〇〇の声優がこの人で本当によかった
九能帯刀:CV.鈴置洋孝(アニメ『らんま1/2』[1989年版・熱闘編]より)
アニメ『らんま1/2』[1989年版・熱闘編]とは
『らんま1/2』[1989年版・熱闘編]とは、高橋留美子先生による同名漫画を原作とするアニメである。
制作はキティ・フィルム。
アニメーション制作はスタジオディーン。
1989年4月から1992年9月にかけてフジテレビ系列局ほかで全161話(1期18話+2期143話)が放送された。
当初は『らんま1/2』のタイトルで毎週土曜夜7時台後半にて放映されており、視聴率で苦戦したために2クール18話で打ち切られてしまった。
その後同年10月より新シリーズとして、毎週金曜夕方5時台後半にて『らんま1/2熱闘編』が放映され、こちらは3年間に渡り放送されている。
当時は声優ブーム真っ只中で、その中でも本作はキャラクター名義のキャラクターソングを多数発売。
キャラソンの地位向上に大きな役割を果たしたとされる。
TVアニメ終了後、何作か続編OVAや劇場版が製作されるも、90年代後半にキティフィルムがアニメ製作事業から撤退した為、最終エピソードは遂に製作されなかった。
しかし、2024年にリメイクアニメの製作が発表。
キャスティングも一部故人や引退した声優を除き、1989年版のキャスティングが続投される事となった。
今度こそ結末迄の制作が期待され望まれる。
九能帯刀
『らんま1/2』の登場人物。
九能流剣法の達人。
剣道部主将で、九能小太刀の兄。
そして父親は風林館高校の校長。
莫大な資産を持つ名家・九能家の長男で、最初期における主人公のライバル的存在である。
自他ともに認めるかなりの美男子で、黙っていればクールでモテる。
だが問題はその性格。
ぶっちゃけナルシスト。
風林館高校の男子生徒曰く「風林館高校最強の男」であると同時に「風林館高校最悪の変態」。
自分のことを「顔良し、姿良し、裕福な上に人格者で強くて賢い」と本気で思っている。
「顔良し、姿良し」の自称に違わず美形であることはたしかであり、彼の性格面での残念さを知らない女性からはモテているシーンも多数ある。
基本的に知り合いは「早乙女乱馬」「天道あかね」「天道なびき」などフルネームで呼ぶ癖がある(当初は「あかね君」と呼んでいた)。
父親のせいで負った、幼少期の体験に由来する大きなトラウマから自身の頭髪に並々ならぬ執着を示す時がある。
特に坊主頭への拒絶反応はものすごい。
当初はあかねだけに惚れていたため「あかね君と交際したくば戦って勝て!それ以外の交際申し込みは僕が許さん!」と、あかねの意思を無視して提唱。
九能を敵に回してはたまらないということで、あかねは毎朝男子生徒に襲われるということが続いていた。
この毎朝登校するたびに繰り返される乱痴気騒ぎが原因で、その鬱陶しさにあかねはすっかり男嫌いになってしまい、これは乱馬が九能を瞬殺するまで続いた。
ここまで聞くとろくでもない人間に思えるが根は善良。
意味もなく人を傷つけたり罵ったりはせず、普通に接する分には問題はない。
思い込みこそ激しいが自分を「人格者」と見ており、それを裏切ることなく行動する。
良くも悪くも自分に誠実な人間である(たまに愛情から暴走することもあるがご愛嬌)。
三つの願いを叶えるという満願丸を引き抜いた時も「(今の自分に満足している僕に)3つの願いは多すぎる」と本気で悩むなど欲深さもない。
九能帯刀の声優が鈴置洋孝氏で本当によかった
男らしさと艶のある低音ボイスが特徴の鈴置洋孝氏。
特に1970年代~1980年代に『聖闘士星矢』の紫龍、『キャプテン翼』の日向小次郎、『るろうに剣心』の斎藤一、『ドラゴンボール』の天津飯といった、骨太で男性的な性格の二枚目キャラを多数演じ人気を博した。
なかでも『機動戦士ガンダム』のブライト・ノア役は、生涯を通じて演じ続けた当たり役として有名である。
また吹き替えでは、特にトム・クルーズ自身が実際にデモテープを聴き指名したというほどに、公認(フィクサー)として名高い。
こうして改めて眺めてみると、鈴置洋孝氏が演じた役は実にクソ真面目なキャラクターが多いことがわかる。
その証拠にブライト・ノア(たしか斎藤一も?)に至っては、自らを朴念仁と自嘲してみせるほどの真面目ぶりをみせている。
しかし九能帯刀は違う。
真面目といえば、たしかに真面目ではある。
そして二枚目だ。
だが、思い込みの強さは変態レベル。
これはるーみっくアニメにはお決まりの、二枚目変態おバカキャラ枠担当キャラだからだろう。
ちなみに、この枠の代表的なキャラといえば『うる星やつら』の面堂終太郎。
神谷明氏が演じた面堂終太郎は、氏お得意のオンとオフ切り替えで二面性を演出し、おバカなキャラクター像を確立した。
だが、鈴置洋孝氏は氏のクソ真面目なイメージをそのまま九能帯刀に投影した。
すると、面白いギャップが生まれる。
変態チックでおバカなことを真顔で語る九能帯刀。
けっしてそれが嘘でもギャグでもないことが、鈴置洋孝氏の声から伝わってくる。
本気の変態おバカさんは、もはや愛すべきキャラクターでしかない。
おまけに本気の変態おバカさんには、その自覚がない。
おかげで九能帯刀の一挙手一投足は、(当事者たちはともかく)側から見ると非常にシュールな面白さを湛えていた。
そこには爆発的な面白さはないのかもしれない。
誰でもわかりやすい面白さというわけでもないのだろう。
だがジワる。
シュールな笑いが好きな人にとっては、それが面白くてたまらない。
九能帯刀を演じたことによって、鈴置洋孝氏はそれまで王道と思われてきたキャラ作りに新しい風を吹き込んだ。
キャラの二面性を表現するのに、わざわざ演じ分ける必要はない。
自身のイメージを正しく理解し利用すれば、自ずとギャップが生まれてくる。
そのギャップこそ、キャラの二面性となっていくのだ。
これができる声優は限られてくるが、鈴置洋孝氏は数少ないそのひとりだった。
ただご自身は、演じたキャラとは裏腹のキャラクターだったようである。
鈴置洋孝氏がまるでナンパ男を絵に描いたような私生活を送っていたことは、声優ファンにとって有名なエピソード。
特に遅刻した際の言い訳「ごめんごめん、彼女がしつこくてさ」というキザな台詞は、スラップスティック※のメンバーが揃って「一度でいいから言ってみたい」と羨んだ程だったという。
2006年8月6日、肺ガンにより死去。
満56歳没。
当時はかなり油の乗った時期で、かつ劇団を軌道に乗せるなど活躍している最中の逝去だった。
50代後半という、あまりに若過ぎる死が惜しまれる。
特に若いアニメファンの中には、鈴置洋孝氏を知らない人がいるかもしれない。
だが、間違いなくアニメ界を代表する名優のひとりである。
心の底からそう思う。
1977年から1986年に活動した、男性声優5人(初期メンバーは、神谷明、曽我部和恭、野島昭生、古谷徹、古川登志夫)によって結成された声優バンド。
鈴置洋孝氏は1984年から三ツ矢雄二氏の後釜として加入し、解散するまで音楽活動も行なっていた。
同バンドはその後、媒体によって「第二次声優ブームの象徴的存在」、「伝説の声優バンド」とも称されるようになった。
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