映画
告白
『告白』とは
『告白』は、湊かなえ先生による小説。
第一章「聖職者」が小説推理新人賞を受賞した、作者・湊かなえさんのデビュー作。
2008年度の週刊文春ミステリーベスト10で第1位に、このミステリーがすごい!で第4位にランクイン。
2009年には本屋大賞を受賞。
2010年8月に発売された双葉文庫版は2010年9月13日付のオリコン "本" ランキング文庫部門で歴代1位となり、2010年11月時点で累積売上は210万部を突破した。
累積売上は2013年8月時点で254.4万部を超えている。
2022年10月時点で文庫版の部数が300万部を突破している。
監督中島哲也氏、主演松たか子さんにより映画化され、2010年6月に公開された。
映画『告白』とは
映画『告白』は、2010年の映画。
湊かなえ先生による同名のベストセラー小説の映画化作品である。
2010年6月5日に配給東宝で公開された。
娘を殺された中学校教師が生徒を相手に真相に迫っていくミステリー映画。
少年犯罪や家庭内暴力、イジメなど、過激な内容や描写で映倫からR15+指定を受けた。
そのため、設定の関係上キャストには15歳未満の者も多くおり、該当者は公開後自分が出演した本作を見ることができなかった。
第34回日本アカデミー賞では4冠を達成し、2010年度に日本で公開された日本映画の興行収入成績で第7位になるなど興行的にも成功した。
また、映画の脚本を元にしたコミック版も発売された。
あらすじ
とある中学校の1年B組、終業式後の雑然としたホームルームで、教壇に立つ担任の森口悠子が静かに語り出す。
「わたしは、シングルマザーです。わたしの娘は、死にました。警察は、事故死と判断しました。でも事故死ではありません。このクラスの生徒に殺されたんです。」
森口は、妊娠後に娘の父親のHIV感染が判明したことで結婚しなかったと語り、娘を殺した犯人は2人いるが名前は明かさず少年A・少年Bと述べ、少年Aが電気ショックによって娘を気絶させたこと、居合わせた少年Bが気絶した娘をプールへ投げ入れ殺害したこと、その事実を警察へ伝えて蒸し返す気はないことなどを語る。
名前は伏せられていたが、生徒達には少年Aは渡辺修哉、少年Bは下村直樹であることは明らかだった。
森口は、先ほど犯人である2人の給食の牛乳の中に娘の父親の血液を入れた、HIVに感染するかどうかは運次第、2人には「命」をしっかりと噛み締めてほしいと告げると教室は騒然となった。
修哉は以前、工作で作った財布防犯用の電気ショック装置を担任の森口が認めてくれなかったことに不満を持ち逆恨みしており、そのために森口の娘を標的としたのだった。
森口に真相を問われた際にはあっさり犯行を認め、窓から飛び降りる振りをしてから「なーんてね」と笑い、悪びれない素振りを見せていた。
森口が去った新年度からは、クラスのいじめの標的となった。
直樹は、不良に絡まれて交番に逃げ込んだ際、学校から迎えに来たのが担任の森口ではなく、他の男性教師だったことで、それまで好感を持っていた森口を恨むようになっていた。
しかし、森口が迎えにいかなかったのは、学校でかつて起こったトラブルが原因で、そのような場合には生徒と同性の教師が足を運ぶというルールがあったからで、直樹はそのことを知らず、森口には非はなかった。
修哉は自分の制作した発明品を展示するサイトを作り、それがいずれ母の目にとまることを期待していた。
自分を捨てて学問の道に戻った母親の気を惹くことだけが修哉の生きる希望だった。
殺人を企てるようになったのは、自分の作品が賞をもらったことよりも、家族を毒殺した「ルナシー」と名乗る少女の事件の方が世間に注目されたことで、大きな事件を起こせば、世間、ひいては母の関心を惹けると考えたことが始まりだった。
北原美月は修哉に好意を抱いており、クラスで唯一いじめに加担せず、修哉と行動を共にしていたが、修哉は「ルナシー」を信奉している美月を内心では軽蔑し見下していた。
直樹は牛乳の件によって精神に変調を来し引きこもってしまう。
新年度から森口に代わって担任となった熱血教師・寺田がクラスメイトの美月を引き連れて頻繁に自宅を訪問することで、一層直樹とその母を追い詰める。
母は直樹を溺愛しており、かつて森口が訪問して、娘をプールへ投げ入れたのは直樹だと伝えた際にも、ひたすら直樹だけを憐れむ態度を見せていた。
直樹が、森口の娘は電気ショックでは死んでおらず、目を覚ました後に自分がプールへ投げ入れ故意に殺害したことを話すと、母は直樹との心中を決意する。
母は包丁を直樹に突き立てるが傷は浅く、逆に直樹が包丁を奪い母を刺殺する。
直樹の事件で、寺田とともに警察の事情聴取を受けた美月は、寺田が直樹を追い詰めた、悪いのは寺田だと糾弾する。
寺田と森口がファミレスで同席しているのを偶然見かけた美月は、寺田が退店した後、森口の席を訪れると、修哉は母に捨てられた哀れな境遇で母の気を惹きたくて必死であり、悪く思わないで欲しいと訴える。
森口は、寺田が休職すること、相談を受けるふりをして意図的に寺田をけしかけ直樹とその母を追い詰めていたこと、修哉を許すつもりはないことを告げる。
美月と別れた森口は、あまりのくだらない衝撃とファミレスで見た仲睦まじい家族に自分を重ね、思わず号泣し道端に伏せるも、「ばかばかしい」という言葉と同時にピタリと泣くのを辞めて帰路に着く。
修哉のサイトに母の名前で連絡先と研究室の所在が書き込まれ、修哉は嬉々として「発明品」の数々を抱えて大学を訪ねるが、母は新たな夫との新婚旅行中で不在で、さらには妊娠中であることを知る。
自暴自棄となった修哉は、心にもないことを綴ってまんまと賞をもらった「命」についての作文を体育館で発表することになっている終業式の日に、爆弾で自分もろとも講堂を爆破し生徒・教師を道連れにすることを計画する。
唯一の理解者だった美月をも殺害し、一連の犯行の告白と、終業式での犯行を予告する動画をサイトにアップする。
終業式、修哉は舞台上で作文を読み終え、喝采を浴びながら満足気な表情で起爆するための携帯電話のボタンを押すが、何も起こらない。
慌てて演台の下を確認すると、前夜に設置したはずの爆弾がなくなっていた。そこへ森口から電話がかかり、爆弾は修哉の母の研究室に置いてきたという。
修哉のサイトに母の名前で書き込みをし、修哉が母の研究室を訪れるよう仕向けたのは森口だった。
修哉が「自分はもうとっくに忘れられてた。ヤケだ。死のう。なるべく多くの人を巻き込んで」と思っていた事を察した森口は、「あなたは自分の命なんて惜しくないから、大切な人を失うことにした」と告げる。
そして、研究室であっさり母に会い、修哉のことを全て伝え、置き土産に机の下に爆弾を置いていく。
森口は以前修哉に言われた「大事なものが消える音」が「パチン」ではなく「ドッカーン!」と聞こえた事を告げる。
自分が母を殺してしまったことに半狂乱となった修哉のもとに森口が現れ、涙を流しながら「ここからあなたの更正の第一歩が始まるんです」と声をかけ、最後に「なーんてね」とトドメを刺す。
独特の映像表現で描かれたのは人間の醜さか
人間の醜さをリアルに表現
前述した通り、少年犯罪や家庭内暴力、イジメなど、過激な内容や描写で映倫からR15+指定を受けた本作。
その他HIVや少年法など、現代の様々な社会問題を多く取り上げている。
さらに劇中で話題に上る「ルナシー事件」は、現実に2005年に起きた「タリウム少女母親毒殺未遂事件」が元ネタになっているといわれている。
実はその「タリウム少女母親毒殺未遂事件」の犯人の女子高生が書いていたブログが、ほんの少しだがまだ残っている。
読んでみたが正直、これを添付することには葛藤がある。
何と表現したらよいのだろう。
多少の喜哀楽は感じられるものの、怒の感情が感じられない。
激情が感じられない。
淡々とただ生きているだけのような…。
漆黒ではなく、ずっと仄暗い世界を生きているような…。
しかし本作の本質は、まさにこのブログにあるような気がする。
人の抱える本当の闇とは、事実、このようなもののように思えてならない。
故に戸惑いながらも添付する。
ただし、やはり気分の良いものではないのでURLのみ貼り付けておくに留める。
※閲覧注意
http://www.uranus.dti.ne.jp/~yuugeki/tariumu01.htm
※閲覧注意
本作が問題提起するあらゆる事象の根底にあるものは、人間の飽くなき承認欲求ではないだろうか。
誰かに認められたい。
自分が他人より優れていることを証明したい。
君が出来なかったことを、僕は出来た。
私を見て!
そんな心の叫びが聞こえてくるようだ。
これは何も特別なことではない。
誰もが抱える欲求だろう。
しかし本作の登場人物たちのそれは、酷く歪んで自己中心的かつ利己的なものであった。
それは少年法が適用されるくらいの未熟な若者たちにとって、もしかしたら致し方ないことなのかもしれない。
わかるのは本作さながらに、善悪の区別がつかない人が増え続けているということ。
「人の頭に向かって金属バットをフルスイングできる」ような、ごく普通の一般人が増えているということ。
本作は、それを如実に物語っている。
果たしてこれが、現代社会だけの闇なのか?
はたまた明るみになっていないだけで、古来より人が抱える闇なのか?
いろいろ深く考えさせられる作品だ。
気になっても、視聴する際は一応気をつけてほしい。
極端に過激な描写はなくとも、芯にズッシリ響く重たさを感じる。
独特の映像表現
独特の映像表現については、公開から10年以上経過した今観たら、少し古臭く感じてしまうかも。
映像美を意識しすぎて、個人的には野暮ったく感じた。
また、心の闇を美しく観せようとする魂胆のようなものも感じてしまった。
しかし捉え方によっては、美しくもみえるだろう。
好き嫌いはさておき、映像表現については一見の価値あり。
観て損はない描写である。
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