其の二十
美しき日本語の世界。
日々成長する日本語
日本語には動詞が少ない?
言語には、品詞と呼ばれるものがある。
単語を形態と職能によって分類した種別したものだ。
例えば日本語では、名詞・代名詞・動詞・形容詞・副詞・接続詞などを指す。
そして、その言葉のことをもっと詳しく知りたいと思ったときには、品詞が何かということが重要になる。
辞書では、その言葉の品詞を示しているが、どの辞書をみても「動詞」と示しめされている言葉がとても少ないのだ。
例えば、『新選国語辞典』(第十版)という辞書では、それぞれの品詞ごとの語数が示しめされている。
それによると、この辞書に収録されている言葉は約94,000語あるが、動詞は6,829語しかない。
日本語は動詞が少ない言語なのだろうか。
そのようなことはない。
「言う」「見る」「食べる」のような、品詞が「動詞」と示しめされた言葉の他に、「会話する」「発見する」「食事する」のように、「する」がついて動詞として遣われる言葉もあるからだ。
辞書ではそれぞれ、「会話」「発見」「食事」の品詞は名詞であるが、これらの言葉に「~する」と書いて、動詞として遣われることを示している辞書もあるくらいである。
このような隠れた動詞の数が、日本語にはとても多い。
そして、日本人はこの「~する」を遣い、色々な言葉を動詞にしてしまう才能がある。
例えば、少し前に流行った「タピる」という言葉。
「タピオカ」を入れてココナッツなどを使ったデザートが人気だったときに、それを飲んだり食べたりすることを「タピる」と言っていた。
また、似たような成り立ちの言葉に「チンする」というのがある。
言わずもがな、電子レンジで食べ物を温めるという意味だ。
これは、温め終わったことを知らせる音から生まれた言葉である。
ただ、この言葉の面白いところは、最近の電子レンジは温め終わりを知らせる時に「チン」とは鳴らない。
我が家の電子レンジも「チン」とは鳴らない。
しかし昔の電子レンジは「チン」と鳴っていたので、その音だけがそのまま残ってしまったのである。
このように「~る」「~する」の形で動詞を作るのは、比較的新しい造語法のように感じられるかもしれないが、実はそのようなことはない。
江戸時代に、すでにこのようなことば遊びに近い感覚で新語が造られているのである。
例えば、主に米飯に茶をかけた料理である「お茶漬」。
江戸時代の人はこれを動詞にしてしまっていた。
それも「お茶漬する」でも「茶漬る」でもなく、「ちゃづ(ず)る」と言っていたようなのである。
もちろん意味は、お茶漬を食べること。
この「ちゃづ(ず)る」は江戸時代に書かれた小説にも出てくるが、何とも気の短い、実に江戸っ子らしいエピソードといえる。
若者言葉のカタカナ+「る」
日本語には名詞・オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)などに「る」をつけて動詞にする、若者を中心に遣われている言葉がある。
「カタカナ+る」で表記される砕けた表現であり、「る」の前は2文字の場合がほとんど。
「ドトる」があるのだから「スタバる」でも問題ないような感じもするが、それではどうも坐りが悪い。
やはり「る」の前は2文字が良い。
ちなみに発音は中高型(低高低)になる。
動詞で分類するとグループ1(五段動詞)で活用する。
活用例
- 「もう、サボらないでよ!」
- 「あの人、いつもあそこでサボっているよね」
- 「今日はサボろうか」
- 「最近、お肌のお手入れをサボり気味」
社会的にも定着し、国語辞典に載るような言葉もあるが、それほど数は多くない。
「カタカナ+る」は造語力が強いのが特徴だ。
特に若者の間では次々と新語が生み出されている。
言葉をみれば、今流行っているもの(数年前のタピオカドリンク、SNSSなど)がわかるほどだ。
人気が無くなれば死語(古い言葉)となり、その言葉も流行りと共に消えていく。
ネット社会の広がりと共に普及してきた言葉だけは、これからも残っていきそうな気がするが、果たしてどうだろう。
刹那的ではあるが、新しい「カタカナ+る」言葉を聞くたびに、日本語は今この瞬間も常に成長していることを強く実感する。
「カタカナ+る」言葉は、日本語のフレキシブルさと面白さを見事に象徴しているのだ。
頭の硬い連中は言葉の乱れを指摘するが、言葉は時代を映す鏡である。
時とともに変化していって然るべきなのだ。
「ミスったので、すぐに客先でネゴったけど、時すでに遅し、軽くネグられた。減俸もんだぁ~(泣)」
このように「カタカナ+る」言葉を遣いすぎるのは考えものだが、若者言葉だからと敬遠などせず、コミュニケーションが取れる程度は最低限理解しておくべきではないだろうか。
何度もいうが、言葉は時代を映す鏡である。
そして、言葉は日々成長し続ける生き物のようなものであり、文化でもある。
あまり世話を怠りすぎると、文化そのものが滅びてしまう。
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