劇場版シリーズ第12作目
名探偵コナン 戦慄の楽譜
キャッチコピー
- 「この歌声を、消させはしない。」
- 「この指が奏でるのは、真実を導く旋律(しらべ)…」
『名探偵コナン』とは
『名探偵コナン』は、1994年刊行開始の青山剛昌先生原作による推理漫画作品であり、本作を原作とした一連のメディアミックス作品の総称。
黒の組織によって少年化させられた高校生探偵・工藤新一が江戸川コナンと名乗り、組織の行方を追いながら数々の事件を解決していく推理漫画。
「週刊少年サンデー」(以下、「サンデー」)にて1994年5号より『名探偵コナン』の連載が開始された。
2014年6号で連載20周年、2017年37-38合併号で1,000話目を迎え、「サンデー」史上最長の連載期間となっている。
1996年からテレビアニメが放送開始され、2016年には20周年を迎えた。
1997年から毎年4月に劇場版映画が公開されている。
2001年、第46回(平成12年度)小学館漫画賞少年部門受賞。
2015年7月時点で単行本の国内累計発行部数は1億4900万部を、2021年10月時点で単行本の全世界累計発行部数は2億5000万部をそれぞれ突破している。
なお、2018年6月の時点で漫画は25の国と地域で翻訳・販売され、アニメは40ヵ国で放送されている。
劇場版シリーズ伝統の実写エンディング
劇場版名探偵コナンといえば、鉄板のお約束がいくつかある。
その中のひとつがエンディング。
第1作からの伝統で、エンドロールで映画の舞台となったりモチーフとなった実際の風景(実際に無い場所でも有名なところをモデルにする)の映像が流れることが定番となっている。
他のアニメ作品ではあまり観ない演出なので、コナンのエンディングが印象に残っている人も多いかと思う。
本稿では、その実写エンディングだけにフィーチャーしてみよう。
劇場版『名探偵コナン 戦慄の楽譜』とは
『名探偵コナン 戦慄の楽譜』は、2008年4月19日に公開された日本のアニメ映画で、劇場版『名探偵コナン』シリーズの第12作目にあたる。
上映時間は115分。
「旋律」とかけて「戦慄」がタイトルに含まれる本作は「音楽」がメインとなっている。
主人公・江戸川コナンとゲストキャラクターの秋庭怜子がメインで活躍するため、コナン以外のレギュラーキャラクターの活躍は全体的に抑えられている。
また、ポスターにゲストキャラクターが描かれたのは本作の秋庭怜子と、第4作『瞳の中の暗殺者』に登場して以降2回登場している、警視庁刑事部の部長・小田切敏郎だけである。
作中には前作『紺碧の棺』に続いて工藤新一と毛利蘭の過去のエピソードも織り込まれており、中学生時代に起きた2人の喧嘩が描かれている。
帝丹小学校の校歌が初披露され、コナンのクラス全員が揃って歌うシーンが描かれている。
その後、校歌はドラマCD「名探偵コナン・キャラクター・ソング集 帝丹小学校に全員集合!!」に収録された。
ドラマCDではコナンたちの他、毛利蘭役の山崎和佳奈さん、鈴木園子役の松井菜桜子さんも参加している。
ニュースキャスターなどが端役で出演することは第1作『時計じかけの摩天楼』からあったが、本作からは著名人がゲスト声優として出演するようになり、本作では山里亮太氏、坂下千里子さん、西尾由佳理さんが出演している。
ただし、出番は少なく、容疑者役など重要キャラクターで登場するのは次作『漆黒の追跡者』からである。
劇場版名探偵コナンにおいてZARDの主題歌起用は第9作『水平線上の陰謀』以来3作目となるが、公開前年の2007年5月にメンバーの坂井泉水さんが逝去したため、ZARDの起用は本作が最後となった。
また、パンフレットには「『名探偵コナン』とZARDがともに歩んだ軌跡」として特集が組まれていた。
第8作『銀翼の奇術師』から音響監督を担当してきた井澤基氏は本作をもって降板し、以降はテレビシリーズの音響監督を担当してきた浦上靖夫氏が兼任するようになった。
興行収入は24億2000万円。
読売テレビ開局50周年・小学館週刊少年サンデー創刊通算50年記念作品。
第32回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞作品。
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あらすじ
高名な元ピアニストの堂本一揮によって創設された堂本音楽アカデミーの練習室が爆発し、アカデミーの1期生が2名死亡、ヴァイオリニストの河辺奏子が重傷を負った。
現場からはフルートを構成する3つの部品の1つ、胴部管が発見された。
事件の翌週、蘭はオルガンに転向した堂本一揮の新しい音楽ホール、堂本音楽ホールでのこけら落としとリハーサルの見学に新一を誘うが、喧嘩になってしまう。
蘭が新一と喧嘩したことを知った園子は、中学の時に特に長い喧嘩があったことを思い出し、それについて尋ねるが、蘭は帰路に聞こえてきた、なにかの曲が仲直りのきっかけになったこと以外忘れてしまっていた。
リハーサルを見学したコナンたちは、堂本一揮の他、彼の専属調律師だったホール館長の譜和匠、オルガン調律師のハンス・ミュラー、ピアニストで一揮の息子の弦也、堂本アカデミーの卒業生であるソプラノ歌手の千草らら、河辺の代役となったヴァイオリニストの山根紫音を目にし、ソプラノ歌手の秋庭怜子と出会う。
彼女が帝丹小学校OGだったことから後日コナンたちの合唱の練習を見てもらうことになるが、その練習のあと、怜子の飲み物を勝手に飲んだ元太が苦しみ出す。
診察の結果、4〜5日の間声が出づらくなるということであり、彼女の堂本アカデミーでの練習のあと、3日後に迫ったホールでの出演を狙い、水筒に刺激物が混入されたものと考えられた。
さらに帰り道、一行は何者かにダンプカーで襲われる。
さらにアカデミーの1期生が2名死亡し、それぞれの現場にはフルートの頭部管と足部管が残されていた。
4名の死者は過去、ピアノカルテットを組んでいたという。
警察や小五郎は関係者の動機を確認するが、死んだ4人と秋庭の両方に動機の見える者はいない。
翌朝、コナンは秋庭のもとを訪れ、彼女の寝室でフルートと、男性の写真を見つける。
その男性は彼女の婚約者であった相馬光というフルート奏者で、4人組が無理やり酒を飲ませた結果、事故で転落死していたのだった。
コナンは秋庭の森林浴に同行したところ、エアライフルでの狙撃に遭遇する。
2人は逃げ出すが、犯人に怜子を撃つチャンスを与えてしまう。
しかし犯人は何故か撃とうとせず、コナンたちは逃走に成功する。
公演当日、コナンと秋庭はパイプオルガンの管が1本だけ微妙にずれた音を出すことに気付き、ミュラーが行方不明のため一揮に伝えようとするが、不在の彼を探す間に2人は何者かに襲われ意識を失う。
そのまま公演開始の時刻となり、千草が代役となって開演する一方、コナンと秋庭はボートに乗せられ、運河に流されていた。
運河から脱出することは困難だったが、手の届かない位置に電話があったため、コナンがボール射出ベルトを使って受話器を外し、2人の声でDTMF信号を発することによって110番通報に成功する。
公演が始まってから、堂本ホールの外側にある23本の柱は断続的に爆破され続けていたが、ホール内は完全防音となっていたため会場の人間は誰も爆発に気付かないまま公演が続けられていた。
ヘリでコナンと秋庭を助けに来た佐藤刑事と高木刑事は、そのままホールの上ぎりぎりまで降下させて飛び降りることによってホール内に突入し、怜子とコナンも強引に同行する。
佐藤と高木は爆弾を探しに行き、コナンと秋庭は会場で待機するが、音のずれと爆発が連動していることに気付く。
管の1本に空気の流れの感知に伴って爆発させるセンサーが仕込まれていて、それのために微妙に音がずれていたのだった。
コナンが犯人がリモコンも所持しているのを見つけたため、公演を中止させても起爆されてしまうことがわかったが、秋庭がアメイジング・グレイスで割り込むことで時間を稼ぐ間に、コナンはセンサーを外し、犯人と対峙する。
一方蘭は、中学の時に新一との仲直りのきっかけになったのが、彼女のこの歌だったことに気付く。
犯人は譜和匠であり、彼は相馬の、身元を明かせない父親だった。
4人組を殺害したのは相馬の復讐で、河辺、秋庭、コナンを襲撃したのは彼らが絶対音感を持っているため、音の違いを指摘されるとセンサーが発見されるおそれがあるからで、秋庭をそれほど追い詰めなかったのは相馬の婚約者だったためである。
コナンは時計型麻酔銃が壊れてしまっていたためリモコンによる起爆を阻止しあぐねていたが、灰原がリコーダーの音名で「SHOOT」という文字列を伝えて射線を空けさせ、佐藤の狙撃によって制圧に成功する。
譜和は終演に際しながら爆破の動機を語り始める。
妻と息子を亡くした中、35年間専属調律師として人生を共にした一揮が突如転向してしまい、今更他のピアニストにつく気にもなれず、残された生きがいだった音楽までも耳障りになったことから、一揮やホールやオルガンを、客も巻き込んで消し去ろうとしたものだった。
しかし一揮の転向の理由は、譜和の調律が年を経るにつれて狂ってきていたが、プライドの高い譜和にそれを指摘するにしのびなく、また彼以外の調律師と新たに組むことも考えられなかったためだった。
それを告げられた譜和は一揮に当たり散らすが、園子に親友に対する信頼について諭されると泣き崩れる。
ホールを出ると、バイオリンによるアメイジング・グレイスが聞こえてきた。
蘭は弾き方からそれを新一の演奏と悟り、コナンから「新一が蘭と自分自身に聞かせるために弾いた」と聞くと、「今更来ても許してなんかやらない」と思いながらも微笑むのだった。
主題歌
- ZARD「翼を広げて」
作詞 - 坂井泉水 / 作曲 - 織田哲郎 / 編曲 - 明石昌夫
1993年に発売されたDEENのシングル「翼を広げて」のセルフカバー。
10年以上前にレコーディングはされていたものの、アルバムコンセプトとの相違や収録曲とのバランスの関係で、音盤化が見送られていた。
DEEN版とは違いコーラスが一切使われていないのが特徴。
名探偵コナン作品におけるZARDの主題歌の起用は本作が最後となり、タイアップは全9回である。
同じ曲でも歌う人間によって、こうも印象が変わるものか。
一世を風靡した「翼を広げて」だが、DEEN版は正直あまり好みではない。
何が違うのだろう?
パッと思いつくのが二人称の聴こえ方。
「君」への想いの切実さが、圧倒的に違うような気がする。
もちろんZARD版の圧勝。
やはり実際に作詞した人間が歌えば、説得力も違うということだろうか。
それだけではない何かが、まだあるような気もするのだけど。
ともあれ、セルフカバーながらまったく別物に仕上がっているZARD版「翼を広げて」。
発表からずいぶんな時を経て、自分の中で名曲に昇華した。
実写エンディングロケ地
本作の実写エンディングロケ地は、特定がなかなかに難しい。
噂で聞いたのはニュージーランドのロトルア湖。
エピローグ
コナンと蘭と秋庭が、思い出の河原を訪れていた。
「アメイジング・グレイスは許しの歌だから。」
そう言い残し立ち去る秋庭。
コナンは蘭に、なぜあのバイオリンが新一の演奏だとわかったのかを訊ねる。
すると蘭は、新一のバイオリンには変な弾き癖があるという。
帰宅したコナンはバイオリンを弾いてみるが、結局変な弾き癖はわからずじまいだった。
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