はじめに
最近はもっぱら邦画ばかり観ているが、だからといって洋画をまったく観ないというわけではない。
だが、洋画然とした派手な作品はあまり得意ではない。
だからアクション映画はあまり観ない。
では、いったいどんな洋画なら観るのか? 本稿では好んで洋画を観ようとしない人間でも、何度でも観たいと思った洋画をご紹介したいと思う。
ハリウッド映画(1998年)
アルマゲドン
『アルマゲドン』とは
『アルマゲドン』(英題:Armageddon)は、1998年のハリウッド映画。
タッチストーン・ピクチャーズ提供、ジェリー・ブラッカイマー作品。
ニューヨークを観光する日本人役で松田聖子さんがカメオ出演していることでも話題になった。
ちなみに相手の男役はゲディ・ワタナベ(彼はノンクレジット)。
あらすじ
20世紀末、地球軌道上の宇宙空間で人工衛星を修理中のスペースシャトル「アトランティス」との交信が、突然途絶えた。
事故直前の映像を解析した結果、流星雨(Meteor shower)がシャトルを直撃し破壊したことが判明した。
この流星雨は地球の大気圏を突破して、アメリカ東海岸からフィンランドに至る範囲に降り注ぎ、ニューヨークなどの都市に壊滅的打撃を与えた。
さらなる観測と調査によって、これはテキサス州の大きさに匹敵する小惑星が、小惑星帯(Asteroid belt)へ衝突したことに伴う流星雨で、しかも問題の小惑星は地球に向かうコースをとっており、約18日後には地球を直撃し、地球環境に致命的打撃を与えバクテリアすら生き残らない死の惑星へ変えてしまうことも判明する。
「爆竹を、広げた手のひらの上で爆発させてもやけどするだけだ。だが握った手の中で爆発したらどうなるか」。
NASAが立案した衝突を回避する唯一の手段は、小惑星の深部まで穴を掘り、内部で核爆弾を炸裂させて真っ二つに割り、軌道を変えるというものだった。
この作戦を遂行するために「穴掘りのプロ」――すなわち石油採掘のスペシャリスト達が召集される。
それは、大男のベアー、ギャンブル狂のチック、女狂いの天才ロックハウンド、大食漢のマックス、カウボーイ風の地質学者オスカー、ガールフレンドが2人いるフレディ、腕は立つが命令無視が多いA.J.、そして、彼らをまとめるハリーら、石油会社「スタンパー・オイル」の8人の社員たちである。
そこに、ウィリアム・シャープ、ジェニファー・ワッツを始めとするNASAのスペースシャトルクルー6人を加えた14人が計画に参加した。
NASAの計画は、チタン合金で装甲された新型スペースシャトル「フリーダム」および「インディペンデンス」の2機を打ち上げ、途中でロシア宇宙庁の宇宙ステーションミール(Mir)で燃料である液体酸素を補給、月の軌道で重力アシストを掛け、月の裏側を回ってから加速して、小惑星の後ろから接近するというものである。
その計画のために掘削用車両「アルマジロ」を用意し、ハリーたちはそれらを扱うための辛い訓練を乗り越えた後、チームを半分に分けて新型スペースシャトル2機に分乗し、小惑星へと向かうために飛び立った。
地球からの発進こそ無事にできたものの、立ち寄った「ミール」の老朽化のせいで、燃料補給中にレバーが折れ、燃料漏れを起こして火災が発生、チームは危うく爆発に巻き込まれそうになりつつも、間一髪シャトルで脱出した。
「ミール」で単独勤務していたロシア人宇宙飛行士のレヴも一行に加わり、手筈通りに月の軌道を通って小惑星の後ろ側へ回り込んで、着陸を試みる2機。
ところが、小惑星から放出された大小の岩石が「インディペンデンス」を直撃して、同機は操縦不能に陥り、小惑星へ墜落した。
乗っていたNASAのクルーや、フレディ、オスカーたちを失うも、A.J.とレヴ、ベアーの3人は生き残り、「アルマジロ」の機銃でシャトルの外壁を打ち破り、ハリーたちの元へと急いだ。
途中に深いクレバスがあったが、「アルマジロ」の推進ジェットを使ってなんとか越えることができた。
一方、一応は着陸に成功した「フリーダム」だったが、そこは当初の予定とは異なる硬い酸化鉄の地盤の上であり、掘削作業は難航した。
掘削ドリルも、硬い地盤によって次々に折れ、あと1本を残しすべて破損してしまう。
作業の途中、業を煮やしたアメリカ大統領が、作戦に見切りをつけて核爆弾の時限起爆装置を起動させるも、地上にいた良心を持つNASAのスタッフやハリーたちの抵抗によって地表での爆発を阻止できた。
最後の1本のドリルを用いて掘削を進める「フリーダム」搭載の「アルマジロ」。
しかし、小惑星の地殻変動によるガス噴出で吹き飛ばされ、引火したガスによって操縦席にいたマックス諸共爆発炎上してしまう。
「アルマジロ」を失い万事休すと思われたその時、A.J.たちの乗った「インディペンデンス」搭載の「アルマジロ」が煌々とライトを灯して現われ、掘削作業を再開した。
掘削した穴は、どうにか小惑星の計画された深さにまで達し、途中に引っ掛かりながらも核爆弾を押し込んで設置した。
後はシャトルが離れてから遠隔操作で起爆させるだけという段階まで来たのだが、地殻変動によって岩石が降り注ぎ、爆破用リモコンが壊れてしまう。
遠隔操作ができなくなったからには、誰かが残って手動で核爆弾を起爆させなければならない。
くじ引きの結果A.J.がその役を担うこととなるも、「フリーダム」のハッチから出る直前、見送りに来たハリーが、A.J.の宇宙服に傷をつけて無理矢理役目を代わり、彼を船内へ戻させた。
起爆の準備を進めるハリーを尻目に、小惑星からの離陸を試みる「フリーダム」だが、硬着陸や地殻変動の影響によるものかエンジンが起動しなくなっていた。
それでも、レヴが「ロシア式の修理」と称してコントロールパネルを叩くと故障が直り、「フリーダム」のエンジンが始動し辛くも離脱に成功。
そして、「フリーダム」が小惑星から無事離れたことを確認したハリーは、愛娘グレースに思いを馳せながら起爆スイッチを押す。
核爆弾はハリーを巻き込んで爆発した。
斯くして、小惑星は大気圏突入前に2つに割れて軌道が変わり、地球滅亡の危機は寸前で回避されるのだった。
なぜにそんなに低評価?
賛否両論の受賞歴
本作は興行的には成功したものの、映画としての評価は散々なものであった。
エアロスミスが歌うテーマ曲「ミス・ア・シング(I DON'T WANT TO MISS A THING)」は賛否を大きく分け、アカデミー賞の歌曲賞とゴールデンラズベリー賞の最低主題歌賞に同時ノミネートされる珍事となった。
第71回アカデミー賞(1998年)
- ノミネート:歌曲賞 - "I Don't Want to Miss a Thing"
- ノミネート:音響編集賞 - ジョージ・ワッターズ二世
- ノミネート:視覚効果賞 - リチャード・R・フーヴァー、ジョン・フレイジャー、パット・マクラング
第19回ゴールデンラズベリー賞(1998年)
- 受賞:最低男優賞 - ブルース・ウィリス
- ノミネート:最低作品賞
- ノミネート:最低監督賞 - マイケル・ベイ
- ノミネート:最低脚本/ジョー・エスターハス不名誉賞 - ジョナサン・ヘンズリー、J・J・エイブラムス
- ノミネート:最低主題歌賞 - "I Don't Want to Miss a Thing"
映画業界からは低評価の要因
『ディープ・インパクト』ともろカブりした内容
映画業界からの本作への評価がいまいちパッとしない理由に、パクリ疑惑が持ちかけられていたことが挙げられる。
『アルマゲドン』が公開される約2ヶ月前に、スティーヴン・スピルバーグ総指揮の『ディープ・インパクト』が公開されていた。
この『ディープ・インパクト』。
内容は『アルマゲドン』同様に、地球に落ちてくる隕石をロケットに乗って食い止めるというもの。
実は本作のマイケル・ベイ監督は、当初もっと小規模なSF映画を作成しようとしていたらしい。
しかし、『ディープ・インパクト』の制作情報を入手すると、大規模なSF映画へと制作方針を変更。
そうして製作費を増やし、ブルース・ウィルスを主演とした。
完全に『ディープ・インパクト』を意識しているわけで、、これでは『ディープ・インパクト』のパクリと言われても仕方がないのかもしれない。
非現実的な設定の数々
『アルマゲドン』は、ブルース・ウィルス演じるハリーら石油採掘人が、地球に衝突する隕石に穴を掘って爆発させるという内容。
しかしこの設定に、あまりに現実味がなさすぎることが低評価の要因と考えられる。
そもそも数年掛ける宇宙飛行士の訓練。
それをわずか数日で済まして、宇宙に関してはド素人である石油採掘人らが隕石に穴を空けるという設定には、流石に無理があり過ぎる。
他にも、シャトルが至近距離で2機同時に打ち上げられていたり、重力がない小惑星をなぜか歩けたりと、おかしなシーンが多数ある。
その分野の専門家からすると、本作で科学的に誤りがある部分は168箇所ほどにのぼるそう。
娯楽映画にいちいちツッコミをいれていたらキリがないが、流石にツッコミどころが満載過ぎる作品ではある。
能書き無用!
理屈抜きの感動SF大作
映画業界からはなぜか低評価を被りはしたが、『アルマゲドン』には理屈抜きにグッとくる名シーンがいくつも存在する。
本作は1998年のアカデミー賞にノミネートされると同時に、科学考証等の問題からゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)にもノミネートされてしまったりもしているが、そのような細かい能書きなんて不問に付してしまうほど魅力に溢れている。
まず話題性。
エアロスミスのヴォーカルであるスティーヴン・タイラーの娘、リヴ・タイラーの起用は大変な話題を呼んだ。
劇中で使用された当時発売されて間もないBMW-Z3も注目を集めた。
とにかく魅せ方が巧い。
感動シーンも満載だ。
さすがに何度もリピートしすぎて初見の感動こそ失せてしまったが、今なお必ず泣かされるシーンがひとつある。
それは物語の最終盤。
無事ミッションを達成し、クルーたちは地球へと帰還した。
帰還したクルーたちに駆け寄るグレース。
A.J.との再会を喜び合うグレースに、ハリーとしばしば対立していたウィリアム・シャープ大佐が話しかけた。
「私が知る中でも最も勇敢な人物のお嬢さんと握手をさせてください」
握手を求めるシャープ大佐に、涙ながらに笑顔で応えるグレース。
そしてA.J.はハリーから託された宇宙飛行士の証・ミッションワッペンを、宇宙飛行士に憧れながらハンディから技術部に行くしかなかったトルーマンに渡しエンディングを迎える…。
この一連のラストシーンは、いつだって必ず泣かされてしまう本作屈指の名シーン。
これほど見慣れているにもかかわらず、何度も同じ感動を味わわせてくれる本作は、やはり名作と呼べるのではないだろうか。
圧倒的存在感
エアロスミス「I Don’t Want to Miss a Thing 」
やはり『アルマゲドン』において、無くてはならないのがテーマ曲であるエアロスミスの「I Don’t Want to Miss a Thing 」。
この曲の果たした役割は大きい。
劇中では一度、10時間だけの最後の休暇をA.J.とグレースが2人で過ごすシーンでサビの部分が使われている。
そしてエンディングの2人の結婚式では、映画用に編集されたロックミックスバージョン(イントロなしでボーカルから入る)がフルで流れる。
そのシーンの圧倒的な存在感と破壊力たるや相当なもの。
宇宙で散った仲間たちの写真が飾られていたり、ホームビデオ風の映像で撮られている演出は、もはや伝説的なエンディングとなっている。
『アルマゲドン』といえば「I Don’t Want to Miss a Thing 」。
同曲無くして本作は成立しなかったとさえ思えてくる、最高のテーマ曲といえる。
ちなみに同曲は、1998年の全米シングルチャートで4週連続1位を獲得し、その後も結婚式での定番ソングとしての地位を確立している。
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