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ioritorei’s blog

完全趣味の世界

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【Netflixシリーズ『さよならのつづき』】「運命」を錯覚させた3回の偶然と真に向かうべき先を指し示した4つ目の偶然の妙…ロマンチックな王道展開かと思いきやとても繊細でとても切ない大人のラブストーリー。

 

Netflixシリーズ

さよならのつづき

※本稿にはネタバレを含みます。ご注意下さい。

 

 

「運命」を錯覚させた3回の偶然と真に向かうべき先を指し示した4つ目の偶然の妙…ロマンチックな王道展開かと思いきやとても繊細でとても切ない大人のラブストーリー

 

 

 

 

 

 

 

Netflixシリーズ『さよならのつづき』とは

 

 

《第29回釜山国際映画祭オンスクリーン部門出品作品》

『愛の不時着』『First Love 初恋』に次ぐ、恋愛ドラマの新たな金字塔の誕生!

 

主演:有村架純 & 坂口健太郎

脚本:岡田惠和

 

世界最大級のオンラインストリーミングサービスを提供するNetflixが、2024年11月14日から世界配信を開始。

主演を務めるのは、『花束みたいな恋をした』が熱い共感を呼び、Netflix映画『ちひろさん』も世界的大ヒットを記録した有村架純さんと、『余命10年』や韓国ドラマの主演など話題作への出演が続く坂口健太郎氏。

本作で有村さんが演じるのは、傷ついた人を笑顔にする最高に美味しいコーヒーを世界に広めようと奮闘する菅原さえ子。

坂口氏は、子供の頃から体が弱く多くのことを諦めてきた大学職員の成瀬和正を演じる。

役を生きる俳優として、唯一無二の存在となったふたりが、将来を誓い合った恋人たちの "さよなら" から始まる行く先の見えないラブストーリーに挑む。

完全オリジナルストーリーである本作の脚本を手掛けるのは、ヒューマンドラマの名手と讃えられ、人気・評価共に日本のエンターテインメント界のトップとリスペクトされる映画8年越しの花嫁 奇跡の実話『余命10年』岡田惠和氏。

かつてない物語を創ることを自らに課し、本作で新たな世界を切り開く。

また、連続テレビ小説ひよっこでも岡田氏とタッグを組み、『太陽の子』大河ドラマ『青天を衝け』などを手掛けた黒崎博氏が監督を務める。

事故で最愛の恋人を失ったひとりの女性と、その恋人に命を救われたひとりの男性。

北海道、ハワイの壮大な風景を舞台に、運命に翻弄されるふたりの美しくも切ない、"さよなら" から始まる愛の物語。

『愛の不時着』『First Love 初恋』に次ぐ、至極の恋愛ドラマが誕生した。

 

事故で恋人を失ったヒロインと、その恋人に命を救われた男──

それは、"さよなら" から始まる愛の物語。 

 

思わず冒頭から目を奪われるほどの壮大で美しいシーンの数々。

物語の舞台となったのは北海道・小樽とハワイ。

本作を製作する上で、スタッフ陣の "本物を追求したい" という想いで実現したリアルで壮大な情景は、観るものを惹きつける圧巻の映像美となっており、本作への期待をより大きなものへと導いていく。

脇を固めるキャスト陣も超豪華。

さえ子の恋人で、太陽のように周囲を照らす中町雄介役を生田斗真氏、前向きな性格で病弱な成瀬を支える妻、成瀬ミキ役を中村ゆりさんが務める。

さらに、雄介亡き後、さえ子を温かく見守るハワイで珈琲農園を営む・ヒロ役に三浦友和氏。

また、雄介の親友・健吾に奥野瑛太氏、さえ子の勤めるコーヒー会社の社長・立石みどりに伊藤歩さん、同じくコーヒー会社の一流焙煎師の篠田役にイッセー尾形氏、雄介の母親・中町百合子役に斉藤由貴さん、さえ子と成瀬が出会う電車の車掌役に古舘寛治氏、ミキの母親・寛子役に宮崎美子さんなど、味わい深い本格派俳優が揃い、物語を彩る。

誰にでも訪れる、身を切られるような、最愛の人との別れ。

北海道とハワイの壮大な風景を舞台に描かれるふたりの運命のゆくえを見届けた時、ひたむきに愛し愛された記憶は、必ずその先の人生を支えてくれるという希望に包まれる。

 

 


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あらすじ

 

 

菅原さえ子は、恋人の中町雄介からのプロポーズを受けたその日に、彼を交通事故で失ってしまう。

北海道のコーヒー会社で働くさえ子は仕事に没頭しようとするが、雄介がくれた愛の大きさに日々気づかされていた。

一方、そんな雄介の心臓を移植され命をつないだ大学職員の成瀬和正。

リンゴ園を営む妻のミキの実家で暮らしていたが、時々フラッシュバックする自分のものではない記憶に違和感を覚えていた。

通勤電車で偶然出会ったさえ子と成瀬は、次第に互いへのもう1つの気持ちに揺れ始めていく。

 

 


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登場人物

 

 

菅原さえ子

演:有村架純

 

北海道・小樽のコーヒー会社に勤務。

自身の経験から、傷ついた人を笑顔にする最高に美味しいコーヒーを世界に広めようと奮闘する。

最高のコーヒーを追いかけ向かったハワイで雄介と出会い、小樽で運命的な再会を果たす。

プロポーズを受けたその日、最愛の彼を交通事故で亡くしてしまう。

 

 

成瀬和正

演:坂口健太郎

 

子供の頃から体が弱く多くのことを諦めてきた大学職員。

交通事故に遭った雄介の心臓を移植され、命をつないだ。

病気を知った上で一緒になった妻のミキと、リンゴ園を営む彼女の実家で暮らしている。

手術に成功し、驚くほど元気になるが、時々フラッシュバックする自分のものではない記憶に違和感を覚える。

 

 

中町雄介

演:生田斗真

 

太陽のように周囲を照らす、明るく自由奔放な青年。

ハワイの空港で、コーヒーを通じて運命的な出会いを果たしたさえ子と小樽で再会し、恋人に。

だが、プロポーズを成功させたとほぼ同時に交通事故で亡くなってしまう。

 

 

成瀬ミキ

演:中村ゆり

 

成瀬に惚れ、病気を知った上で結婚。

実家が営むリンゴ園を手伝いながら、闘病生活を支えてきた。移植手術によって驚くほど元気になり、明るくなったり、嗜好が変わった夫に戸惑いを隠せない。

 

 

井上健

演:奥野瑛太

 

雄介の幼なじみで親友、小樽で共にカフェを経営していた。

雄介が亡くなった今もカフェのオーナーとして、店を切り盛りする、さえ子の心のよりどころ。

共に悲しみを乗り越えようとしている。

 

 

ヒロ

演:三浦友和

 

ハワイに暮らすコーヒーの生産者。

さえ子の人生の転機となった一杯のコーヒーが、ヒロの作るコーヒー豆だったことから、執念で口説き落とし、良好な関係を築いている。

雄介を亡くしたさえ子を気にかけ、度々ハワイから連絡してくる。

 

 

立石みどり

演:伊藤歩

 

さえ子が務める株式会社茜の社長。

 

 

車掌

演:古舘寛治

 

さえ子と成瀬が通勤に使っている電車の車掌。

 

 

佐藤寛子

演:宮崎美子

 

ミキの母。

 

 

篠田

演:イッセー尾形

 

さえ子が務める会社・茜のベテラン焙煎士。

 

 

 

主題歌

 

 

  • Azalea / 米津玄師

作詞作曲:米津玄師

 

本作のために米津玄師氏が書き下ろした主題歌。

「Azalea」について米津氏は、「『さよならのつづき』は "死んでしまった恋人の心臓を受け継いだ他人に出会う" というあまり馴染みのない状況から始まる物語ですが、そんなことがおよそ起こり得ない現実を生きている我々にとっても、決して人ごとではない大事な何かがそこにあるような気がしています。どこからどこまでがあなたなのか、距離を詰めてもいいのかどうかと迷うさえ子に想い馳せながらこの曲を作りました。」と語る。

 

 

さよならのつづき (Soundtrack from the Netflix Series)

さよならのつづき (Soundtrack from the Netflix Series)

 

 

 

 

 

 

 

"ありえない" を "もしかしたら" に変えた「運命」を錯覚させる3回の偶然

 

 

ありえない?「Cardiac memory」= " 心臓の記憶 "

 

事故で恋人・雄介(演:生田斗真)を失ったさえ子(演:有村架純)と、雄介の心臓を移植されその記憶を宿す成瀬(演:坂口健太郎)

本作はそんな二人の物語。

しかし移植された心臓に記憶が残るなんてことが、現実に起こり得るのだろうか。

ドナー(臓器提供者)となった故人の記憶などが、まったくの別人であるレシピエント(臓器受給者)に現れるというエピソードは、フィクション・ノンフィクションを問わず、いくつかの逸話、漫画・小説が存在する。

たとえばアニメ・漫画でも人気のある北条司氏原作シティーハンターの続編エンジェルハートでは、幼少の頃からある組織に冷徹な殺し屋として育てられた少女が自分の仕事に疑問を持つようになり自殺。

しかし組織によりある女性の心臓を移植され復活するが、その後夢や鏡の向こうにドナーの女性の幻が現れるようになり混乱の中組織を抜ける。

そのような中少女は「シティーハンター」と呼ばれる正義の男に出会い、幻の女性のサポートのもと人間らしい心を取り戻す。

少女はやがてその男の養女となるが、少女に移植された心臓は、事故で亡くなったその男の婚約者のものであった…という物語が展開される。

それはアニメや漫画の中だけの話であって、だから現実にはそんなことありえない!と、お思いの人もいるかと思う。

しかし臓器移植によってドナーの記憶や性格、趣味、嗜好、習慣の一部がレシピエントに移ってしまうという現象(「記憶転移」)は実際に起こり得るという。

ロマンチックではあるが、ずいぶんファンタスティックな話である。

が、実話がないわけではない。

1988年、米国コネティカット州イエール大学付属ニューヘイヴン病院でクレア・シルビアという女性が心肺同時移植手術を受けた後、ドナーの記憶や性格が乗り移ったような変化を経験したという。

その理由として考えられるのは、臓器の神経線維にも脳とは別に記憶のサーバーの一部があり、そこにドナーの記憶や情報の一部が残っているから。

または人間の肉体の外側にエーテル体というエネルギー体があり、人間の魂の記憶や情報は臓器や細胞ではなくこのエーテル体に蓄積しており、臓器移植によりこのエーテル体も一部移動することで「記憶転移」が生じるかららしい。

事実は小説よりも奇なり。

実際に起こる出来事は小説よりも複雑で波瀾に富んでいる。

本作には "ありえない" を "もしかしたら" に変える巧妙な演出が存分に仕掛けられている。

 

 

ありえない?ドナーとレシピエント関係者の出会い

 

臓器移植は基本的に個人情報保護のため、個人を特定する情報は一切公開していない。

実際に臓器移植を受けた側にも提供した側にも互いの情報は知らされない。

ただ当事者同士が直接交流することはできないが、ドナーご家族にはJOTを通じて移植後の経過報告や移植者からのサンクスレターなどを渡すことができる。

だからお互い知る可能性は限りなく低い。

だが二人は通勤電車という、日常生活の中で出会っている(※ここでいう「出会う」とは、お互いを認識するという意味)。

そもそもドナーとレシピエント関係者が、そんな近場に住んでいるのか?という疑問を持たれる人もいるだろう。

ちなみにドナーから心臓を摘出して、血流再開までに許される時間(虚血許容時間)は約4時間といわれている。

心臓は止めておくと傷んでしまうため、摘出から4時間以内に移植を終了する必要があるのだ。

本作舞台である北海道は広大で、摘出から移植までを4時間以内に終了しなければならないとなると、時間的な制約を考えればレシピエント関係者とドナーが近くにいることはけっしておかしなことではないのだ。

 

 

もしかしたら?偶然も3回続けば「運命」

 

「偶然も3回続けばそれは運命」というが、さえ子と成瀬の間には、それがさも「運命」の導きであるような偶然が3回重なっている。

ハワイの空港でのニアミス。

通勤時、電車トラブルによる出会い。

そして成瀬の職場での思いがけない再会。

それはあたかも、さえ子の亡き恋人・雄介の "心臓の記憶" に導かれているようであった。

特に3回目の偶然である再会の際の演出は絶妙。

「運命」とは自分自身の選択の結果なのだとさえ子は言う。

 

運命って言葉って

すでに決まっていることみたいな意味で使われるけど

そうじゃないと思うんですよ

 

自分で選ぶものじゃないですか?

運命って

 

生きてるってことは

常に何かを選択しているんだと思うわけです

 

ず〜っと選択の繰り返し

 

そしてすべての未来は

その選択の先にある

 

つまり

全部自分が選んでる

引き寄せてる

 

さえ子自身のこのセリフが最高の伏線となる。

直後さえ子は自分で選択した仕事先で、一度は突き放した成瀬と再会することになるのだ。

さらに、さえ子と同僚のベテラン焙煎士・篠田のひと言がこの「運命」を後押しする。

 

会いたいと思っていたら

会えるもんだな

 

このセリフはさえ子と成瀬にはまったく関係のないことについてだが、この時のさえ子の心情と重なっていることは言うまでもない。

この一連の演出は実に素晴らしく、本作が並のラブストーリーでないことを証明する。

そしてこんなドラマチックな偶然が実際に3回も続けば、そこに運命的なものを感じてしまうのは自然の流れだったかもしれない。

これを機に、さえ子は亡き恋人・雄介の "心臓の記憶" を宿した成瀬に惹かれ始めていく。

だがさえ子自身は、この感情が亡き恋人・雄介の "心臓の記憶" を宿した成瀬に向けられたものなのか、それとも成瀬自身に向けられたものかがわからず悩むことになる。

 

 

 

「運命」の真に向かうべき先を指し示した4つ目の偶然の妙

 

 

4つ目の偶然

 

偶然を「運命」に変えた3回の偶然。

3回の偶然の「運命」の向かう先は、あやふやなところが少しはあるものの、当初こそ成瀬自身へではなく、さえ子の亡き恋人・雄介の "心臓の記憶" に、であった。

だが4つ目の偶然の発覚で、物語は想像していたものとは違う展開をみせはじめる。

本作がさえ子と亡き恋人・雄介の "心臓の記憶" の物語ならば、ややもすれば蛇足とも受け取られかねない4つ目の偶然はそもそも本当に必要ない。

それでも4つ目の偶然のエピソードを挿入する理由。

それはこの偶然が、「運命」の真に向かうべき先を指し示しているからだ。

この4つ目の偶然は、時系列的にいえば一番初めの偶然に当たる。

4回目ではなく、あえて4つ目と表現する理由はそのためだ。

さえ子と成瀬は、雄介が亡くなるずっと前に一度出会っていた。

一番初めにして最後の4つ目の偶然の演出こそ本作の核心であり、最大のサプライズ演出だったといえるだろう。

この巧妙なこの仕掛けに気づいた時、ラブストーリーの王道展開かと思っていた物語が一気にその姿を変える。

 

 

4つ目の偶然が指し示す「運命」の真に向かうべき先

 

4つ目の偶然。

その記憶が呼び起こされた時、この「運命」の向かう先が、亡き恋人・雄介の "心臓の記憶" ではなかったことにさえ子は気づく。

きっかけは亡き恋人・雄介の "心臓の記憶" であったことは間違いない。

成瀬に雄介の面影を重ねてみていたことも間違いない。

だがそれはあくまできっかけであり、本当に惹かれていったのは成瀬自身にであったことにさえ子は気づく。

途中、雄介の "心臓の記憶" と成瀬の間で揺れるさえ子の心情もたしかに描かれてはいるが、さえ子自身に確証がなかった。

3回重ねた偶然は雄介の "心臓の記憶" に導かれてのものだったと、さえ子でなくてもすべての人がそう思ったことだろう。

だがそれが4つ目の偶然を演出するための、巧妙な仕掛けだった。

まさかそれが壮大なミスリードだったとは、夢にも思わない。

"心臓の記憶" に導かれて惹かれ合うなんてラブストーリーは非常にありがちで、主に韓国ドラマなんかで好まれそうな王道シチュエーションである。

またこのようなドラマチック性は韓流好きの日本でも大変好まれるであろうから、まず大ハズレすることはないだろう。

観る側もそう思っていたに違いない。

だが本作はそこからさらにひとつ進めて、あえて別の道を選んだ。

ちなみに成瀬は妻帯者であるから、この演出の意味は非常に大きい。

ロマンチックな純愛だと思っていたものが、突然葛藤に苛まれた(世間の定義でいうなら)不倫になるのだから当然だ。

下手をすれば、この時点で嫌悪感を抱いた人も多かったかもしれない。

ただ、個人的にはこの関係を不倫と断じてしまうのは少し違うと思う。

もし仮に心臓移植がなかったら、さえ子と成瀬はすれ違いことあったかもしれないが、出会うことはなかったはずである。

二人が出会えたのは、まぎれもなく雄介の "心臓の記憶" に導かれてのものだった。

そして、もしこの物語が不倫をメインに描いたものであったなら、結末はああはなっていなかっただろう。

本作の結末は、個人的には非常に満足するものだった。

だが結論を観ている者に委ねるような結末であるから、おそらく作品の評価を二分しているかと思われる。

場合によっては、意味不明に陥いる人もいるかもしれない。

だがちゃんと観ていけば、さえ子の機微がこと細かく丁寧に描かれている。

そしてそんなさえ子を見事に演じきった有村架純さんには、最大級の賛辞を送りたい。

ロマンチックな王道展開かと思いきや、とても繊細でとても切ない大人のラブストーリーの本作。

気になる人は、その結末をぜひご自分の目で確かめていただきたい。

 

 

 

 

 

 

 

配信ドラマならではの超豪華キャスティングにも注目

 

 

テレビ離れが加速し、配信ドラマが社会現象を起こすに至る昨今。

テレビ神話もあってか、当初こそ出演を渋っていた実力派俳優たちが、こぞって配信ドラマに進出し始めている。

もちろん本作キャスティングも、御多分に洩れず超豪華。

篠田役のイッセー尾形氏や車掌役の古舘寛治氏など、イブシ銀の名優たちがそれぞれの持ち味を存分に生かしている。

そんな名優揃いの俳優陣のなかでも、特にこの二人にぜひ注目してほしい。

 

 

すべてを理解していた成瀬ミキ(演:中村ゆり)

 

本作が純愛ではなく不倫とわかった時、おそらく一番同情されたであろう成瀬の妻・ミキ。

そして同時に多くの女性を味方につけたのも、ミキだったのではないだろうか。

見方を変えてよくよく考えてみれば、脇役でありながらミキこそこの物語の本当の主人公だったような気さえしてくるほど、重要な役割を果たしている。

なぜならミキがいなければ、本作はロマンチックでファンタスティックなただのラブストーリーであっただろう。

ミキの存在こそ、本作が大人のラブストーリーたる所以なのである。

だからこそというべきか、ミキはさえ子自身も気づかない、さえ子の本当の気持ちにいち早く気づいていた。

 

不倫の方がよっぽどよかった

 

相手が性欲や感情などではなく、「運命」とあっては他者が立ち入る隙など微塵もない。

ミキのこのセリフこそが、さえ子と成瀬の奇妙な関係を唯一正確に言い当てていたのかもしれない。

それでもめげなかったミキは、さえ子とはまた違った機微をみせてくれていて物語の重要なキーマンになっている。

それもこれも演じた中村ゆりさんの演技力があればこそ。

中村ゆりさんの名演技にも、ぜひ注目してほしい。

 

 

含蓄のあるヒロ(演:三浦友和)

 

本作のキャスティングで一番驚いたのがヒロ役の三浦友和氏。

こういった配信ドラマにはあまり馴染みのない俳優ではあるが、このキャスティングがナイスすぎた。

まずその風貌からして、従来の三浦友和氏の印象とは異なるものだった。

そして陽気な風貌とは裏腹に、さえ子に語りかける含蓄のある名言の数々。

三浦友和氏が演じたヒロは、ミキとはまた違う意味で物語のキーマンとなっている。

円熟味を増した三浦友和氏の味わい深い名演技にも、ぜひ注目してほしい。

 

 

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目を奪われるほどの壮大で美しい情景

 

本作の魅力を語る上で、物語の秀逸さはもちろんのこと、その映像美も忘れてはならない。

北海道とハワイの壮大な風景を、スタイリッシュな色彩感覚で彩る本作の映像美はまさに極上のひと言。

ため息が出るほど、とにかく美しい。

北海道の四季折々の風景は実に情感たっぷりで、日本人の心の奥底にある原風景そのもののようである。

魂を揺さぶられる景色とは、きっとこういうことをいうのだろう。

また劇中に登場する衣装から小物、建物にいたるまで、出てくるアイテムすべてがオシャレでスタイリッシュで、舞台が田舎であることをまったく感じさせない。

劇場版級の上質な映像美を連続ドラマの尺で十分に堪能することができる本作は、ただそれだけで一見の価値がある。

 

 

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