押井ルパンは知的好奇心の宝庫
THEME FROM LUPIN Ⅲ 2021
TVシリーズ『ルパン三世PART6』で実現した名匠・押井守監督の脚本による通称・押井ルパン。
過去二回放送されているが、どちらも知的好奇心をおおいにくすぐる名シナリオだった。
第4話「ダイナーの殺し屋たち」
世にほとんど出回っていないヘミングウェイの貴重な本が、CIAの暗号に使われていたという趣旨のシナリオ。
詳しくはアニメを見てくれたらわかる。
いや、ちゃんと見てもあまりよくわかっていないような気がする。
ヘミングウェイとかさ、正直読んだ記憶ないんだよね…
「老人と海」くらいしか知らないよ…
でも、こういうのは嫌いじゃない。
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※アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ
(Ernest Miller Hemingway)
1954年、「老人と海」が大きく評価され、ノーベル文学賞を受賞。
短編には簡潔文体の作品が多く、これらはダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラーと後に続くハードボイルド文学の原点とされている。
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押井ルパン第一弾の凄いところは、ただ知的好奇心をくすぐるだけではない。
驚くことに主役のはずのルパンがほとんど登場しない。
正確には変装しているルパンと次元が登場しているが、見ていてもこれがルパンなのか確証が持てないまま物語は進む。
おまけに、あまりにハイセンスすぎて何を話しているのかすらわからない会話を、延々と垂れ流している。
だけど格好いいんだ、これが。
主役を登場させていないにも関わらず、見事にルパンの世界観を表現した押井守監督の脚本。
さすが!と、言わざるを得ないだろう。
第10話「ダーウィンの鳥」
第一弾同様、第二弾も諸々の設定がよくわからない導入から物語は始まる。
「ダーウィンの鳥」?
調べても出てこないんだけど…
ダーウィンフィンチのこと?
まったく意味不明だ。
ダーウィンのことだって、進化論以外何も知りはしない。
進化論をしっかり全部読む人は、その道のプロフェッショナルの人だけじゃないの?
まーた、こういう展開だよ…
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※チャールズ・ロバート・ダーウィン
(Charles Robert Darwin ([tʃɑːlz 'dɑː.wɪn])
1859年の著書「種の起源」は、自然の多様性のもっとも有力な科学的説明として進化の理論を確立した。
「人間の由来と性に関連した選択」、続く「人及び動物の表情について(英語版)」では人類の進化と性選択について論じた。
植物に関する研究は一連の書籍として出版され、最後の研究はミミズが土壌に与える影響について論じている。
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不二子ちゃんが盗みの依頼を受けるところから物語は始まる。
そこでルパンに協力を求めるわけだが、ここからすでに違和感だ。
ルパンはのっぴきならない事情でもない限り、他人の依頼で盗みはしない。
疑問を抱きながら、依頼人は続ける。
曰く、「あの”鳥”が美しいのは、あれが真贋のあわいを飛ぶ鳥だからです」……?
もう、まったく意味わかんないよね。
ルパンも何だか様子がおかしいし。
結局最後まで何がなんだかわからなかった。
天使や悪魔を匂わせる描写があったから、進化とは人(ダーウィン)の領域でなく、神の領域だと言いたかったのか?
不思議な感覚に陥るシナリオだった…が、決して嫌いではない。
何度も見直したくなる押井ルパンはクセになる。
他の脚本と比べて押井ルパンは…
『ルパン三世』の世界観を踏襲しつつ、かつ押井守監督の色を全面に押し出した難解だが非常に良いシナリオだった。
他の方のシナリオは、ルパン三世とは!みたいな意識が強すぎるように感じる。
しかも、ルパンはこうじゃなくちゃ!っていう、"こう"からすでに間違えてしまっていることに気づいていない。
最近、あらゆる人がルパンのシナリオを担当されているが、そのお陰でルパンの本来のキャラがブレてしまっていた。
派手なドンパチやカーチェイスは、ルパンの真実の世界観ではない。
次元の乱射なんぞ見たくもない。
ワンショットキラーでこその、次元大介なのだ。
ルパン本人だってそうだ。
ルパンはコソ泥ではなく怪盗だ。
インテリ知能犯でなくてはいけない。
それでいて、たまに女性にうつつを抜かしながらも、あくまでクールなハードボイルドがルパン三世の世界観なのだ。
そういう意味でも、現在放送されている『ルパン三世PRAT6』全シナリオの中で、押井ルパンが一番面白かったと感じる。
もっと見たいという衝動に駆られる。
もし『ルパン三世PRAT7』があるなら、押井守監督にシリーズの軸となるシナリオを描いて欲しいと切に願う。
もっともっと、押井ルパンを見せてくれ!
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