愛は勝つ / KAN (1990年)
『愛は勝つ』とは
『愛は勝つ』は、KANの楽曲。
自身の8作目のシングルとして、ポリドール・レコードから1990年9月1日に8cmCDとしてリリースされ、1991年1月1日にカセットテープとして再リリースされた。
元々は、1990年7月25日に発売されたアルバム『野球選手が夢だった。』収録曲の1曲に過ぎなかったが、大阪のFM局FM802のヘヴィー・ローテーションに選ばれたことがきっかけとなりシングルカットされた。
当初は、テレビ朝日系「クイズおもしろTV」のエンディング曲として使われていたが、フジテレビ系「邦ちゃんのやまだかつてないテレビ」の挿入歌に起用された。
「邦ちゃんのやまだかつてないテレビ」のプロデューサーだった小畑芳和氏は、番組で使う曲探しのため、CD・レコードを片っ端から聴いていて、これからはピアノを弾く男が来ると思っていたこと、信じれば「必ず最後に愛は勝つ」というストレートな歌詞は、吉田拓郎氏がフォークで叫んでいたのと通じるものがあると感じ番組のテーマ曲に起用。
第42回NHK紅白歌合戦に出場し、モーツァルト没後200周年にかけ、自らモーツァルトに扮装し熱唱した。
コミックソングだと思い込んでいた曲の歌詞が実は愛についての奥深い真理だった
傷つけ傷ついて
愛する切なさに
すこしつかれても
Oh もう一度夢見よう
愛されるよろこびを知っているのなら
求めて
うばわれて
与えて
うらぎられ
愛は育つもの
本作が制作された経緯はこうらしい。
友人から恋愛相談を受けたKANは、「お前そりゃどう転んでもうまくいかないだろう」と思い、投げやりに「大丈夫、愛は勝つよ」と発言したことから発想。
「せめて歌の中ではうまくいけばいいな」と、ビリー・ジョエルの「アップタウン・ガール」を意識して歌詞を書いたという。
曲が出来た時は「うまくいった」と思ったが、歌詞をつけたら曲のストレートでクリアな感じがぼやっとなった気がしたという。
KANは、歌詞を書く前の楽曲の打合せでは「自分の才能が怖い」と発言するほど本楽曲を気に入っていた。
KANはこの曲のメロディーが気に入っていた分、歌詞をあまり複雑な内容にしたがらなかったため、抽象的な表現のみで構成している。
しかし最初の歌詞「心配ないからね」が自分であまり気に入らず、本当は歌い始めを「ア」か「オ」にしたかったKANは、歌詞ができてからは自分の中でテンションが下がったと語っている。
しかしそうやってできた本作の歌詞の奥深さに、子供の頃はまったく気がつきもしなかった。
バラエティ番組から火がついたヒットの経緯。
『愛は勝つ』という、まるでスポ根丸出しのようなパワーワードタイトルとポップなメロディ。
これらの材料が、心のどこかで本作をコミックソングだと思い込ませていた。
大ヒット曲だから歌詞はもちろん暗記。
深掘りすることはなかった。
だがよくよく聴いてみると、おっしゃる通りなるほど抽象的な表現のみで構成されている。
だからだろう。
『愛は勝つ』のタイトルばかりに気を取られ、この「愛」が、"愛される" ことなのか "愛する" ことなのかを、ちゃんと考えはしなかった。
いや、どちらかというと本作が歌うのは "愛される喜び" だとばかり思っていた。
だが、どうやらそれは考え違いをしていたようだ。
本作は、"愛される" ことか "愛する" ことかではなく、その両方を歌っていたのだ。
"愛される" ことでも "愛する" ことでもなく、「愛」についてを歌っている。
「愛する切なさ」も「愛されるよろこび」も知った上で、、両方の気持ちを汲み取って本作の歌詞は構成されている。
どちらか一方ではないのだ。
その結果として『愛は勝つ』ということだったのか…。
楽曲の出自や雰囲気だけに気を取られて、この曲の本質がまったく視えていなかった自分が恥ずかしい…。
KAN、本名は木村 和(きむら かん)。
2023年(令和5年)11月12日永眠。
心よりご冥福をお祈りいたします。
素晴らしい音楽をありがとう。
☆今すぐApp Storeでダウンロード⤵︎