北条司作品
エンジェル・ハート
『エンジェル・ハート』とは
『エンジェル・ハート』(Angel Heart)は、北条司先生による日本の漫画。
また、これを原作としたテレビアニメ・テレビドラマである。
「週刊コミックバンチ」(新潮社)にて2001年創刊号から2010年36・37合併号まで連載されたのち、『エンジェル・ハート 2ndシーズン』として「月刊コミックゼノン」(ノース・スターズ・ピクチャーズ)2010年創刊号から2017年7月号まで連載された。
1stシーズンの単行本はBUNCH COMICSより33巻まで発売されている。
略称は「A.H.」。
2015年7月時点でシリーズ累計発行部数は約2500万部を記録している。
作者の代表作『シティーハンター』(以下、『C.H.』)を、家族愛をテーマとしてリメイクし、同作のパラレルワールドを描いている。
この家族愛というテーマは前作『F.COMPO』においても主題となっていたものであり、その他多数の作品において読み取れる作者の大きなテーマとなっている。
『C.H.』は突然4週後の連載終了を通告されて終了しており、北条先生に描き切っていないという強い思いを与えた作品であり、これが本作の執筆されるきっかけとなった。
『C.H.』と同様、新宿を主な舞台とした現代劇であるため、時代設定は10年程の開きがある。
このため、『C.H.』時にはなかった携帯電話が登場するなど、背景となる社会設定は大きく変わっている。
また獠の身体にも老眼や腰痛という症状が出ているように、この時代設定の開きと同じだけ登場人物たちも年齢を重ねている。
ただし、2000年代中期以降は時間経過の設定が曖昧になっている。
北条先生は、『超こち亀』で秋本治先生の連載30周年を祝う時のコメントで、連載が長引きそうだから年齢を停止しようと考えているとコメントしており、2ndの単行本のインタビューでは、停止させたと発言している。
パラレルワールドを描いたリメイク作品であるため、登場人物などの設定には『C.H.』から引き継いだ部分と変更された部分とが混在している。
引き継いでいる部分については、獠の性格のようにほぼそのまま継承されているものだけではなく、「姿形は変われど、ファルコンとミキ(美樹)が出会い、堅い絆で結ばれる」といった形を変えながら引き継がれている部分もある。
テレビアニメ『エンジェル・ハート』
2005年10月から2006年9月まで、よみうりテレビ、日本テレビ系の一部の局(系列局では1週間 - 2クールの遅れ放送)で放送。
CS放送「キッズステーション」でも2クール遅れで放送された。
事実上の前作である『C.H.』の、『シティーハンター91』以来(シリーズ全体としては、1999年4月23日放送のテレビスペシャル第3弾『シティーハンターSP緊急生中継!? 凶悪犯冴羽獠の最期』)のアニメ化作品である。
当初は2005年4月に開始予定であったが、放送スケジュールの都合により半年間延期され、同年10月からの放送となった。
制作会社は、『C.H.』を制作したサンライズからアニメ版『キャッツ・アイ』を制作したトムス・エンタテインメントに変更になったが、プロデューサーの諏訪道彦氏と声優陣は『C.H.』から引き続き担当している。
また音楽担当の岩崎琢氏と音響監督の長崎行男氏は14年後に公開された『C.H.』の劇場版『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』でも続投している。
全50話のうち、第13話まではプロローグと位置付けられ、暗殺者グラス・ハートが香瑩になるまでが語られた。
その後の内容は、原作の第18巻までの内容とほぼ合致する。
香瑩役の声優は、応募3,000人からオーディションで選ばれた川崎真央が務める。
原作では「パラレルワールド」と称している『C.H.』との関係は、アニメでは「アナザーストーリー」と称している(事前番組 "#0" より)。
アニメでは原作のギャグの大半(特にハンマー、カラス、極楽トンボ)はカットされていたが、総作画監督が第39話以降に青野厚司氏へ交代してからはギャグシーンが多くなった。
また、神谷明氏と内海賢二氏が共演した第42話では、2人がそれぞれ『北斗の拳』のケンシロウ役、ラオウ役であることから、双方がアドリブで互いの台詞「我が生涯に一片の悔い無し」「お前はもう死んでいる」を言い合うというお遊びも盛り込まれている。
アニメ版『C.H.』ではアニメオリジナルエピソードも多く制作されたが、本作ではアニメオリジナルエピソードは制作されず、若干の追加シーンを除けば第24話にそれまでの総集編的な話を入れただけである。
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あらすじ
台湾から来た殺し屋の少女と、新宿のスイーパーとの家族愛の物語。
新宿に現れた史上最強の暗殺者は、美しすぎる人間兵器だった。
彼女(香瑩)のコードネームは「グラス・ハート」。
完璧を誇る仕事振りに組織からは高い評価を得ていたが、彼女の心は暗殺という任務を重ねる度に軋み蝕まれていった。
悩んだ末彼女は自ら死を選ぶが、組織の力によって再び現世に呼び戻された。
事故死した冴羽獠の最愛のパートナー、槇村香の心臓を移植されて…。
香の心臓を移植したことにより、「グラス・ハート」と呼ばれた彼女の心に変化が起き、感情が生まれた。
そして暗殺から手を引き、組織と対立する意思を持つ。
香の心臓を持つ事によって無意識の内に獠と接触し、スイーパーとして「シティーハンター」の世界に入っていく。
主要登場人物
※テレビアニメ版『C.H.』に登場するキャラクターについては、基本的に同じ声優が担当している。
香瑩(シャンイン)
声 - 川崎真央(幼少期 - 金田朋子) / 高山みなみ (ドラマCD) / 五十嵐裕美(戦国大戦)
本作の主人公。
獠と香の義娘(養女)。
年齢は初期のころは15歳だったが、第1シーズン終盤で19歳。
元々は台湾マフィア「正道会」(チェンダオフェイ)のボスである李大人こと「李堅強」(リ・ジィエンチャン)の娘・李香瑩(リ・シャンイン)である。
2歳のころ父の部下の謀反によって、母親と共に乗っていた車ごと海に沈められた。
母親はその際に死亡、彼女も行方不明になるが、計略により殺し屋として育て上げられ、正道会の暗殺部隊「朱雀」に所属していた。
コードネームは「グラス・ハート」。
李大人は彼女の生存を信じていたものの、この陰謀については物語開始直前まで知らなかった。
度重なる暗殺命令によって次第に心を蝕まれ、最終的に飛び降り自殺を行い、心臓を鉄柵で刺し貫くが、マフィアが強奪した獠のパートナー、香の心臓を移植され一命を取り止める。
心臓を移植されたことで香の心が宿り、後に香瑩は獠と行動を共にすることになる。
ファルコン(海坊主)は「香瑩の戦闘能力は冴羽と同等。信頼性は比べるまでもなく香瑩」と高く評価している。
理由として、獠はいざという時でも美女がいればちょっかいを出すので信頼性がないとのこと。
香瑩という名前は、父である李大人の名付けによる本名だが、父であることを明かさない決意をした李大人に代わって、獠が身元を引き受ける際に改めて新たに名づけた形となっている。
その際は最愛のパートナーの名前から「香」、2人の大切な子供であることから、宝石のように美しく大切なものという意味で「瑩」と説明している。
幼少のころから殺し屋として教育されたこともあり、初期はクールな性格。
ナイフで髪を切ったり、花に水を遣る意味が理解できなかったり、おしゃれを変装と思い込み着飾るのを拒絶したりなど、一般常識が欠落していた。
シティーハンターとして初めての事件では、原因となる人物を狙撃して簡単に解決しようとしたりする。
しかし物語が進むにつれて、移植した香の心臓の影響と獠や冴子らとのふれあいの中で、徐々に明るい性格になり、周囲と過ごす内に一般常識も身に付ける。
しかし暗殺者特有の気質で、睡眠中も神経は研ぎ澄まされている。
原作第7巻の途中からは獠の娘となって2年目を迎え第2部的な展開となり、獠と共にシティーハンターとして行動する。
また、それまでは日本語の喋り方がカタコトだったが、2年目からは一般的な日本人口調で会話するようになった。
原作では獠や冴子からは「阿香」(アシャン。愛称であり "シャンちゃん" という意味)で呼ばれることが多い(ただしアニメ版では香瑩のまま)。
100tハンマーの使い手である。
しかし『C.H.』の香と共通なのはハンマーのみで、コンペイトウ、トラップ、すまき(布団でグルグル巻きにする)、煩悩退散棒などは使わない。
それでも獠の「もっこり」を抑え天誅を喰らわせる程の攻撃力を持つ。
酷い時は馬鹿力で海坊主の店までボロボロにしたことがある(原作第9巻)。
コートの裏に多数の拳銃を隠し持っている。
殺し屋の性か、危険を察知するとすぐ発砲してしまう(原作第8巻)。
使用拳銃はコルト・ガバメント(原作はカスタムされたクラークボウリングピンモデルだが、アニメ版ではノーマル)。
獠を「獠爸爸」(りょうパーパ)、香を「香媽媽」(かおりマーマ)と呼んでいる。
原作第10巻では、香の姉である立木早百合のことを「早百合伯母」(さゆりイーマ)と呼んでいる。
隙の無さが欠点で周囲からは「冴子二世」と呼ばれ冴子本人もそれを認めている。
香と同様に音痴である。
信宏を仲間・家族という認識でしか見ていなかったが少しずつ変化しており、獠達と出会って5年目の2ndシーズンのコミックス第6巻で信宏が風俗に嵌まったと冗談で言った獠に激怒しハンマーをお見舞いした。
獠もだが、自身でもなぜ怒ったのか理解できておらず、意識の変化は自覚できていない。
原作2ndシーズン第15巻の時点で堅強が実父だと知っており、親子の名乗りはしないまま「台湾のお父さん」と呼んでいた。
芸能スカウトから何度か声が掛かるなど、モデル体型のスタイルでかなりの美人。
冴羽獠
声 - 神谷明
基本は『C.H.』から引き継いでいるが、本作では香瑩の義父としての役割が加わる。
プロの始末屋(スイーパー)「シティーハンター」で、使用拳銃もコルト・パイソンである。
もっとも『C.H.』のころよりも容姿は老けて描かれており、腰痛(原作第1巻)や老眼持ちであるなど、年齢を感じさせる描写がなされている。
頻度こそ減ってはいるものの、スケベぶりも相変わらずで『C.H.』同様美女を見ると「もっこり」する。
その際は『C.H.』のころの香に代わって、香瑩から天誅を食らっている。
『C.H.』では、香に対する愛情表現は屈折しておりそっけない態度をとり続けていたが、本作では香が事故死する直前にプロポーズしていた。
香瑩の中に意識として残っていた香が「香瑩は自分たちの娘だ」と言い、また香瑩の実父・李大人からの強い願いもあり、香瑩の父役を引き受けた。
しかし堅強の死期が迫ったころ、偽親子関係と忌み嫌うカメレオンにより、香瑩が既に自力で実父の正体をつき止めていたことを知らされ、あまりにも彼女を子供扱いしすぎていた己自身を悔やむ。
槇村香
声 - 伊倉一恵
香瑩の事実上の義母。
『C.H.』のヒロインであったが、本作では車に轢かれそうになった幼児を庇って交通事故で脳死状態となり、彼女から摘出された心臓がマフィアによって強奪された所から物語は始まる。
心臓が移植された先の香瑩の中に意識として生き続けている。
自分の心臓を受け継いだ香瑩を娘と思っており、獠と共に香瑩の義親となる。
『C.H.』では愛用の銃の照準が加工されていたため銃弾が狙い通りに当たらないという設定だったが、本作では本当に射撃の腕が無い設定になっている。
看護師をしており、獠とも患者として出会い、香瑩同様名前のなかった獠に冴羽獠の名前を付けている。
また、『C.H.』では1967年3月31日生まれという設定だったが、本作では2000年5月12日に28歳で死亡のため年齢設定は異なる。
劉信宏(リュウ シンホン)
正道会の戦闘部隊「青龍」(チンロン)の元隊員で、狙撃などを得意とする。
腕は香瑩とほぼ互角であり、特に組み手などは一歩も引けをとらない。
香瑩とは訓練学校時代の友人であったが、最終試験という名の殺し合いの際、幹部に嵌められ彼女に殺されかけた。
序盤では香瑩が「自分が殺した」と思い込み、トラウマの原因になっていた。
しかし実は仮死状態であり、後に蘇生している。
その後、香瑩の実父・李大人(李堅強)の弟で彼の影武者を務める李謙徳(以下、謙徳)を狙撃し殺害してしまう。
香瑩共々に組織の末端の実行メンバーであり、狙撃対象が組織の大ボスであることも命令を下した張が香瑩の人生を狂わせた元凶だと知らず、命令されるままに実行してしまった。
張一味との激戦の最中に香瑩に再会した際、死を覚悟して自身の名を告げた。
後に名前のことを問いつめられ、家族のことも自身の名前の記憶も無い彼女を気遣って同様に覚えていないと言った。
李大人から除隊と香瑩を守るように命令された後は、新宿に残り「COFFEE HOUSE CAT'S・EYE」の住み込み店員となるとともに、スイーパーの手伝いをするようになる。
海坊主からコーヒーの淹れ方を叩き込まれており、原作第27巻で海坊主は信宏の淹れたコーヒーを「95点」と評価している。
本来ならば75点だが、笠井葉月が来店していて機嫌が良かったらしい。
初期のころから香瑩に比べて社会常識をわきまえていた上に日本語が流暢であったが、組織に所属していたころの習慣が抜け切れていない所もあり、周囲を呆れさせることもある。
ゲームの世界に嵌まってゲームや神話などの雑学の知識が増えてゆき、それが殺人犯の手掛かりに繋がることもある。
元々の性格は直情径行で暴走しやすいという欠点を抱える。
死に急ぐかのような側面は次第に薄れて徐々に明るい性格になり、時には街中でもっこりするように。
香瑩に対して恋心を抱いているが、彼女には仲間・家族としか思われていないと知ってショックを受け、恋人の座を目指し男性として認識して貰うべく日々努力を重ねる。
獠を心の師と仰いでおり、また獠も弟分として認めている。
海坊主は理想の父親像であるため、海坊主のことが大好きのミキとはお互いに兄妹だと思っている。
アクション女優のジョイ・ロウに対しては、DVDや写真集、彼女関連の記事のスクラップをするなどの大ファンである。
使用拳銃はベレッタM84(原作第17巻、アニメではベレッタ92)、G3A3狙撃仕様(こちらもアニメではPSG1狙撃銃)。
香瑩を連れ去るかもしれない存在を敵視する癖がある。
原作2ndシーズン第7巻で、バイクを転がす駆け落ち夫婦の両親と2歳年下の妹の雅玲(ヤーリン)とバイク旅行中に事故に遭い、病院で目覚めるも家族の生死もわからないまま正道会に連れ去られたことが判明した。
似た生い立ちの末に絶命した、ある依頼主の事件を機に悪夢に苛まれるようになり、その後妹によく似た女スリに遭遇。
香瑩に励まされ、妹かもしれないと考えたスリの雅玲を捜すが、妹と両親の確かな死の事実を知り、彼女が同名の父方の従妹であることを知る。
ファルコン(海坊主)
声 - 玄田哲章
元傭兵・スイーパー。
愛称は「海坊主」。
失明したためにスイーパーを引退しているが腕は健在で、目が不自由とは思えない動きができる。
現在は「COFFEE HOUSE CAT'S・EYE」のマスターである。
盲目でも小銭や4種類の紙幣も区別できるなど、普段の生活に支障はない。
怪力でバズーカを容易に2丁構え、バレットM82を片手で撃ち(原作第14巻)、素手で防弾ガラスにヒビを入れるほど凄まじい(原作第17巻)。
本人曰く、かつてアメリカ海兵隊に所属していた(原作第17巻)。
使用拳銃は前作と同じS&W M629(原作第23巻、アニメ『C.H.』と同じく本作アニメでもM29だが発砲シーンはなく再装填のみ)。
『C.H.』では傭兵時代、獠と敵対する部隊に所属し、エンジェルダストを投与された獠との戦闘が元で失明したことになっていたが、本作では同じ部隊の味方という設定で、失明の原因となる負傷も傭兵時代に獠を救出に向かった際に受けた爆弾による負傷が原因になっている(原作第25巻)。
なお、猫恐怖症であり猫アレルギーという設定は『C.H.』より引き継いでいる。
ミキの担任の女性教師・新藤や傭兵時代に愛し合った看護婦の弥生の娘にも愛されるなど、誤解されがちな中で真の価値を知った女性に想いを寄せられることが多々ある。
1stシーズンでは信宏に続き原作第10巻145話「暗闇に見えた夕日」から、ストリートチルドレンのミキを引き取り一緒に生活を始める。
心配性で子離れが難しい未来図が予想される親バカと化し、2ndシーズンで信宏がクラブ費を肩代わりした少年・走(かける)のために奔走していたことを知って号泣し、辞退しようとした走の母親にお互いの子供の笑顔のためにと、獠と共に説得し陰ながら信宏を応援した。
『北条司漫画家25周年記念、自選イラストレーション100』での北条司先生のコメントによると、当作品での海坊主は日本人・伊集院隼人ではなくアフリカ系アメリカ人・ファルコンだということである。
野上冴子
声 - 麻上洋子
『C.H.』では警視庁の刑事(階級は警部補)であったが、本作では新宿西警察署長に出世している。
未だ独身。
仕事一筋で署員らには「鉄人」と言われている。
喫茶キャッツアイを訪れる機会は、『C.H.』の時よりも多い。
陳(正道会の陳侍従長)に口説かれたが、30歳後半だったためにフられたことがある。
年齢、誕生日など年に関わることを言われると怒る。
また、信宏に「おばさんはひっこめ」と言われた際も怒っていた。
原作第8巻時点で39歳と判明(このエピソードは2003年。これは、かつて冴子をストーキングしていた遠山のパソコンのパスワードがsaeko39であったためである。解除したのは香瑩。打ち込んだ時には冴子ににらまれていた)。
ミキとの出会いにより、心の奥に思い描いていたのは「ベタな暖かい家庭(夫が獠、長女が香瑩、次女がミキのようなイメージ)」であると分かる。
そしてミキの母親的存在となり、ミキに危険が迫っていると冷静さがなくなり、母親としての心や本音が出てくるようになる。
性格は『C.H.』とは変わっており、『C.H.』では自分の美に絶対の自信を持っていたが本作では年齢を気にしたりするなど『C.H.』程の自信家ではなくなっている描写がある。
また、『C.H.』では獠を利用したり厄介ごとを持ち込んでくるなど狡賢い一面があって同時に茶目っ気があったが、本作ではそういった一面はなくなり、真面目で堅実な女性になっている。
使用拳銃はワルサーPPK(原作第3巻)、グロック19(原作第8巻、ドラマ版では実際の日本の警察銃であるS&W M37)。
槇村秀幸
獠の最初の相棒で、香の義兄。
『C.H.』では元刑事で、巨大麻薬シンジケートの日本進出に伴う事件に巻き込まれ、その組織の手によって殺されたという設定だったが、本作では刑事とシティーハンターの2足の草鞋を履いており、依頼で殺しに来た筈の獠が押しかけ相棒になった。
冴子とは恋人関係であり、婚約指輪を密かに購入するも渡せないまま冴子につきまとっていたストーカーの遠山一真によって殺害された。
使用拳銃はニューナンブM60(ドラマ版では『C.H.』同様コルト・ローマン Mk-III)。
ミキ
声 - 小山茉美
関わる人々を幸せにする少女。
原作第18巻時点では小学1年生。
母親(サトちゃん)が数年前に病死した後はストリートチルドレンとして暮らしていたが、冴子との出会いをきっかけにファルコンに引き取られ育てられることになる。
父親はA国(アニメ版では「ダマナン王国」)国王で、サトちゃんとは新宿ゴールデン街の飲み屋ジョナサンで知り合った。
しかし、DNA鑑定などの確証はない。
また、女優・ジョイは国王の毛髪を持っており、確認することはできたが、お風呂に入ったときに王家の紋章ともいわれているアザを確認し、国王の子供とジョイ自身は断定している。
絵本を読むのがとても上手い。
不幸な人を見つけるのが特技で、そういった人を見つけると絵本を読み聞かせたくなる(原作第19巻)。
ファルコンの養子になるも一緒に暮らし始めたころは「おじさん」と呼んでいたが、バスジャック事件をきっかけにパパと呼ぶようになった。
それ以前にもファルコンの優しさを感じ、「ファルコン」と呼ぶようになっている。
『C.H.』では、元傭兵でファルコンのパートナー兼 "CAT'S EYE" の女主人「美樹」である。
陳(チン)
声 - 矢田耕司
李大人が弟・李謙徳に次いで信頼する侍従長。
正道会の李大人直属の隠密部隊「玄武」の指揮官。
「青龍」部隊・張らの反逆を抑えた後は、暇をもらって海坊主の喫茶店の隣に中華料理店「玄武門」を開店し、獠・香瑩父娘の後見人的存在をしている。
店の料理は自ら調理しているが、評判は非常に良い。
年のわりに耳が良く、女好きである。
美人の前では、背筋が伸びて、杖なしで歩く。
アニメ版では第19話まで訛りがなかったが、第20話以降においてしゃべり口調に独特の訛りを使うように変更された。
サブチーフの林忠(リン ジョン)と娘を巡る件で、香瑩らが尽力してくれたことに玄武一同感謝している。
李堅強(リ・ジィエンチャン)
声 - 有本欽隆(青年期 - 野島裕史) / 掛川裕彦(ドラマCD)
台湾マフィア正道会の正龍頭(大ボス)で香瑩の実父。
周りからは身分の高い人という意味の「大人」という称号をつけて「李大人」(リ タイジン)、もしくは「大老」(ターラオ)と呼ばれる。
香瑩の実の父親であるが、手下の謀反とはいえ、娘を闇の世界へ引き込んでしまった責任から、実の父親であることを名乗らない決意をし、その意図を汲んだ獠に香瑩を託した(獠とは古くからの知り合い)。
しかし親馬鹿は抜けきらず、香瑩に恋人ができたと聞いて、わざわざ台湾から極秘来日したほどである(原作第9巻)。
娘の成長に嬉しくもあり悲しくもある。
使用拳銃はベレッタM84(原作第3巻)。
李謙徳(リ・チィエンダァ)
李堅強(以下、堅強)の双子の弟で香瑩の叔父。兄の影武者を自ら進んで行い、その瓜二つの影武者振りは、正道会の新宿での子分に当たる餅山も全く気づかなかったほど。
39年前には、堅強が一目惚れし後に妻となった香瑩の実母との交際を仲立ちさせ、実らせていく役も買って出た。
新宿に堅強として極秘来日していたところを「青龍」指揮官・張の命を受けた信宏により、狙撃され死亡する(香瑩や信宏は部隊の末端で、信宏は組織の "大ボス・謙徳=堅強" だとは知らなかった)。
彼が香瑩に遺した遺産は台湾の国家予算1年分に匹敵する。
堅強と同じく獠とは昔からの付き合いで、来日の際にはいつも獠と朝まで飲んでいた。
パラレルワールドの賛否
本作は、北条司先生のあの名作『シティーハンター』と同じ世界観を持ったパラレルワールド作品である。
そのことは原作コミック第1巻の作者談にも記されている。
ちなみにパラレルワールド(Parallel universe, Parallel world)とは、ある世界(時空)から分岐し、それに並行して存在する別の世界(時空)を指していて、並行世界・並行宇宙・並行時空とも呼ばれている。
要するに、"よく似た世界" というわけだ。
時代背景を鑑みると本作は『シティーハンター』の数年後の世界のようにみえて、『シティーハンター』の未来ではないということなる。
そのことを理解した上でなお、このパラレルワールドという設定が、本作においての賛否を分ける大きな要因となっている。
なぜなら、パラレルワールドへと分岐する前のオリジナル世界『シティーハンター』のヒロイン・槇村香が、本作では亡くなっていたところから物語が始まるからだ。
それは『シティーハンター』ファンならとても哀しいことで、熱心なファンからしたら許せるものではないのかもしれない。
それが影響してか、名作の続編のような存在のはずの作品であるにもかかわらず、思ったほど話題にはならなかった。
ファンの気持ちは痛いほど理解できるが、それが理由で本作を観ないというのは非常にもったいない。
それは円熟を迎えた北条司先生の世界観が、本作には目一杯詰まっているからだ。
名作『シティーハンター』の世界観を円熟を迎えた原作者自らが再構築した北条司先生の最高傑作
本作が優れた作品だと感じる要素のひとつに、秀でたシナリオが挙げられる。
毎話どこかしらに感動シーンが用意されていて、とにかく泣ける。
本作のヒロインである香瑩を引き取るまでだけを観ても、その設定の深さに感服せざるを得ない。
故にその先のシナリオの妙は言わずもがな。
本作のシナリオの妙と比べると、名作と信じて疑いようのない『シティーハンター』のシナリオにも、なんとなく隙のようなものが感じられるから恐ろしい。
また『シティーハンター』といえば、なんといっても主人公である冴羽獠の格好良さが魅力のひとつだが、本作の冴羽獠も『シティーハンター』に負けず劣らず大変魅力的だ。
ただし『シティーハンター』とは少し違う点もある。
『シティーハンター』での冴羽獠は、あまり弱さを見せなかった。
「喜怒哀楽」の "喜楽" がスバ抜けすぎて表現され、"怒哀" の感情を露わにする機会は非常に稀であった。
だが本作では香への愛情や、失った時の哀しみを露わにすることが多くなっている。
あの完全無欠のヒーローである冴羽獠が隙をみせる?
冴羽獠の格好良さは本心を隠した行動にある。
あえて香に素っ気ない態度を取ることで実は自分を狙う者から守っていたり、照れ隠しで依頼者にモッコリ報酬を要求したりと、冴羽獠の本心は常に行動とは別のところにあった。
それが本当に格好良かった。
しかし感情を露わにするということは、本心をさらけ出すということ。
これはかなり新鮮な試みだったと思う。
『シティーハンター』ファンからしてみたら賛否が分かれるところではあるだろうが、個人的にはアリすぎるアリ。
『シティーハンター』の冴羽獠しか知らない人は驚くかもしれないが、彼の感情の豊かさは、本作がパラレルワールド設定でかつ歳を取った冴羽獠だからこそ成立できた、本作ならではの描写であったことを信じて疑わない。
折しもオリジナル世界『シティーハンター』が、最新劇場版『天使の涙』を以て、ついに終わりを迎えようとしている。
しかしこのまま終わりにしてしまうのは、ファンとしては何とも心苦しい。
だったらパラレルワールド作品に、改めて目を向けてみるのもひとつの手ではないだろうか。
『シティーハンター』よりさらに隙のなくなったシナリオである本作だが、アニメ版となるといろいろと隙だらけ。
改善の余地はいくらでもある。
『シティーハンター』終焉の際には、後継作品に『エンジェル・ハート』を。
北条司作品ファンからの切実なお願いです。
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