMシリーズの第4作目。
前作『ONE PIECE STAMPEDE』(2019年8月)から3年ぶりとなる、劇場版『ONE PIECE』第15作。
キャッチコピーは「歌声、赤髪。」「赤髪が導く"終焉フィナーレ"」「その歌声がもたらすのは、永遠の幸せか、無限の牢獄か」。
原作者である尾田栄一郎先生が「総合プロデューサー」として制作に参加している。
尾田氏が総合プロデューサーを務めるのは、『ONE PIECE FILM Z』『ONE PIECE FILM GOLD』に続き3回目。
テレビアニメ化以前に「ジャンプ・スーパー・アニメツアー'98」で上映されたOVA『ONE PIECE 倒せ!海賊ギャンザック』で監督を務めた谷口悟朗氏、前々作『GOLD』でも脚本を担当した黒岩勉氏が手掛けている。
原作連載25周年という節目での映画でもあるため、「ルフィとシャンクス」を元にウタが生まれた。
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あらすじ
音楽の島「エレジア」。
この島で、一人の歌手のライブが開催されようとしていた。
その歌手の名前はウタ。
彼女はこれまで素性を隠したまま歌を発信していたが、その類まれなる歌声は「別次元」と称され、世界中の人々を魅了していた。
そのウタが初めて公の場に姿を見せてライブを行うということで、エレジアのライブ会場にはファンの大観衆が集結し、麦わらの一味も来ていた。
そして、遂にウタがステージに姿を現し、ライブが開幕する。
1曲目の終了後、突如クラゲ海賊団がステージに降り立ち、ウタを誘拐しようとする。
だが、その直後にルフィがステージに降り立ち、ウタに駆け寄り親しげに声をかけた。
ウタはルフィだと気付き、二人は再会を喜ぶ。
ルフィとウタは、幼少期にフーシャ村で共に過ごした幼馴染みだったのだ。
さらに、ウタがシャンクスの娘であることをルフィが話したことで、会場中が騒然となる。
それを聞いたクラゲ海賊団は、シャンクスの弱点だと考えて改めてウタを誘拐しようとするが、そこへ突如同じウタを狙うビッグマム海賊団のオーブンとブリュレが乱入し、会場は戦場と化す。
最初は心配するルフィ達だったが、ウタは2曲目を歌いながら不思議な能力を操り、瞬く間に海賊を拘束してしまう。
その後、ウタはルフィと仲間たちを歓迎し、その不思議な能力でもてなす。
この時、世界中の人を幸せにするためのウタの大きな「計画」が既に始まっていた。
そして同じころ、世界政府や海軍がウタの能力を危険視し、彼女の討伐に動き始めていた。
ルフィとシャンクスの物語を繋ぐウタ
もはやシャンクスはラスボス的な存在なのだろう。
本編では、なかなか絡むことがないルフィとシャンクス。
何度かニアミスはあったが、ルフィが海賊となってからというもの、面と向かって絡んだことはない(大抵はルフィが気絶している間に、シャンクス登場)。
絡みがあったのはルフィの幼少期のみ。
おそらくラストまで絡むことがないふたりの物語を繋いだのが、本作オリジナルキャラクターのウタである。
ウタ
声 - 名塚佳織 / 歌 - Ado
本作品のメインヒロインで、キーパーソンでもある世界の歌姫。
シャンクスの娘。
21歳。
誕生日は10月1日。
身長169cm。
てんびん座。
血液型XF型。
好きな食べ物はホイップましましのパンケーキ。
好きなものは「カワイイもの」で、嫌いなものは海賊。
座右の銘は「楽しんだもの勝ち」。
赤色と薄いピンク色のツートンカラーの髪が特徴的で、ヘッドフォンを耳に装着しており、羽が付いた衣装を着ている。
その歌声は「別次元」と評され、世界中が熱狂している。
性格は明るくフレンドリーで、世界中の苦しんでいる人々を自分の歌で幸せにしようと考える優しい心の持ち主。
ただ、育ってきた環境ゆえに世間知らずな所がある。
ルフィとの勝負で卑怯な手を使って勝とうとする一面もあるが、それでも彼のことを大切に想うなど良き親友でもある。
その反面、不機嫌になると右足で貧乏ゆすりのように地面を踏んだり、更に感情が激しくなると目つきが鋭く、表情も一変するなど非常に怖い。
超人系悪魔の実「ウタウタの実」の能力者で、自分の歌声を聞いた人間の意識を現実世界そっくりの仮想空間「ウタワールド」に引き込むことができる。
ウタワールドの中では、「飲食物を自在に出す」「人をミニサイズにする」「船をマスコットに変える」など、思い通りのことを自在に行える。
戦闘では、歌を歌いながら黄金色の鎧をまとって武装し、歌声で相手の攻撃を無効化するほか、空中に描いた五線譜に相手を貼り付けて拘束する技を使う。
また、映像電伝虫越しでも彼女の歌を聞けばウタワールドに引き込まれるため、その範囲は全世界に及ぶ。
これらの技により、ウタワールド内では無敵にして万能とも言える程の戦闘力を見せた。
また、強力な武装を有する「音符の戦士」を無数に生み出すこともできる。
弱点は「彼女の歌を聞かないこと」と至極単純で、予め能力を把握していた五老星や海軍は対策をしていた。
ウタワールドに閉じ込められた人々は現実世界では昏睡状態に陥っており、ウタはその肉体を操ることが出来る。
ウタワールドはウタが眠ると消えるが、一度ウタワールドに引き込まれた人間は自力で現実世界に戻ることはできない。
また、能力者であるウタが死亡すると、ウタワールドは完全に閉鎖されてしまい、取り込まれた人々の意識は二度と現実世界に戻って来れなくなる。
そのため、前述の世界中に彼女の歌が電伝虫越しで流れ、その被害の速度は尋常ではなく、ルッチ曰く「最終的な被害は、全世界の7割に及ぶ計算」とされている。
2歳の時に故郷を海賊に襲われ、両親は死亡。
自身は海賊に攫われる。
その海賊の船が赤髪海賊団と戦闘になった時、宝箱に隠れていたところ他の財宝と共に赤髪海賊団に略奪され、当時20歳だったシャンクスに出会う。
その後はシャンクスの娘として、赤髪海賊団の船で育てられた。
その頃から非凡な歌声を持っており、シャンクス達もその歌声に魅了され、いつしか赤髪海賊団の音楽家を自称するようになる。
8歳の時に、シャンクス達と共に東の海のフーシャ村に停泊し、そこでルフィと出会い幼馴染みになった。
それから一年後のある航海で、シャンクスから歌手としての才能を見込まれ、音楽の国「エレジア」を訪れ、エレジアでも彼女の歌声は多くの人を魅了するが、その夜、エレジアは火の海となって壊滅してしまう。
目覚めた時にはシャンクスたちは既に自分を置いて海に出ており、ゴードンからエレジア壊滅の犯人は赤髪海賊団だと聞かされ、シャンクスと海賊に強い恨みを持つようになる。
その後は生き残ったエレジア国王のゴードンに育てられ、大人になると「歌を通じて世界中の人を幸せにしたい」という信念を持ち、素性を隠して世界に歌声を発信し続けた。
その歌声が世界の人々を魅了し、世界で最も愛される歌姫となったが、ある日、エレジア壊滅の一部始終を記録した映像電伝虫を偶然見つけて、その映像から、実際にエレジアを壊滅させたのは、ウタを利用して目覚めた魔王トットムジカであり、「ウタの歌声に罪は無い」と、赤髪海賊団が自らエレジア壊滅の罪を被ったという事件の真相を知る。
しかし、自身が犯した罪や、赤髪海賊団を憎み続けていたことへの罪悪感、そして世間には海賊嫌いとして知られている自分を応援してくれるファンの期待への重圧で苦しむ。
そんな中、ロミィからの「辛い現実から逃げたい」「ずっとウタの歌を聴いていたい」というメッセージを機に、「ウタウタの実」と「ネズキノコ」を利用した計画を思いつく。
そこで、エレジアにて初めてファンの前に姿を見せて行うライブの折に、実行することを決意した。
ウタの計画とは、世界中のファンや苦しんでいる人々を、ウタワールドに永遠に閉じ込めることであり、「辛いことや悲しいことが一切無い世界」であるウタワールドという楽園で永遠に楽しく暮らす「新時代」を実現しようとする。
ウタワールドは自身が眠ると消えてしまうため、ネズキノコを食べることで眠らないようにし、自らの死によって、大勢の人の意識を引き込んだウタワールドに永遠に閉じ込めようとするものだった。
それを阻止する為、世界政府や海軍が動き出し物語の冒頭に至る。
ライブでは、自身を攫おうとしたクラゲ海賊団やビッグ・マム海賊団を、能力で五線譜に拘束。
ルフィとの思わぬ再会を喜び、麦わらの一味とは当初こそ仲良く振る舞っていたが、彼らが海賊だと知るとルフィに海賊をやめるよう説得。
その説得を無視された事に腹を立て、一味を五線譜に拘束する。
更に逃げたルフィや海賊を捕まえるため、音符の戦士を無数に生み出し差し向ける。
ルフィとローとバルトロメオらの追跡を中断してライブを再開しようとした際、そこへ突然ライブ会場に現れたチャルロス聖から「10億ベリーで身請けする」と提案される。
天竜人が「神と同格の存在」と見なされていることを知らないウタは、彼を「オジサン」呼ばわりし、食い下がるチャルロス聖を能力で拘束する。
天竜人に危害を加えたことや、会場に駆けつけたコビーによってウタワールドの秘密を暴露されたことでライブ会場は騒然となる。
観客からは「それでもここにいたい」「海賊がいないから安心」と彼女を支持する一方で、「家に帰りたい」「仕事があるから」という意見も一定数以上ある。
しかしウタは「もっと楽しいことがあれば、皆が幸せになれる」と無理やり自分の意見を押し通し、会場を水没させ、観客やチャルロス聖をぬいぐるみに変えてしまう。
現実世界でも、ライブ会場を包囲していた海軍に対して観客達を兵隊のように操って応戦する。
その混乱に乗じてルフィをナイフで刺殺しようとするが、そこへシャンクス率いる赤髪海賊団に阻止される。
彼の再会に、激しく動揺するも「一番悪い海賊」として彼らを襲うようにと観客達に命じるが、海兵の銃撃で観客が死亡する。
その現状に己の無力さと感じ、怒りと悲しみで感情のコントロールを完全に失い、自らの意思で禁断の歌を歌って魔王「トットムジカ」を出現させ、トットムジカと一体化となって暴走する。
ゴードンの口からエレジア壊滅の真相を聞かされるが、既にそれを知っていたウタは彼の説得に応じず、麦わらの一味たちへの抗戦を続ける。
死闘の末、トットムジカは麦わらの一味と赤髪海賊団、及び海軍とビッグ・マム海賊団の活躍によって倒され、自身も救出されたものの、未だに現実世界では、ウタワールドに意識を取り込まれている市民らが海軍を襲っていた。
その光景にウタは、シャンクスからネズキノコの解毒薬を勧められても断り、残された力でウタワールドに閉じ込めた世界中の人々を現実世界に戻し、力尽きる。
その直前に、現実世界に戻る前のルフィと最後の言葉を交わし、新時代の担い手を託す。
その後の生死は不明。
事件後、彼女の歌が世界中の人々に愛され続けている様子がエンディングで確認できる。
歌唱担当にAdoをキャスティング
Adoといわれパッと思いつくのが、彼女の代表曲ともいえる『うっせえわ』だろう。
インパクトのある歌詞にパンチ力のある歌声は、一度聴いたら忘れることはない。
ただ、その分美しい旋律を歌うAdoの印象が薄いことは否めない。
興味がない人にとってはAdo=『うっせえわ』なのだから…。
だがその印象は本作でガラリと変わるだろう。
耳馴染みがある人にとっては当然といえば当然といえるが、Adoはバラードも抜群。
歌唱の力強さを残しつつ、しっぽりと歌い上げる。
また『うっせえわ』の力強さも健在。
特に歌唱による戦闘シーンに、絶大な効果を発揮している。
ウタの歌唱担当にAdoのキャスティングは大正解だ。
原作者・尾田栄一郎プロデュース作品の強み
途中離脱の初期ファンをも飽きさせない秀逸な演出
こと『ONE PIECE』に関して途中離脱組の著者。
単行本は80巻くらいまで?
たしか四皇が登場する少し前に集めるのをやめてしまった。
アニメに至っては観たり観なかったりの歯抜け状態。
だから、今の『ONE PIECE』事情はほとんどわからない。
ルフィにかけられている最新の懸賞金額すら、最近知ったくらいの知識しかない。
それでも本作は楽しんで観ることが出来た。
それは取りも直さず、初期キャラクターが多く出演していたことに起因する。
なかでも "宝箱のおっさん" こと、ガイモンの登場には懐かしさを通り越して感激すら覚えてしまった。
このガイモン。
ご存知ない人も多いだろう。
原作ではウソップが仲間になる直前(コミック第3巻)のエピソードに登場したキャラクター。
しかも登場シーンもわずか1話分。
レアキャラにも程がある。
さらにバラティエの登場にテンションは爆上がり。
バラティエとは、かつてサンジくんが働いていた元クック海賊団船長・ゼフがオーナーと料理長を務める海上レストラン。
"東の海" の片隅に浮かぶ船であり、魚に似たファンシーな外装が特徴。
バラティエといえば、サンジくんの旅立ちのシーン。
これは『ONE PIECE』屈指の泣かせ所だ。
サンジくんにはその後の生い立ちの因縁があるにもかかわらず、それより育ての親を引き立てる心意気はさすが尾田栄一郎プロデュース作品。
さらにさらに、ウソップとヤソップのコラボなんて夢のようなシーンまで観れてしまうからたまらない。
本作ではその他にもそこかしこで懐かしい顔を見ることができる。
そんなレアキャラたちを、ちょい役とはいえ登場させてくるから尾田栄一郎先生自らがプロデュースするFILMシリーズは侮れない。
惜しげがないシャンクスの魅せ方
『ONE PIECE』でのシャンクスの扱いは、ラスボス的レアキャラ。
おいそれと登場させられるキャラではない。
劇中で話題に上るのもレアなら、ご本人降臨なんて激レアだ。
しかしそれは、裏を返せば使い所がすこぶる難しいキャラクターともいえる。
原作者以外、シャンクスを完璧に使いこなせるアニメーターなどいないのではないだろうか。
そのシャンクスを、本作では惜しげもなく登場させている。
このあたりも尾田栄一郎先生自らがプロデュースする強みだろう。
そして、やはり直接は絡ませないルフィとシャンクス。
並のアニメーターなら、少しくらいはニアミスさせそうなものだが、頑なに絡むことをさせない。
これもある意味、原作者自らがプロデュースした作品の特徴といえる。
ふたりが面と向かって絡むのは、おそらく本編のラストまでおあずけなのだろう。
伏線の多さは随一
原作の読者ならご存知だろうが、『ONE PIECE』は非常に伏線が多い作品だ。
伏線回収に20巻ほどかけることもあるほど、細かく深く伏線が引かれていたりする。
また尾田栄一郎先生の凄いところは、扉絵ですら伏線に仕立て上げてしまうこと。
もはやありとあらゆる表現が、何かしらの伏線になっているような気さえしてくる。
もちろんアニメ版でも再現されているから、気になる人は見返してみるのもいいだろう。
ただし細かい伏線は原作でしか気づけないものも多い。
アニメには扉絵もSBSもないしね。
ちなみにSBSとは「質問(S)募集(B)するのだ(S)」の略で、読者から質問を募集し作者が答えるコーナーとなっている。
このSBSに謎を解くヒントが隠されていたりするのだ。
こちらも気になる人は読んでみるといい。
話を戻す。
『ONE PIECE』には劇場版から、本編へフィードバックされる設定も数多ある。
そこで否が応でも期待してしまうのが、本作オリジナルキャラクターであるウタの存在だ。
シャンクスの娘という、なんとも広げ甲斐がありそうな設定。
意味深なラスト。
ウタは尾田栄一郎先生お得意のサプライズ伏線には、もってこいキャラといえる。
今後のルフィとシャンクスの関係に、ウタが大きく関わってくる可能性がおおいにある。
それもこれもすべては尾田栄一郎先生の御心次第。
とはいえ、ウタを劇場版一度きりの使い切りキャラにはしないだろう。
それはとても贅沢な使い方であるが、これほどの物語を描く尾田栄一郎先生だ。
乱発はしないまでも、本編のここぞというシーンで登場させてくれるのだろう。
本編はそろそろクライマックスへのプロローグへ入ったところ。
今後の『ONE PIECE』を楽しむためにも、本作は絶対外せない作品といえる。
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