アニメ
月が導く異世界道中
『月が導く異世界道中』とは
イラストはマツモトミツアキ氏。
略称は「ツキミチ」。
2012年に小説投稿サイト「小説家になろう」で発表され、同年にアルファポリス「第5回ファンタジー小説大賞」読者賞を受賞し、同社から書籍版も発行された。
「小説家になろう」とアルファポリスの書籍で同時執筆していたが、2016年時の「小説家になろう」の規約変更により、ウェブ版の執筆を停止し、アルファポリスでの書籍版の連載に注力する。
2021年6月時点でシリーズ累計発行部数は200万部を突破している。
アニメ『月が導く異世界道中』とは
第1期は2021年7月から9月までTOKYO MXほかにて放送された。
第2期は第1期終了後に製作が発表。
しかし放送時期は未定。
第1期は日本テレビ史上最高金額で海外セールスされている。
あらすじ
一男二女というごく平凡な五人家族の高校生「深澄真」は、突如として日本から異世界へヒューマン(異世界における一般的な人間とほぼ同意)を救う勇者として召喚される、はずがその異世界の唯一神である女神の「顔が醜いから」という、あまりにも個人的かつ身勝手の過ぎる我儘からヒューマンと交わること(交流及び結婚)を禁じられ、勇者としてではなく、汚くて忌わしいゴミとしてこの異世界の果てに捨てられた。
その女神に立ち会う前に出会った真のいた世界の三貴神の一柱、「月読命」の説明によると、真の両親が異世界出身という出自、日本へ向かう際の女神との契約として両親の大切なものをささげるという取り決めがされていたことを知る。
女神の横暴さを知っていた月読命よりあらかじめ加護として、女神に与えられるより上回る能力を与えられ、勇者の役割をはく奪されたことで転移先の世界で責務を負うことなく自由に生きる許可まで月読命に与えられた。
月読命の話では、真の元いた世界では神々の加護すら届かず肉体的にも魔力的にも負荷を受けて知らずに鍛錬するような生活を送っていたため、その負荷から解放された異世界では超人とも言うべき能力を発揮できることを保証されているが、同時に無敵ではないという注意もされている。
降りた異世界はまさしく「世界の果て」と呼ばれる荒野であり、人どころか動物、魔獣にさえ会えなかったが、やっとのことで魔獣に襲われたオークの娘に会ったことがきっかけで異世界人との交流が始まる。
真の解放された身体能力と、月読命から与えられた加護により、異世界での強大な亜人、魔族、上位竜、魔物に立ち向かい、真の力を認めた上位竜・巴(旧名:蜃)、災厄の黒蜘蛛・澪、リッチ・識と主従契約を結び、主従契約時の変化の法則に従い彼らは真と同じく人(ヒューマン)の姿となる。
最初に主従を結んだ巴との契約によって出来た亜空(霧の結界)の中に、真を尊敬し、崇める亜人(オーク、ドワーフ、リザードマン、半人半蜘蛛)を招いて、元の異世界の荒野とは対照的な環境で村を作って発展、一癖も二癖もある主従を結んだ者たちに振り回されながら、異世界での生活を送っていく。
真は続いて、出身地である両親の軌跡を求めて荒野の中の何処かにあるヒューマンの街を探査、人恋しさも相まってヒューマンとの交流を図る。
ところが、異世界の価値観ではヒューマンと思えないほどとされている醜い顔と漏れ出す強大な魔力、さらにヒューマンとの共通言語を知らず意思疎通ができないため、ヒューマンの多くは真を恐れており、真の印象隠ぺいを講じた上でヒューマン化した従者を伴った行商として挑むことに。
戦争による異常な物価を感じながらその後、一部のヒューマンとは友好を結ぶが、それでも女神の持つヒューマン第一主義が蔓延っているため、ヒューマン以外の亜人は家畜か道具という考えが根強く、ヒューマンと亜人、特に魔族との友好などは難しい状況であった。
ヒューマン偏重主義を端に発した戦争が続く荒廃した異世界で、荒野にたたずむ街と、自然豊かな亜空を行き来しながら、真一同は巻き込まれるように世直しの旅をしていく。
登場人物
主人公
深澄 真 / クズノハ・ライドウ / マコト=クズノハ(コミック版)
声 - 花江夏樹
両親と姉・妹の五人家族で、両親は異世界のケリュネオンという国の貴族と神官であった。
両親が結んでいた契約により異世界に呼ばれるも、その容姿から最低限の加護のみ付与され、異世界に放逐されるが、それより前に月読命の加護で補助を施されている。
元々異世界出身者(ヒューマン)の血を引き、それなりの鍛練を積んでいた真は、異世界では一切の負荷から解放された超人クラスの力(巴曰く、魔力だけでも「魔王数人分」)を持ち、風属性を除いた五属性の魔法を使えるが、自身が受けるのも含めて回復魔法に関する適性がまったくない。
冒険者ギルドのレベルは1だが、これは基本的なステータスが大きすぎるためで、得意の弓でも当初は射た際に的を破壊してしまっていた。
その魔力は弓の鍛錬に際しての集中法による「意識の拡散と再構成」によって増大を繰り返している。
本来生まれもった上限に支配される魔力容量だが、真のように意識を拡散させ再構成するなどという鍛錬は常識の範疇外らしい。
幼少時は両親からヒューマンとしての形質を引き継いだ虚弱な身体で、常に死の恐怖が側にあったが、地球世界の魔術士の女性と出会い、魔法属性のラインを繋ぎ直し補強することで回復と風の適性を失くした代わりに身体を強化する道筋を得た。
そのような経験から口では痛みや死を忌避しながらも達観した部分がある。
異世界ではヒューマンに不信を与えないように、クズノハ(葛葉)商会の代表のライドウという通り名でギルドに登録している。
蜃気楼都市・亜空の所有者で住人からは若様の呼称で、クズノハ商会の従業員の何人かからは旦那の呼称で呼ばれる。
学園都市の非常勤講師として戦闘技術実技を教え、教え子たち七人は学園のトップ7に入る実力に成長させている。
異世界に来て以来、ヒューマンから人間扱いされないながらも、ヒューマン共通語を覚えたり、魔力を抑える努力をしたり、顔をマスクで隠したりと、ヒューマンの悪意のある出来事に遭遇しながらどうにか平和的に過ごしていこうとしたが、緊急避難的に亜空に移動させていたヒューマンが手前勝手な理屈で廃棄予定の武器を奪い、ドラウプニルによる暴発事故まで起こして亜空の民に損害を出してもまったく悪びれることもなく逆に自分を非難したことで、自身の見通しが甘すぎたことを自覚。
それ以来、直接関わって信を得た者を除いてヒューマンには極めて事務的に接するようになり、魔族とヒューマンの戦争も第三者として傍観し、物資が不足して困っているなら種族に関係なく商売するとしている。
これによって戦争がより深刻化したとしても、それでヒューマンと魔族が滅びるなら自分と関わりのある者たちだけを亜空に保護して放置しようと考えている。
界(かい)
月読から与えられた加護によって発現した固有能力。
自身の周囲に半球状の可変式領域を作りだす。その領域内では大抵の物ごとを即座に感知できるほか、任意に強化・不可視化といった各種属性付加などを行える。
ドラウプニル
エルダードワーフ謹製の指輪で、試作段階で真の魔力に耐え切れずに損壊したため全力で製作された。
魔力を吸収して圧縮し蓄積する作用があり、最初は白色だが魔力を貯めることで赤色に変わる。
恐れの原因となる真から駄々洩れ状態の魔力を隠蔽するため両手の5本指全てに装備している。
桁外れな魔力をもつ真だから無事というだけで、通常普通のヒューマンなら魔力を吸い尽くされて死ぬ「呪いレベル」のアイテム。
魔力を吸い切った赤い指輪はわずかな衝撃で爆発的な魔力を放出する危険物だが、亜空では魔力の有効利用を研究している。
魔力体
ソフィア、ランサーとの戦いから得た教訓「引き出す魔力の底上げと常に身を守る障壁」という条件を両立させた技術。
魔力で形成した動く着ぐるみの様なもので、傍からみると無駄遣い以外の何物でもないが、真の有り余る魔力があってこそ成立する。
真の従者
深澄 巴
声 - 佐倉綾音
真の第一の従者で正体は「無敵」の二つ名を持つ上位竜・蜃。
霧に関する能力を持ち霧の結界の能力の一つとして、相手の記憶を直接閲覧したり物理的に保存できる。
真の記憶から時代劇、特に水戸黄門を好み、従者としての服装や武器の趣向もそれらに由来する。
真を黄門様、自分を格さんに見立てて行動したがるが、そのあまりの強さから真からは「核さん」と例えられたり、その言動が「悪代官巴」や「悪商人巴屋主人」であるとみられることもしばしばある。
ただし記憶閲覧の能力から、相手の真意で行動を起こす役割も併せ持つ。冒険者ギルドのレベルは1,320(2回目は1,340)。
またその同じく能力の一つである亜空は元々蜃の物で、真との契約で日本の要素を含む村的な物に変化。
そこへ真を慕う亜人を招き、村(蜃気楼都市)を作ることを主導する。
眷属のミスティオリザードマン108名も蜃気楼都市の初期参加者。
分体(トモエミニ)
巴の分体。
巴を10歳ほどの子供にしたような姿をして、本体に代わって亜空内の探索などをしていたが、正式な命名はされていなかった。
誘い込んだヒューマンの起こした事故によって一度消滅した。
コモエ
先の分体消滅後に生み出された新たな分体で記憶などは受け継がれておらず、真から「コモエ」と命名される。
普段は亜空にて森鬼たちの訓練を担当している。
深澄 澪
声 - 鬼頭明里
真の第二の従者で正体は「災厄の黒蜘蛛」と呼ばれる魔獣。
捕食という形で空間を削り取る能力を有し、真の従者となるまで空腹からあらゆる物を食い続け恐れられていた。
後に巴が保存していた真の記憶から、アニメや特撮に興味を持つ。
好戦的な巴に対し、真との連携で切り開く頭脳派。
冒険者ギルドのレベルは1,500。
エルダードワーフを追って亜空へ侵入した際、迎撃してきた真の痛撃に快感を覚え、真の血に甘露を感じる。
そのことに嫌悪を感じた真により戦闘不能にされるが、真も気絶。
蜃の提案で、気を失っている真と勝手に主従契約を結ばせた。
この契約で亜空が広がり黒い森や川ができる。
過去において蜃、魔将コンビ、勇者パーティ等に撃退はされているが、食欲がある程度満たされたことで食事を止めて別方向に移動したに過ぎず、本当の意味で敗れたのは真が初めて。
眷属の半人半蜘蛛のアルケー4名も蜃気楼都市の初期参加者。
食べる事は今でも好きだが、かつての量第一から質が重要に変わる。
自身の手料理を真に食べさせることが生きがいになっており、勇者・響から日本料理の手ほどきを受けた。
ただし勇者とは知らず、自分が撃退された時の記憶もなく、真により満足を覚える前の記憶は、空腹であったことのみでそれ以外は記憶していない。
深澄 識
声 - 津田健次郎
真の第三の従者で正体は自ら研究のためアンデッドになった元ヒューマンの「リッチ」。
アンデッドになった頃、或いはその前の記憶は失われている。
森鬼に憑依して樹刑の力を与えていたが、真に取り憑こうとして敗れる。
ヒューマンの上位種と呼ばれ世界を渡ることが出来るといわれる存在「グラント」になろうと願っていたが、巴に真実を告げられる。
本来の格としては主従どころか餌-捕食者の契約でしかなれない存在であったが、真の一時的能力低下の詐術と真の魔力を蓄えた指輪13個を手にすることで、上げ底ながら主従契約を結ぶ。
学園都市には、真の助手として授業に参加。
真の意向で真が厳しくする役に対して、慰め役を担当。
その影響か生徒の能力評価・対応が甘くなっている。
主題歌
- 「ギャンブル」
syudouが作詞・作曲・編曲・歌唱する第1期オープニングテーマ。
- 「ああ人生に涙あり」
第1期第1話・第4話で使用されたエンディングテーマ。
言わずと知れた、テレビ時代劇『水戸黄門』の主題歌である。
番組のオープニングでは基本的に曲名は出ておらず、単に「主題歌」と書かれているのみであるが、石坂浩二主演シリーズと武田鉄矢主演シリーズのみ曲名が表示されていた。
作詞は山上路夫氏、作曲は木下忠司氏。
本作第1話は深澄真(花江夏樹)の歌唱、編曲はJohannes Nilsson。
第4話は巴(佐倉綾音)・澪(鬼頭明里)の歌唱、編曲は高梨康治氏。
Ezoshika Gourmet Clubによる第1期エンディングテーマ。
作詞・作曲は池澤英氏。
新感覚!
時代劇×異世界転生
本作は時代劇を取り入れたという点で、従来の異世界転生作品とは一線を画する作品である。
第1話のエンディングで「ああ人生に涙あり」が流れてきた時には、驚愕と共に爆笑してしまった。
よくよく考えてみると時代劇×異世界転生というコンセプトを持つ作品はなかなか存在しない。
シンプルだが、画期的かつ斬新なアプローチである。
日本テレビ史上最高金額で海外セールス
前述した通り、本作は日本テレビ史上最高金額で海外セールスされている。
その理由として一番考えられるのが、時代劇×異世界転生というコンセプトが海外でウケたことではないだろうか。
世界でも評価の高い日本の代表的な文化である時代劇×ジャパアニメーションのコラボは、海外のプロモーターにはさぞや魅力的に映ったことだろう。
日本テレビ史上最高金額で海外セールス?
日本テレビ史上最高金額で海外セールスされた理由は、本作に海外ウケする要素が詰め込まれていたことからだろう。
しかし国内の評価はどうだろう。
甚だ個人的な意見ではあるが、本作を視聴した感想は『転生したらスライムだった件』(転スラ)の比較対象になってしまうものだった。
序盤こそ時代劇要素がふんだんに散りばめられているが、中盤以降はほとんどネタに近い。
そして『転スラ』の展開に酷似していく。
こうなってしまうと、二作品を比べるなという方が無理な話。
ましてや対する『転スラ』は、異世界転生作品の最高傑作だと目している名作である。
残念ながら『月が導く異世界道中』が『転スラ』を上回るのは、現時点では非常に考え難い。
秀逸なネーミング
『月が導く異世界道中』のタイトルに恥じない名作へ…
本作は時代劇×異世界転生という異色なコンセプトの作品である。
女神が登場したかと思えば、月読命まで登場するカオスぶり。
タイトルから推察するに、この月読命が物語の鍵を握っているのだろう。
実を言うと本作を観始めたキッカケは、『月が導く異世界道中』という秀逸なタイトルに惹かれてのことだった。
ありふれた異世界転生を期待したわけではなく、文学的な何かに期待してのことである。
現時点では『転スラ』に見劣りしてしまう本作ではあるが、まだ第1期が終わったばかりである。
実力はまだまだ未知数。
これからの展開に期待しよう。
願わくば、『月が導く異世界道中』という秀逸タイトルに恥じない名作になってほしいものだ。
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