マンガ
世界の終わりに柴犬と
『世界の終わりに柴犬と』とは
『世界の終わりに柴犬と』は、石原雄先生による漫画作品である。
もともとは作者がツイッターで発表していた漫画で、累計のリツイート数が30万を超える人気作となった。
ツイッターでの発表に加え、KADOKAWAのWebマンガサイト、ComicWalkerが2018年3月27日から配信を開始し、2021年3月時点で単行本4巻が発売されている。
作品の内容は、文明の崩壊した無人の世界を舞台として、その世界を旅する女子高生(ご主人)と彼女に付き従う愛犬(柴犬)の「ハルさん」、そして他の犬たちや動物たち、ときには人外の者や異星人などが加わって繰り広げる日常のできごとを描き出すものである。
石原先生は、2017年5月からツイッターを利用している。
『世界の終わりに柴犬と』は本人の弁(単行本1巻あとがき)によると、「只々自由に好きなものを描く為だけに」ツイッターを発表媒体として始めたものである。
人間世界が滅亡していたり、犬や動物たちが普通に喋ったり、人外の存在がいろいろと登場してきたりする理由については作中では明示されない。
石原先生の目的は、そのような疑問やしがらみから解き放たれた「 "自由" な世界」を舞台にして物語を描くことであった。
石原先生は唯一変わらないものとして「犬と飼い主の関係性」に言及している。
ハルさんは「犬としてのパートナー」、ご主人は「ハルさんのご主人」として存在し、彼女の名前を出さない理由はご主人とハルさんの間にそれ以外の関係性がないという判断を挙げている。
同作は累計のリツイートが30万に達する人気作となり、KADOKAWAのWebマンガサイト、ComicWalkerでも2018年3月27日から配信を開始。
同年11月21日には、16ページの描き下ろし短編「10年後の君と」を収録した単行本第1巻(フルカラー)がKADOKAWAから発売された。
単行本は2019年11月22日に第2巻、2020年12月23日に第3巻が発売されている。
2022年8月2日より、YouTubeチャンネルにおいてアニメ(漫画動画)の配信を開始した。
ハルさんのモデルは、石原先生自身の飼い犬(同名)である。
石原先生は静かな場所で執筆作業に取り組むために、愛知県の郊外に仕事場を移転した。
実家ではもともと別の犬が飼われていたが、石原先生は田舎で存分に遊ばせることができる自分の犬がほしかったという。
そのため彼は、移転を契機として念願の柴犬を飼育することに決めた。
石原先生はペットショップで1匹の柴犬に出会い、翌日にはその犬(ハルさん)を自宅に迎えた。
その理由は、ハルさんとの出会いに「なぜか運命を感じた」ためであるという。
このことについて石原先生は「はじめて抱いたとき顔がまったく確認できないほど胸元で転げまわって首にしがみつかれた次の日には、もう自宅にいました」と述懐している。
そしてこの出会いは、『世界の終わりに柴犬と』本編や描き下ろしの漫画に投影されている。
石原先生は『世界の終わりに柴犬と』について「ただほっこりするだけでもなく、日常ものでもない犬漫画」をコンセプトとして描いている。
実際のハルさんにまつわる日常やエピソードだけではなく「柴犬あるある」の部分(しぐさ、習性、性格など)を漫画の筋に組み込み、そこにオチを足して話を造り上げている。
石原先生はハルさんとの暮らしについて「ハルの笑顔がすべてのバロメーターです。(中略)今日も一日最高ですって時に見せるあの笑顔を見て、私自身も今日は一日いい日だったなと感じています」と語っている。
今後について「新しいこともしてみたいですが、犬のためにも日々のルーティンを崩さないで創作活動が続けていけたら理想です」と述べた。
なお、石原先生とハルさんの生活サイクルとして週末は実家に帰っており、Twitterでは実家の猫(ナツ)と一緒に過ごすハルさんの姿が投稿されている。
ショートアニメ『世界の終わりに柴犬と』
2022年6月、Youtube配信でアニメ化(漫画動画)されることが発表された。
監督は『耐え子の日常』などを担当したそろそろ谷川、制作は『秘密結社鷹の爪』のDLEが手掛ける。
2022年8月2日から無料配信が開始された。
これにあわせて角川が二次創作ガイドラインを発表した。
ガイドラインの手続きを行えば、動画の切り抜き、実況、収益化を認められる。
またVtuberの天使うとが46話に、犬山たまきが70話に出演することも明かされた。
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あらすじ
作品の舞台は、文明の崩壊した無人の世界である。
その世界を旅する女子高生(ご主人)と彼女に付き従う愛犬(柴犬)のハルさんの日々を描き出す。
ハルさんは妙に哲学的な発言をしたり、マイペースにふるまうご主人にツッコミを入れたりするが、基本的にご主人には忠実である。
日々の物語には他の犬たちや動物たち、ときには人外の者や異星人などが加わる。
1人と1匹は旅先で出会いや別れを繰り返し、ときには珍騒動を繰り広げつつも終末世界を気ままに旅してゆく。
ご主人は基本的に動物や異星人と意思疎通ができるため、終末世界での悲壮感はほとんど無い。
登場人物
ご主人
声 - 内田真礼
この漫画の主人公。
年齢は17歳、本名は不明で愛犬ハルさんには「ご主人」と呼ばれている。
セーラー服を着こみ、大きなリュックを背負っていて、ハルさんとともに無人と化した日本の各地を旅している。
世界が崩壊する前は、集団生活になじめず引きこもりの女子高校生であった。
マイペースな性格で無人の世界での自由な日々を楽しんでいるが、インターネットの面白動画(例:宇野選手のヘディング)を見られないことを悲しんでいたり、実は猫派であり猫を懐かしがったりする。
動物と会話ができる能力の持ち主で、ハルさん以外の動物たちや人外とも意思疎通が可能である。
ハルさん
声 - 田村睦心
ご主人の愛犬で年齢5歳のオス。
知識量豊富な柴犬で、時折ご主人と哲学的なやりとりを交わすほどである(例:シュレディンガーの猫など)。
その知識がしばしばご主人へのツッコミに向かう。
洗われるのが大の苦手。
2022年11月にゲームアプリ「戦国パズル!!あにまる大合戦」のコラボキャラとして登場。
黒柴
声 - 山根雅史
ご主人とハルさんが出会ったオスの黒柴。
荒廃した街で生き抜くうちに野生化していたが、ご主人とハルさんに会ったことでかつての自分を思い出し、1人と1匹を追って旅を始める。
八百比丘尼から「チョコ丸」と名付けられた。
白雪
声 - 稲垣好
メスの白柴でハルさんに惚れ、黒柴と同様に1人と1匹を追って旅を始める。
かぐやとは恋のライバルだが、ときには共同戦線を張ることもある。
かぐや
声 - 田中貴子
黒柴のメスで世界崩壊前は隣に住んでいた。
旅先での偶然の再会を経て、1人と1匹の旅についてくる。
ハルさんを「ハルお兄ちゃん」と呼んで慕っている。
シベリアン・ハスキー
声 - 秋葉佑
いつも元気いっぱいのオス犬で、ハルさんは「正直苦手」と評している。
やたらに水に落ちたり穴にはまったりと落ち着きがない。
ご主人からは「ハス吉」と呼ばれている。
たぬ3兄弟
声 - 山根雅史(たぬ兄)、嶺内ともみ、稲垣好
たぬきの3兄弟。
名前は上からたぬ兄、ぽん吉、たぬ三郎。
ご主人から缶詰(ただし中身はシュールストレミングだった)を盗んだり、ハルさんにいたずらを仕掛けたりする。
根は善良で、ご主人のためにハルさんに力を貸してウナギを捕らえたことや、罠にかかっていた鶴を助けた(そして3匹とも代わりに罠にかかってしまった)こともある。
妙な訛りがあり、ご主人の事を「ごすじん」と呼ぶ。
泉の女神
声 - 嶺内ともみ
童話『金の斧銀の斧』に登場する女神。
泉に落ちて溺れたご主人の件でハルさんと珍問答を繰り広げたり、同じく泉に落ちたシベリアン・ハスキーの件でご主人とピントのずれたやり取りをしたりする。
八百比丘尼
声 - 久住琳
1300年前に人魚の肉を口にし、その後不老不死となって少女の姿のままで各地を放浪している。
「もう1度人魚の肉を食べる」のが願いの1つ。
黒柴に「チョコ丸」と名付け、一緒に行動をしている模様。
宇宙人
声 - 玉井勇輝(老夫)、秋保佐永子(老婦)
1人と1匹の旅先にしばしば現れる、星間飛行や次元転移はおろかタイムトラベルまで可能とする高度な文明を造り上げた異星人。
侵略者などではなくいたって穏やかで友好的な性格であり、田舎で農作業にいそしむ老夫婦やその孫、行商人やバーテンダーなど複数が登場してくる。
当初はハルさんの通訳によってご主人と意思疎通していたが、後には普通に会話するようになった。
犬好き必見知性派おバカマンガ
著者は本作を知性派おバカマンガと評したが、おバカという表現はあくまでも独断と偏見である。
主人公であるご主人もハルさんも、とにかく頭の回転が早い。
高い教養もあり、哲学者顔負けの発言もしばしば…柴犬だけに。
本作の知性派ぶりを裏付けるのが、八百比丘尼やライカの登場である。
八百比丘尼伝説
八百比丘尼(やおびくに)は、日本の伝説上の人物である。
特別なもの(人魚の肉など)を食べたことで不老長寿を獲得した比丘尼である。
福井県小浜市と福島県会津地方では "はっぴゃくびくに"、栃木県栃木市西方町真名子では "おびくに"、その他の地域では "やおびくに" と呼ばれることが多い。
意外と知られていない八百比丘尼伝説ももちろんだが、それ以上に知られていないのがライカの名。
ライカ
ライカ(ロシア語: Лайка)は、宇宙船・スプートニク2号に乗せられたメスの犬の名前である。
地球軌道を周回した最初の動物として有名。
1957年11月3日、ライカを乗せたソ連のスプートニク2号はバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、地球軌道に到達した。
スプートニク2号は大気圏再突入が不可能な設計だったため、1958年4月14日、大気圏再突入の際に崩壊した。
ライカは打ち上げから10日後に薬入りの餌を与えられて安楽死させられた、とされていた。
しかし、1999年の複数のロシア政府筋の情報によると、「ライカはキャビンの欠陥による過熱で、打ち上げの4日後に死んでいた」という。
さらに2002年10月、スプートニク2号の計画にかかわったディミトリ・マラシェンコフは、ライカは打ち上げ数時間後に過熱とストレスにより死んでいた、と論文で発表した。
センサーによればライカの心拍数は打ち上げ前には103だったが、加速初期には240まで増加した。
無重力状態になってから3時間をかけて通常の脈拍に戻ったが、これは地上実験時の3倍の時間であり、ライカの受けたストレスの大きさを示している。
この間、断熱材の一部損傷のため、船内の気温は摂氏15度から41度に上昇し、飛行開始のおよそ5 - 7時間後以降、ライカが生きている気配は送られてこなくなったという。
結論としては "正確なところはわからない" ということである。
そのライカが本作でまさかの登場。
ハルさん曰く、ライカは「犬達(ぼくたち)のスター」らしい。
ふたり(ひとりと1匹)は思いがけない後日談を知ることになるのだが…。
この描写だけで、作者の博識ぶりが窺える。
さらにはハルさんの哲学者顔負けの発言にも、学ぶべきところがたくさんある。
極めつけは、これほど情報量と教養を、まるで四コママンガのように簡潔にまとめ上げる作者の表現力である。
これには感動すら覚える。
しかし、だ。
これほどの教養を見せつけられていても、どうしてかこのふたり(ひとりと1匹)のやり取りにおバカ感が拭えない。
きっとそれはふたり(ひとりと1匹)が教養や知性とはまったく別のところにある、己の欲望に忠実に生きているからだろうと推察されるが、これが抜群に面白い。
ハルさんの知性と欲望(おやつへの執着)への葛藤は必見。
やっぱり柴犬は最高に可愛いなぁ。
犬好きは必見。
猫好きにもおすすめ。
動物を愛するすべての人に是非観てほしい作品である。
実際に柴犬を飼うなら責任を持って
本作をより多くの人に観てほしいのは間違いないが、柴犬を実際に飼うとしたならちゃんとした覚悟が必要である。
柴犬のお世話には、とにかく手が掛かる。
だからこそ愛おしいのだが、それが出来るだけの時間の確保が必要だ。
ただ "可愛いから" という理由だけで柴犬を飼おうとしているなら、やめておいた方がいい。
でも飼いたい…。
柴犬の、何考えてるかわからない顔がたまらなく愛おしい。
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