其の四十八
美しき日本語の世界。
実は怖かった?秋の素晴らしさを表すことわざ「天高く馬肥ゆる秋」の本当の意味
「天高く馬肥ゆる秋」とは
秋の素晴らしさを表すことわざ、「天高く馬肥ゆる秋」。
時候の挨拶に用いられたり、秋の季語として「馬肥ゆ」「天高し」「秋高し」が使われたりすることもある。
この言葉を聞くと、爽やかで気持ちのよい秋空、馬が草原をゆったりと歩く、のどかな光景をイメージする人も多いのではないだろうか。
しかし、この言葉が生まれた背景には、人々の生活を脅かす、ある出来事があった。
「天高く馬肥ゆる秋」=「快適に暮らせる秋の気候」のこと?
「天高く馬肥ゆる秋」は、「空は澄み渡って晴れ、馬が食欲を増し、肥えてたくましくなるほど過ごしやすい秋」を表現しており、「心身ともに快適に暮らせる秋の気候」を意味する。
「天高く」は空気が澄み渡り高く感じられる秋空のこと、「馬肥ゆる」は馬も食欲が増して肥えるような収穫の季節のことで、秋の素晴らしさを表現している。
実は怖い?由来は「秋高塞馬肥」
そもそも「天高く馬肥ゆる秋」は、唐の詩人・杜審言(としんげん)が前漢時代のことを書いた詩の一節「雲浄くして妖星落ち 秋高くして塞馬肥ゆ」に基づいており、前漢の将軍・趙充国(ちょうじゅうこく)が言ったとされている。
前漢の北方では、騎馬民族「匈奴(きょうど)」が大きな勢力を誇り、匈奴は秋になると南下して収穫物を略奪しにやってきた。
春から夏にかけて草を食べ、たくましく育った馬に乗って匈奴が侵入してくることから、趙将軍は「秋になると匈奴の馬が強く育ち、その馬で攻めてくるから気をつけろ」と警戒の言葉として発言したという。
前述した「雲浄くして妖星落ち 秋高くして塞馬肥ゆ」にある「妖星」とは不吉な出来事の前兆、「塞馬」は北方の馬、匈奴の馬のことを指す。
故に「天高く馬肥ゆる秋」ということわざの元々の意味は、「敵襲に警戒せよ」と注意を促すものだった。
しかし敵の襲来の恐れがなくなったことから、いつの間にか「秋高くして塞馬肥ゆ」が「秋高く馬肥ゆ」となり、さらに「天高く馬肥ゆ」へと変化して、現在のような意味合いで広く遣われるようになったという。
なお、現在の中国語では、「秋高气爽」という中国の四字成語(熟語)で、秋空が高く空気が爽やかで気持ちが良い(爽やかな秋晴れ)ことを表すようだ。
そして日本にも、中国の「秋高气爽」と同じ意味の「秋高気爽(しゅうこうきそう)」という四字熟語がある。
秋の空が「天高い」のはなぜ?
余談ではあるが、ちなみに秋の空が高く感じられる理由のひとつが「夏と秋の雲の高さの違い」。
夏に見られる積雲は高度がさほど高くなく、背の高い入道雲でも底が低いため空が近くに感じられるはず。
それに対し秋になるとよく見られる巻雲や巻積雲などは、雲ができる高度が最も高い上層雲に属している。
加えて、秋になると空の透明度が高くなることから、秋の空は夏に比べ高く感じるという。
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