アニメーション映画
ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021
大人になってから観て感じた「ドラえもん」への違和感
『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』とは
『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』は、2022年3月4日に公開されたSFアニメーション映画。
藤子・F・不二雄の漫画『ドラえもん』を原作とした、『映画ドラえもん』シリーズ通算第41作目。
小学館創立100周年記念作品。
監督は山口晋氏、脚本は佐藤大氏。
本作は大長編シリーズの1作『ドラえもん のび太の宇宙小戦争』(1985年)のリメイク作品。
『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』(2017年)から『映画ドラえもん のび太の新恐竜』(2020年)まで全てオリジナル作品であったため、リメイク作品としては『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』(2016年)以来6年ぶりとなった。
そのため漫画版は描かれず、代わりに小説版が発売された。
当初は2021年3月5日公開予定だったが、2020年より続いた新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、1年公開が延期された。
また、本作の音響はシリーズ初となるドルビーアトモスが採用され、全国10都府県11館で同時公開された。
Blu-ray Disc・DVD発売より先行し、2022年8月12日にAmazon Prime Videoで独占配信を開始。
あらすじ
夏休みのある日。
スネ夫・ジャイアン・出木杉・のび太の四人は、スネ夫の家でジオラマを使い、自主制作映画『宇宙大戦争』の撮影をしていた。
ドラえもんも加わり映画制作が進む中、のび太はみんなの足を引っ張ってしまい、スネ夫・ジャイアンから仲間はずれにされてしまう。
落ち込みながらの帰り道、スネ夫の家で拾った小さなロケットが本物らしいことに気付いたのび太は急いで家へ帰る。
ドラえもんも帰ってきてロケットを調べると、中から現れたのは地球人よりも小さな宇宙人、パピだった。
パピのロケットは故障しており、ドラえもんとのび太はロケットの修理をしてあげることに。
翌日、パピのためにドールハウスを持ってきたしずかを加え、「スモールライト」で小さくなったドラえもんたちは、パピと一緒に遊んで交流を深める。
その中でパピはしずかの顔立ちや仕草に、故郷へ残してきた姉・ピイナの面影を見る。
しずかと入れ替わりでやって来たジャイアン・スネ夫はパピの存在に驚くも、スネ夫のアイディアで「スモールライト」を使い小さくなり、ジオラマの中で『宇宙大戦争』の撮影を始める。
そこへクジラ型の戦艦が現れて攻撃を受け、ドラえもんたちはピンチに陥る。
なんとか危機を脱したが、訳がわからないドラえもんたちに、パピは自分がピリカ星の大統領であり、反乱軍の攻撃から逃れてきたことを明かす。
反乱軍を率いる将軍・ギルモアが、PCIA(ピシア)という組織を作り、その長官・ドラコルルがパピを捕まえに地球へ現れたのだ。
事情を知ったドラえもんたちはパピに協力することを決め、顔がまだ知られていないしずかの部屋に「かべ紙秘密基地」を貼り、中でパピを匿まうことに。
しかし数日後。
ドラコルルが放った探査球によってパピの居場所がばれてしまい、「スモールライト」で小さくなっていたしずかは捕虜となってしまう。
夜の公園でパピはしずかと引き替えに自分の身を差し出そうとするが、そこへパピの愛犬・ロコロコと共にドラえもんたちが改造戦車「アストロタンク」で救出へ現れる。
無事2人の救出に成功したものの、ドラコルルによってピイナが捕まっていることを知った一同は、修理が終わったロケットでピリカ星へと向かう。
自由同盟の基地で盟主・ゲンブと会い、作戦を考えるドラえもんたち。
そんな中、責任を全て負おうと決めていたパピは1人でピリカ星に向かい、ギルモアの戴冠式へ出席を決める。
ドラコルルによる報道を受け、地下組織に早く自由同盟の作戦を伝えようと、ドラえもん・のび太・ジャイアン・ロコロコは、ピリカ星に落下する隕石に乗じ「アストロタンク」で乗り込むことに。
一方、自由同盟の基地で待機することになったしずか・スネ夫は、ドラえもんたちの無事を祈る。
地下組織の隠れ家へたどり着き、作戦内容を伝えたドラえもんたちは、「スモールライト」がPCIAの基地にあることを知る。
そこへPCIAが攻め入り、地下組織のメンバーたちが捕まってしまう。
地下組織のリーダーの手助けで脱出したドラえもんたちは、「スモールライト」奪還のため「石ころぼうし」をかぶり、PCIAの基地へ侵入する。
だが全てはドラえもんたちをおびき出す罠であり、のび太を残しドラえもんたちまで捕まってしまう。
自由同盟も基地の場所をついに知られ、差し向けられたおびただしい数の無人戦闘機が迫ってくる。
「アストロタンク」を駆り、自由同盟と共に立ち向かうしずかとスネ夫。
そしてギルモアの戴冠式の日。
パピはテレビ中継カメラの前で演説を始める。
地球でドラえもんたちと出会い、知ったこと。
そして、独裁者であるギルモアへの怒り。
パピの演説に心を動かされたピリカの人々はこのままではいけないと、次々声を上げ立ち上がる。
路上で一夜明かし満身創痍だったのび太もパピの中継映像と、処刑場へ送られるドラえもんたちを乗せた護送車を見て再び奮起し、処刑場へと向かう。
その頃、無人戦闘機との戦いに勝利したしずかとスネ夫はピリカ星へやってきていた。
しかしPCIAの攻撃で「アストロタンク」は海に落下してしまう。
一方ビルの屋上にある処刑場へたどり着いたのび太も、パピを助けようとし、共に屋上から転落してしまう。
絶体絶命のその時、しずかとスネ夫の体が巨大化を始める。
「スモールライト」の効き目が切れて、元の大きさに戻ったのだ。
転落したのび太、磔にされていたドラえもんとジャイアンも元の大きさに戻り、離ればなれだった五人は集結し再会を喜ぶ。
助けられたパピたちは地下組織のリーダーたちと共に民衆へ呼びかけるため放送局へ向かい、ドラえもんたちはPCIAの無人戦闘機たちと戦いを繰り広げる。
ドラコルルたちが乗ったクジラ型戦艦の攻撃に苦戦するも、力をあわせてこれに反撃。
逃げる戦艦に飛び乗ったジャイアンの一撃で戦艦は海へ不時着し、ドラコルルも降伏する。
一方ギルモアは一人で宇宙空港に向かい逃亡を図ろうとしたが、シュプレヒコールを上げるピリカの民衆たちに取り囲まれてしまう。
敗北を悟ったギルモアはその場にへたり込み、独裁に終止符が打たれる。
平和が戻ったことに喜び合う人々から離れ、久々に姉と弟、家族水入らずの会話をするパピとピイナ。
ピイナの言葉でパピはずっと堪えていた涙を流し、それをピイナは受け止めた。
「スモールライト」を取り戻したドラえもんたちはパピらと再び会う約束をし、地球へと帰って行く。
後日、完成した『宇宙大戦争』を観た出木杉はその仕上がりに驚き、どのように撮影したのかドラえもんたちに尋ねる。
一同は待ってましたと言わんばかりに出木杉に顔をよせ、「聞きたい?」と言うのだった。
評価
公開の1週間前にロシア軍によるウクライナの侵攻が始まり、独裁者とそれに抵抗する大統領という構図が奇しくも本作とリンクしたことで、現実の戦争と本作を結び付けたレビューが相次いで執筆された。
このうち、RealSoundの久保田和馬氏は、パピが劇中で身に着けているペンダントがウクライナの国旗と同じ色であるという「偶然」を指摘している。
ライターの井中カエル氏は、Realsoundに寄せた記事の中で、パピの逃走劇からのび太たちの映画撮影へと至る冒頭の展開を評価しつつも、そのくだりが省略化されている点については映画のスピードが公開当時と比べて加速しているのではないかと推測している。
加えて、パピと出会ったのび太たちがスモールライトで小さくなって非日常を楽しむ場面についても、日常の場面とこれから起こる戦争のつなぎとしてうまかったと井中は評価している。
また、井中氏は近年のドラえもん映画において子どもでもわかるよう感情表現を大げさにしつつも、ギャグになりすぎないよう作画が丁寧である傾向を指摘しており、特に本作においては、スネ夫が本物の戦争を目の当たりにして恐怖に震える様子を通じて、子どもでも戦争の恐怖を感じさせることに成功したと述べている。
ライターの杉本穂高氏は、アニメ専門のニュースサイト「アニメ!アニメ!」に寄せた記事の中で、登場人物のドラコルルがより魅力的な悪役としてギルモアはより哀れな独裁者として描かれており、この2人の対比を通じて独裁の哀れさがよくわかると述べている。
また、杉本氏は原作漫画並びに1985年版よりも、民衆の勇敢さが強調されていると指摘したうえで、「圧政を打倒するのは外部の軍事力ではなく、その国に生きる人々であるべきだというメッセージが込められているのかもしれない。」と推測している。
大人になってから観て感じた「ドラえもん」への違和感
違和感①:1985年版の記憶とのズレ
1985年版『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争』を子供の頃に観た。
記憶には残っている。
内容もなんとなくだが覚えている。
2021年版を観て、だいたいこんな感じだったような気はしている。
調べてみても、2021年版と1985年版にシナリオの大きな変更はないようだ。
なのに何故か違和感がある。
こんな話だったか?と、違和感が残る。
違和感②:ジャイアンの良い奴感が薄れビビりすぎのスネ夫に萎える
普段はいじめっ子のジャイアンが、映画になると途端に良い奴になることだ。
普段からTVシリーズを観ているわけではないから、レギュラーシリーズとの違いは定かではないが、昔はたしかにこうだった。
そんなメリハリが本作では薄れていたような気がする。
そういえば少し前にコンプライアンスどうこうで、『ドラえもん』が矢面に立たされているという話を聞いた。
何でもイジメを助長するとかで、ジャイアンとスネ夫の描写がマイルドになっているというのだ。
過度な描写はしない。
そういうことだろうか。
また本作では、スネ夫が珍しく尻込みしている。
どうやら1985年版でもそうだったらしい。
普段ならそんな回もあるだろうさと思うところだが、スネ夫のビビりぶりがあまりに強調されすぎていて違和感が残った。
違和感③:謎のスモールライト縛り
一番の違和感が謎のスモールライト縛りだ。
しかしこれもどうやら1985年版から引き継いでいる設定らしい。
こんな縛りあったか?
本作はスモールライトで小さくなったままのドラえもんたちが、スモールライトを奪われてしまったことで小さな宇宙人・パピに協力することになる。
ドラえもん曰く、「スモールライトがないと元に戻れない」らしい。
でもちょっと待てよ。
姿を大きくしたり小さくする道具なら、他にもたくさんあるじゃないか。
思わずドラえもんの秘密道具を調べてしまった。
まずは「ガリバートンネル」。
トンネルを抜けるうちに小さくなる道具だが、これでは元に戻れないの?
まだある。
「ビッグライト」で元の大きさに戻ることはできないのだろうか?
まだまだある。
「タイム風呂敷」で小さくなる前に時を戻す。
多少変化球ではあるが、これなら「スモールライト」の効果云々の縛りを超越できるのではないか?
他にも元の大きさに戻る方法はまだまだありそうだが、素人がザッと挙げただけでもこれだけの方法が考えられた。
にもかかわらず本作でドラえもんたちは、ひたすら「スモールライト」を取り戻すことに終始している。
ここまで頑なだと完全にご都合主義設定なことは明白だが、それでもこの違和感だけはどうしようもなかった。
そうして芽生えるひとつの確信。
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