アニメーション映画
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?
『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』とは
『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』は、1993年にフジテレビで放送された岩井俊二監督のテレビドラマ作品。
また、1995年に公開された映画作品。
本作品は当初、フジテレビのオムニバステレビドラマ『if もしも』の一篇として1993年9月2日に放送する予定だったが、同年8月26日に放送する予定だったエピソードが見送られたため、1週間繰り上げて放送された。
同年、テレビドラマとしては異例の日本映画監督協会新人賞を受賞した。
その後、1995年8月12日にはオープニングやタモリの出演シーンをカットして再構成されたバージョンが、映画として劇場公開された。
当時は若手のテレビドラマ監督・脚本家であった岩井俊二氏の評価と知名度を一気に上げ、映画製作に進出させるきっかけとなった作品である。
その映像は、色調の調整などを使ってフィルムらしく見せる手法(フィルム効果、あるいはF効果と呼ばれる)を使って作成されており、これも当時のゴールデンタイムのテレビドラマとしては非常に珍しかった。
「東日本大震災により大きな被害を受けた本作のロケ地と東日本復興への願いをこめて」と、2011年7月22日から8月31日まで岩井俊二氏の公式サイトにて、無料で動画配信された。
2017年8月18日に、この作品を原作としたアニメ映画が公開された。
アニメーション映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』とは
同名タイトルのアニメ作品が、2017年8月18日に全国約300スクリーンで公開。
「小学生だとアニメとして芝居をさせにくい」という新房の判断で、主人公たちは中学1年生に変更されている。
岩井俊二氏も打ち合わせに参加しており、時間が巻き戻る「もしも玉(映画スタッフ間の通称)」は岩井氏のアイデアである。
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あらすじ(アニメーション映画)
海辺の町、茂下(もしも)町。
8月1日は中学校の登校日で、夜はお祭りと花火大会がある。
その日の朝、中学1年生の及川なずなは海辺で不思議な「玉」を拾う。
登校したなずなは担任の三浦先生に母親からの手紙を渡す。
手紙は母親の再婚により夏休み中に引っ越しするという内容だった。
島田典道はクラスメイトの安曇祐介から、なずなに告白したいとふざけ半分で打ち明けられる。
二人がプール掃除に行くと、水着姿のなずながいた。
3人は50メートルプールで競争し、先にゴールした祐介は、なずなから花火大会に誘われ、夕方5時に迎えに行くと言われる。
足を怪我して負けた典道は気が付かない。
クラスでは男子グループが打ち上げ花火は横から見ると丸いか平べったいかで議論になり、それを検証するべく茂下灯台に見に行くことになった。
なずなの誘いに怖気づいた祐介は、典道に足の怪我を自分の父親の病院で診てもらうよう仕向け、なずなとの約束を破って灯台に行ってしまう。
典道が病院に行くと、浴衣姿でスーツケースを持ったなずなが待っていた。
祐介に約束を破られたなずなは、典道にプールで勝ったほうを花火大会に誘ったと打ち明ける。
病院を出たなずなは母親に無理矢理家に連れ戻される。
泣き叫ぶなずなを見た典道は、怒りのあまり通りかかった祐介を殴りつけ「もしも俺が勝っていたら」と悔し紛れになずなが落とした玉を投げつける。
時間がプールに巻き戻り、プールで勝った典道は、なずなに花火大会に誘われる。
夕方こっそり落ち合った二人は、駆け落ちをしようと駅に向かう。
白いワンピースに着替えたなずなは典道とホームで電車を待つが、またもなずなは母親に連れ戻され典道は再婚相手に殴られてしまう。
落胆した典道は祐介たちと合流し、灯台で花火を見るが、平べったい花火だった。
ここがもしもの世界だと気づいた典道は「もしもなずなと電車に乗れたら」と玉を投げる。
時間は駅のホームに戻り、典道はなずなを母親と再婚相手から引き離し、電車に乗り込む。
なずなは「瑠璃色の地球」を歌う。
だが祐介たちとなずなの母親に見つかり追われる。
典道となずなは電車を降り、灯台で花火を見るが花弁のような美しい花火だった。
典道はここももしもの世界だと気づく。
典道となずなは祐介に突き飛ばされ、玉と一緒に海に落ちる。
時間は電車の中に戻る。
祐介たちに見つからなかった電車は不思議なことに海の上を走る。
典道は玉の力で一日を何度も繰り返していると打ち明けるが、なずなには記憶がない。
駅に戻ると町は一面ガラスに包まれたような光景になっていた。
酔った花火師が大きくなっていた玉を拾い打ち上げ、降り注いだ破片に典道たちはそれぞれの「もしも」を垣間見る。
なずなは海の中で典道と口づけし、「次はどんな世界で会えるかな」とつぶやき典道のもとを泳ぎ去る。
新学期、出欠をとるクラス。
出席簿になずなの名前はなく、典道も教室に姿はなかった。
登場人物(アニメーション映画)
及川なずな
声 - 広瀬すず
ヒロイン。
中学1年生の女子。
典道と祐介の同級生。
父親を海難事故で亡くしている。
母親の再々婚に反発し、祭りの夜に家出を決行する。
典道に好意を抱く。
祐介のことは快く思っていない。
島田典道
声 - 菅田将暉
主人公(クレジット表記は2番目)。
中学1年生の男子。
なずなと裕介の同級生。
釣具店の息子。
なずなに好意を抱く。
安曇祐介
声 - 宮野真守
中学1年生の男子。
なずなと典道の同級生。
父親は開業医。
なずなに片思いしている。
田島純一
声 - 浅沼晋太郎
中学1年生の男子。
スケボーが得意。
よく三浦先生にちょっかいをだす。
花火は横から見たら平べったいと主張する。
和弘
声 - 豊永利行
中学1年生の眼鏡を掛けている男子。
花火は横から見たら丸いと主張する。
真面目な性格だが、どこかずれている。
運動は苦手。
稔
声 - 梶裕貴
中学1年生の小柄の男子。
花火は横から見たら平べったいと主張する。
なずなの母
声 - 松たか子
恋愛に奔放で2度の結婚歴がある。
最初の結婚中に(当時の)浮気相手との間になずなを妊娠し、駆け落ちして茂下町に来た。
夫を亡くした後、交際する男性と再婚して町を出るつもりでいる。
なずな曰くビッチ。
なずなの母の再婚相手
声 - 三木眞一郎
なずなの母の3度目の結婚相手。
優しげに見えるが、典道を殴り付けるなど乱暴な面も。
三浦晴子先生
声 - 花澤香菜
典道のクラスの担任。
巨乳。
主題歌(アニメーション映画)
- 主題歌「打上花火」
作詞・作曲 - 米津玄師 / 編曲 - 米津玄師、田中隼人 / 歌 -DAOKO×米津玄師
- 挿入歌「Forever Friends」
作詞・作曲 - REMEDIOS / 編曲 - 神前暁 / 歌 - DAOKO
映画の挿入歌として、原作ドラマで主題歌として使用された「Forever Friends」をDAOKOがカバーした。
挿入歌のミュージックビデオは、岩井俊二氏によりドラマのロケ地で撮影された。
- 劇中歌「瑠璃色の地球」
作詞 - 松本隆 / 作曲 - 平井夏美 / 編曲 - 神前暁 / 歌 - 及川なずな(CV. 広瀬すず)
1986年に発表された松田聖子の楽曲のカバー。ヒロイン・なずなが劇中で歌う。
オリジナルサウンドトラックに「及川なずな(CV. 広瀬すず)」名義で収録。
期待値高まる豪華すぎる声優陣
本作の声優陣は非常に豪華である。
広瀬すずさんと菅田将暉氏の主役のふたりはもちろんのこと、脇を固めるキャラのCVもほとんどが主役クラスのキャスティングという豪華さだ。
レジェンド・三木眞一郎氏や花澤香菜さん、松たか子さんをチョイ役で起用するなど、アニメファンなら涙ものの贅沢キャスティング。
それだけで期待値は爆上がりに決まっている。
期待しかない
『物語シリーズ』のシャフトが制作
本作はの制作は『物語シリーズ』を担当したシャフト。
もう、これだけで期待値は高い。
『物語シリーズ』といえば、一般的には厨二病の印象が強いかもしれないが、実はかなり甘酸っぱい青春群像劇だったりもする。
そこにあの岩井俊二氏の脚本だ。
これでは期待するなという方が無理な話である。
これだけ豪華な材料を集めて、それがどうしてこうなった?
岩井俊二氏といえば、今なお色褪せることのない名作映画『Love Letter』で広く知られている。
哀愁の醸し出し方がすこぶる巧く、胸の奥にじんわり残る作品を世に送り出している監督であり脚本家だ。
それを象徴するワンフレーズがある。
映画『スワロウテイル』の作中のバンド・YEN TOWN BANDの名曲「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」。
この曲の詞は岩井俊二氏・CHARAさん・小林武史氏の合作なのだが、その中に実に岩井俊二氏らしいフレーズが存在する。
ママのくつで 速く走れなかった
泣かない 裸足になった日も
逆さに見てた地図さえ もう 捨ててしまった
けっして戻ることのない時間の流れ。
えも言われぬ寂寥感。
これぞ、岩井俊二ワールド。
これぞ、視聴者が求める岩井俊二作品なのだ。
それが本作ではどうだ。
何もかもが中途半端な感じがしてならない。
声優陣、脚本、主題歌。
これほどの好材料を揃えていながら、作品は既視感の連続。
いったい何がどうしてこうなってしまったのだろう…。
唯一、らしいといえば劇中歌に「瑠璃色の地球」を採用したことくらいか。
この不調和が起こす調和は好みの演出であるが、惜しいことにその使い方には疑問が残る。
本作原作の発表が1993年だということを鑑みると、既視感については致し方ない部分もあるだろう。
しかし、そこは岩井俊二氏なりのアレンジが欲しかったところ。
「もしも玉」のアイデアはさすがだが、その他について岩井俊二氏は介入しなかったとみえる。
期待値が高すぎたといえばそれまでだが、本作を岩井俊二作品と呼ぶにはあまりにも残念な仕上がり。
なるほど、だからDAOKO×米津玄師の主題歌「打上花火」だけがひとり歩きしてしまったのだろう。
主題歌については、さすが米津玄師氏のひと言。
岩井俊二氏の世界観を継承しつつ、見事に現代の風を取り入れている。
しかしながら、豪華すぎる声優陣は観ていてやはり楽しい。
さすがはほぼ全員主役クラス。
声優ファンは見逃せないキャスティングだ。
また作画からは要所要所で『物語シリーズ』を感じられて、シリーズのファンとしてはこちらも嬉しいものではあった。
著者のようにどっぷり哀愁に耽りたい人にはおすすめしないが、ほどよい哀愁を求める人にはちょうどいい作品なのかもしれない。
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