日曜劇場
アンチヒーロー
- アンチヒーロー
- 「わかりやすさ」で大ヒットした『半沢直樹』と「わかりにくさ」で浮き彫りになった『VIVANT』の問題点を上手に折衷した人気ドラマ
- 反省の上に立って次に臨むことが成功の早道
- miletが歌う主題歌「hanataba」にも注目
成功体験に慢心することなく反省の上に立って次に臨むことが成功の早道
日曜劇場『アンチヒーロー』とは
"アンチ" な弁護士は正義か悪か――!?
新たなヒーローがあなたの常識を覆す逆転パラドックスエンターテインメント、始動!!
『アンチヒーロー』は、2024年4月14日よりTBS系「日曜劇場」枠で放送中のテレビドラマ。
本作の主人公であるアンチな弁護士を長谷川博己氏が演じる。
長谷川氏は、数多くの映画やテレビドラマで幅広い役柄を演じ分け、独特な存在感を放つ演技派俳優。
NHK大河ドラマ『麒麟がくる』や、NHK連続テレビ小説『まんぷく』でも高い表現力が話題となった。
そんな長谷川氏が日曜劇場へ出演するのは、2017年放送の『小さな巨人』で主演を務めて以来。
7年ぶりとなる日曜劇場で再び主演を務める。
そして、長谷川演じる主人公 "ヒーローとは言い難いアンチな男" の事務所で働く同僚弁護士役には北村匠海氏と堀田真由さん。
さらに、東京地検の有能な検事役を木村佳乃さん、剛腕検事正役を野村萬斎氏が演じる。
「殺人犯へ、あなたを無罪にして差し上げます。」
日本の刑事裁判での有罪率は99.9%と言われている。
長谷川氏演じる弁護士は、残り0.1%に隠された「無罪の証拠」を探し依頼人を救う救世主のような人間ではない。
たとえ、犯罪者である証拠が100%揃っていても無罪を勝ち取る、「殺人犯をも無罪にしてしまう」"アンチ" な弁護士。
ヒーローとは言い難い、限りなくダークで危険な人物だ。
しかしこのドラマを見た視聴者は、こう自問自答することになるだろう。
「正義の反対は、本当に悪なのだろうか…?」
このドラマは「弁護士ドラマ」という枠組みを超え、長谷川演じるアンチヒーローを通して、視聴者に "正義とは果たして何なのか?" "世の中の悪とされていることは、本当に悪いことなのか?" を問いかける。
本作では、スピーディーな展開で次々に常識が覆されていく。
日常のほんの少しのきっかけ、たとえば「電車に一本乗り遅れてしまった」「朝忘れ物をして取りに帰った」…たったそれだけのことで、正義と悪が入れ替わり、善人が悪人になってしまう。
まさにバタフライエフェクトのような、前代未聞の逆転パラドックスエンターテインメント。
あらすじ
日本の刑事裁判での有罪率は99.9%と言われている。
しかし、"アンチ" な弁護士(長谷川博己)は、残り0.1%に隠された「無罪の証拠」を探し依頼人を救う救世主のような人間ではない。
たとえ、犯罪者である証拠が100%そろっていても無罪を勝ち取る、殺人犯をも無罪にしてしまうようなヒーローとは言い難い、限りなくダークで危険な人物。
はたして、正義の反対は、本当に悪なのだろうか…?
「わかりやすさ」で大ヒットした『半沢直樹』と「わかりにくさ」で浮き彫りになった『VIVANT』の問題点を上手に折衷した人気ドラマ
「わかりやすさ」で大ヒットした『半沢直樹』
言わずと知れた大ヒットドラマ『半沢直樹』。
大ヒットの要因は何と言っても一発逆転の爽快感。
悪い奴や嫌な奴に最後はしっかりギャフンと言わせるあの爽快感は、現代を生きる憤懣やる方ない多くの日本人の心を鷲掴みにした。
その人気を支えた陰の立役者は、なんといっても悪役を演じた俳優たちの名演にある。
彼らはこってりと暑苦しく仰々しい演技で、視聴者が心の底から腹立つ悪役&嫌な奴を見事に演じてみせてくれた。
深く濃い影は光をより際立たせる。
長いトンネルの中にいるような現代日本人にとって、『半沢直樹』は明るい未来への微かな希望としてその目に映った。
正直者が馬鹿を見る世の中で、あえて「正義が悪を成敗する」という古き良き勧善懲悪の世界観に立ち戻ることで、『半沢直樹』は羨望と共に多くの日本人の希望として広く受け入れられたのである。
「わかりにくさ」で考察を加速させるも浮き彫りになった『VIVANT』の問題点
『VIVANT』は、『半沢直樹』などで演出を務めた福澤克雄氏が原作を手掛けたオリジナルドラマ。
プライムタイム帯に放送される連続ドラマとしては、異例ともいえる高額の製作費用が投入された作品で、そのスケールの大きさも放送前から大きな話題を呼んだ。
初回放送までストーリーや役柄を一切明かさない手法が取られたため、放送直後から考察班が出動するなど、一般的には大ヒット作品と呼べるのだろう。
他作とは一線を画したドラマと評された『VIVANT』は、2013年放送の『半沢直樹』以降、日曜劇場の定番となっていた「正義が悪を成敗する」という勧善懲悪の世界観を返上。
「誰が正義で誰が悪かが分からない」「どんな結末に向かっているのかすら分からない」というムードで序盤は推移していった。
「主人公が絶体絶命の危機を乗り越えて、毎週クライマックスで敵を倒す」「父の敵討ちするために組織でのし上がっていく」という『半沢直樹』のようなわかりやすさはゼロ。
逆に謎を追加投入することで「わからない」を加速させ、考察を促していった。
ただ、そのわかりやすくない物語は「理解できない」「スッキリしない」などとみなされて、序盤で脱落されてしまうリスクも孕んでいた。
事実、個人的には少々消化不良でスッキリしない作品だった。
目の付け所は格別でも、壮大なのは撮影スケールだけで、物語の厚みが非常に乏しかったように思う。
「わかりにくさ」で考察を加速させてはみたものの、そのせいで期待感が過剰に爆上がりしてしまい、遂には作品がその期待に応えることができなかったのだ。
『VIVANT』の「わかりにくさ」は諸刃の剣だったといえるだろう。
反省の上に立って次に臨むことが成功の早道
『アンチヒーロー』のプロデューサーは『半沢直樹』『義母と娘のブルース』『ドラゴン桜2』『VIVANT』で知られるTBSドラマ制作部の飯田和孝氏。
おまけに『VIVANT』で脚本を担当した山本奈奈さん、李正美さん、宮本勇人氏の3氏も再結集している。
したがって『半沢直樹』と『VIVANT』の良いとこどりしたような『アンチヒーロー』は、これまでの反省の上に立って次に臨むことでさらなる成功を得た作品といえる。
特段目立った欠点などないような『半沢直樹』ではあるが、演者の暑苦しさは好き嫌いの分かれるところ。
長所は短所にもなり得る。
いくら格別の爽快感があっても、そこに至るまでの経緯があまりにも重く暑苦しすぎるという難点があった。
その重さや暑苦しさは、もし時勢がフィットしなければ大コケしていたかもしれないような、実はかなり危うい諸刃の剣でもあった。
それは『VIVANT』の「わかりにくさ」についても同じだ。
『VIVANT』の「わかりにくさ」はマイナスに作用していたように感じたが、まったく事前情報を出さないプロモーション戦略が功を奏した。
事実、人気を支えていたのは物語本編ではなく、ネットで躍動する考察班であったように思う。
このような経験を踏まえ、それら懸念材料を検証してブラッシュアップされたのが『アンチヒーロー』なのである。
《「殺人犯をも無罪にしてしまう」"アンチ" な弁護士》という触れ込みからは、爽快感の欠片も感じられない。
しかしなかなかどうして絶妙な爽快感を得られる本作。
毎回大掛かりな前置きが少々暑苦しくもある『半沢直樹』のそれとは違い、本作から得られるのはクールでライトな爽快感。
毎回すべてを見透かしたように観る者の想像をサラッと超えてくる『アンチヒーロー』には、明確に自覚できないような爽快感と安心感がある。
これはなかなか新しい感覚だ。
また、『VIVANT』のように謎を追加投入することで「わからない」を加速させ、考察を促している手法は『アンチヒーロー』にも当てはまる。
しかし『VIVANT』の「わかりにくさ」と違うのは、伏線と伏線回収が明確に行われていることだ。
基本的に『アンチヒーロー』では、伏線と伏線回収が各話で行われている。
その上で、水面下では全話通したさらに大きな謎が進行しているといった構成。
おそらく、第1話の謎が各話の伏線&回収を経て、最終回で解き明かされるのだろう。
おまけに時勢も味方している。
「正義が悪を成敗する」という、絵に描いたような勧善懲悪の世界観を描いた『半沢直樹』と、自衛隊・警察など国家機関を英雄的に描いた『VIVANT』とは真逆に、検察に辛口対応の『アンチヒーロー』。
これは自民党裏金問題に対する検察特捜部へのメタファーとも受け取れる。
我々がそうだと信じて疑いたくなかった正義の味方は、巨悪に屈した。
『アンチヒーロー』は、現代日本人が『半沢直樹』の次に求める主人公なのである。
巷に溢れる自己啓発本では、成功体験を倣うことが肝要なのだとよく書かれている。
だが『アンチヒーロー』を観て思う。
成功体験に慢心することなく、反省の上に立って次に臨むことが成功の早道なのであると。
miletが歌う主題歌「hanataba」にも注目
アニメ『葬送のフリーレン』で「Anytime Anywhere」という名曲を歌ったmiletが本作の主題歌を担当している。
「hanataba」は、「Anytime Anywhere」に負けず劣らずの名曲。
名曲連発のmilet。
今後の活躍に注目したい。
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