アニメ
薬屋のひとりごと
『薬屋のひとりごと』とは
『薬屋のひとりごと』(英語: The Apothecary Diaries、中国語: 药屋少女的呢喃)は、日向夏先生による日本のオンライン小説、ライトノベル作品。
架空の中華風帝国を舞台に、後宮に勤める官女が王宮内に巻き起こる事件の謎を薬学の専門知識で解くミステリー、ファンタジー、ラブコメ小説である。
2011年10月に小説投稿サイト「小説家になろう」で連載が開始され、人気を得たことから第1部「後宮編」が2012年に主婦の友社の「Ray Books」レーベルから単行本として発売された。
その後、同社(2018年11月以降はイマジカインフォス)で刊行されたライトノベルレーベル「ヒーロー文庫」で2014年に第1部が新装刊され、以後継続されて発行されている。
2017年からは「月刊ビッグガンガン」(スクウェア・エニックス)と「月刊サンデーGX」(小学館)の月刊誌2誌で、それぞれ別の漫画家によりコミカライズ版が連載されている。
2021年11月時点でスクウェア・エニックス版のコミックス累計部数は700万部、2023年6月時点で小学館版のコミックス累計部数は850万部(電子版含む)。
2023年9月時点で全シリーズ累計2400万部を突破。
薬屋のひとりごと 1巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス)
アニメ『薬屋のひとりごと』
日向夏先生による同名小説、ライトノベルを原作としたアニメ作品。
2023年2月16日にテレビアニメの制作が発表された。
同年10月より、日本テレビ系列にて2クール(24話)で放送。
初回は第1話から第3話を連続放送した。
劇中のナレーションは島本須美さんが担当している。
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あらすじ
医師である養父を手伝って薬師として花街で働く少女・猫猫は、人攫いによって後宮に下女として売られてしまう。
年季が明けるまで目立たぬように勤めるつもりだったが、皇子の衰弱事件の謎を解いたことから美形の宦官である壬氏の目に留まり、様々な事件の解決を手伝わされることとなる。
やがて発生した寵姫の失踪事件は、猫猫を巻き込み国家転覆計画に広がっていく。
そして、明らかになる壬氏の正体。
二人の関係は微妙に変化していく。
登場人物
猫猫(マオマオ)
声 - 悠木碧
本作の主人公。
養父とともに花街で薬師をしていたが、薬草採取で外出したときに人攫いにあい、後宮務めの下級女官として売り飛ばされた。
後宮内で能力を発揮しても、猫猫を売りとばした人攫いへの送金が増えるだけであることから、それを避けるために無能を装っていた。
しかし、寵姫の病気の原因を見抜き、匿名で訴えたことで壬氏に薬師としての能力を知られ、玉葉妃付きの侍女に抜擢されるも、その内実は壬氏の手駒として関わることとなる。
顔立ちはそれなりに整っているが、人目を引くほどの特徴はなく、どちらかと言えば地味。
それでも、花街では襲われる危険性があるために化粧や黥でシミやそばかすを書き醜女に見せていた。
女官となった後も、元に戻すタイミングを逸した上、壬氏からも残すよう言われたためそのままにしている。
体格は小柄で痩せ型、胸も小さい。
頭の回転が速く、薬、特に毒に対する好奇心や研究心が旺盛で、造詣も深い。
また、薬や医学に関する養父の蔵書を読むために西洋の言葉を独学で身に付けている。
一方、それ以外のことに対してはまったく興味がなく、そのために知識がかなり偏っている。
毒薬を自分の体で試した傷跡を隠すために左腕には常に包帯を巻いているが、周囲からは「過去に虐待を受けていたことを隠すため」と勘違いされており、同情を集める一因となっている。
毒に詳しい上にさまざまな毒に対して免疫があるため、後宮では主に毒見役を務めた。
しかし、好奇心や研究心が強すぎて、いざ毒に当たるとむしろ喜んでしまうため、壬氏などから呆れられている。
一方で、蕎麦に対するアレルギーを持っており、一口でも食べると蕁麻疹を発症し、最悪呼吸不全を起こす。
自らの経験則からアレルギーを「特定の体質に発する毒」として捉えている。
また、ザルといえるほど酒に強く酒好き。
なお、後に蝗害を目の当たりにしたことから飛蝗が嫌いになった。
あまり人付き合いは得意ではなく、必要最低限の会話以外は自分から口を開くことはあまりない。
ただし、極度に疲労した時や飲酒した時は本人も驚くほど饒舌になることがある。
市井の知人どころか小姐たちにまで「友だちがいない子」と認識され、緑青館で小蘭の話をすると、白鈴には喜びのあまり泣かれた程である。
妓女の娘として花街で生まれ育ったため、本来の口調はかなり荒っぽい。
女官となってからは必要に迫られ改めているものの、身内が相手の時や悪態をつく時などときおり素の口調が出てしまうことがある。
また、花街で男女関係の裏まで見て知り尽くしているため、男性を見る目は極めて醒めており、恋愛に対する幻想も持っていない。
その一方で、生物学的な興味から「出産は経験してみたい」と述べている。
世の中の理不尽に関しても達観しており、権力者の理不尽は「するかしないか」ではなく「できるかできないか」であると語っている。
壬氏に対しても「無駄に美しい」容貌や粘着質の性格を苦手としており、つい蛞蝓を見るような目で見てしまうことがある。
そのため壬氏の好意に長いことまったく気がつかなかった。
壬氏(ジンシ)
声 - 大塚剛央
本作における「もう一人の主人公」とも言える人物であり、ストーリー上においても大きな謎を秘めている。
役職は、後宮の管理を担当する宦官。
その容貌は大変美しく、「天女の微笑み」「花の顔(かんばせ)」などの形容詞で語られるとともに「性別が違えば国さえ傾ける」とも称され、下女はその姿を見れば顔を上気させ、蜂蜜の様といわれる甘い声をかけられれば失神し、下級妃や男性の武官からも夜の誘いの声がかかるほど。
猫猫曰く「無駄に美形」。
公称24歳だが、大人びた外見よりも実年齢は若い。
少々粘着質なところがあり、また、目的のために使えるものは何でも使う。
ただし、その奥の「素」の性格は、外見に反してどちらかというと地味で堅実。
猫猫のことはその能力はもちろん、あえてそれを隠して勤めていた判断力とともに、自らの外見に全く惑わされないことから興味を抱き、それがやがて好意に変わっていった。
だが前述の通り、お愛想程度の笑顔で老若男女問わず自身になびいてくる状態だったためか、興味のある相手の気を惹く手法は子供並みで、相手が自分以外の相手を頼ったというだけでもへそを曲げる。
また、個人としては善良な部類で、職務上は関わる対象はともかく、罪もない者が理由もなく理不尽な目に遭うことには気に病む質である。
高順(ガオシュン)
声 - 小西克幸
壬氏付の武官。
高順は宦官名であり、本名は不明(9巻時点)。
代々皇族を守護する馬の一族の一人でもある。
その役割もあり、皇帝・阿多妃とは幼少時は共に後宮内で遊んでいた幼馴染にあたる。
守役として幼児期から壬氏に仕えており、主人に振り回されながらも忠義に厚い苦労人。
非常にまめで気が利く一方でお茶目なところもあり、甘いものや猫が好き。
猫猫のことを「小猫(シャオマオ)」(猫ちゃん)と呼び猫猫の好む道端菓子の「包子(肉まん)」を渡したりと、猫猫からは「癒し」と認識されている。
壬氏と同様に実は宦官ではないが、後宮に出入りする関係から間違いがあってはならないよう男性機能を減退させる薬を常用している。
玉葉(ギョクヨウ)妃
声 - 種﨑敦美
翡翠宮に住む皇帝の寵妃。
位は貴妃。
赤い髪と翡翠の目をもつ胡姫で家庭的な女性。
13人兄弟の末っ子で、皆腹違い。
実母が西洋の出身で身分の低い踊り子だったため、親子ほど年が違う長兄やその家族とは非常に不仲だが、姉妹とは比較的仲がいいらしい。
実は幼い頃、面識はなかったが、一瞬だけ雀を見たことがある。
皇帝との間に一人娘(公主)の鈴麗があり、母子の衰弱の原因を明らかにした猫猫に恩を感じ侍女に迎える。
もともと好奇心が強くいろいろなものを面白がる性格であり、その意味でも猫猫を気に入っている。
猫猫に対する壬氏の気持ちを見抜いている様子であり、二人の関係を面白がって見ている。
後に東宮となる男児を出産したことで皇后位に就き、「玉葉后」と呼ばれる様になる。
梨花(リファ)妃
声 - 石川由依
水晶宮に住む皇帝の妃。
位は賢妃。
帝の妃にふさわしい気品と、「メロン」と形容される見事な乳房の持ち主。
賢妃の名に相応しく寛大かつ懐が深い。
猫猫自身も玉葉妃付きの侍女の立場をわきまえながらも、彼女に好意を抱く。
皇帝との間に息子(東宮となる男子)があったが原因不明の病に侵され、猫猫が匿名で知らせたその原因と解決方法を侍女が握りつぶしたため亡くしている。
自身も我が子を死に追いやったのと同じ原因によって衰弱の一途をたどっていたが、帝の命をうけた猫猫の看病により回復し、さらに猫猫が花街の妓女から伝え聞いた「秘策」を伝授されたことにより皇帝の寵愛も取り戻した。
それに恩を感じているようで、その後は何かと猫猫を気にかけている。
里樹(リーシュ)妃
声 - 木野日菜
金剛宮に住む皇帝の妃、位は徳妃。
元は先帝の妃として9歳のときに後宮に入ったが、崩御で出家し改めて現帝の妃として後宮に入った。
先帝が手を付ける前に崩御したことも含めて、まだまだ恋に恋する年頃で男女の睦事に関しては全く免疫がなく、梨花妃推薦によって四夫人を集めて猫猫の「講義」が行われた際には自分には絶対に無理だとショックを受けている。
先帝時代に阿多妃とは「(帝の妃という意味で)姑と(東宮・皇太子の)嫁」という関係だったが仲は良い。
だが、それが原因で何度か命を狙われることになる。
その特異な経歴から侍女からも蔑まれており、いじめを受けている。
魚介が食べられないことも侍女から偏食と捉えられて嫌がらせとして食べさせられていた。
猫猫によってアレルギー持ちであったことが明らかになり、無理に食べさせることが命に係わるという事実を知らされた。
また、赤ん坊のころに蜂蜜を食べたことで生死をさまよった経験があり、自身にその記憶はないが気を付けるように言われながら育ったため蜂蜜も苦手。
実母は皇帝の幼馴染みで、物心つく前に他界。
実父は彼女が生まれる前から他所に妾を囲っており、母の死後すぐに後妻を迎え、異母兄姉を贔屓して可愛がっていた。
何かと不幸が降りかかりやすい境遇であり、猫猫もその点は同情している。
阿多(アードゥオ)妃
声 - 甲斐田裕子
物語開始当時の柘榴宮の主人で、位は淑妃。
東宮妃時代に男子を一人出産しているが、折悪く皇太后の出産と重なり、医官の手が足りなかったため子どもの生めない身体となったうえ、子どもも乳児期に亡くしている。
本来ならば世継ぎを産めなくなった時点で後宮から出るのが自然であるが、皇帝の意向でぎりぎりまで留められていた。
男前の性格で、男装すると壬氏とよく似た雰囲気をまとう。
その一方で、子氏一族の趙迂以外の生き残った子供たちや翠苓など、表立って外を歩けない訳ありの人々を内密に匿っている。
やぶ医者 / 虞淵(グエン)
声 - かぬか光明
後宮で唯一医官を務める、どじょうひげをはやした小太りの宦官。
後にある者の身代わりとするためひげは剃るように命じられている。
最初は自分の職場を荒らす者として猫猫を警戒していたが、基本的には気のいい性格で、彼女に任せた方がうまくいくとともに楽することができることに気が付き、それ以降は茶や菓子を出してくれるヒロイン的存在。
猫猫からは内心「やぶ医者」と呼ばれ、後宮内の医官は彼一人で他と区別する必要が無いため「医官どの」で通用し、彼を本名で呼ぶのは羅門くらいで、単行本の登場人物紹介も含めて作中で本名で呼ばれることは滅多にない。
医官でありながら死体を怖がるなど医師としての技量は極めて低く、後宮内でもほとんど頼りにされていない。
羅門の追放後に医官不在となった後宮では先帝の手がついたため後宮外に出られなくなった女官たちが医療技術を身に着け診療所の役割を果たすようになり、彼女らが新たに導入された宦官医官に強い反発を起こしたため、最初の筆記試験に唯一合格した虞淵のみで制度自体が無くなり、実技訓練も動物解体の段階で適性が無いことが判明したため免除された経緯がある。
出身の村は紙漉きを産業にしており、医局でも紙を自由に使う。
先帝の時代に村が傾きかけたため、村の移住費を賄うために、そのころ女官を求めていた後宮へ姉が行き、続いて妹も倣おうとしていたのを制止し、女官より高く身売りできる宦官に志願した。
小蘭(シャオラン)
声 - 久野美咲
猫猫と同時期にやってきた後宮の下級女官で、貧困農家だった実家から後宮に売られた過去を持つがそんな暗さは見せない。
猫猫に対して偏見を持たず親しく接する少女。
噂話と甘いお菓子が好きで色々な情報を仕入れてくるため、猫猫はお菓子を餌に聞き出すことが多い。
2年間の年季が明け、後宮を去るが下級妃に気に入られたお陰で妃の実家での就職が決まり、無事にそちらで働いている模様。
猫猫の元にもたまに手紙がくるらしいが、肝心の勤務先の住所が書かれていないため猫猫自身返事すら出せていない。
紅娘(ホンニャン)
声 - 豊口めぐみ
玉葉妃の侍女頭。
猫猫が無能を装っていた理由を聞いて、わざと花瓶を割って送金を帳消しにするなど人の事情を理解する苦労人。
猫猫にとっては当たり前だが、後宮という場所では非常識な行いには頭を痛めている。
結婚願望はあるらしく、一時は高順を狙っていた節もある。
しかし彼が既婚者と知ってあきらめている。
桜花(インファ)、貴園(グイエン)、愛藍(アイラン)
声 - 引坂理絵(桜花)、田中貴子(貴園)、石井未紗(愛藍)
猫猫の素性を勝手に誤解して同情したり、訪ねてくる壬氏を見ては大騒ぎする。
猫猫が翡翠宮に入るまで、紅娘と彼女たちのみで玉葉妃の世話のほとんどをまかなっていた。
大人気有名タイトルの陰に隠れた名作アニメ
同クールに大人気有名タイトルが放送
大豊作だった2023年秋アニメ。
各局こぞって大人気有名タイトルを続々投入。
日テレ『葬送のフリーレン』。
TBS『呪術廻戦 懐玉・玉折/渋谷事変 (第2期)』。
NHKでは『進撃の巨人 The Final Season 完結編 』がついに放送。
その10年の歴史に幕を閉じた。
どの作品も放送開始前から話題沸騰。
放送開始後も、その都度盛り上がりをみせた。
2023年は秋以外でもアニメ大豊作の年。
4月にはフジテレビで『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』が放送。
同じくTOKYO MXでは『推しの子』が放送され、主題歌であるYOASOBI「アイドル」と共にトレンドとなっている。
だが大人気有名タイトル頼みにならないのが日本のアニメ界の底力の奥深さ。
『薬屋のひとりごと』も、大人気有名タイトルに頼らない日本アニメ界の底力を示す作品のひとつだ。
(ちなみに個人的には『陰の実力者になりたくて! 2nd season』も推しのひとつ)
古き良き少女マンガを現代風に秀逸アレンジ
本作を最初に観た感想は、1982年放送の名作『ときめきトゥナイト』を観た時とよく似た印象。
ただそれは、『ときめきトゥナイト』のファンタジー要素についてではなく、主人公たちにまつわる秘められた身分について。
本作主人公のひとり壬氏は、物語序盤から宦官らしくない雰囲気がプンプンで「実はプリンス?」感をひしひしと漂わせている。
対する猫猫も、何やらその出生に秘密がありそうな雰囲気。
この二人の関係だが、少女マンガで王道の青春要素がまったくないのも魅力。
猫猫はとにかくクールなマッドサイエンティスト。
この設定の時点で著者採点ではすでに合格。
超絶イケメン壬氏に目をかけられることを逆に煙たがるクールさと、自ら好んで毒を接種したがる狂気のバランスが最高のキャラクター。
毒で悦に入るマッドサイエンティストではあるが、思慮深く常に論理的に淡々と話す理知的なところもあり、大変魅力的な主人公である。
もうひとりの主人公である壬氏も壬氏で、自らイケメンを自覚しているが故に、毛虫を見るような目で自分を見る猫猫に興味津々。
猫猫と壬氏のドSとドMぶりが、どこかホッコリ感じられて観ていて妙に心地良い。
実はあまりよく知らないのだが、昔の少女マンガの主人公って基本は、きっとみんなこんな感じだったのだろうなと思いを馳せる。
後宮という、日本の大奥のような閉鎖的な環境の中にあって、古びた風習にも無用に抗わず上手に渡り歩く猫猫の姿からは学ぶところも多い。
また本作は架空の中華風帝国が舞台だが、細かい礼儀作法はおそらく歴史に倣ったものだろうから、歴史ファンの視点から観ても非常に面白く興味深い。
次回が待ち遠しくてたまらないが、反面このままいつまでも終わってほしくない作品のひとつ。
『薬屋のひとりごと』は、他の大人気有名タイトルと並べてもまったく遜色ない名作だ。
オープニング
エンディング
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