#37
停滞する思考に一石を投じる苦言
声にできない本音を言葉に…
何かと生きづらい世の中で、思ってはいても言葉にできない声がある。
感じていても声にするのが憚られる言葉がある。
それは耳障りが悪く、心地良い言葉ではないのかもしれない。
だが言葉にされて、はじめて気づくこともある。
本稿で取り上げる言葉は、ひとつ間違えれば暴言とも受け取られかねないものだ。
しかし何かを変えるためには、声に、言葉にしてより多くの人に考えてもらうべきだろう。
本稿が停滞する思考覚醒へのキッカケとなることを切に願う。
権藤進(ラジオドラマ「NISSAN あ、安部礼司 ~ BEYOND THE AVERAGE ~」より)
「世代間ギャップ、感じてますか?」
世代間ギャップ、みなさんは、ふだんの生活の中で、感じていますか?
我らが安部礼司は、この世代間ギャップに、いたって無関心、無警戒、無対策。
新人、雨越虹花があきれるくらい……。
しかし、経営企画部部長の権藤進は、違いました。
権藤は、そこをキッチリ、バッチリおさえているのです。
やっぱり同期とは思えない……。
権藤の部下、新人の古巣畑大二郎は、そんな権藤を大尊敬しているのですが……。
権藤に、ある異変が?
ラジオドラマ『NISSAN あ、安部礼司 ~ BEYOND THE AVERAGE ~』第883回「世代間ギャップ、感じていますか?」でのヒトコマ。
知ってたか 安部
言葉っていうのはな
誰かと仲間になるためにも遣うが
誰かを排除するためにも機能するんだ
そのサークルにしか通用しない言葉を遣って
結界を張るのさ
あ、安部礼司です。 コミック 1-3巻セット (主婦と生活社)
2006年にカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した『バベル』という映画がある。
それは「言葉・心が通じない世界における人間」を描いたものだった。
またバベルという名の翻訳会社もある。
いずれも、言葉が通じないために起こるコミュニケーションの難しさを表すものとして「バベル」という言葉を遣っているのだろう。
しかしかつて世界はひとつの言語だったという。
それを様々な言語が存在する、現在の世界に変えるきっかけとなったのが「バベルの塔」である。
旧約聖書の「創世記」に登場する伝説上の高層建築物の通称である「バベルの塔」。
天にも届くような建造物で、神の怒りを買った「人間の驕りの象徴」とされ、今日でも「思い上がった実現不可能な構想」の代名詞となっている。
偽典の「ヨベル書」によれば、神はノアの息子たちに世界の各地を与え、そこに住むよう命じていた。
しかし人々は皆シナルの地に住み、同じ言葉でコミュニケーションし、新技術を用いて天まで届く塔をつくり、シェム※を高く上げ、人間が各地に散るのを免れようと考えた。
神は降臨してこの塔を見「人間は言葉が同じなため、このようなことを始めた。人々の言語を乱し、通じない違う言葉を話させるようにしよう」と言った。
このため人間たちは混乱し、塔の建設をやめ、世界各地へ散らばっていったという…。
「バベルの塔」のエピソードが示すのは、人が同じ言葉を遣うようになると傲慢になるということ。
なるほど、今も昔も人の業というのはどうやら何も変わっていないようである。
ただひとつ変わったことは、かつては名誉や名声を自己顕示の糧としていたのに、今では嫉妬と憎悪が自己顕示の糧となっているという点にある。
SNSで見かける誰かを排除するための言葉は、嫉妬と憎悪に塗れた醜い自己顕示欲そのものではないか。
およそ自分の人生に関係ないであろう人間をよってたかって攻撃しては、矮小な己の溜飲を下げる。
その様相は「沈黙は金、雄弁は銀」といった高尚なものでは当然なく、さながら「誹謗中傷はカネ」の如くである。
扱う言葉は自身を映す鏡だ。
遣う言葉が自身の品性を映し出している。
だが人は言葉に宿る品性も、言葉が刃であることも忘れてしまったようである。
だとしたら、言葉が通じないために起こるコミュニケーションの難しさを感じているくらいが、人が品性を忘れないちょうどいい頃合いなのかもしれない。
※ シェム - ヘブライ語
慣習で「名」と訳されている。
名誉・名声の意味も有る。
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