音楽業界に革命を起こした名機の終焉
AppleがiPodの販売を終了
Appleは2022年5月10日、携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」の現行機種「iPod touch(アイポッド・タッチ)」について、在庫がなくなり次第、販売を終了すると発表した。
iPodは多くの曲を小さな機器にダウンロードし、音楽を簡単に持ち歩けるようにしたことで音楽業界に革命をもたらしたといわれる。
2001年の初代の発売から約20年でその歴史に幕を閉じることになる。
Apple幹部は10日の声明で「iPodは音楽を発見し、聴く方法を再定義した」と意義を強調した。
その上で「iPodの精神は今も生き続け、iPhone(アイフォーン)などのアップル製品に素晴らしい音楽体験が統合されている」と述べた。
音楽の楽しみ方はスマートフォンの普及で大きく変わった。
現在はストリーミング型の定額制音楽配信サービスの会員になり、スマホで音楽を聴くのが主流になっている。
Appleは音楽配信サービス「Apple Music(アップルミュージック)」を展開し、音楽を聴くのに使う端末は多機能のiPhoneに移行しており、iPodはその役割を終えた形になる。
Apple iPod Classic 80GBブラック第6世代ブラックMP3プレーヤーミュージックプレーヤービデオプレーヤー(80GB 6G、ブラック)
衝撃のデビュー
音楽の聴き方を変えた初代iPodの登場
iPodは、かつてAppleが開発・販売していた携帯型デジタル音楽プレイヤーである。
本体に搭載されている記憶装置に数百から数万曲の音楽を保存することができた。
現在、Appleから発売されているiPodはiPod touchのみであるが、在庫限りで販売終了となる。
iPodは光沢のある白または黒、金属的な銀を基調としたシンプルなデザインで、iPodおよび第1、第3世代のiPod nanoの裏面は鏡面加工されたステンレスを用いて高級感を演出している。
最初のiPodは「四角と丸で表す事ができる」デザインで、後の世代やmini、nanoもそれを踏襲している。
大きな液晶画面を備え、その下にはiPodの象徴ともいうべきホイールがある。
このホイールを用いて選曲、音量調整、早送り、巻き戻し、画像・動画閲覧などすべての操作を直感的に行える。
このデザインは、液晶のないshuffleですらホイールとよく似た形のコントロールパッドを備えるほどに一貫していた。
ただし、2014年9月のiPod classic販売終了以降、このデザインを採用しているモデルはない。
touchは従来のiPodとは異なり、表面全体を液晶画面とし、それに触れることで直観的な操作を実現している。
iPodには1G、2G、3Gというように明確な世代が存在する。
なお、これらの数字の後ろにある「G」は、「世代」を意味する英単語である「ジェネレーション」の略である。
日本語においては第1世代などと称されることもある。
iPodへ音楽・動画やそのプレイリスト、写真などを転送するには、iTunesもしくはXPlayなどのアプリケーションを使用する。
開発元のAppleではiTunesを使用することを推奨している。
iPod発表の舞台裏で…
五大レーベルをひとつにまとめたスティーブ・ジョブズの偉業
スティーブ・ジョブズ氏がiPodやiTMSを手がけるまで、音楽業界は「曲をタダで手に入れる」ことのできる音楽関連テクノロジーに酷く侵害されていた。
膨大な数の曲が違法ダウンロードされ、音楽業界にはいっさいの対価が支払われない。
とはいえ合法的なシステムは、楽曲の品揃え、使いやすさ、価格の点などで不満だらけ。
ジョブズが目指したのは魅力的で、使いやすく、品揃えが豊富で、ユーザーが相応な価格なら支払ってもよいと思えるネットストアだった。
ジョブズは五大レーベルと交渉し、ストアの品揃えを一流にした上で、価格も使いやすさも備えた。
結果的に、多くの音楽ファンが正当な対価を払って楽しむ状況を作り出したのだ。
これは快挙だった。
懐疑的な五大レーベルのひとつひとつと粘り強く交渉を重ね、今まで越えることさえ難しかったレーベルの枠を完全に取り払ってしまったのだ。
こんなことは今まで誰にもできなかった。
ジョブズだけが成し遂げた。
今まで無料で手に入っていたものが、急に有料化されれば反発を招きそうなものだが、そうはならなかった。
人々はお金を払い、音楽を楽しむようになったのだ。
我々は現在でもサブスクリプションなどで、この恩恵を受けている。
ジョブズが出来ると信じて行動しなかったら、音楽の楽しみ方は未だ前時代的なものだったかもしれない。
安ければ何でもいいというわけではない良い教訓だろう。
我が家のiPodはまだまだ現役
いまだ現役の我が家のiPod。
主に車載で使用している。
これももうじき使えなくなるのだろう。
iPodはCD世代にとっては、あまりに革新的なアイテムだった。
何せ、CDチェンジャーですら喜んだ世代だ。
それが大量のCDを持ち歩くことなく、好きな曲を一発で頭出しできるのだ。
しかもサイズは驚くほど小さい。
大容量のiPodなら、愛蔵のCDすべてを持ち運ぶことができる。
音楽好きにとって、こんなに嬉しいことはなかった。
あのホイールの操作感も、タッチパネルの登場によって失われ、ついにはiPod自体もなくなってしまうのか。
せっかく苦労して発明した革新的な技術を、さらなる革新的な技術で自ら上書きしていくスティーブ・ジョブズ氏の思想は、Appleに根付いているということか。
iPhoneもいつしか古いものになっていくのだろう。
iPodの終焉は寂しくもあるが、次はどんな驚きが待っているのか楽しみだ。
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