アニメ
鬼滅の刃「柱稽古編」
アニソンは売れると勘違いした大物アーティストの起用で『進撃の巨人』の悪夢再び?歴代主題歌の功績を裏切る強烈な "これじゃない感"
『鬼滅の刃「柱稽古編」』とは
漫画家・吾峠呼世晴先生により連載された少年漫画『鬼滅の刃』にある一篇(エピソード)のひとつ。
単行本・15~16巻に当たる章節。
実質作中最後の幕間エピソードである。
閑話休題的な回。
「柱稽古」とは劇中で行われた特別訓練(スペシャルトレーニング)のこと。
鬼殺隊は、来るべき鬼舞辻無惨率いる鬼達との決戦に備えて、組織の実力者たる柱達を筆頭に全体的な組織力強化を図る修練を行う事を決定する。
提案者は岩柱・悲鳴嶼行冥であり、産屋敷あまねによって開かれた緊急柱合会議で、他の柱達と後にお館様の同意も得て可決された。
それが「柱稽古」であり、多くの鬼殺隊士がこれに参加した。
本来なら様々な任務があって、配下の隊士全員への指導などしている暇が無い程に忙しい柱達であったが、竈門禰豆子が太陽(日光)を克服して以降、禰豆子を手に入れるべく鬼殺隊との全面衝突に備えて無惨が自らが作った全ての鬼を招集した事で、各地での鬼の出没が完全に停止する。
嵐の前の静けさとも言える状況ではあったものの、このおかげで柱達の業務も夜の最低限の警戒のみに絞られた事から、この柱稽古を実施する事が可能となったのである。
過酷な修業「柱稽古」を主に味方陣営の主戦力・柱たちの個性豊かな人柄や人物背景も知れる内容となっている。
特に岩柱・悲鳴嶼行冥による修行や彼の過去が語られ交流する様子が濃く描かれ、更に主人公の恩人・冨岡義勇へ焦点が当たる一幕がある。
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あらすじ
刀鍛冶の里にて上弦の鬼二体の強襲にあった炭治郎たち。
玄弥や二人の柱との共闘でこれらを撃退した戦いは、禰豆子が太陽を克服し収束した。
鬼として初めて日の光を浴びても消滅しない存在となった禰豆子は、炭治郎の禰豆子を人間に戻す念願に近づいたと同時に、太陽の克服を目論む鬼の元凶、鬼舞辻無惨の標的となったことを意味する。
これを受けて鬼殺隊は、来る無惨たち鬼との戦いに備え全鬼殺隊員を招集した大規模な訓練、柱稽古を開催。
炭治郎たち隊員は、柱たちによる厳しい稽古に身を投じることとなるー。
アニソンは売れると勘違いした大物アーティストの起用で『進撃の巨人』の悪夢再び?
『進撃の巨人』の悪夢再び?
今、アニメ『鬼滅の刃』で『進撃の巨人』と同じ過ちを繰り返そうとしている。
アニメ『進撃の巨人』放送開始当初の主題歌はどれも秀逸で名曲揃いだった。
特にテレビシリーズ第1話から13.5話まで使用された、アニメ『進撃の巨人』の初代OPテーマ 「紅蓮の弓矢」。
音楽ユニット「Linked Horizon」のこの曲をきっかけにアニメを観るようになったという人も多かったのでは?
『進撃の巨人』の世界観をダイレクトに表現した歌詞やドイツ語のナレーションといった要素は、血で血を洗う巨人との壮絶な戦闘を示唆するメタファーになっていたように思う。
歌手の個性を活かしつつアニメの世界観を完璧に表現した驚くべき1曲で、スピード感あふれる音楽に乗って空を飛び交う兵士たちを描いたOP映像も見事なほどにマッチしていた。
「紅蓮の弓矢」はアニソンのお手本ともいうべき名曲だったのである。
The Final Season のOPである神聖かまってちゃんの「僕の戦争」も、これから繰り広げられる鬱展開を暗示しているようで『進撃の巨人』の雰囲気にぴったりだった。
ちなみに神聖かまってちゃんは Season.2 のエンディングも担当しており、これまた作品の雰囲気に見事マッチしていた。
ところが『進撃の巨人』OP曲に異変が起こる。
テレビシリーズ第38話から49話まで使用された4代目OPテーマ 「Red Swan」YOSHIKI feat.HYDE 。
日本が世界に誇るロックバンド X JAPAN と L’Arc~en~Ciel 、それぞれの顔というべき存在のYOSHIKI(ドラム・ピアノ担当)とHYDE(ボーカル担当)がタッグを組み、YOSHIKI feat.HYDE 名義でリリースされた「Red Swan」。
この説明だけを聞いていれば疑いようのない名曲になることだろう。
だが実際はそうではなかった。
起用当初こそは話題になったものの、次第にメッキが剥がれ出す。
自分たちの音楽性を押し付けつけるだけでアニメにまったく寄り添おうとしない「Red Swan」は、アニソンとしては正直がっかりと言わざるを得ない出来だった。
歴代主題歌がこれまで積み上げてきたもののすべてを破壊した悪夢のような選曲。
たしかに大物アーティストのコラボレーションは話題にはなる。
しかし話題性だけで売れるほど、アニソンの世界は甘くはないのだ。
アニソンを舐めるな。
アニメ『鬼滅の刃「柱稽古編」』OP曲 MY FIRST STORY×HYDE「夢幻」がビルボードDLソング首位もご祝儀DLか
2024年5月22日公開(集計期間:2024年5月13日~5月19日)の Billboard JAPAN ダウンロード・ソング・チャート "Download Songs" で、MY FIRST STORYとHYDEによる「夢幻」が24,642ダウンロード(DL)を売り上げて、首位デビューした。
アニメ『「鬼滅の刃」柱稽古編』のOP主題歌として書き下ろされた「夢幻」は、アニメ初回放送スタート後の5月13日に配信され、2位に約4,700DLの差をつけて首位に。
6月5日のCDシングル発売を前に好スタートを切った。
しかしこれは新シリーズ放送開始記念のご祝儀DLの可能性が高い。
あくまで一過性のものに過ぎず、恒久的な人気を得るものではないだろう。
アニソンは売れるという勘違い
アニソンが音楽チャートを席巻する昨今。
隆盛著しい日本のアニソンは、もはやワールドワイドなコンテンツとなっている。
人気アニメの主題歌ともなれば話題性は抜群。
アニメ本編よりも一足早く、世界の話題をかっさらう。
もちろん、それを歌う担当アーティストも大忙しだ。
「あの大人気アニメの主題歌」というふれこみで、あらゆる音楽番組を総ナメ。
上手くいけば海外の音楽祭からもお呼びがかかり、たった1曲で世界的なアーティストへの道が開ける。
CDが売れなくなった今の日本でアーティストが売れる一番の近道は、もしかしたらアニソンなのかもしれない。
しかし、アニソンならば何でもいいということはもちろんない。
アニメが名作であればあるほど、その主題歌にも高いクオリティが要求される。
楽曲単体の音楽性はもちろん、その主題歌とアニメをどれだけシンクロさせられるのかが重要なのである。
その大成功例がYOASOBI「アイドル」でありCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」であろう。
しかしアニソンには通常の音楽チャートと違う最たる特徴がある。
それは担当アーティストに有名無名を問わないことだ。
誰が歌うのかなんて正直どうでもいい。
ネームバリューで評価が左右されない。
だからこそ、アーティストにとってもアニソンには夢があるのだ。
歴代主題歌の功績を裏切る強烈な "これじゃない感"
LiSA ー「炭治郎立志編」「無限列車編」
アニメ『鬼滅の刃』初代OP曲「紅蓮華」を担当したLiSA。
今でこそ有名アーティストの仲間入りを果たしたが、アニメ放送開始当初彼女を知っていた人がどれほどいただろうか。
『鬼滅の刃』放送前からアニソン界では有名だったLiSAだが、一般的な知名度は皆無に等しかった。
しかし「紅蓮華」の大ヒットが彼女をビッグネームへと押し上げる。
そして続く「炎」で確固たる地位を手に入れた。
ちなみにLiSAはED曲も担当しており、「明け星」では第63回日本レコード大賞優秀作品賞を受賞している。
LiSAが歌う曲はすべてがアニメに寄り添っていて、『鬼滅の刃』=「紅蓮華」、煉獄杏寿郎=「炎」のイメージを見事に確立した。
Aimer ー「遊郭編」
LiSAのイメージが固定した『鬼滅の刃』OP曲。
引き継いだのはAimerだった。
彼女もアニソン界ではその名が轟くも、一般的な知名度はそれまで皆無と言っていいだろう。
Aimerは『「鬼滅の刃」 遊郭編』OP主題歌「残響散歌」で、第73回NHK紅白歌合戦に初出場している。
「残響散歌」ではLiSAが築き上げた『鬼滅の刃』のイメージを踏襲しつつも、Aimer自身のアイデンティティもしっかりと示し、偉大なる初代のプレッシャーを見事に跳ね除けてみせた。
OP曲ばかりに目がいくが、Aimerが担当したED曲「朝が来る」は、一度しっかり聴いてほしい隠れた名曲である。
MAN WITH A MISSION & milet ー「刀鍛冶の里編」
LiSA、Aimerと続きOP曲を引き継いだのはMAN WITH A MISSIONとmilet。
『「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』OP主題歌 「絆ノ奇跡」。
MAN WITH A MISSION、通称マンウィズはオオカミの被り物でお馴染みだから、アニソン界のみならず一般的な知名度も高い。
またmiletもアニメ好きには知れた名前だが、それ以上に多くのドラマ主題歌を担当していて、名こそ知らなくても、彼女の楽曲を聴けば耳にしたことがある人も多いだろう。
ちなみにMAN WITH A MISSIONとmiletはそれぞれ個別でアニメ『ヴィンランド・サガ』のOP・EDを担当(Aimerも)していたという共通点があり、このコラボは非常に興味深い顔合わせだった。
何よりここへきて担当アーティストの選定を、アニソン界寄りからメジャー寄りへと舵を切る。
正直、ここで『進撃の巨人』の悪夢が訪れるのかと著者は思っていた。
しかし蓋を開けてみればさすがと言わざるを得ない出来の良さ。
マンウィズもmiletもアニソンに精通していたからだろうか、それまでの主題歌からはガラッとテイストが変わったが、疾走感の中にわずかに残る寂寥感がアニメの作風とジャストフィット。
アーティストのアイデンティティをしっかり残しつつも、見事アニメに寄り添った主題歌だといえる楽曲だった。
MY FIRST STORY × HYDE ー「柱稽古編」
MY FIRST STORYは、2014年放送のアニメ『信長協奏曲』主題歌「不可逆リプレイス」、2019年に配信されたNetflixオリジナルアニメ『ケンガンアシュラ』OP主題歌「KING & ASHLEY」、2021年オンエアのアニメ『オルタンシア・サーガ』OP主題歌「LEADER」などの楽曲で、アニメファンにもお馴染みのアーティストだ。
一方HYDEは、L’Arc-en-Ciel、VAMPS、THE LAST ROCKSTARSでボーカリストとして活躍するなど、国内外で幅広い活動を展開する著名アーティスト。
アニソンの提供にも非常に積極的で、L’Arc-en-Cielとしては『D・N・A² 〜何処かで失くしたあいつのアイツ〜』OP主題歌「Blurry Eyes」、1996年版『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 』ED主題歌「the Fourth Avenue Café」、『GTO』OP主題歌「Driver's High」、2003年版『鋼の錬金術師』OP主題歌「READY STEADY GO」、『精霊の守り人』OP主題歌「SHINE」、『機動戦士ガンダム00』OP主題歌「DAYBREAK'S BELL」、『EDENS ZERO』OP主題歌「FOREVER」などを歌っている。
ここで問題なのは時代が変わったということ。
「夢幻」という楽曲はHYDEの意向が多く取り入れられた作品という印象が強い。
そして、たしかにHYDEはアニソンの実績もある。
だかしかし、HYDEがアニソンに楽曲提供していた頃とは、アニソン事情がまったく違う。
アーティストの目がまだCDセールスに向いていた頃なら、大物アーティストのアニソン参戦なさぞや大きな売り文句になったことだろう。
しかしそれはアーティストの楽曲であり、アニメに寄り添った楽曲ではない。
アニメとほんのちょっとでもイメージが重なれば良いという、極めてアーティスト中心の選曲だった。
しかし今は違う。
誰もが知っている人気アーティストを起用し、そのアーティストの自我だけを貫き通せるほど、アニソンは甘くはなくなった。
そういう意味で、アニメ『「鬼滅の刃」柱稽古編』のOP曲「夢幻」は、酷くアーティスト寄りの楽曲だという印象だ。
個人的には、極めてアーティスト中心の古き悪しき選曲だと思う。
アニソンでのヒットは見返りが大きい。
日本のアニメは世界でも高く評価され、その主題歌ともなれば注目度も話題性も抜群だ。
だからアーティストがアニソンに活路を見出す気持ちは十分わかる。
しかし今という時代での畑違いの大物アーティストのアニソン参戦は、アニメファンから言わせてもらえば、アニソンを舐めているように感じてしまう。
アニソンは売れると高を括られているのではないかと、どうしても勘繰ってしまう。
そしてもしそうだとしたのなら、アニソン寄りのアーティストへの冒涜でしかない。
アニソン専門、アニソン寄りのアーティストは伊達ではない。
アニソンを歌うアーティストは、その楽曲のみならず、アニメへの評価も左右する重責を担っているのだ。
アニメの評価という点で危惧するのが、今後の人気が下降する恐れである。
『進撃の巨人』でYOSHIKI feat.HYDE「Red Swan」が起用されてから、社会現象にまでなった人気に陰りが見え始めた。
物語的にも鬱展開が始まる頃だからあるいは必然だったのかもしれないが、「Red Swan」を経てからというもの『進撃の巨人』は時折話題になりはしてもオワコン扱いされ、ひっそり終わっていくことになる。
奇しくも『「鬼滅の刃」柱稽古編』も、鬱展開前最後の閑話休題的な回。
窓口が広かったこれまでとは違い、視聴者層は一気に絞られることになるだろう。
おまけに『鬼滅の刃』は次回作公開までのスパンの長い。
主題歌が印象弱いと、アニメの人気維持にも少なからず影響が出る。
アニメ人気維持の役割をMY FIRST STORY × HYDE「夢幻」が果たせるかどうか?
それとも『進撃の巨人』同様、『鬼滅の刃』もこれからオワコン化が始まってしまうのか?
兎にも角にも、『鬼滅の刃』OP曲としてのMY FIRST STORY × HYDE「夢幻」は個人的に "これじゃない" 。
Xが大好きで、L’Arc-en-Cielの「Flower」が今でも名曲だと信じて疑わない著者だが、アニソンとなれば話は別。
アニソンを舐めてはいけない。
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