アニメ
天才王子の赤字国家再生術
原作『天才王子の赤字国家再生術〜そうだ、売国しよう〜』
『天才王子の赤字国家再生術〜そうだ、売国しよう〜』は鳥羽徹先生によるライトノベル作品。
イラストはファルまろ氏。
GA文庫(SBクリエイティブ)より2018年5月から刊行開始。
「このライトノベルがすごい!」の2019年度版では、新作部門において4位(総合14位)。
2020年2月時点でシリーズ累計発行部数は25万部を突破している。
メディアミックスとして、えむだの作画によるコミカライズ『そうだ、売国しよう 〜天才王子の赤字国家再生術〜』がマンガUP!にて2019年10月から連載中であるほか、『天才王子の赤字国家再生術』のタイトルで、2022年1月から3月までテレビアニメが放映された。
天才王子の赤字国家再生術10 ~そうだ、売国しよう~ (GA文庫)
アニメ『天才王子の赤字国家再生術』
鳥羽徹先生によるライトノベル作品『天才王子の赤字国家再生術〜そうだ、売国しよう〜』を原作としたアニメ作品。
『天才王子の赤字国家再生術』のタイトルで2022年1月から3月までAT-Xほかにて放送された。
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あらすじ
ナトラ王国の王子ウェインは弱冠16歳だが、父王の急病によって急遽、摂政として国政を任されることになった。
ナトラは北方の小国で、資源もなく、経済的にも軍事的にも弱小。
何か改善しようとしても、その資金も人材もないという八方塞がりの状況であった。
ウェインは「次代の名君」として将来を嘱望され、臣下や国民からも敬愛される存在だが、実は「大の怠け者」であり、聡明であるがゆえに自国の状況をよく理解しており、あわよくば他国に国を売り払ってしまい悠々自適の隠居生活を企んでいた。
そんな折、覇権国家・アースワルド帝国の皇帝も病に倒れ、さらに後継者を指名しないまま急死してしまう。
大陸東側に混乱が広がる中、ウェインが国を売ろうとして仕掛けた策謀はすべて思いがけない方に転び、その結果、本人は望んでいない成功を収め続け、稀代の名君として国の内外に声望を高めていくことになる。
ウェインはいずれ帝国が大陸西側に侵攻する際にナトラが橋頭堡になることを見越し、それを利用した交渉によって帝国の軍事援助を取り付け、やがて帝国に穏当に併呑されることを望む。
ところが皇帝が急死したため、外形的には帝国を騙してタダで援助を取り付け、軍事力を強化したような形となってしまう。
さらに帝国の後ろ盾が無くなってしまったために西側に属する隣国マーデンの侵攻を招く。
ウェインは現状の情勢を見越して、これを適当に退けたいだけであったが、状況はウェインの予想の上を行き、マーデンの金鉱を奪ってしまう。
そして兵5000で金鉱に籠城し、マーデンの大軍3万を迎え撃つ状況に追い込まれる。
同じ頃、帝国では3人の皇子による激しい後継者争いが依然として続き、帝国の混乱を突いて独立や失地回復しようとする諸地域の思惑など、東側地域は不安定な状態にあった。
そんな折、ウェインは突如、帝国皇女との縁談が決まってしまう。
一国の王子と言えど、明らかな国力差のある不釣合いな縁談は、帝国の状況を見れば明らかに大国の政争に巻き込まれること必定であり、ウェインは何とかして断ろうとする。
しかし、事前視察としてやってきた第2皇女ロウェルミナは、実はウェインが帝国留学中に出会った学友ロワであった。
男勝りで野心家のロウェルミナなら何か狙いがあるはずだと、ウェインは思考を巡らす。
何とか縁談を断ったウェインだが、ナトラに大陸西側の大国で、先の出来事によりマーデンを併呑して国境が接することになったカバリヌより、西側に強い影響力を持つレベティア教の一大行事「聖霊祭」参加の誘いの使者がやってくる。
形式的にはレベティア教の選聖候になる資格を持つウェインは、宗教を利用して断絶していた西側諸国との交友関係を回復しようとする。
そのためにカバリヌの首都に赴く途中、旧マーデン領で謎の勢力に襲撃される。
その危機を、マーデンの再興を目指すマーデン解放軍に助けられたウェインは、彼らの頼みを受け、そのメンバーであるゼノを連れてカバリヌ首都に到着する。
そこでウェインはカバリヌ王の狙いがウェインを選聖候にすることだと知り、癖のある他の選聖候たちと外交戦を繰り広げることとなる。
その頃帝国は未だ3人の皇子達が互いに帝位継承を争い決着がつかずにいた。
状況打開のため、ロウェルミナの計らいにより皇子達による会談が帝国の商都ミールタースで開かれることとなる。
彼女から招待を受けるも多忙を理由に行きたくないウェインであったが、兄を手助けしたい妹フラーニャが名乗りをあげ、彼女が訪問することになる。
3人の皇子とロウェルミナの思惑が交差する中、フラーニャの身にも危機が迫っていく。
何とか危機を脱したウェイン一行。
ミールタースの活躍によって広く諸国にもウェインの名が広まる。
この結果、レベティア教の古の巡礼の道としてナトラが再び着目され、巡礼者の落とす金や、西側への産業品の輸出によって国は好景気に湧く。
一方、属領となったマーデン領もゼノヴィアの下、発展著しく、国内のパワーバランスを調整するため、ウェインはグリュエール王が治める西側の大国ソルジェスト王国と手を結ぶことを画策する。
折しも、グリュエールから招待を受け、意気揚々とソルジェストへ向かうウェインであったが、戦を至高とするグリュエールの狙いはウェインを倒すことであった。
舞台設定
物語の舞台となるヴーノ大陸は中世ヨーロッパ的な文化風俗の世界であり、大陸中央を縦に険しい山脈(巨人の背骨)が走り、大まかに東側と西側に分かれる。
東側はカリスマ性のある皇帝の一代によってアースワルド帝国が急速に台頭し、その軍事力を基に侵略による併呑や属国化などで東側をほぼ統一している。
一方西側は大宗教・レベティア教の権威が強く、絶大な権力を持つ選聖候と呼ばれる7人を中心にまとまっている。
東側と西側は文化や価値観に違いがあって対立関係にあり、互いが互いにいずれ自分たちの影響下において大陸を統一したいと考えている(作中では特に人種の扱いの差が明示され、西側はフラム人を家畜同然に扱うのに対し帝国は多様な人種人材が集まる国となっている)。
主人公の国・ナトラ王国は大陸東西のほぼ中央、最北端に位置する小国で、東側に属する。
歴史は大陸でも有数の長さを誇るが、その立地上、春は短く冬は長いという気候で、さらに国土の大半は荒野である。
資源もなく、これといった産業もなく、主要交易路から外れているため経済的にも恵まれていない。
それゆえ旨味がなく隣国から侵略されることもなかったが、逆に言えば長く戦争経験もないため、軍事力も貧弱である。
しかしながら、歴代の王は名君が多く、近隣諸国とは友好関係に努め、東側諸国の一員として帝国とも(事実上の属国とはいえ)友好関係にあり、物語開始時点では帝国の駐留軍がいる。
また、交易路としては廃れたが、山脈を超える西側への数少ない交路がある。
物語開始時点では、帝国はほぼ東側を統一し、数年の内に西側への侵攻を開始する状況であった。
しかし、カリスマ性のある現皇帝が後継者を指名せずに急死したために、帝国は政治的混乱状況に陥り、それが東側全域に波及し、かつて帝国に侵略された国や地域が独立や失地回復を狙うなど戦乱の兆しがある。
登場人物
ウェイン・サレマ・アルバレスト
声 - 斉藤壮馬
本作の主人公で、ナトラ王太子。
父・ナトラ王が病に伏し、急遽、摂政として国政に携わることとなる。
臣下や国民からは聡明な王子と見られており、実際に政治、戦術、剣術と天才的で能力は問題ないが、本性は怠け者であり、また聡明であるがゆえに悲観的な性分で、ナトラが弱小国であることを誰よりも痛感しているがゆえに、国を売って悠々自適の隠居生活をしたいと考えている。
しかし、そのために取る行動がことごとく想定外の成果を上げ、ますます名君として国の内外から評価され、恐れられていく。
かつて、アースワルド帝国にいるフラム人の高官を頼り、王太子としての身分を隠して帝国の士官学校に2年ほど留学していたことがある。
その際は全科目で首席を取っていたほど優秀だったが、後に帝国もウェインの正体に気づいたため、その記録は全て抹消されている。
留学時の経験もあり帝国に対して嫌悪感は持っておらず、むしろ積極的に帝国に協力することでより有利な条件で吸収合併されることを狙っていた。
基本的に穏やかな性格であるように振る舞うが、唯一例外的にフラム人、特にニニムがその血筋において差別や侮辱された場合は激しい怒りを見せ、カバリヌ王を惨殺するように、普段のリスクの低い穏健な対応とは異なる激しい行動に出る。
ニニム・ラーレイ
声 - 高橋李依
本作のメインヒロインで、ウェインの幼馴染で補佐官。
大陸で差別を受けているフラム人で、フラム人の特徴である透き通るような白い髪と燃えるような赤い瞳が特徴の美少女。
ウェインにこそ及ばないものの非常に聡明であり、彼の怠惰な本性を知る数少ない人物。
そのために、良い方向に誤解されやすいウェインの内心を正確に熟知しており、仕事が滞りなく捗るよう時にウェインに厳しく接する。
ナトラのフラム人は、その才の高さからナトラ王家から代々手厚く保護を受けている。
王の側近となるものが一族の長となる決まりがあり、ウェインの側近として次期族長になることが決まっている。
最後までずっと楽しんで観ていられたコメディアニメ
本作には政治的な駆け引きが多々描かれている。
多々というよりほぼ全編に渡って政治的な駆け引きが行われている。
一般的に政治的な駆け引きと聞くと、ドロドロとした政争を思い浮かべるが、本作にそのイメージはない。
本作を少しも嫌な気分にならないで観ることができたのは、頭はいいのにモノローグがちょっとおバカな王子様の存在のおかげだろうと思う。
頭は良いのにモノローグがちょっとおバカな王子様
『天才王子の赤字国家再生術』のタイトルに違わず、主人公の王子様はたしかに頭が良い。
頭は良いのだが、モノローグが若干おバカ。
駆け引きが大好きで、駆け引きしてはいつも相手の出方を予想するのだが、そのことごとくを見事に外してしまう。
それも悪い方にではなく、考え得る最高の形で何故か落ち着いてしまうのだ。
これでは駆け引きが上手なのか下手なのかがまったくわからない。
だが、これがまた面白くて仕方ないのだ。
もしかしたら現実でも頭の良すぎる人ってこうなのか?
そんな風に想像してみるのもまた面白い。
展開が少しだけ駆け足すぎるか?
原作を読んでいないから何とも言えないが、物語の展開が少しだけ駆け足だったように感じる。
だからといってそこに不都合はないのだが、もう少しじっくりと描いていたらと思うと、少しもったいない気もする。
続編は未定か?
アニメ『天才王子の赤字国家再生術』は、まだ物語は半ばであるが、一応完結している。
これはもしかしたら続編が未定なのではないだろうか。
続編が決定している作品では、話数が延びるおかげで物語をしっかりと描くことができる。
だから続編が決まっていない本作では、物語の展開が駆け足だったのだろう。
続編が未定の場合、仮にそこで終わってしまっても不都合がないように、とりあえずではあるが切りがいいところで終わらせなければならない。
本作はまさにそれで、続編があってもなくても大丈夫なように終わらせてある。
あまり人気がなかったのか何なのか理由はわからないが、本作が好きな人間にとっては続編に希望が持ちづらい締め方である。
ここまで気楽に観ることができるアニメというのもなかなかないから、願わくば続編を期待する。
できれば続きが観てみたい。
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