Amazing Grace / 竹原ピストル (2018年)
めちゃくちゃなのに原詞との妙な親和性?日本語訳ではなく自身の思いを日本語歌詞として添えた祈りの歌
「Amazing Grace / 竹原ピストル」とは
竹原ピストル氏が歌う「Amazing Grace」は、讃美歌「アメイジング・グレイス」に竹原氏自身の想いを日本語歌詞として添えた祈りの歌だ。
リリース発表後もSNSを中心に楽曲への感想、想い、熱いメッセージが止まらない。
フォーク小屋のマスターだったりママさんだったり、お世話になった方がご病気されたとかガンでお亡くなりになった時につくられた曲。
みんないつまでも元気に長生きして欲しいな、という祈りの気持ちを込めて書いた詩を、世界的に愛されている世界的な歌、「Amazing Grace」のメロディーに乗せて完成させた。
賛美歌「Amazing Grace」
「アメイジング・グレイス」(英語:Amazing Grace,「われをもすくいし-讃美歌第二編第167番 日本基督教団1967年版 原恵訳」)は、イギリスの牧師ジョン・ニュートン (John Newton,1725–1807)の作詞による賛美歌である。
なお作曲者は不詳。
特にアメリカ合衆国で最も慕われ愛唱されている曲のひとつであり、"第二の国歌" とまでいわれる。
日本においても、映画・ドラマ・アニメ・CM曲などで多用されるなど、讃美歌の中では最もよく知られた曲のひとつである。
ちなみに "Amazing grace" とは、「素晴らしき神の恵み」「感動をもたらす恩寵」などの意。
日本で最も著名な 「アメイジング・グレイス」
「アメイジング・グレイス / ヘイリー・ウェステンラ」
ヘイリーの名が国際的に知られるようになったのは2003年にデッカ・レコードと契約しアルバム「Pure」を発表してからのことである。
日本ではテレビドラマ『白い巨塔』の主題歌に「アメイジング・グレイス」が起用されたことで広くその名を知られるようになった。
『白い巨塔』は、2003年10月9日から2004年3月18日まで毎週木曜日22:00 - 22:54に、フジテレビ系「木曜劇場」枠で「フジテレビ開局45周年記念ドラマ」として放送されたテレビドラマで、山崎豊子先生原作の同名小説4度目のドラマ化。
制作は1978年版テレビドラマ『白い巨塔』と同じフジテレビ。
主演は唐沢寿明氏と江口洋介氏で、共演は同枠で放送された『愛という名のもとに』以来11年9ヶ月ぶりのことであった。
近年の日本においてはヘイリーの曲が、「アメイジング・グレイス」の曲の中で最も著名な曲となっている。
アメイジング・グレイス~祈り ヘイリー・グレイテスト・ヒッツ(通常盤)
永遠の名曲
「アメイジング・グレイス / 本田美奈子.」
急性骨髄性白血病のため入院していた本田美奈子.が一時快方に向かった際、ファンの支援への感謝を込めてこのセレクション・ミニアルバムが企画された。
2枚のソプラノ・アルバムから選ばれた5曲のほか、入院直前に録音されていた「ララバイ〜ミュージカル『十二夜』より」が収録された。
2曲入りDVDもセットになっている。
付属のDVDには六本木スイートベイジルでの「アメイジング・グレイス」のライブ映像が収録され、ここでは本田さんは井上鑑氏のピアノのみによる伴奏で歌っている。
本田さんの逝去を伝えるテレビ報道では、特にこのライヴ映像が盛んに用いられた。
このため日本では、この歌と本田さんの存在とが強く結びついて人々に印象づけられることとなり、「アメイジング・グレイス」は彼女の代表曲のような存在になっている。
本田さんの晩年の歌手活動について多くの人が描くイメージは、赤いドレスを着てこの歌を歌う姿によって形づくられているともいえるだろう。
また亡くなる3カ月ほど前にはこんなエピソードも。
一時退院の前日、病室を出てナースステーションの前までくると、やせ細った体に力を込めて背筋を伸ばし、突然アカペラで歌い始める。
Amazing grace,how sweet the sound
(大いなる神の恵み、なんと甘美な響きだろう)
That saved a wretch like me
(私のような哀れな者ですら、救って下さった)
I once was lost,but now I'm found.
(道を見失いさまよっていた私を導いて下さった)
Was blind,but now I see
(以前は闇をさまよっていたが、今の私にはハッキリと見える)
彼女が突然披露した「アメイジング・グレイス」に、居合わせたナースやドクターたちは驚き、あるいは号泣し、顔を真っ赤にして涙を堪えながら、彼女の「最期の歌声」に心を預けた。
彼女自身も涙を浮かべ歌い上げたこの3分30秒は、結果として命の最期の輝きになってしまった。
この歌は200年以上の歴史を持つ文化遺産であり、特定の歌手の持ち歌のような扱いにはなじまない楽曲だが、こうしたこともあって、現在の日本ではこの歌が本田さんの存在を想起させるものともなっている。
作詞者ジョン・ニュートンの自伝「『アメージング・グレース』物語」(2006年12月7日、彩流社)を翻訳した中澤幸夫氏も「本田美奈子.さんがこの歌を広めたと言っても過言ではない」としている。
ブックレットには歌への思いを綴った本田さんの直筆のメッセージが掲載されている。
「アメイジング・グレイス」が収録されたアルバムの発売から、わずか2週間余り後の2005年11月6日、本田さんは急逝した。
ブックレットには歌への思いを綴った本田さんの直筆のメッセージが掲載されている。
日本においての「アメイジング・グレイス」はヘイリーの曲が最も著名な曲となっているが、本田美奈子.さんのそれは有名無名の価値観とはまた別の特別な存在となっている。
めちゃくちゃなのに原詞との妙な親和性?日本語訳ではなく自身の思いを日本語歌詞として添えた祈りの歌
本来、賛美歌である「アメイジング・グレイス」に、病気や闘病といった特定のイメージは込められてはいない。
あるのはタイトル通り、「素晴らしき神の恵み」や「感動をもたらす恩寵」のイメージだけだ。
しかし日本では闘病の果てに亡くなった故人を想う曲というイメージでなぜか定着している。
それはいったいどうしてだろう。
日本で「アメイジング・グレイス」に病気や闘病といった特定のイメージがついたのはいつからだろう。
普通に考えたら「アメイジング・グレイス / 本田美奈子.」が一番有力視されるのだろう。
だが、その予兆は実は『白い巨塔』(2003年)から始まっていた。
大学病院を舞台にしたドラマの主題歌に「アメイジング・グレイス」が起用されたことももちろんな理由ではあるが、さらに『白い巨塔』の主人公である財前五郎医師はステージ4の末期癌で亡くなっていて、その最期の様子に「アメイジング・グレイス」がとても印象的にフィットしていた。
こうして地ならしされたイメージが、本田美奈子.さんによって加速し完全に固定されたのだろう。
さらにそれを追従するように発表されたの「Amazing Grace / 竹原ピストル」である。
ミジンコくらいにちいさくなって
あなたの手のひらの上を探検したい
こっそりとこっそりとあなたの生命線を
勝手に長く伸ばしてあげたい
原詞日本語訳の見る影もない。
それもそのはずで、本作には日本語訳ではなく竹原氏自身の想いを日本語歌詞として添えられている。
これを日本語訳と呼ぶにはあまりにめちゃくちゃだろう。
だが妙にしっくりくるのはなぜだろう。
日本人に植え付けられた闘病の果てに亡くなった故人を想う曲というイメージからだろうか。
もちろんそれもあるのだろう。
だがそれとは別に、竹原ピストル氏の詩からは原詞日本語訳との妙な親和性を感じられる。
人間よりもさらに矮小な「ミジンコ」に救いを求めることで、祈っても応えてくれない「神」という大いなる存在へのアンチテーゼに聴こえるからだろうか。
ミジンコくらいにちいさくなって
あなたのおなかの中に出陣したい
たとえ刺し違えようとも
たとえ刺し違えようとも
あなたを蝕むがん細胞をぶっ殺してやりたい
身近な大切な人のこと想い歌った本作ではあるが、その人たちのことをよく知らない我々にとって「Amazing Grace / 竹原ピストル」からも、本田美奈子.さんのことがやはりどうしても想起される。
そうした経験もないのにどこか物悲しく聴こえてしまうのは、「アメイジング・グレイス」という曲のどこかに本田美奈子.さんの魂が感じられるからなのかもしれない。
【増補版】「アメージング・グレース」物語: ゴスペルに秘められた元奴隷商人の自伝
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