かたちあるもの / 柴咲コウ (2004年)
名作『世界の中心で、愛をさけぶ』の名曲といえば「瞳をとじて / 平井堅」ではなくこの曲
「かたちあるもの」とは
「かたちあるもの」は、2004年8月11日に発売された柴咲コウの6枚目のシングル。
TBS系ドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年7月2日 - 9月10日放送)の主題歌。
オリコンシングルチャートでは初登場で自身最高位の2位にランクイン。
ドラマのヒットもあってロングヒットとなり、2004年度のオリコン年間シングルランキングで6位になっている。
またオリコンのシングルチャート10位以内に8週連続でランクインした。
これは自身のヒット曲である「月のしずく」の7週連続という記録を上回った。
シングルではRUI名義の「月のしずく」に次いで2番目の売上を記録している。
シングルCDの累計出荷枚数は80万枚。
2004年当時まだ浸透していなかった、携帯電話向けの音楽配信サービス「着うた」で1日のダウンロード数(57,771件)としては、2002年1月のサービス開始以来の最高記録を達成した。
名作『世界の中心で、愛をさけぶ』といえば「瞳をとじて / 平井堅」ではなくこの曲
映画『世界の中心で、愛をさけぶ』主題歌「瞳をとじて」
「瞳をとじて」は2004年4月28日にリリースされた、平井堅氏の20枚目のシングルである。
ベストセラー小説を実写化した映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)の主題歌であり、2004年度のオリコン年間シングルチャートでは1位を獲得する大ヒットとなった。
リリース以降も、絢香さん、Crystal Kay、柴咲コウさんといったアーティストにカバーされている。
「瞳をとじて」のテーマとなっているのは、大切な人を失った悲しみである。
朝目覚める度に
君の抜け殻が横にいる
ぬくもりを感じた
いつもの背中が冷たい
冒頭のフレーズだけでも、愛する人に二度と会えない現実を目の当たりにし、虚しさを感じる主人公の気持ちが伝わってくる。
もう記憶の中でしか会えないから、瞳を閉じて思い出す。
相手を忘れられない苦しさ、失っても変わらない愛おしさが、平井堅氏の切ないボーカルとともに聴く者に届けられる。
映画を観ていれば、作品と曲の内容を結びつけて考える人も多いだろう。
一方で、同じように愛する人を失った経験を持つ人は、自分のことに置き換えて共感するはずだ。
実際に、「瞳をとじて」のMVのコメント欄には、同じように辛い想いを抱えた際に、この曲に励まされたという声が多く見られる。
そして、忘れてはいけないのが、"愛する人との別れ" は普遍的なテーマであることだ。
人間誰しも、別れの苦しみを乗り越えなくてはいけない時が必ずやってくる。
聴いた当初は分からなくても、何年か経って、曲中で歌われている心情を理解できる日が来るはず。
それが、この曲が長く多くの人に愛され続けている理由なのだと思う。
「瞳をとじて」のラストは、このようなフレーズで締めくくられている。
なくしたものを 越える強さを
君がくれたから
君がくれたから
この一筋の光が差し込むような歌詞に救われる人も多いだろう。
痛みに寄り添い、最終的には前を向かせてくれる「瞳をとじて」。
何年経っても、この曲は多くの人の胸に刻まれ、明日を生きる希望となるはずだ。
このように、平井堅氏の「瞳をとじて」は紛う方なき名曲である。
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ドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』主題歌「かたちあるもの」
「かたちあるもの」はドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』の主題歌に起用された。
『世界の中心で、愛をさけぶ』になぞらえれば、男性目線の「瞳をとじて」に対し終始女性目線で展開する本作。
同じ『世界の中心で、愛をさけぶ』という作品の映画版とドラマ版の主題歌で、それぞれの一人称を変えるというのは非常に面白い試みだった。
ただし、『世界の中心で、愛をさけぶ』の世界観で一人称を変えることは、なかなか簡単なことではない。
なぜなら一方は故人目線になるからだ。
最愛の人に先立たれ後に残された側の心情を歌った曲なら数多く存在するが、本作のように最愛の人を残して逝く側の心情を歌う曲はあまりにも数少ない。
事実、著者は「かたちあるもの」以外に知らない。
ではなぜ最愛の人を残して逝く側の心情を歌う曲が少ないのかといえば、その理由はやはり共感を得られにくいからだろう。
故人目線で語られても、経験したことがない人が多数なのだから当然だ。
経験からの共感が得られないから、歌詞には想像力を膨らませ且つ感動を生み出すような物語と、それを語る堪能な語彙力が必須となる。
下手な言葉を紡ごうものなら、途端に学芸会レベルの三文芝居まで成り下がってしまう。
この難題をシンプルな言葉だけを駆使して、見事にクリアしたのが本作の素晴らしい歌詞である。
もしもあなたが寂しい時に
ただそばにいることさえできないけど
失くす傷みを知ったあなたは
ほかの愛を掴める
そう祈っている…
いつかあなたが夜に迷い
ふとあの日を見つめかえすなら
眩しすぎる太陽の中で
微笑む私を思ってね
重ね合わせてゆく「好き」のつよさ
泣くことさえ愛に変えた…
強がる愛の弱さ両手に
抱えてもろい絆を確かめてた
でもこの今(とき)を生きるあなたを
ずっとずっと見守る
my love その心に…
泣きたいときや苦しいときは
私を思いだしてくれればいい
寄り添える場所遠い夏の日
温もり 生きる喜び
全ての心に…。
大好きな人の幸せをそっと見守り続ける恋心。
そんな恋心から垣間見える、見守り続けることしかできない哀しみと悔しさ。
そんな忍ぶ愛の想いを、ストリングスを活かしたドラマティックなミッド・バラードに乗せ熱唱。
張り裂けんばかりの感情的な歌声が、胸に突き刺さってくる。
本作が主題歌となった『世界の中心で、愛をさけぶ』は、最愛の人に先立たれ後に残された側の視点で展開する物語なので、本来ならば「瞳をとじて」の感じ方がたしかに正しい形なのだろう。
だが、「瞳をとじて」の歌詞は個人的には少し綺麗すぎた。
綺麗すぎる言葉は、綺麗すぎるが故に共感しづらい場合がある。
それが未経験の悲恋ともなればなおさらである。
非現実的な事象を非現実的な言葉で表現されても、経験がないが故に実感が伴わない。
だが本作で紡がれたシンプルな言葉は、未経験で非現実的な事象を経験済みの現実的な事象へと脳内変換してくれる。
たとえば最愛の人との死別は未経験でも、最愛の人との別れなら多くの人が経験しているだろう。
「もしもあなたが寂しい時に、ただそばにいることさえできない」
「泣きたいときや苦しいときは私を思いだしてくれればいい」
これらのフレーズは、別れた後も最愛の人を想う気持ちと何ら変わりない。
それを綺麗にまとめられた言葉ではなく、痛々しいほど一途で、抱きしめたくなるほど健気な言葉で紡がれている。
だから本作は響くのだ。
劇場版『世界の中心で、愛をさけぶ』とは違って、おざなりにされがちなドラマ版。
その主題歌も然りで、本作の知名度は「瞳をとじて」の知名度の比にもならないと思う。
どちらの曲も視点が違うだけで、 "愛する人との別れ" という普遍的なテーマを取り上げいることに違いはない。
それでもこの二曲には決定的な差がある。
それは「瞳をとじて」では泣けないが、「かたちあるもの」だと泣いてしまうこと。
これが本作が名曲である何よりの証だ。
だからもし、『世界の中心で、愛をさけぶ』の主題歌は?と問われたならば、迷うことなく「かたちあるもの」と答えるだろう。
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