日本映画
かくかくしかじか
※本稿はネタバレを含みます。ご注意下さい。
公開直前のゴタゴタはむしろ好都合?ゴシップがプロモーションを後押しした善くも悪くも話題作
日本映画『かくかくしかじか』とは
主演・永野芽郁 × 大泉洋
東村アキコの不朽の傑作漫画〈マンガ大賞2025受賞〉映画化!
人気漫画家がずっと描けなかった、
9年間にわたる恩師との涙あふれる切ない実話
笑いと涙で人生を描き、日本中を励まし続ける伝説の漫画家・東村アキコ先生。
その先生が泣きながら描いた自身の【実話】―宮崎、石川、東京―3つの街を舞台に送る、人生を変えた恩師とのかけがえのない日々が鮮やかによみがえる。
誰もがきっと経験したことのある大切な人との出会いと別れ。
「描け」―恩師のその言葉の意味を知る時、あなたは涙があふれる。
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原作:東村アキコ「かくかくしかじか」(集英社刊)
東村アキコ先生がまだ何者でもなかった頃の、
恩師との日々を描いた笑いと涙の自伝的作品!
かくかくしかじか コミック 全5巻完結セット (愛蔵版コミックス)
あらすじ
漫画家になるという夢を持つ、ぐうたら高校生・明子。
人気漫画家を目指していく彼女にはスパルタ絵画教師・日高先生との戦いと青春の記録があった。
先生が望んだ二人の未来、明子がついた許されない嘘。
ずっと描くことができなかった9年間の日々が明かされる── 。
登場人物
- 林明子:演 - 永野芽郁
- 北見:演 - 見上愛
- 佐藤:演 - 畑芽育
- 今ちゃん:演 - 鈴木仁
- 西村くん:演 - 神尾楓珠
- 川崎くん:演 - 森愁斗
- みっちゃん:演 - 河村花
- 杉浦教授:演 - 青柳翔
- 石田拓実:演 - 長井短
- よし子(姉):演 - 永吉夏音
- たかし(弟):演 - 平野央
- 岡さん:演 - 津田健次郎
- 旅館の女将:演 - 斉藤由貴(特別出演)
- 中田先生:演 - 有田哲平(くりぃむしちゅー)
- 明子の母親:演 - MEGUMI
- 明子の父親:演 - 大森南朋
- 日高健三:演 - 大泉洋
「絶対泣ける!」の確信を裏切った決定的な解像度不足
公開直前のゴタゴタで、いろいろな意味で話題となった本作。
ただ、主演のゴシップなんかより大泉洋氏にピッタリの役どころの方に惹かれ、予告を観た瞬間、「これは絶対泣ける!」と確信した作品でもあった。
しかし期待が大きすぎてしまったのだろうか。
正直、思っていたものとは違う。
最後は号泣とばかり思っていたのだが、泣けたのはラスト20分前のワンシーンのみ。
大泉洋氏演じる日高先生の告別式が終わり、残された教え子たちが言葉を交わすシーンは、たしかにグッとくるものがあった。
ただ、グッとくる程度でそれ以上の感情移入ができない。
演者の芝居でその場の雰囲気になんとなく呑まれはするが、演者の熱量にこちらがついていけない。
どうしてか考えてみた。
思うに、日高先生という人物の我々の解像度が、圧倒的に足りなかったのではないだろうか。
基本的に本作は東村先生の自伝的な構成。
先生の人生を振り返りつつ、恩師である日高先生に向けた手紙のような作品である。
しかし日高先生の人物像の掘り下げが圧倒的に足りない。
劇中の日高先生は、常に竹刀を片手に生徒を怒鳴りつけ、絵を描かせ続けるただのパワハラインストラクター。
時折優しさらしき言動もみせるが、それでじゃあ「日高先生は善い人」とは、まったくならない。
それでも、なんだかんだで生徒たちには慕われているようだが、どうして慕われるのか、その要素が観る者にはほとんど伝わってこない。
結果、一番の泣きどころでさえ感情移入できなくなってしまった。
日高先生が本当にこういう人だったのか?
制作側が演出下手なだけなのか?
それとも、実はほとんどない日高先生との思い出を、無理矢理引き延ばしただけなのか?
真相はわからない。
が、振り返って考えると、ほんの少しのエピソードを無理矢理引き延ばした感が否めない物語となっている。
ただし、昭和世代のノスタルジーには激しく訴えかける。
正直、竹刀を持って指導する日高先生の姿というのは、時代錯誤も甚だしい。
今の時代にまったく通用しない、昭和世代にしか伝わらない光景だろう。
コンプライアンス全盛の今見れば、日高先生の振る舞いは、行き過ぎたスパルタと映る可能性が大である。
今、こんなことをすれば間違いなく問題になってしまう。
しかし、不思議なもので、こういう泥臭い教師ほど意外といい先生だったりするのだ。
言葉は荒く、アプローチは極端。
それでも彼らの根底にあるのは、生徒の才能を誰よりも信じ、引き出そうとする剥き出しの情熱だ。
理屈やマニュアルではない、魂のぶつかり合い。
だからこそ、大人になって振り返ったとき、こういう指導者の姿こそが "意外と忘れられない記憶" として、心の一番深い場所に残り続ける。
もしターゲットが昭和世代だったなら、本作の足りない描写も多少は頷ける。
それともうひとつ。
話は逸れるが、かつてビートたけし氏がバイクに乗るだけという、日清の謎CMがあった。
「いまだ!バカやろう!」というキャッチコピーが印象的だった、あのCMである。
聞いた話によると、このCM。
ビートたけし氏をバイクに乗せることだけが目的だったという。
この、わかる人にしかわからない演出。
本作でも垣間見ることができる。
本作は、フジテレビ系列の制作陣による作品だ。
そして主演は大泉洋氏。
彼がカブにまたがる姿を見た瞬間、あの北海道発、テレビ朝日系列(HTB)某有名バラエティ番組を連想せずにはいられなかった。
しかもカブのシーンが無駄に多い。
ことあるごとにカブにまたがる大泉洋氏。
「もしかして、他局で、大泉洋にカブを運転させることが最大の目的だったんじゃないのか?」
そう邪推してしまうほどの再現ぶりは、まるでBGMに「1/6の夢旅人」が聴こえてくるようだった。
ファンなら思わずニヤリとしてしまうメタ的なお楽しみ要素がしっかり仕込まれていたのは、個人的に好感度が高い。
思っていたよりコミカルな要素が強かった本作。
泣こうと思って観てみると、期待外れになるかもしれない。
とはいえ、まったく響かなかったわけでもない。
思うところはある。
もし、あなたの人生に "忘れられない恩師" がいるならば、共感できる部分は多いだろう。
善くも悪くも話題作。
興味がある人は是非。
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