新海誠監督作品
天気の子
『天気の子』とは
『天気の子』(英: Weathering With You)は、新海誠氏が監督・脚本を務める、2019年の日本アニメーション映画。
醍醐虎汰朗氏が主人公の森嶋帆高を、森七菜さんがヒロインの天野陽菜の声を演じる。
離島から東京に家出してきた少年・帆高と、“祈るだけで晴れにできる“ 力を持つ少女・陽菜が出会い、運命に翻弄されながらも自らの生き方を「選択」していく物語。
2019年7月19日に東宝の配給により公開されると、日本での興行収入は141.9億円(日本映画で12位)を記録した。
第43回日本アカデミー賞では最優秀アニメーション作品賞と最優秀音楽賞を受賞。
日本では、2019年(令和元年)7月19日に全国公開され、7月20日から21日の観客動員数で初登場1位となった。
最初の3日間で動員数は115万9020人、興行収入は16億4380万9400円に達し、前作の『君の名は。』対比128.6パーセントを記録した。
週末の全国映画動員ランキングで3週連続で1位を獲得した。
公開から8月21日までの34日間の興行収入が100億円を突破し、2作連続100億円を突破するのは日本の映画監督では宮崎駿氏に続く2人目の達成となった(通算2作なら本広克行を加えて3人目)。
公開から10月1日までの75日間の観客動員数が1000万人を突破した。
10月21日までには、累計観客動員数は1027万人を超え、興行収入は137億円を突破し、日本で公開された映画で歴代興収は12位となった。
さらに11月11日までに累計観客動員数は1042万人を超え、興行収入は139億円を突破している。
2020年1月28日に日本映画製作者連盟より2019年の映画興行収入が発表され、本作が2020年1月の時点で140億6000万円で邦画・洋画通じてトップとなったことがわかった。
海外でも公開され、『君の名は。』の公開規模を上回る140の国と地域で公開される。
8月8日に公開された香港と9月12日に公開された台湾では、初週の興行収入で1位となった。
インドでは本作の劇場公開を希望する5万人以上の署名が集まり、その署名に応える形で劇場公開が決定。
インドでオリジナルの日本のアニメーション映画が公開されるのは初となった。
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あらすじ
2021年(令和3年)6月。
神津島で暮らす高校1年生、森嶋帆高(もりしまほだか)は家出し、フェリー「さるびあ丸」で東京にやって来た。
ネットカフェで暮らすが、アルバイトにも就けないまま所持金ばかり減っていき、フェリーで知り合ったライターの須賀圭介(すがけいすけ)の元を訪ねる。
圭介は姪の夏美(なつみ)と2人で雑誌に記事を寄稿する零細編集プロダクションを営んでいた。
帆高は住み込み・食事付きの条件に惹かれ、そこで働き始める。
その夏の関東地方は、異常気象により長期間にわたって雨の日が続いており、その中、一時的な晴天を呼ぶ「100%の晴れ女」の都市伝説が流れていた。
帆高はある事件で天野陽菜(あまのひな)という少女と出会う。
彼女こそが「晴れ女」であり、祈ることで短時間、局地的だが確実に雲の晴れ間を作る能力を持っていた。
陽菜は小学生の弟・凪(なぎ)と暮らしており、2人が経済的に困っている様子をみた帆高は、晴れ女の能力で商売をすることを提案し、依頼用ウェブサイトを作成した。
「晴れ女」のサービスは次第に評判を呼び、順調に仕事を増やしていった。
しかし、神宮外苑花火大会を晴れにする姿がテレビに映ってしまい依頼が殺到したため、やむなく休業することにした。
帆高には家族により捜索願が提出されていたことと、陽菜と出会った時の事件での拳銃の発砲が警察に知られたことから、圭介のもとに刑事が捜査に訪れた。
これを機に帆高は圭介から退職金を渡されて事務所を追い出されてしまった。
それとほぼ同時に、子供2人だけの天野家に児童相談所が介入することが重なったため、互いが引き離されることを恐れた陽菜と凪とともに、帆高は3人で逃げ出した。
逃避行中に異常気象が進み、夏でありながら雪が降っていた。
3人はラブホテルに泊まり、インスタント食品やカラオケで一夜を過ごす。
一方で能力の代償としてなのか、陽菜の身体は薄く透明になり始めていた。
そして「天気の巫女が人柱として犠牲になる」という伝承のとおり、夜が明ける前に陽菜の身体は消失してしまった。
翌朝、ホテルの部屋に警察が踏み込み、凪は児童相談所へ、帆高は警察署へと送られるが、2人ともそれぞれ脱走し、陽菜が「晴れ女」としての能力を得た代々木の廃ビルへ向かう。
一方、東京は数か月ぶりの晴れとなった。
警察が追跡している中、夏美、圭介、凪の3人の助けで廃ビル屋上の神社にたどり着いた帆高が祈りながら鳥居をくぐると、彼の身体は遥か上空へとワープし、積乱雲の上に囚われていた陽菜を救い出すことに成功した。
2人が神社の場所に戻されると同時に再び雨雲が東京を覆った。
帆高は再逮捕された後、高校卒業までの期間の保護観察処分を受け、神津島に戻された。
陽菜救出後に降り始めた雨は2年半の間、止むことなく続き、東京の荒川、江戸川下流域の広範囲が徐々に水没していった。
2024年(令和6年)の春、帆高は大学進学を機に東京本土へと再び渡り、陽菜と再会を果たしたのだった。
前作『君の名は。』関連の人物が登場
前作『君の名は。』のラストで、瀧と三葉が再会したのは2022年以降だが、本作で東京の連続降雨が始まったのは2021年の初夏からである。
よって、前作の瀧と三葉が再会した場面で空が晴れていたことは本作の世界線とは矛盾する。
なお、前作『君の名は。』にも前々作『言の葉の庭』のキャラクターが登場しているが、こちらでも2作品の設定が矛盾する形となっている。
なお、『君の名は。』の人物を登場させた理由として、新海監督は「個人的に、再会する前の瀧と三葉の姿を見てみたかったという気持ちもあります」と答えている。
立花瀧
声 - 神木隆之介
冨美の孫。
前作『君の名は。』の主人公。
お盆で祖母の冨美宅に遊びに来ていた折、「晴れ女」サービスで冨美宅に訪れていた帆高たちと遭遇した。
その際、帆高に対し、陽菜へ誕生日プレゼントを贈るように提案した。
宮水三葉
声 - 上白石萌音
ルミネ新宿2内のジュエリーショップの女性販売員。
前作『君の名は。』のヒロイン。
帆高に陽菜の誕生日プレゼント用の指輪を販売した。
その際、陽菜との仲が上手く行くよう帆高にエールを送った。
勅使河原克彦
声 - 成田凌
三葉の高校時代の同級生。
帆高と陽菜が初めて「晴れ女」サービスを行った際の台場のフリーマーケットのシーンに登場した。
早耶香と観覧車に同乗中、陽菜が天気を晴れにする様子を目撃し、「すーげぇ」と感嘆の声を上げた。
名取早耶香
声 - 悠木碧
三葉の高校時代の同級生。
帆高と陽菜が初めて「晴れ女」サービスを行った際の台場のフリーマーケットのシーンに登場した。
克彦と観覧車に同乗中、陽菜が天気を晴れにする様子を目撃し、「わー、きれい」と感嘆の声を上げた。
宮水四葉
声 - 谷花音
三葉の妹。
高校3年生。
陽菜の消失の後、東京に晴れが戻るシーンにて、学校のベランダから級友2人と空を見上げ、「なんか、涙出るね」と発言した。
音楽
『君の名は。』に引き続きRADWIMPSが音楽を担当しているが、ボーカルの野田洋次郎氏は前作以上にストーリー展開を決める話し合いにも参加しており、音楽監督としての職務も担っている。
2019年7月19日に、本作で使用されている27曲の劇伴と5曲の主題歌を収録したRADWIMPSのアルバム『天気の子』が発売された。
ただし、映画本編の制作がアルバム完成以降も続いたため、一部楽曲において変更点がみられる。
マスタリングを担当したボブ・ラドウィックはこのアルバムについて「最も美しく、クリエイティブなRADWIMPSのアルバムだった」と述べている。
- 「愛にできることはまだあるかい」
掃晴娘伝説
『天気の子』のストーリーとキャラクターは、てるてる坊主の原型という説がある掃晴娘伝説としばしば関連付けられている。
掃晴娘は北京に住む美しい少女で、都が大雨で洪水になった時、空に向かって晴天を祈っていた。
すると空から龍神の声がし、掃晴娘が妃となることと引き換えに、雨を止ませると言った。
掃晴娘はこれを承諾し、地上から跡形もなく姿を消すと、実際に雨が止んだ。
民俗学者の畑中章宏氏は、天野陽菜が祈りを行う際にてるてる坊主が出てくることに着目し、陽菜のモデルの一つは掃晴娘ではないかという考えを述べている。
ニュースサイト「香港01」は、
『天気の子』の隠されたメッセージとイースター・エッグの一つに、掃晴娘伝説を挙げ、元々の伝説と異なり、本作では掃晴娘にあたる陽菜が地上に帰還したため、東京が水没した。
と、指摘している。
アニメ飯が実際に商品化
作中でポテトチップスを砕いて炒めた炒飯や、チキンラーメンを砕いてかけたサラダが振る舞われるシーンがあり、SNS上でそのレシピが話題になった。
日清食品は後者をヒントにし、サラダ用のチキンラーメンを2020年8月より実際に商品化している。
新海誠監督の新しいチャレンジ
前作『君の名は。』でひとつの新海誠ワールドは完結か?
前作『君の名は。』までの新海誠作品といえば、すべてに大きな共通項が存在していた。
ともすれば、中二病かと思われても仕方ない主人公とヒロインの設定。
主人公とヒロインの時間的、物理的な距離のズレ。
※唯一例外っぽい『言の葉の庭』だが、年齢と地位のズレが存在していた。
このふたつは『君の名は。』までの新海誠作品において、一貫して共通しているテーマであった。
それが『君の名は。』では、すべてが完璧な形で結実した。
興行的にも大成功をおさめ、『君の名は。』は新海誠監督の代表作となった。
さらにこれからどんな世界をみせてくれるのか?と多くの人に期待され、満を持して発表されたのが本作『天気の子』であった。
しかし本作の作風は新海誠監督のこれまでを踏襲したものとは少し違っていた。
本作は新たな新海誠ワールドを期待される、新しい作風の作品だったのである。
新しい作風へのチャレンジ作品か?
本作の舞台や世界観については、一応過去作を踏襲しているようだ。
新海誠監督の世界観といえば以下のことが挙げられる。
代表的なものといえば、こんなところだろうか。
上の4つまでは前作『君の名は。』からも、きっちり踏襲されている。
しかし下の2つについては怪しいものだ。
完全に無いとは言えないが、あるとも言い切れない。
そのことで前作までの伝統だった作風を捨て去ってしまった印象を受けた。
まず主人公とヒロインの劇的なすれ違いが、明確に確認できない。
これは前作『君の名は。』でもメインとなった要素だが、本作ではそれが感じられない。
主人公たちの恋愛要素も、過去作の中二病感は鳴りを潜めてしまっている。
中二病感の無さというのは、裏を返せばありがちな設定と言い換えられる。
要するに、アイデンティティを失ったということだ。
おまけに現代を舞台としていながらも、より強くなったファンタジー要素。
これには正直戸惑った。
そのため現実とファンタジーの垣根が曖昧で、物語の本質が上手く掴めなかった。
さらには主人公が警察沙汰を起こした際に、舞台のメインが現実世界なのかファンタジー世界なのかを完全に見失った感がある。
おかげでどういう視点で視聴したらいいのかも、同時に見失ってしまった。
結果、著者の本作への評価は前作『君の名は。』を上回ることはなかった。
しかし世界観や視点を見失うことは、戸惑いでもあるが不思議な感覚でもあった。
この要素は今までの新海誠作品にはなかったものだ。
そしてそれは次作へ繋がる大きな収穫とも考えられる。
思い起こせば『君の名は。』が成功をおさめるまでに、何作品も試行錯誤してきている。
もしかしたら本作は、そんな試行錯誤の第一歩ではないだろうか。
新しい作風へのチャレンジの第一歩。
後に本作はそういう位置付けになる。
そんな気がする。
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