Amazonドラマシリーズ
【推しの子】(#1-6)
※本稿にはネタバレを含みます。ご注意下さい。
まさかそんな方法で?数々の原作名シーンを完全再現!ここまでこだわって実写化した制作側の "原作愛" は本物
Amazonドラマ『【推しの子】』とは
この芸能界(せかい)において嘘は武器だ
世界中を熱狂させている『【推しの子】』がついにドラマ&映画化!
"推しの子" として転生するファンタジックな設定と、ショッキングな描写もいとわないサスペンス要素、そして "芸能界" という複雑な世界に躊躇なく切り込む他に類を見ない斬新なストーリーで多くの人の心を掴んでいる『【推しの子】』。
そんな原作のすべての魅力を余すことなく表現したいという "原作愛" を持った最旬のキャストと新進気鋭のスタッフが集結し、ビジュアルから内面までキャラクターをしっかりと掘り下げ、『【推しの子】』の "衝撃" を描き切る。
『【推しの子】』とは
『【推しの子】』とは、週刊ヤングジャンプ・少年ジャンプ+で2020年から2024年まで連載していた漫画作品である。
集英社の漫画雑誌「週刊ヤングジャンプ」2020年21号(4月23日)に連載開始。
同年6月11日からは同社の漫画アプリ「少年ジャンプ+」でも連載がスタート。
ヤングジャンプ本誌から1週遅れて連載するという形を取っている。
原作担当は同誌で『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』を連載した赤坂アカ先生(本作の開始当時は2作品同時週刊連載)。
作画担当は『クズの本懐』『レトルトパウチ!』を手掛けた横槍メンゴ先生。
作者著名枠には記していないが、一部カラーイラストの彩色は漫画『アクタージュact-age』の作画を手掛けた宇佐崎しろ先生も携わっていることがメンゴ氏のX(旧Twitter)で明かされている。
主人公の医師が死後に前世の記憶を持ったまま、推していたアイドルの子供に生まれ変わるいわば「転生もの」。
「もし芸能人の子供に生まれていたら」
「容姿やコネクションを生まれながらに持ち合わせていたら」
そんな誰もが羨むような環境に生まれながら、何の因果か前世の記憶を持ち合わせ、それに引きずられた第二の生を歩む二人の視点から芸能界を描く。
ファンタジー設定やアイドルを主軸としている事から、一見明るい作風に思われるが、実際の内容はかなりシリアスで陰惨。
殺人サスペンス要素や現代社会を投影した展開、芸能界の闇などへ切り込むリアルさが本作の特徴である。
【推しの子】 1~3巻 推し活デビューセット (ヤングジャンプコミックス)
あらすじ
伝説のアイドル・アイが亡くなり、アイが極秘出産した息子・アクアは復讐心に囚われて母の死の真相を追いかけ、アクアの双子の妹・ルビーは母のようなアイドルになることを一途に夢見る。
それぞれの思いを抱えながら芸能界へと突き進む二人。
しかし、彼らを待ち受けていたのは煌びやかな世界に隠された "リアルな裏側" だった。
痒い所に手が届く絶妙なキャスティング
- アクア - 演:櫻井海音(幼少期:岩川晴)
- アイ - 演:齋藤飛鳥
- ルビー - 演:齊藤なぎさ(幼少期:斉藤柚奈)
- 有馬かな - 演:原菜乃華(幼少期:永瀬ゆずな)
- 黒川あかね - 演:茅島みずき
- MEMちょ - 演:あの
- 雨宮吾郎 - 演:成田凌
- 五反田泰志 - 演:金子ノブアキ
- 斉藤ミヤコ - 演:倉科カナ
- 斉藤壱護 - 演:吉田鋼太郎
- 吉祥寺頼子 - 演:安達祐実
- 鏑木勝也 - 演:要潤
- 鮫島アビ子 - 演:志田未来
- 雷田澄彰 - 演:中村蒼
- GOA - 演:戸塚純貴
- 姫川大輝 - 演:山下幸輝
- 金田一敏郎 - 演:尾美としのり
本作の、配信ドラマならではのキャスティングにも大注目。
アイ・アクア・新生B小町は言わずもがな、痒い所に手が届く脇役のキャスティングも実に絶妙である。
なかでも注目してほしいのが劇中作「今日あま」の原作者・吉祥寺頼子先生役を務めた安達祐実さんの驚愕のシンクロ率。
頼子先生はキーマンではあっても、登場頻度はそれほど高くない。
それなりの俳優でお茶を濁すこともできなくはないキャラクターではある。
だがそんな脇役にすら、知名度の高い安達祐実さんをしっかりキャスティングした制作側のこだわりには、好感しか残らない。
個人的には劇団ララライ主催の金田一敏郎役の尾美としのり氏にも注目だ。
尾美としのり氏といえばどこかとぼけた役回りが多い大好きな俳優だが、本作では最初その存在に気づけないほど、そのイメージを完全に払拭した名演をみせてくれている。
出番は少ないが尾美としのり氏の演技にも、ぜひ注目してほしい。
本作のキャスティングは概ね大成功。
ただ、苺プロ・斉藤壱護社長を演じた吉田鋼太郎氏には少し違和感を覚えた。
芸能プロダクション社長という胡散臭さは抜群だったが、壱護社長を演じるには少し仰々しすぎたことが残念。
エピソードごとに変わる主題歌
本作はエピソードごとに違う主題歌が用意されている。
経費も労力もかかるこの特別仕様からも、制作側の並々ならぬ意欲を感じられる。
各エピソードの主役キャラクターをフィーチャーした主題歌は、それだけでも十分に見応えがある。
- エピソード1.「アクマ / MY FIRST STORY」
作詞・作曲:MY FIRST STORY.CHIMERAZ
(INTACT RECORDS)
- エピソード2.「草々不一 / ロクデナシ」
作詞・作曲・編曲:カンザキイオリ
(ビクターエンタテインメント)
- エピソード3.「オレンジユース / Da-iCE」
作詞:工藤大輝
- エピソード4.「Past die Future / I's」
作詞・作曲:あの
編曲:I's
(TOY’S FACTORY / Nyang Nyang Records)
あのちゃんへのアーティストとしての評価は、個人的に非常に高い。
2020年よりano名義でソロアーティストとして、2021年よりI'sのボーカル・ギターとしても音楽活動を行っているあのちゃん。
あのちゃんの音楽性の一般的な理解は、オリコン週間ストリーミングランキングにて1億回再生を突破した「ちゅ、多様性。」に依るところが大きい。
「ちゅ、多様性。」の音楽性は、あのちゃんのキャラクターイメージそのまま。
だからそこに誤解が生じる。
あのちゃんの音楽性の本質は、たとえば「絶絶絶絶対聖域」(「ano feat. 幾田りら」名義)でみせたパンク色の強いシャウトにこそある。
そこにあのちゃん特有のロリータ要素が加われば、JUDY AND MARYが解散してから久しく空席になっているロリータパンクの巨星にすらなり得るほどの逸材なのだ。
アーティストとしてのあのちゃんにも、ぜひ注目していただきたい。
- エピソード5.「ええがな / ヤバイTシャツ屋さん」
作詞・作曲:こやまたくや
編曲:ヤバイTシャツ屋さん
(ユニバーサルシグマ / BADASS)
ヤバイTシャツ屋さん、通称「ヤバT」。
インディーズでコアな人気を獲得し、2016年にユニバーサルシグマよりメジャーデビューした メロコアバンドだ。
ノリやすい楽曲に、コメディチックで時に庶民的、あるいはテキトー感満載だったり、ジャンルや関西の大学生の「あるある」ネタを盛り込んだ歌詞が人気を呼んでいる。
あまりにローカルすぎて他地方民にわからないネタには、ライブで解説パフォーマンスが入ることもある。
ふざけた歌詞のせいでコミックバンドのように思われがちなヤバTだが、その音楽性は実は非常に格好良い名バンド。
『【推しの子】』ほどの超話題作の主題歌にヤバTを抜擢しちゃう制作側のセンスは信用に価する。
- エピソード6.「爛々ラプソディ / WANIMA」
作詞・作曲:KENTA
編曲:WANIMA
(unBORDE / Warner Music Japan)
伝説のアイドル・星野アイを完全再現した齋藤飛鳥
基本的に『【推しの子】』は、伝説のアイドル・星野アイの息子であるアクア(星野愛久愛海、通称「アクア」)の視点で展開する物語である。
だが、アクアの行動理念はすべて星野アイにある。
故に『【推しの子】』という物語の根本は、星野アイという存在にこそあるといえる。
星野アイは、「アイ」という芸名で活躍していたカリスマアイドル。
抜群のルックスを持つ上に自分の魅せ方まで熟知しており、人を惹きつける天性の才能を持っている。
また完璧主義者でもあり、最高のパフォーマンスのためであればどんな努力も惜しまない。
そのカリスマ性は、悲劇的な死を迎えたことで伝説にまでなっている。
そんな星野アイに命を吹き込んだのは、アニメ版のCV.高橋李依さんである。
自由奔放にして破天荒。
カリスマアイドルとしてのスター性の中に危うさと儚さと強かさを備えた星野アイを、声優として見事声で表現してみせた。
故に星野アイのイメージはアニメ版で完全に定着したといっても過言ではなく、それに並ぶもしくは超える演者はそうそういるものではない。
そこで白羽の矢が立ったのが、乃木坂46の元エースでありグループの象徴として活動していた齋藤飛鳥さんである。
元子役の経歴も持つようで、本作同様漫画原作実写化映画『映像研には手を出すな!』では見事な演技力をみせてくれている。
肩書きと実績は申し分ない。
それでも不安がなかったわけではない。
星野アイは物語の根本の存在でありながら、その登場頻度は非常に限定的でけっして多いとはいえない。
そして星野アイがカリスマアイドルでなければ、説得力を失った物語は破綻するだろう。
星野アイとは、それほど重要な役なのである。
いくらリアルカリスマアイドルである齋藤飛鳥さんといえど、その限られた登場機会の中で、イメージが定着しきったカリスマアイドル・星野アイを、どれほど表現することができるのか…。
本作の成功は、その一点にかかっていたといってもけっして過言ではないのだ。
アニメ第1話に相当する本作エピソード1。
赤坂アカ・横槍メンゴ両先生が創造し、高橋李依さんが命を吹き込んだ星野アイは、齋藤飛鳥さんによって現実世界に降臨する。
自由奔放にして破天荒。
カリスマアイドルとしてのスター性の中に危うさと儚さと強かさを備えた星野アイを、俳優として見事演技で表現してみせた。
それはもしかしたらアニメ版に寄せた演技だったのかもしれない。
だがその存在感は星野アイであると同時に、ちゃんと齋藤飛鳥さんでもあったことにただただ驚かされる。
星野アイ、最期のシーンはまさに圧巻。
忠実に原作とリンクするのはもちろん、星野アイの想いや惨劇の生々しさまで完全再現。
その素晴らしさたるや、ネタバレしているにもかかわらず自然と涙が溢れてくるほどだった。
伝説のアイドル・星野アイを完全再現した齋藤飛鳥さん。
この時点で本作の成功は約束されていたのだろう。
数々の原作名シーンを完全再現!
本作は原作にある数々の名シーンを完全再現している。
とはいえ二次元作品を三次元に、漫画作品を実写化するのだから、何から何まで寸分違わず…といわけにはいかない。
コストや技術、権利や放送尺の都合もある。
いくら忠実に再現したくても、もし原作が長編漫画となれば、なんとかして物語を端折らなければ放送尺には収まらない。
だからいくら完全再現だと評してはいても、本当には完全再現と言い切れないのが現実である。
さらに人によって完全再現の解釈もそれぞれだ。
コアな原作ファンには、実写化すること自体が耐えがたいことなのかもしれない。
しかし当然、それらすべてを制作側も承知の上である。
エピソード5.の劇中、アクアのセリフはそんな制作側の気持ちを切実に表している。
そもそも 漫画的な表現やキャラクターが人気の作品を 生身の人間で実写化すること自体ハードルが高すぎる
人気漫画の実写化で炎上は免れない
すべてわかった上で、限界まで原作の完全再現を目指した制作側。
事実、アイの最期や新生B小町の初ライブといった魅せどころの再現は、完璧に近いものであった。
これだけでも十分賞賛に値するのだが、原作ファンをも納得させる完全再現を目指した制作側の熱意は、実に細部にまで行き届いていた。
細部にいたるまで完全再現
- B小町の名曲「サインはB」を完全実写化
B小町の名曲「サインはB」。
アニメ版の劇中歌だけにとどめておくには、あまりに惜しいクオリティの高い楽曲だ。
だからといって版権の都合もあるだろうから、アニメ以外の使用は不可能かと思われていた。
それが実写版の、しかもあの齋藤飛鳥ver.で観られるとは夢にも思っていなかった。
オリジナルB小町による名曲「サインはB」の完全再現は、本作最初の見どころである。
- 子供部屋おじさん
五反田泰志、通称「監督を演じたのは金子ノブアキ氏。
当初こそ、原作のイメージよりダンディが過ぎると感じていた。
しかしこのシーンが完全再現されることによって、原作通りの人情味が増した監督となっている。
- 重曹を舐める天才子役?
「重曹を舐める天才子役」とは、ルビーが有馬かなをいじり倒す際の名文句。
このシーンの再現自体はあって然るべきだが、本作はアニメ版ではなく(おそらく)原作通り、ルビーが重曹をしっかり手にしている。
- ぴえヨンの「ボク年収1億ダヨ」
正体不明の筋肉むきむきパンイチ人間に向かって舐めた口をきく有馬かな。
そんな有馬を、たったひと言で黙らせるぴえヨン。
物語の本筋とはまったく関係のないこのクダリ。
本作のぴえヨンの扱い方を考えれば、まさか制作側はこのシーンの再現のためだけに登場させたのだろうか?
だとしたら凄い熱意だ。
- 黒川あかね、有馬かなに憧れる
黒川あかねへの対抗心による、有馬かなの底意地の悪さを見事に表現したこのシーン。
有馬とあかねの関係性を示す大好きなシーンではあるが、尺が限られた実写版で再現するほど大事なシーンではない。
こんなコアなシーンまで完全再現してしまう制作側の熱意。
やはり半端ではない。
完全再現されなかった名シーン
- 赤ん坊サイリウム
このシーンはアクアとルビーが転生者であること。
共に重度のドルヲタ(アイドルヲタク)であること。
そしてアイへの執着をコミカルに表現した、アイ存命中の名シーンのひとつ。
いくらCG技術が発達したとはいえ、このシーンの再現だけは不可能だったのか…。
本気でやろうと思えばできたのだろうが、CGで無理やり再現しても違和感しか残らなそうな気もする。
- 「距離の詰め方ヤバくない?」
成長したアクアとルビーは入学した高校で有馬かなと再会する。
子役時代、その演技に衝撃を受けた有馬は再会したアクアにしつこくつきまとう。
その時の名文句が「あんたどこ中?」。
だが昭和のヤンキーみたいなこのセリフ。
時代が違うのかもしれない。
たしかに、今どき本当にこんなことを言ってしまう若者が、いったいどれほどいるのか。
だがどこかおばさん臭い言葉遣いの有馬かなに、妙にしっくりくるセリフでもあった。
たとえ時代錯誤なセリフとはいえ、あっても良かったシーンではないかと、少し残念な思う。
- パスワード解読
アイの事件に何かしら関与しているであろう、自らの父親を探すためにアイが個人的に使っていた、携帯のパスワードを執念の地道な努力で解読したアクア。
アクアの復讐心の闇の深さを象徴し鬱展開へのプロローグともなる名シーンだ。
このシーン。
再現されていないわけではないが、費やされた詳細な月日までは明記されていない。
気が遠くなるような4年半、45,510回目の試行はアクアの執念を感じさせる必要な表現だと思う。
このシーンが割愛されていることは残念でならない。
- 有馬かなと久しぶりの共演
「ほら、場を作ったぞ。やりたかったんだろ。本気でやってみろよ、有馬かな。」
そのセリフ通り、有馬に本気の演技をさせる環境を整えたアクア。
ここまではかなり忠実に再現されている。
だが、重要なシーンが割愛されていた。
本気の演技ができないでいる有馬を、アクアは演技で導いていく。
アクアの期待に応えて見事に本気の演技をみせた有馬だが、アクアの有馬かなへの評価と信頼が表現された「仕上げだ。有馬かなが上手く泣いてくれれば…」の名セリフだけがないことが非常に残念。
さらに付け加えるなら、期待に応えた有馬をみて「そういや得意技だったな。」と懐かしむように感心するアクアの姿までちゃんと欲しかった。
これはアクアが有馬かなを少なからず意識するきっかけとなった名シーン。
地味だけど重要なシーンだけに、言葉足らずが少し悔やまれる。
- 有馬かなとのキャッチボールの意図
幼い時こそ雨宮吾郎として、転生前の人格が鮮明に残っていたアクア。
黒川あかねとの出会いをきっかけに、次第にその境目がなくなっていくのを感じたアクアは有馬かなをキャッチボールに誘う。
このシーンも概ね、完全再現されていた。
しかしアクアの有馬に対する感情描写が、少し足りていなかったように感じてならない。
熾烈な正ヒロイン争いの最中、このシーンの重要性は押して知るべし。
ヤキモキする視聴者のためにも、アクアの心情をもう少しはっきり表現しても良かったのでは…。
ちなみにこの時、アクアの高速返球を見事にキャッチしてみせた有馬かな役の原菜乃華ちゃんには拍手を送りたい。
- MEMちょ年齢詐称疑惑
MEMちょがB小町加入の際の、年齢詐称疑惑。
このシーンもほぼほぼ完全再現されているが、盛りまくった年齢詐称へのツッコミが少しあっさりしすぎていたように感じる。
できればMEMちょの、「去年までは…」のクダリまでしっかり再現して欲しかった。
改変で少し残念
- ぴえよん(アクア)と有馬かな
黒川あかねとの一件で、アクアを避けるようになっていた有馬かな。
そこでアクアは一計を案じる。
それはぴえヨンに扮すること。
一連の流れは、ぴえヨンに扮することなくアクアが素のまま有馬と絡む描写に改変されている。
また、「ピーマン体操」が代表曲である有馬かなが、実はピーマン嫌いだったというクダリも割愛されている。
そうなった理由は理解できるが、大好きだったシーンなだけにショックも大きかった。
- 「東京ブレイド」の作風
劇中演劇「東京ブレイド」がドラマに改変。
ハコと舞台装置のコストや手間を考えれば、これも致し方なしか。
ただそのせいなのか、「東京ブレイド」の作風までが改変されてしまっている。
「東京ブレイド」の作風までが物語の本筋に関わるわけではないから、問題ないといえば問題ないのだが、それでも少し違和感を覚える。
- 黒川あかねの「プクーッ」
熾烈な正ヒロイン争いで、有馬かなを猛追する黒川あかねの超絶可愛い名シーン。
アクアにはクールに突っ込まれスルーされていたが、このシーンであかね推しになった人も絶対に多いはず。
最初から無理だとわかってはいたものの、だからこそ実写でぜひとも観てみたかった。
まさかそんな方法で?ここまでこだわって実写化した制作側の "原作愛" は本物
本作実写化のクオリティは完全再現といっても何ら差し支えない。
だが前述した通り、実写化不可能なシーンがあったことも事実である。
だが本作制作側のアツすぎる熱意が、ビンビン伝わってくるあるシーンの存在に、お気づきの人がいったいどれほどいるだろう。
物語序盤、アクア幼少期の「赤ん坊サイリウム」のシーンが割愛されていたのは前述した通り。
だがこの話には続きがある。
たしかに映像では再現されていないシーンであるが、エピソード5.のアクアとあかねの会話で、実はこのシーンについて触れられているのだ。
それは二人で「東京ブレイド」の原作について話し合っていた時。
あかね:たしかに子供時代の話はほとんどカットされてるもんね
双子が「我は天照の化身」とか言い出すシーン 結構好きだったんだけどなあ
アクア:そもそもハイテンポな掛け合いができる子役なんて まずいないからな
乳児が急に踊り出すなんて以ての外だ
あかね:CG使っても難しそう
どうやら脚本が改変された「東京ブレイド」の原作について話し合っているようだが、そもそも「東京ブレイド」に双子なんか登場しない。
もしそれが、「東京ブレイド」の原作のまだ明かされていない設定だからといわれてしまえばそれまでだが、このやり取りには明らかに違和感を覚える。
では、このやり取りはいったい何を意図したものだったのだろうか。
そのヒントが、あまりに突飛すぎる「乳児が急に踊り出すなんて以ての外だ」というアクアのセリフ。
乳児が急に踊り出すシーンがあって、おまけにそれが双子設定の作品なんてそうそうあるものではない。
パッと思いつくのは『【推しの子】』くらい。
これは、もしかしたら「赤ん坊サイリウム」のシーンのことではないのか。
だとすると「双子が "我は天照の化身" とか言い出すシーン」というセリフにも覚えがある。
熱心ならファンならもうおわかりだろう。
そう。
この名シーンの一節なのだ。
なるほど、あかねはこのシーンがカットされたことについて話していたのだ。
そしてアクアは、おそらくこの名シーン割愛についての事情説明なのだろう。
そう考えると、「東京ブレイド」の改変もすべてはこのためだったと考えられなくもない。
だとしたら、制作側の恐るべき深謀遠慮を垣間見たことになる。
このシーンに気づいた時、どこか眉唾だった制作側の本作完全再現へ向けた熱意が、言葉だけでなく本物だったことを痛感する。
「結構好きだった」のセリフに、胸が熱くなる。
同時にこのような手法で、ある意味完全再現にこぎつけた制作側の強いこだわりが胸を打った。
こんな巧妙な仕掛けは、今まで観たことがない。
もしかしたらこの手法は、今後の漫画原作作品実写化のスタンダードになるかもしれない。
それほどとんでもなく凄い仕掛けだと言わざるを得ない。
本作は人気漫画の初の実写化ということで再現度ばかりに注目が集まるが、細部をみれば緻密な構成も抜群に素晴らしい作品だ。
アニメ好きならずとも、映画好きにもぜひ観ていただきたい名作である。
もしまだ原作やアニメ版に触れていない人なら、本作視聴後に原作を追ってもみても面白いかもしれない。
今は意味不明でも、きっとその時本作が如何に原作愛を込められて制作されたのか、よくわかるだろう。
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