アニメ
鬼灯の冷徹
『鬼灯の冷徹』とは
『鬼灯の冷徹』(ほおずきのれいてつ)は、江口夏実先生による漫画作品。
「モーニング」(講談社)にて2011年14号から2020年6号まで連載された。
「全国書店員が選んだおすすめコミック2012」で1位を受賞。
2022年3月時点で累計発行部数は1500万部を記録している。
2021年7月、第52回星雲賞コミック部門を受賞。
本作は日本の地獄の住人たちを中心としたブラック・コメディ漫画。
それ以外にも神話・御伽噺・怪談などの登場人物が多数出演しており、日本に限らず海外の悪魔・妖怪なども登場する。
本作の作者である江口先生は、両親の影響もあり『ゲゲゲの鬼太郎』や『悪魔くん』、『笑ゥせぇるすまん』、そして『まんが日本昔ばなし』などに親しんでいた。
江口先生はナタリーとのインタビューの中で、「母が少女漫画がダメで、父はバトル漫画を好まず、二人そろって妖怪の漫画なら見てもいいよといわれた」と幼少期について振り返っている。
母が古典文学の教師だったため、神話や民話についても触れる機会が多く、『水木しげるの妖怪101ばなし』といった書籍を読む機会もあった。
江口先生はナタリーとのインタビューの中で、『ゲゲゲの鬼太郎』の影響が大きいことを認めており、「おどろおどろしくもかわいらしく、毎回様々なキャラクターが出てくるので、退屈せず楽しめた」と振り返っている。
非ホラー作品からも影響を受けていることを認めており、特に『ドラえもん』については、教育的な要素の強いアニメ版と狂気的な要素をもつ原作との対比が、鬼灯に影響を与えているとしているほか、毎回最初のページ扉絵を設ける手法も本作に取り入れている。
高校で進路を決める際、江口先生は絵が好きだったことから美大へ行くことへ決め、日本の伝統美術に興味を抱いていたことから、日本画を専攻した。
モチーフの並べ方や陰影の使い方、カラリングなどは日本画からの影響によるものであり、着物を着たキャラクターの構図は上村松園の女性図を参考としているほか、武将や着流しの男性は月岡芳年の作品をモデルとしている。
また江口先生はコンピュータゲーム『大神』を通じて古事記にも親しんでおり、古事記に登場する神々の人間臭さに親しみを感じていた。
本作は第57回ちばてつや賞一般部門佳作受賞作『非日常的な何気ない話』を元に、2010年に講談社の漫画雑誌「モーニング」にて『地獄の沙汰とあれやこれ』と改題して読み切りとして掲載され、2011年14号より『鬼灯の冷徹』に改題して連載される。
2014年35号より、作者である江口先生の体調不良のため、週刊連載から隔週連載に移行。
連載中に同社刊の「なかよし」にて、柴もなか先生が作画を担当する、獄卒のシロを主人公とした『鬼灯の冷徹 シロの足跡』が開始され、2016年1月号から2020年5月まで連載された。
2019年10月16日発売の2019年46号で「あと5話で完結です」と告知され、2020年1月9日発売の2020年6号で完結。
江口先生は「読者様、担当編集様、モーニング編集部の皆様のおかげでここまで長く、そしてきちんと終わるまで続ける事が出来ました。大変幸せな恵まれた作品です」と感謝の言葉を述べている。
ストーリー・キャラクター造形
本作のストーリーは様々な方法で作られるが、作品の執筆にあたり「最初のネームで疑問に思ったことがあっても、初めに描いたことからぶれないようにするため、後から考えたことはネームに反映させないようにする」という方針を採っている。
また人気の出たキャラクターでも、無理に出番を増やさないことも方針としている。
前述した通り本作の主人公である鬼灯は、江口先生のデビュー作『非日常的な何気ない話』の一編である「鬼」の登場人物を基にしている。
連載初期こそ主人公の鬼灯はあおり文などで「ドS」として表現されていたが、江口先生は「鬼灯は他人をいじめて悦ぶサディストではない」と考えており、関係者にはなるべくその言葉を使わないでほしいと頼むこともある。
また江口先生は一言ではなく丁寧な方法でキャラクターを表現することを心がけており、鬼灯が登場する場面では他の登場人物が説明するような手法は避けている。
江口先生はインタビューで、鬼灯の外見を流行り廃りのない美しさを持つ「神様の顔つき」を意識して造形したところ、美男子としてもてはやされて驚いたと振り返っている。
さらに江口先生は「あまり完璧な人物を出さないほうが面白く、様々な顔の個性的なキャラクターが活躍する漫画が面白い」と述べており、たとえば石長姫についても原典通り醜女として描いている。
また「鬼灯の衣装は道服ではあるものの、扉に描く時くらいは着物らしさを演出したい」とも述べている。
本作に登場する動物の獄卒たちは、かわいらしさと怖さを併せ持っており、このことについて江口先生は「かわいいだけで飼うからペットを捨てる人が多いわけで、怖いこともちゃんと伝えなくてはいけない」ということを込めて描いている。
これらの獄卒の設定は江口先生の実体験を基にしている部分があり、例えばイヌの獄卒であるシロは、江口の幼少期の経験がもとになっている。
またウサギの獄卒である芥子は、江口先生が昔飼っていたウサギの一羽の逞しさがもとになっており、芥子が初登場回である「かちかぢごく」の中で糞を食べるかと発言する場面については、ウサギの食糞の習性を友達に話して引かれた経験が基になっている。
ユーモア
江口先生は本作のユーモアに影響を与えた作品として、岡田あーみん先生の『こいつら100%伝説』と柴田亜美先生の『南国少年パプワくん』をあげ、「鬼灯が金棒を振り回すのは子どもには絶対まねできないので、やり切った方がまねする者が出てこないのではと考えている」と述べている。
また江口先生は、漫画家になる前に勤めていた会社の上層部にやりたかったことが強いツッコミになったと述べているほか、言葉遊びやコントの中の知識の挿入はお笑いコンビのラーメンズから影響を受けたことを認めている。
カラーリング
江口先生はカラー原稿執筆の際、日本画を意識した色合いや配色のもと重ね塗りを用い、一つの系統の色で段階的に濃淡を変化させる繧繝彩色という手法も用いた。
この手法を導入した理由について江口先生は、「コピックのような高価な画材を買えず、安いカラーペンで描いていたため、色ムラを隠すために模様をのせていたところ下のムラが活きることに気づいた。コピックを購入できるようになった後もムラが気になり、それ以来毎回模様を入れるようになった」と述べている。
またカラーイラスト集「獄彩絵画」に収録された第1話のカラー版では、扉ページに描かれた雲が隣のページにつながるという演出が施された。
江口先生はこの演出を洛中洛外図に譬えており、荒木飛呂彦先生の影響も認めている。
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世界観
本作には地獄や天国、現世、桃源郷などの仙境、さらには海外の地獄が登場する。
このうち、天国・地獄・現世の境には牛頭と馬頭が門番を務める地獄の門で区切られている。
また本作における天国の亡者たちは物欲が薄いため、天国にある高天原ショッピングモールは観光客を相手にした商売をしている。
日本地獄
日本の冥界はかつて黄泉と呼ばれる一つの場所だったが、亡者によって混乱していたため、日本人初の死者(のちの閻魔大王)の改革により天国と地獄ができた。
閻魔大王は初代補佐官としてイザナミを任命したが、彼女が地獄を乱造したため、鬼灯を二代目補佐官に任命し現在に至る。
日本地獄には鬼や妖怪、さらには十王の審議で地獄落ちをまぬがれた者が住んでおり、古株になると地獄という制度ができる前の時代から住んでいる者もいる。
このうち鬼は様々な生まれ方や種別があるものの、多くに共通する特徴として「角がある」「酒好き」などがある。
膂力に優れ頑健な身体を持つため、亡者ほどではないものの、大抵の怪我はすぐに治ってしまう高い回復力も持っており、中でも強い鬼や偉い鬼は「鬼神」と呼称される。
なお豆は鬼の弱点ではなく、食べ物の一種として扱われている。
十王の裁きにより地獄に落ちた亡者を痛めつける獄卒は、安定性と憧れから人気のある職業であり、鬼以外にも現世で何かしらの事件を経て就職した者も多い。
募集・採用の条件は、鬼獄卒については「寺子屋(義務教育)を修了している」「なにかしらの職業に就いたことがある」などがあり、後者は幅広い視野を持った人材を採用することが目的である。
勤務態度に問題のある獄卒は屎泥処の研究部署「フンコロガシ屎泥課」に左遷されることがあり、そこに飛ばされ戻ってきた者はある意味「勇者」扱いされる。
また酒のマナーを守れない獄卒の中で悪質な者、酒の席での袖の下・ハニートラップ、酔わせて淫行におよんだ者は、各処で亡者と同じ体験をさせられた後、感想文100枚を提出させられる。
獄卒以外は地獄の刑場には入れず、あの世と現世の行き来もビザなどの制限が多いため、元々地獄出身の一般の鬼神・妖怪は亡者や現世のことをよく知らない。
そのため現世の情報は基本的にテレビか書物などのメディア情報、無罪放免になった亡者などから得ている。
なお作中の日本冥界は「洋服があまり普及しなかった現代社会」のイメージとされており、そのため衣類は基本的に和服かそれをベースとしたものである。
これはデパートの従業員など制服の類、アイドルやモデルの衣装も例外ではないが、若い女性は着物にブーツや袴を合わせる場合もある。
日本地獄は八大地獄と八寒地獄の2つに分かれ、さらに272の細かい部署に分かれている。
地獄において亡者は十王によって裁かれ、泰山王までは7日ごとに裁判している。
五官王曰く「(自身を含めて)十王は嘘には異様に厳しい」ため、十王の前で嘘をつくとその度に制裁を受ける。
補佐官は各庁に第一から第五までの計5人いるが、常任は第二補佐官までであり、第三補佐官以下は管理職候補の研修ポストとして任命されている。
現世の移り変わりや常識の変化に伴い、地獄の中には存在意義(根拠となる罪)が失われている場所や実質的に活動停止している場所もあるため、定例会議を実施して既存の地獄を整理・改定している。
定例会議によって見直しの対象となった地獄の一つに雨炎火処地獄があり、そこで勤務していた巨大象は不喜処地獄に異動になった。
なお、同様の定例会議は十王と補佐官の間でも行われている。
亡者は十王による裁判で地獄逝きの判決と数百年から万年単位の刑を言い渡される。
亡者は責め苦で食われたり焼かれたりバラバラにされたりしてもすぐに再生するため、盂蘭盆の間以外はほぼ24時間フルタイムで責め苦を受けている他、鬼灯の実験材料や獄卒らのストレス発散のはけ口に利用されることもある。
流刑先が複数に渡る亡者については、獄卒によって該当の地獄へと順々に連れ回される。
亡者たちは盂蘭盆に拷問から解放されるが、この時期に犯罪を起こした亡者は阿鼻地獄逝き・「中学時代の日記・文集を全国放送(ゴールデンタイム)の刑」となる。
また獄卒にとっては夏季休暇の日であり、夜になると盆祭(盂蘭盆地獄祭)が開催される。
送り火の日の午前0時を過ぎると休み明けとなり、現世から戻らない亡者を獄卒全員で拘束(というより補導)に向かう。
本来は藪入りである正月の16日も盂蘭盆とされていたが、この時期は忘年会や新年会の飲み過ぎ事故、餅をのどに詰まらせる事故などあの世全体が忙しいので拘束に時間を割くのが大変なことや、現代では亡者がその時期に帰っても家族が受験や仕事始めで出払っていることが多いため廃止された。
EU地獄
人を堕落へと導き、その誘惑に負けた人間をさらに苦しめることを生業とする。
生前の罪に応じて亡者を呵責する日本の地獄とは大きく異なる性格を持つ。
アニメ『鬼灯の冷徹』とは
テレビアニメ化は2013年7月4日に発表され、同日に公式サイトが開設されたほか、PVがアニメ・エキスポとJapan Expoで世界最速公開された後、同年7月6日には公式サイトでも公開された。
また、同年10月26日にはニッショーホールで開催されたイベント「TVアニメ『鬼灯の冷徹』秋の大発表会 in 地獄 虎ノ門」にて、放送枠・スタッフ・テーマソング歌手・キービジュアルが発表された。
第壱期(第1期)は、2014年1月から4月まで毎日放送ほか「アニメイズム」B1にて放送。
第弐期(第2期)は、2017年10月から12月までTOKYO MXほかにて放送および配信され、続編「第弐期 その弐」が2018年4月から7月まで放送された。
なお、第壱期と第弐期の間に原作単行本限定版付録としてオリジナル・アニメーション・ディスク(OAD)が制作されているが、このOADで初登場したキャラクターは特に説明もないまま第弐期に登場している。
シリーズ構成の後藤みどりさんは第壱期と第弐期で共通だが、アニメーション制作スタジオは第壱期がWIT STUDIO、第弐期がスタジオディーンと別々で、監督を含めた主要スタッフも第壱期と第弐期で異なる。
第壱期の監督とアフレコ演出は『となりの怪物くん』の鏑木ひろ氏、アニメーション制作は『進撃の巨人』のWIT STUDIO[69]、ナレーションはタレントの稲川淳二氏がそれぞれ担当する。
ちなみに第弍期のナレーションは真地勇志氏。
鬼灯役の安元洋貴氏と白澤役の遊佐浩二氏はオーディションで選ばれた一方、閻魔大王役の長嶝高士氏は事務所に直接オファーが来るという形で起用された。
長嶝氏は閻魔大王のイメージと『鬼灯の冷徹』という作品名から、当初は怖い役を連想したことをナタリーとのインタビューの中で述べており、第壱期の最初の方は体一つで体当たりするつもりで収録に臨んだと振り返っている。
テレビアニメ化に際しては「本気でふざける」ことが念頭に置かれており、原作の内容やそれに含まれる小ネタを再現する一方、アニメオリジナルの小ネタも盛り込まれている。
また前述の通り監督とアフレコ演出を鏑木氏が担当している縁から、第壱期第7話では『となりの怪物くん』の主要人物が同作品の同じ声優の声を伴ってカメオ出演し、エンディングには「『となりの怪物くん』製作委員会」がクレジットされた。
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あらすじ
地獄では戦後の人口爆発や悪霊の凶暴化により、亡者はあふれかえり、獄卒たちは人材不足に悩まされ、あの世は前代未聞の混乱を極めていた。
そんな中、どこか頼りない閻魔大王に代わって地獄全272部署を治めているのは、閻魔大王に抜擢され、閻魔大王第一補佐官の座にまで上った有能な鬼神の鬼灯であった。
鬼灯の幼馴染で衆合地獄主任補佐のお香、女癖が悪く、鬼灯に会うといつも張り合っている中国の神獣・白澤、お伽話としても有名な英雄の桃太郎とそのお供、新人獄卒の唐瓜・茄子などの個性豊かなメンバーと共に過ごす、鬼灯たちの日常を描く。
人にとっての地獄、それは鬼にとっての日常であった。
主要登場人物
鬼灯(ほおずき)
本作の主人公。
閻魔大王の下で二代目の第一補佐官を務める鬼神。
事務だけでなく現場調査もこなす非常に有能な補佐官で、鬼の中ではトップの地位にいる人物。
三白眼で、額に1本の角が生えている。
自らの地位を「官房長官みたいなもんで地味」と言いつつ、「地獄一頑丈な閻魔大王を叩きつつ黒幕を務めるのが美味しい」としている。
「ボール=人にぶつけるという本能がある」と自称するほどの拷問(仕事)中毒である。
常に冷徹な知恵者であり、鉄面皮で、上司にあたる閻魔大王にも制裁を加え、サタンやベルゼブブ、イザナミなどの上位者に対しても媚びることなく丁寧にさりげなく格下のようにあしらうなど慇懃無礼であり、誰に対しても情け容赦ない態度で接する。
そのため周囲から敬遠・畏怖されているが、人望はある。
また、容姿端麗なため女性からの人気がある。
天国に住む神獣・白澤とは不仲で、彼に対してだけは敵愾心をむき出しにするが、その姿は桃太郎が「年子の兄弟」と評する通り、大抵は意地の張り合いや妙な勝負事に終始する。
また鍼治療などの東洋医学、特に民間治療にも詳しい。
ジブリマニアな一面もあり、ジブリ作品のフレーズを度々引用する。
大食漢で巨漢の閻魔大王とほぼ同じ量の食事を平らげる。
好物はおにぎりで酒豪。
一方で辛いもの、トウモロコシ、プリンが苦手。
動物好きで現世出張の際には、動物園に立ち寄っている。
潜伏する際は「加々知(かがち)」の偽名を使い、角と尖り耳を隠すために帽子を被っている。
趣味は自ら品種改良した金魚草の飼育で、コンテストで殿堂入りを果たした後は審査員を務めている。
鬼となる以前は人間であり、生まれは神代のころにまで遡る。
みなしごだった幼少期に雨乞いの生贄にされて死亡した後、遺体に複数の鬼火が入り込んだ結果、鬼となった。
木霊に導かれて地獄(当時は黄泉)に渡り、烏頭や蓬、お香と友人として過ごしながら洞窟を改造するなどして自活していた。
成人した後は中国で裁判制度を学ぶ。
獄卒としての下積みを経てイザナミの後継の補佐官として抜擢され、閻魔大王の補佐官の地位に至る。
名前の「鬼灯」は、黄泉に来たばかりのころに出会った閻魔から人間であったころの呼び名「丁」と「鬼火」を組み合わせてつけられたもの。
自身がみなしごという理由で馬鹿にされたり生贄にされたりしたため、「本人にはどうしようもない理由」で他者を非難・排斥するような者には、相手が懲りるまで徹底的に「対処」する。
ただし恨みの念の発露については、茄子が「乾燥してる」と表現する通り分かりやすいものがほとんどである。
また「怨念」という、普通はマイナス面に感じる部分を指摘されることに何の抵抗も無い。
怒る理由もどちらかと言えば「周囲の者たちや自分が属する場所」を害されることに対してであり、自分自身が攻撃された場合についてはむしろ恬淡としていることが多い。
好みの女性については美醜に関係なく、矯正しがいのありそうな人、動物や昆虫に臆しない人。
大人しすぎる女性、最初から素直に言うことを聞く女性には興味がなく面白みがないと思っている。
異性に無関心という訳ではないが、仕事中毒の上に精神が仕事モードの時は無の境地に入ってしまうため、相手のモーションなどに反応することはほとんどない。
知識欲も旺盛で、自室の研究資料たる書籍類は膨大な数に上り、鍼治療の専門書や他国の地獄に関する書籍など様々な分野の資料も所有している。
加えて手先も器用で料理上手、特に亡者を使った料理が得意。
凝り性でカレーを作れば三日以上かけたり、寿司の修行に十年以上費やしたこともある。
なお、「脳みその味噌汁(=脳みそを使った味噌汁)」を笑顔で飲める女性がいたら、結婚しても良いと発言したこともある。
劇中では小柄な印象を受けるが、作者によるとそれは閻魔大王が大きいためで、実際は身長185センチメートルくらいのがっしりした体型をイメージしているという。
愛用の金棒は15歳(相当)の時に競売屋から紆余曲折の末「タダで譲ってもらった」もので、インドや中国の「地獄」で長年使われてきた拷問道具からできており、いくら使ってもトゲが鈍らないという代物だが、金棒自身が相応しくないと判断した者が持つとトゲを足や尻で踏んでしまう事故が続く。
また地獄では武器の所持制限がないことから、ライフル銃を用いる場面もある。
表紙イラストなどでは煙管がトレードマークになっているが、劇中での喫煙シーンはあまりない。
アニメではエピソード名表示の時に毎回描かれている。
閻魔大王 / 閻魔王(えんまだいおう / えんまおう)
声 - 長嶝高士
日本の地獄の王。
現世の絵画等において、十王の中で最も大きく描かれている通り巨漢である。
そのため便所や風呂場なども専用の物を用意されている。
現世に来る際には165センチメートルほどに縮むというある意味「すごい変装」をしている。
伍七日に裁く裁判官かつ地獄の最高責任者。
元は人間で、人類(日本人)最初の死者であるとされている。
かつて亡者によって混乱の極みに達していた「あの世」を改革すべく署名運動を行い、後に自らが地獄の「王」となった。
鬼灯の名付け親でもあり、彼を見出して補佐官に抜擢した張本人。
その一方、裁判の仕事中以外は全くと言って良いほど威厳のない呑気な人物。
仕事が立て込んでくると鬼灯に仕事を丸投げしたり愚図ったりしており、テレビを見たりゲームに興じたりすることもある。
そのたびに鬼灯から情け容赦ないツッコミとヤキを入れられたり、弄られたりしている。
しばしば鬼灯や一部キャラからトトロ呼ばわりされるなどぞんざいな扱いを受けるが、時に文句は言うことはあっても最終的には根に持たず笑って許すなど器は大きい。
作中では亡者に対し地獄行きを宣告した上で八大地獄(あるいは八寒地獄)の十六小地獄へ流刑先を決めているが、本来流刑先を決めるのは変成王である。
桃太郎ブラザーズ
元は桃太郎のお供であった動物たち。
3匹とも一応霊力ある神獣。
鬼灯の斡旋で就職した。
最終回にて人事異動し、3匹とも太山王の第一補佐官見習いとなる。
シロ
声 - 小林由美子
白いイヌ。
好奇心旺盛な天然。
思ったことをすぐ口に出したり行動しては墓穴を掘ったり痛い目を見ている上にほとんど懲りないため、バカ、アホ呼ばわりされることが多い。
彼の中では閻魔大王やサタンよりも鬼灯の方が存在感が大きく鬼灯を恐れつつも懐いており、非番の日でも鬼灯の外出についていくことがある。
地獄の図書室にある「桃太郎」の犬の絵がアフガン・ハウンドであることに納得いかないほか、花咲か爺さんの唱歌の歌詞に登場する犬の名前が「ポチ」であることにも不満を呈している。自分の品種が何かは不明らしい。
獄卒になってからは3匹の中でも目立って体型が丸くなっており、作中でも度々それを指摘されている。
柿助(かきすけ)
声 - 後藤ヒロキ
「チームのブレーン」を自称しているサルであり、それに相応しい思慮深い慎重派である。
常にバンダナを首に巻いている。
歯並びが悪く描かれている。
600年前にカニの一家から傷害致死罪で訴えられており、カニの友人たちに懲らしめられたことがトラウマになっている。
カニへの罪滅ぼしのため、地蔵に導かれて桃太郎のお供となった。
カニに対する罪悪感と謝罪は本物だが、ところどころでカニにまつわる出来事に出会うことが多い。
ルリオ
声 - 松山鷹志
「ロケットランチャー」を自称するキジ。
ルリオの歌は魅惑のチキルームで、聴いた者はつられて歌ってしまう。
3匹の中では1番のしっかり者である。太ってきていることを気にしている。
自身が慕うのはあくまで桃太郎だが鬼灯の能力は認めている。
親を鬼ヶ島の鬼に殺されている。
キジは本来飛ぶことが苦手だが、ルリオは自分と同じく見た目と装飾がハデな鳳凰を見習って努力した結果、比較的自由に飛べるようになっている。
主題歌
第壱期
オープニングテーマ
作詞 - サイトウ "JxJx" ジュン、獄卒音楽連盟 / 作曲・編曲 - サイトウ "JxJx" ジュン / 演奏 - YOUR SONG IS GOOD
歌 - 地獄の沙汰オールスターズ[鬼灯(安元洋貴)、閻魔大王(長嶝高士)、シロ(小林由美子)、唐瓜(柿原徹也)、茄子(青山桐子)、お香(喜多村英梨)、YOUR SONG IS GOOD]
2014年2月19日に発売されたシングルは、同年3月3日のBillboard Japan Hot Animationで首位を記録した。
OAD4ではエンディングテーマにも使用。
歌 - 地獄の沙汰オールスターズ[鬼灯(安元洋貴)、閻魔大王(長嶝高士)、ピーチ・マキ(上坂すみれ)、ミキ(諏訪彩花)、檎(細谷佳正)、座敷童子 一子(佐藤聡美)、二子(小倉唯)、YOUR SONG IS GOOD]
エンディングテーマ
- 「大きな金魚の樹の下で」(第1話)
作詞・作曲・編曲 - 金魚草コンテスト審査委員会 / 歌 - 東京混声合唱団
曲とエンディング映像は日立のCMソング「日立の樹」のパロディとなっている。
また諸般の事情により以降の再放送では別の新規EDに差し替えられた。
- 「パララックス・ビュー」(第2話 - 第7話、第9話 - 第13話)
作詞 - 大槻ケンヂ / 作曲 - NARASAKI / 編曲 - Sadesper Record / 歌 - 上坂すみれ
第13話では2番の歌詞が使用され、映像も一部変更されている。
OAD3では挿入歌として使用された。
- 「キャラメル桃ジャム120%」(第8話)
発売・販売 - HELL CHILD / Sound concept - 獄卒音楽連盟 / 歌 - ピーチ・マキ(上坂すみれ)
本編内で一部登場していたピーチ・マキの新曲プロモビデオのフルバージョン。
- 「鬼の子見ていた地獄絵図 〜輪廻っていいな〜」(AT-X、再放送版第1話)
歌 - シロ・柿助・ルリオ
2014年12月5日にAT-Xでの再放送、および2017年9月に「第2期放送記念」としてAbemaTVにて再放送された際、このエンディングに差し替えられた。
作詞 - RUCCA / 作曲・編曲 - 岩橋星実 / 歌 - 上坂すみれ
※誤視聴注意
『鬼滅の刃』とは一切関係ありません(笑)
パッと見ではあの超人気アニメ『鬼滅の刃』と見紛うタイトルの『鬼灯の冷徹』。
『鬼灯の冷徹』が、『鬼滅の刃』のスピンオフ作品だと勘違いしている人も多いのではないだろうか。
観ればわかるが『鬼灯の冷徹』は、『鬼滅の刃』とは一切関係がないまったくの別作品。
『鬼滅の刃』のような緊張感はまったく無いので、勘違いして敬遠していた人は是非安心して視聴してほしいコメディアニメである。
本気でふざける知的ブラックコメディアニメ
ブラックコメディならではの知性
本作は前述した通り、テレビアニメ化に際して「本気でふざける」ことが念頭に置かれている作品であり、原作の内容やそれに含まれる小ネタを再現する一方、アニメオリジナルの小ネタも盛り込まれている。
ただし生粋のコメディアニメかというと、そうではない。
本作の舞台が地獄ということもあり、人間の悪行がネタになることが多い。
そのため辛辣な表現も多く、ジャンルとしてブラックコメディにカテゴライズされる。
コメディとブラックコメディの違いはインテリジェンス(知性)の差だと、個人的には考えている。
何故なら知性がないブラックコメディは、ただの悪意でしかないからだ。
悪口とブラックジョークの違いも同様である。
故にブラックコメディを面白おかしく描くことは非常に難しい。
しかし本作に関して、その心配は皆無。
無類の安定感で、個人差こそあるだろうが、気分を害することはほとんどないだろう。
何よりギャグを連発してさえいればいいと考えている節のある生粋のコメディ作品なんかよりも、個人的には本作の方がよほどコメディ然としていて非常に楽しめる作品だ。
もし意味がわからないギャグがあるとすれば、それは己の勉強不足に他ならないのだから…。
世界各地の神話に精通
本作は地獄に対するアプローチが非常に面白い。
勝手に世界の共通概念だと思っていた地獄に、本作では国ごとのカラーがある。
日本の日本らしい地獄もあれば、EU地獄の王・サタンが治める洋風の地獄もある。
これは日本の「古事記」や「日本書紀」はもちろん、世界各地の神話によほど精通していなければ描けない世界観だ。
このことからも本作がコメディでありながら、知性に溢れた作品だということがおわかりだろう。
鳥獣戯画や洛中洛外図を想起させる作画
本作の作画は鳥獣戯画や洛中洛外図を想起させる独特の作風である。
それが色濃く表れているのが第壱期のオープニングだろう。
感性だけでも十分伝わる作画ではあるが、知識があればまた別の見方もできる。
作画とはアニメーターの力量のみにあらず。
その作品が影響を受けた芸術を知ることも、アニメの楽しみ方のひとつである。
コメディにお約束のパロディも多数あり
コメディ作品にはもはやお約束でもある、有名他作品のパロディ要素。
もちろん本作もあらゆる有名他作品をパクリにパクッている。
わかりやすいものから、探さなければ見つからないほど細かいパロディなどパクリは多岐に渡っており、それを探すだけでも十分楽しめる作品となっている。
そこまでやるか?ww
ナレーションに稲川淳二
本作のナレーションはあの稲川淳二氏。
このキャスティングだけみても製作陣のセンスの良さが窺い知れる。
地獄話に稲川淳二氏。
これほど徹底した演出まで施す作品が駄作なわけがない。
ブラックユーモアが過ぎる?
個人的には非常に気楽にかつ楽しんで観られるコメディ作品。
しかし昨今のコンプライアンス事情を考えると、ブラックユーモアが過ぎる描写が多いようにも感じる。
前述した通り、知性があるからこそブラックユーモアは成立する。
だがYouTubeやTikTokの影響で思考することを忘れてしまった人々にとっては、ただの悪意にしか受け取られないのではないだろうか。
これほどのクオリティを誇るコメディ作品の知名度が、いまひとつ上がらないのはそんな理由からだと邪推してしまう。
ひとつの物語を継続して観続けるのは、実はなかなか根気のいる作業である。
しかし本作は1話完結のコメディ。
真剣に観るわけでもなく、ただなんとなく観て、単純に楽しむことができる希少な作品である。
これを機に、多くの人に『鬼灯の冷徹』を知ってもらえたら幸いだ。
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