アニメ『葬送のフリーレン』
ハラハラドキドキは次回予告で魅せる、その理想形
- ハラハラドキドキは次回予告で魅せる、その理想形
『葬送のフリーレン』とは
「週刊少年サンデー」(小学館)で連載中、
山田鐘人氏(作)とアベツカサ氏(画)による漫画『葬送のフリーレン』。
勇者とそのパーティによって魔王が倒された "その後" の世界を舞台に、勇者と共に魔王を打倒した千年以上生きる魔法使い・フリーレンと、彼女が新たに出会う人々の旅路が描かれていく。
"魔王討伐後" という斬新な時系列で展開する
胸に刺さるドラマやセリフ、魔法や剣による戦い、思わず笑ってしまうユーモアなど、キャラクターたちが織り成す物語で、多くの読者を獲得。
コミックスは既刊12巻ですでに累計部数1700万部を突破し、そして2021年には「マンガ大賞2021」大賞、「第25回手塚治虫文化賞」の新生賞を受賞するなど、漫画ファンの間で旋風を起こしている。
そんな『葬送のフリーレン』が、いよいよファン待望のTVアニメ化!
主な制作スタッフ陣は、監督は『ぼっち・ざ・ろっく!』のヒットが記憶に新しい斎藤圭一郎氏。
シリーズ構成は鈴木智尋氏(『ACCA13区監察課』)、キャラクターデザインは長澤礼子さん(『takt op.Destiny』)、音楽はEvan Call(『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』)が担当。
そしてアニメーション制作は『ワンパンマン』や『Sonny Boy -サニーボーイ- 』などバトルアクションから叙情的なドラマまで幅広い作品を
世に送り出すマッドハウス。
そして主演となるフリーレン役の声優は、『SPY×FAMILY』のアーニャ役など、多彩なキャラクターを確かな演技力で表現している種﨑敦美さん。
『葬送のフリーレン』が、アニメとなって
どんな魔法を見せてくれるのか―。
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アニメ『葬送のフリーレン』の次回予告
アニメ『葬送のフリーレン』の次回予告は非常に特徴的だ。
映像は一切みせず、その回で登場するであろう幾つかのセリフを抽出し、声と活字のみで展開を想像させる。
この手法は落語に通じるところがあるように思う。
落語は聴き手の想像力によって膨らむ噺の世界であり、『葬送のフリーレン』の次回予告もまた与えられた限られたワードの中から次に起こる事態を想像する。
この手法自体はそれほど斬新なものではない。
だが、『葬送のフリーレン』の次回予告は同様他作品と趣きが少々異なる。
その違いは『葬送のフリーレン』という作品の特徴が生み出したものだが、その特異点を説明する前に、まずは『葬送のフリーレン』の次回予告で呟かれる推定10個ほどのセリフの中で、特に印象的(※フレーズの強弱ではなく特別耳に入ってきた言葉という意味で)だった言葉を抽出し文字に起こしてみよう。
#01 冒険の終わり
魔王を倒し王都へ凱旋した勇者ヒンメル一行。
各々が冒険した10年を振り返りながらこれからの人生に想いを馳せる中、エルフのフリーレンは感慨にふけることもなく、また魔法探求へと旅立っていく。
50年後、皆との約束のためフリーレンは再び王都へ。
その再会をきっかけに、彼女は新たな旅へと向かうことに―。
【次回予告】
- また格好付けるのかハイター
- 魔法ってすごいのね
- 死ぬのは勿体ないと思います
#02 別に魔法じゃなくたって…
森深くに暮らすハイターを訪ねたフリーレンは、彼と共に暮らす孤児フェルンと出会う。
ハイターから頼まれ彼女に魔法を教えるフリーレン。
そしてある出来事を機に、共に旅立っていく。
旅先でヒンメルの銅像がある村を訪れたフリーレンは、生前彼が好きだと言っていた花のことを思い出し…。
【次回予告】
- そんなの強すぎるじゃないですか
- 様子も見にこない薄情者だ
- じゃあ応用といこうか
#03 人を殺す魔法
交易都市ヴァルムへとやって来たフリーレンとフェルン。
買い出しを手分けしようと言うフリーレンの様子を怪しむフェルンは彼女の後をつけることに。
果たしてフリーレンの目的は…。
その後、2人はとある村にやってくる。
そこにはかつてフリーレンとヒンメルが戦った魔族・クヴァールが封印されていた。
【次回予告】
- 可哀想だと思ったんだ
- そのほうが都合がいいからです
- 暗い話はナシ!
#04 魂の眠る地
フリーレンとフェルンはアイゼンを訪ねる。
旧交を温める中、「大魔法使いフランメの手記」を探すことを手伝ってほしいと頼むアイゼン。
3人は、ハイターが生前に割り出した手記が眠る場所がある森奥深くへ。
フランメの手記と呼ばれるものはほとんどが偽物だというが、その場所にあるのは偽物か、それとも…?
【次回予告】
- 強い戦士になれるかな?
- 旅の方少々よろしいですか?
- 探しているんだろう
#05 死者の幻影
フランメが残した手記に記されていた "魂の眠る地<オレオール>" を目指すことに決めたフリーレンとフェルンは、アイゼンと別れ旅路を歩んでいく。
今は魔王城があるその場所で、ヒンメルと話すことができるのか…。
ある村を訪れると、村人が何人も幽霊に連れ去られ行方不明になっているという。
【次回予告】
- クソババアか…
- 流石にそれは危なくないですか?
- 震え方まで同じだ
#06 村の英雄
リーゲル峡谷沿いの村で暮らすシュタルクは、紅鏡竜から村を守ったことで村の英雄として讃えられているが、実はとにかく臆病だった。
それでも彼の実力を見込むフリーレンは、共に紅鏡竜を倒そうと声をかける。
大岩を切り裂くほどの力を持つシュタルクだが、手の震えは止まらない。
果たして戦いの場に現れるのか―。
【次回予告】
- 痛いよ…お母さん…
- 人間は大袈裟だね
- これでは魔族と同じだな
#07 おとぎ話のようなもの
フリーレンたちは解放祭と呼ばれるお祭り前日の街にやってくる。
そこはかつてフリーレンやヒンメルたちが魔族から守った町だった。
町に建てられた自分たちの銅像を見るフリーレンはあることを思い出す―。
その後に訪れたグラナト伯爵が治める街で、フリーレンは突然ある人物に杖を構える―!
【次回予告】
- あの魔法使いは一体…
- 衛兵殺しで極刑ですね
- もう決着はついた
#08 葬送のフリーレン
グラナト伯爵に和睦を申し入れてきた魔族アウラに仕えるリュグナーたちに魔法を放とうとしたことで、フリーレンは捕らえられ牢に入れられる。
そんなフリーレンをリュグナーは危険視し、同じくアウラ配下のドラートがフリーレンの命を狙う。
そしてフェルンとシュタルクもフリーレンを救うため行動を起こす。
【次回予告】
- またリュグナー様に怒られる
- なんだよ…無茶苦茶じゃねぇか
- やっぱりお前達魔族は化け物だ
#09 断頭台のアウラ
ひとり街を出たフリーレンは、七崩賢 "断頭台のアウラ" と対峙していた。
膨大な魔力を持つアウラは、死者の軍勢を次々とフリーレンにぶつけていく。
一方、グラナト伯爵を救出したフェルンとシュタルクだったが、ふたりにもリュグナー、リーニエの魔の手が迫り…。
フリーレン一行とアウラ軍の戦いが加速する。
【次回予告】
- 魔力は私の五分の一くらいですね
- フリーレンは必ず負ける
- 私には遠く及ばない
#10 強い魔法使い
大魔法使いフランメ。
千年以上前に生き、人間でありながら歴史上でも "英雄" と称される魔法使いだった彼女は、ある日魔王軍に襲われ全滅したエルフの集落で、ひとり生き残ったフリーレンと出会う。
フランメがフリーレンに教えたものとは…。
そして、フリーレンとアウラの戦いに決着がつく。
【次回予告】
- あなたには褒めてくれる人はいますか?
- なにその一級魔法使いって
- 俺たちはエルフって事だ
#11 北側諸国の冬
アウラたちを倒したフリーレン、フェルン、シュタルク。
平穏が訪れ、死後もアウラに操られていた自身の配下を弔い、グラナト伯爵は最大限の感謝をフリーレンに伝える。
フリーレンたちは旅立つが、北側諸国の冬の道は想像以上に厳しく…。
そこで彼らはひとりの武道僧(モンク)に出会う。
【次回予告】
- 勇者の剣を守っていた里だ
- えっち
- 親父たちには内緒だぜ
#12 本物の勇者
剣の里にやって来たフリーレンたち。
そこは80年前に、世界を滅ぼす災いを撃ち払う者しか抜けない "勇者の剣" をヒンメルが抜いた場所。
この里の周辺に湧いてくる魔物を退治するという役目を務めるために訪れたのだった。
そしてフリーレンの脳裏には、80年前当時のことが蘇ってきて…。
【次回予告】
- ヒンメルー‼︎
- 酒は百薬の長なんですよ
- それがどうした?フリーレン
#13 同族嫌悪
北側諸国アルト森林の村の教会で出会った、神父の弟・ザイン。
治癒の難しい毒をいとも簡単に解毒する彼の高度な魔法を目の当たりにし、フリーレンは驚く。
聞くと、ザインはかつて冒険者を夢見ていたが、旅に出ることなく、村にとどまっているという。
ザインの兄は彼を連れ出してほしいと頼み…。
【次回予告】
- 他人との距離感って何?
- い…生きてる…
- そんなに俺のことが嫌いかよ‼︎
#14 若者の特権
僧侶ザインが仲間になり、ラート地方を訪れたある日、フェルンとシュタルクが喧嘩をしていた。
聞くと、シュタルクがフェルンの誕生日に何も用意してなかったことが原因だという。
ザインはふたりの仲直りをさせようとアドバイスを送る。
そんなザインにフリーレンが言葉をかけて…。
【次回予告】
- 俺にも戦闘用の魔法はある
- むずむずします
- 地獄だぜ
#15 厄介事の匂い
ラオブ丘陵の村にやって来たフリーレンたちだったが、村の人々は何らかの“呪い”によって眠らされていた。
フリーレンによると、僧侶は女神様の加護により“呪い”が効きづらいという。
"呪い" への耐性と知識を持つザインがその種類と発信源を割り出し、4人は原因である魔物の退治に向かう。
【次回予告】
- 忘れられた英雄か
- ずっと孤独だったんですね
- 人間は成長が早いな
#16 長寿友達
かつてフリーレンがヒンメルたちと冒険をしていた時に出会ったドワーフの戦士・フォル爺を訪ねた4人。
彼はある村をずっと魔物から守っていた。フリーレンは会話を交わす中で、過去のヒンメルの言葉を思い出す…。
その後、ある集落を訪れると、そこにはザインが昔共に冒険者になろうと約束した親友の足跡があった。
【次回予告】
- 一人ずつ隣の部屋に来なさい
- 仲裁は僧侶の仕事なんだよ
- 恥ずかしいです
#17 じゃあ元気で
ザインは親友の戦士ゴリラの手がかりを得るも、彼が向かった先はフリーレンたちの目的地とは別の道だった。
そんな中、滞在する集落に寒波が到来し、ひと月の足止めを余儀なくされた4人だが、それぞれの過ごし方で日々を楽しむ。
ある日、フェルンとシュタルクが喧嘩をし、フリーレンはザインを頼るが…。
【次回予告】
- それ見せてもらってもいいかな?
- やんのかコラ?
- 人殺しの目をしているな
#18 一級魔法使い選抜試験
ザインと別れ、魔法都市オイサーストにやって来たフリーレンたち。
この先の北部高原に入るには一級魔法使いの同行が義務付けられる。
一級魔法使い試験は合格者が一人も出ない年もあり、そして死傷者が出ることもある難関。
フリーレンとフェルンが向かった試験の会場には手練れの魔法使いたちが集まっていた。
【次回予告】
- 誰かに探知された
- 対人戦の時間だ
- なら言葉は不用だな
#19 入念な計画
一級魔法使い試験の第一次試験は、3人ずつのパーティーに分かれ、試験場に生息する隕鉄鳥<シュティレ>を日没までに捕獲し、さらにパーティー全員が揃っていることが合格の条件。
シュティレは捕獲が困難なため受験者同士の争奪戦=サバイバルの様相を呈していく。
カンネとラヴィーネと組んだフリーレンの作戦は…。
【次回予告】
- どんな地獄を見てきたの?
- こいつは儂が叩き潰す
- おもしれぇやってみろよ
#20 必要な殺し
一級魔法使い試験の第一次試験、フェルンはエーレと、ヴィアベルはユーベルと、ラントはシャルフと対峙する。
ヴィアベルはユーベルとそれぞれ自身の魔法で戦う中で、彼女から危険なにおいを感じ取り…。
一方、シュティレを捕獲したフリーレン組だったが、そこにデンケン・リヒター・ラオフェン組が狙いを定める。
【次回予告】
- 未熟者め
- 魔力に差がありすぎる
- 派手にやるなあの爺さん
#21 魔法の世界
一級魔法使い試験の第一次試験、シュティレをデンケンのパーティーに奪われたフリーレンたち。
カンネとラヴィーネは圧倒的に魔力に差のあるリヒターに苦戦する。
そしてフリーレンはデンケンとの戦闘の中である策を考えていた。
日没が、第一次試験のタイムリミットが迫る。
果たして二次試験に進むのは―!?
【次回予告】
- あげないよ
- ご安心くださいフリーレン様
- 私より甘やかされてんじゃん
#22 次からは敵同士
第一次試験は18人が合格し、フリーレンとフェルンも二次試験へ。
試験は3日後、合格者たちは解散し、各々でその時を待つ。
フリーレンたちも宿へと戻るが、シュタルクがあることでフェルンの機嫌を損ねてしまい、機嫌を直してもらおうと3人はオイサーストの街へと繰り出す。
すると偶然受験者たちと顔を合わせて…。
#23 迷宮攻略
coming soon
たとえ本編ストーリーにハラハラドキドキがなくても次回予告で魅せ想像させ期待させる、その理想形
観る者に必要以上の負荷をかけない平坦な物語『葬送のフリーレン』
『葬送のフリーレン』の特徴でありヒットの要因でもあるのが "緊張と緩和" の絶妙なバランスにより、観る者に必要以上の負荷をかけないことであるというのは先に述べた通り。
あらゆる映像作品の定石であるジェットコースター展開などは特になく、奇をてらうような胸糞鬱展開もない。
少しくらい騒つくことはあってもやり過ぎることなく、心穏やかに緩やかに進行していく。
世知辛い世の中に疲れ切った現代人にとってそれはとても心地良いものではあるが、とはいえ、ずっと平坦な進行ばかりをしていたら視聴者に飽きられる可能性があることも確かだ。
テレビシリーズである以上、次回に含みを持たせ視聴者の期待感を煽る必要がある。
そこで一役も二役もかっているのが【次回予告】なのである。
ハラハラドキドキは次回予告で魅せる
『葬送のフリーレン』の次回予告は本当によく考え抜かれている。
何より、次回予告本来の役割りを完璧にこなしている。
次回予告で抽出されるセリフは、すべてがパワーワードというわけではない。
展開を想像させるセリフの中に、「おや?」と思わせる意味不明のセリフが混ざり込んでいる。
例えば「#11 北側諸国の冬」での "えっち" や、「#14 若者の特権」の "むずむずします" 、「#16 長寿友達」の "恥ずかしいです" はすべてフェルンのセリフであるのだが、物語におよそ関係ないであろうこんな言葉をいきなり耳にしたら反応せざるを得ない。
特に戦闘シーンもなさそうな回だけど、なぜこんなセリフが飛び出すのか、否が応でも展開を想像してしまうのが人の性なのである。
『葬送のフリーレン』の次回予告は、こういうセリフをあえてチョイスすることで、次回への期待感を視聴者に煽っている。
このことが、戦闘シーンを含むであろう派手な回の予告になるとさらに効果的に働く。
神次回予告「第8話 葬送のフリーレン」
なかでも特に秀逸だったのは「#07 おとぎ話のようなもの」で放送された「#08 葬送のフリーレン」の予告である。
「#08 葬送のフリーレン」は、『葬送のフリーレン』のタイトルに込められた本当の意味を回収(※個人的にはこれもまた伏線のひとつでしかないという認識)したとネットをザワつかせた、神回のひとつである。
その予告の中で列挙されたセリフのほとんどがパワーワードばかりであったが、ここで大活躍したセリフは活字に起こされたものではなかった。
「歴史上最も多くの魔族を葬り去った魔法使い」
活字に起こされなかった魔族リュグナーのこの強セリフが、視聴者が次回に寄せる期待感をMAXにさせた。
そしてそのセリフを語り終えると同時に、最後に浮かび上がる第8話「葬送のフリーレン」の文字。
こんな予告をみせられて次回を楽しみにしなかった人がいただろうか。
事実、「歴史上最も多くの魔族を葬り去った魔法使い」という強セリフは本編劇中でも非常に効果的に使用されており、さながら綾波レイ×月背景を彷彿とさせる屈指のフリーレン名登場シーンとなっている。
『葬送のフリーレン』のような次回予告の作り方は実はフリーレンだけのものではなく、フリーレン同様物語の展開が平坦な作品にみられる最近の流行でもある。
例えば日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』の次回予告もまた非常によく考え抜かれている。
本編を観ればなんてことないセリフでも、そこだけを切り取り巧く使えば、それだけで視聴者の期待感は高められる。
結果的にたとえ本編にハラハラドキドキのシーンがないとしても、次回予告のおかげで、次回までの時間をハラハラドキドキしながら過ごすことができるのだ。
これも広義では "緊張と緩和" であるのだろう。
メディアによる著名人の発言の悪質な切り取りが取り沙汰される昨今ではあるが、このようなクリエイティブな切り取りなら大歓迎である。
次回予告でハラハラドキドキさせて、本編で安心させる『葬送のフリーレン』のような作品が、今後もっと増えるかもしれない。
これからの作品は、次回予告に注目してみるのも面白いだろう。
TVアニメ『葬送のフリーレン』公式スターティングガイド: 少年サンデーグラフィック
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