洋画の派手さこそないがどうしようもなく心にしみる…
それこそ邦画の最大の魅力
洋画の派手さこそないがどうしようもなく心にしみる…
それが邦画の良さだと思う。
昔は当たり前のように洋画一択だったが、近年の邦画はなかなかバカにできない。
製作費でハリウッドに勝てないならシナリオと演出と演技で勝負といわんばかりに、邦画のクオリティーは年々高くなっている。
たしかにハリウッド映画は華やかで見栄えもするが、どうしても大味になってしまっているように感じる。
演出的にはどうしても地味な邦画ではあるが、シナリオ的に感性が合うのはやはり制作者が同じ日本人だからだろうか。
もちろん作品によるが、邦画には洋画のクライマックス的派手な見せ場がほとんどない。
ドッカンドッカン爆破しないし、ガガガガ派手な銃撃戦もない。
カッコいい戦闘機も、イカツイ戦車も邦画とは無縁に近い。
だが、最近そんな邦画が観ていてとても心地よい。
ガチャガチャとうるさいだけの映画は苦手だ。
時には深く考えさせられ、じわじわ心にしみてくる映画を好むようになってからというもの、邦画が面白くて仕方ない。
日本人ならではの感性で演出し魅せていくのが邦画だ。
ここではまったく派手ではないけれど、どうしようもなく心にしみて今なお強く記憶に残っている邦画をご紹介したいと思う。
UDON
『UDON』とは
『UDON』(うどん)は、2006年8月26日公開された映画である。
監督は『踊る大捜査線』を撮影した本広克行氏、主演はユースケ・サンタマリア氏と小西真奈美さん。
映画の題材はタイトル通り「うどん」(讃岐うどん)。
興行収入は13.6億円(日本映画製作者連盟による)。
香川県を舞台とした映画で、撮影もほとんどが香川県で行われている。
同じく本広監督が香川県で撮影した映画には『サマータイムマシン・ブルース』などがある。
あらすじ
松井香助は「世界中を笑わせるコメディアンになる」と意気込んで、製麺所を営む実家を飛び出しニューヨークへ旅立つが、鳴かず飛ばずで借金を背負ったまま挫折してしまう。
香川に戻った香助を友人たちは暖かく迎えたが父・拓富は冷たく突き放す。
母親の墓参りに行く途中、車がガス欠したため、深い山奥の中途方に暮れる香助は、同じく道に迷っていたタウン誌の編集者・宮川恭子と出会う。
紆余曲折しながらも恭子と山奥を抜け出した香助は、鈴木庄介の紹介で恭子も働いているタウン誌に就職する。
タウン情報誌の売上げを伸ばすため、香助は地元の人間でも知らないうどんを取り上げたコラム記事を企画する。
うどんを取り上げたそのコラムは反響を呼び、うどんブームを巻き起こす。
だがその一方で香助と拓富の溝は深まったままであり、結局和解することなく死別してしまうのであった…。
ご当地グルメごり推しのコメディ人情映画
讃岐うどんブーム
1980年代末頃から、香川県のタウン情報誌「月刊タウン情報かがわ(TJかがわ)」で連載された個性的なうどん店の紹介企画「ゲリラうどん通ごっこ」が評判となる。
県内で「うどん屋探訪」がレジャーとして盛んになり、味に加えて個性的な店自体を楽しむ客が大きく増えた。
1988年には瀬戸大橋の開通が好影響を及ぼし、加ト吉「冷凍讃岐うどん」の売上が急増。
まず、在京テレビ局のグルメ番組で、1992年頃から武田鉄矢氏や吉村明宏氏といったタレントと穴場うどん店を巡る番組が放送され始め、それは一過性のものに終わることなく引き続いていく。
近隣の地方局でも情報番組などで穴場うどん店紹介を頻繁に取り上げる。
やがて90年代後半には料理対決番組でのうどんVSそば、テレビ東京『TVチャンピオン』での「讃岐うどん王選手権」の定期開催など、うどんと穴場うどん店にまつわる露出が加速していった。
また出版物においては1993年に上記連載の単行本「恐るべきさぬきうどん」がホットカプセル(TJかがわ出版元)から県下で発売、後に新潮社から全国発売される。
これは何巻にも渡って刊を重ねた。
並行して、雑誌「レタスクラブ」「DIME」「Hanako」「AERA」などへの寄稿・アドバイスを精力的に行う。
これらの書籍・記事に触発されたうどん遠征記なども書籍化された。
広告プランナー・佐藤尚之氏の「うまひゃひゃさぬきうどん」(1998年)もその初期の一つである。
1998年の明石海峡大橋の開通により、京阪神方面と香川県が高速道路で直結した。
上記の動きとあいまって、県外からもうどん屋巡りを目的とする観光スタイルが広がっていった。
また同時期を通じて、香川県のうどん生産量は倍増し、田舎の「穴場店」に観光客が行列を作る光景が見られるようになった。
そして2006年に、映画『UDON』が公開される。
ご当地グルメごり推し
前述した香川県のタウン情報誌「月刊タウン情報かがわ(TJかがわ)」が、本作の元ネタかと思われる。
劇中でもタウン情報誌の制作により讃岐うどんがブームとなり、「うどん屋探訪」がレジャー化している。
とにかく、UDONうどんウドンの一点張り。
見方によっては滑稽とも受け取れなくないほどご当地グルメのごり押しではあるが、香川の素晴らしい景観が良いスパイスとなり、なんとも言えないのどかな雰囲気を醸し出している。
コメディ人情映画
本作はコメディの要素が非常に強い。
讃岐うどんというテーマにシリアス展開が不釣り合いなことも理由ではあるが、人情話としてもなかなかどうして優秀だ。
それもこれも、主演のひとりであるユースケ・サンタマリア氏のキャラクターに依るところが大きい。
氏のキャラは、シリアスな展開の中にもどこかほっこりするコメディのような人情を感じさせてくれる。
感動…とまではいえなくても、心にじんわり沁みてくるのだ。
もちろん、もうひとりの主演・小西真奈美さんの好演も見逃せない。
何かとささくれ立ってしまう今だから観たい作品
何かと心落ち着かない昨今の世相。
政治はグダグダ。
ニュースをみれば、犯罪は凶悪化。
三面記事からは、日本人のモラルの著しい低下ぶりを否が応でも突きつけられる。
心はささくれ立ち、荒んでいく一方だ。
そんな時代だからこそ、本作のようなヤマ場のない映画が改めて見直されるべきではないだろうか。
呑気に、のほほんと、心穏やかに楽しめる娯楽。
本作はそんな邦画の魅力を存分に楽しめる作品である。
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